墜落したMQ-9の解析に意欲を見せるロシア

北米ニュース

あーあー、これまたきな臭い話になってきたな。

ロシア、墜落の米無人機回収へ 「敵対的」飛行を批判

2023年3月16日 3:08

ロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ(記事&category[]=ワールドカップ&category[]=五輪”>Black Sea)に墜落した米軍の無人機「MQ9リーパー(AFPより

そりゃ、ロシアは回収したいんだろうけど、リバースエンジニアリングはできるのかな?その技術がロシアにあるのか?というのは、少々疑問だ。

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アメリカ対ロシアの構図になりかねない

黒海上空でロシア軍機と衝突して墜落

さて、アメリカ製無人偵察機のRQ-9だが、14日に墜落したというニュースが飛び込んできた。

ロシア軍機衝突で米無人偵察機が墜落 黒海上空、米「無謀」と非難

2023/3/15 10:47

米国防総省は14日、黒海上空の国際空域を現地時間14日朝(日本時間同日午後)に飛行していた米軍の無人偵察機「MQ9」がロシア軍戦闘機「スホイ27」に衝突されたと発表した。米軍はMQ9の機体が損傷を受けたことから、国際海域に落下させることを余儀なくされたとしている。黒海はロシアが侵略するウクライナに面し、同海の北岸に位置するクリミア半島にはロシア軍の拠点がある。

米国防総省や米欧州軍によると、黒海上空で通常の偵察活動をしていたMQ9に対し、2機のスホイ27が30~40分間、接近飛行して任務を妨害。燃料を放出してMQ9に浴びせるなどした。

さらに、スホイ27のうち1機がMQ9のプロペラに接触。米軍はMQ9が通常飛行を続けることは難しいと判断し機体を海上に落下させた。米軍側はロシア軍の行為を「危険で、無謀な行為」などと非難した

産経新聞より

なかなか無茶なニュースなのだが、メディアは真顔で報じるんだな、コレ。

先ずは、黒海上空というのが、恐らくは公海上だということ。ロシア側はクリミア半島周辺海域は領海だと主張しているようだが、国際的には公海になっている。記事にも「国際海域に落下」とある。

また、幾つか不自然な話があって、1つはMQ9とSu-27の速度差。

低速で飛行するMQ-9(最高速度:482km/h、巡航速度: 276~313 km/h)と、高速で飛行するSu-27(最高時速M2.3、500km/h以下は低速域でコントロール性が損なわれる)が対峙するのに、どれほどの技能が必要なのか。プロペラに意図的に接触したと書かれているが、神業過ぎるだろうという印象である。いくら低速域でアドバンテージのあると言われるSu-27でも300km/h程度の速度域で任務が遂行できるのか?という疑問は当然出てくる。

もう1つはMQ9が無人機であるのに対し、Su-27は有人機である。接触してダメージだが大きいのはSu-27の方なので、意図的に接触したとは考えにくい。燃料投棄でMQ9を攻撃するのは可能性としては分かるのだけど、それを30~40分続けたって、そんなに飛び続けられるの?という疑問だ。だって、燃料投棄して攻撃しているのに。

とはいえ、おそらくメディアは西側の主張を参考にニュースにしているはずなので、そこにかみついても仕方がないのかもしれない。

ロシア側は接触を否定

ちなみに、ロシア軍側は接触を否定してみせたりもしている。

ロシア、戦闘機と米軍ドローンの「接触」を否定

2023.03.15 Wed posted at 08:22 JST

米軍のドローン(無人機)の「MQ9リーパー」がロシア軍の戦闘機と衝突したとされる問題で、ロシア国防省は14日、声明を出し、自国の戦闘機は「搭載兵器を使っておらず、接触もしていない」と明らかにした。

国防省は「ロシア軍の空域管制システムは14日朝、クリミア半島近くの黒海上空をロシア国境の方向へと飛行している米国のドローンMQ9を検知した。ドローンは応答装置を切って飛行しており、特別軍事作戦のために設けられた一時的な空域の境界を侵犯した。そのことを国際空域の全ての使用者に伝え、国際基準に従って公開した」と述べた。

CNNより

ロシア軍側が何もしないうちに、MQ9が勝手に墜落したという言い分である。Su-27側がちょっかいをかけていないという風に主張するわけだが、そっちの方が無理がある。

まあ、ロシア軍側の言い分を信用する必要は無いのだが、そういう主張もあるよという事を理解しておかねばならない。

ロシア側としては、アメリカ軍との直接対峙を避けたいので、「墜落させた」ということを認めたくは無いということなんだろうね。

なお、軍事ブローガーのJSF氏は、こんなTweetをしている。

近接して、風圧によるMQ9の進路妨害というのであれば、多少は説得力を感じる。

アメリカ側は撃墜判定

当然ながら、アメリカ軍としては「撃墜された」という判定になるのだろう。

Russian fighter jet forces down US drone over Black Sea

Updated 10:22 AM EDT, Wed March 15, 2023

A Russian fighter jet forced down a US Air Force droneover the Black Sea on Tuesday after damaging the propeller of the American MQ-9 Reaper drone, according to the US military.

The Reaper drone and two Russian Su-27 aircraft were flying over international waters over the Black Sea on Tuesday when one of the Russian jets intentionally flew in front of and dumped fuel on the unmanned drone several times, a statement from US European Command said.

The aircraft then hit the propeller of the drone, prompting US forces to bring the MQ-9 drone down in international waters. Pentagon spokesman Brig. Gen. Patrick Ryder added Tuesday that the Russian aircraft flew “in the vicinity” of the drone for 30 to 40 minutes before colliding just after 7 a.m. Central European Time.

~~対訳~~

米軍によると、ロシアの戦闘機が、アメリカのMQ-9リーパー無人機のプロペラを損傷させた後、火曜日に黒海上空で強制降下させたという。

リーパー無人機とロシアのSu-27航空機2機が火曜日に黒海の国際水域を飛行中、ロシアのジェット機の1機が意図的に無人機の前を飛行し、燃料を数回投棄したと米欧州司令部の声明が発表した。

その後、航空機は無人機のプロペラに衝突し、米軍は国際水域でMQ-9無人機を墜落させることになりました。ペンタゴンのスポークスマンであるパトリック・ライダー准将は、中央ヨーロッパ時間の午前7時過ぎに衝突するまでの30~40分間、ロシアの航空機は無人機の「近く」を飛行していたと付け加えた。

CNNより

進路妨害をしたあげくに、燃料投棄で「攻撃」をしてきたので、「仕方なく墜落させた」という文脈だが、アメリカ軍にとっては「撃墜された」という認識を示すことが重要であったので、微妙な言い回しをしている。

若干、「実際のところはどうなの」という部分はあるが、どういう風に解釈してもロシア軍がアメリカ軍に対してちょっかいをかけた、敵意を見せたという構図は覆すことは難しそうである。

RQ-9の引き上げは未だ

なお、墜落した無人機RQ9の引き上げはアメリカによっても実行されておらず、ロシア軍側が意欲を見せているというのが、冒頭のニュースである。

しかし、ロシア軍にRQ9が回収されてしまうと、アメリカからロシアへの技術流出という話が出てくる。が、それ以上に気になるのは、RQ9がロシア側に渡ることで、アメリカとロシアとの対立が激しくなる可能性がある点だ。

実際に、アメリカがウクライナに資金援助を始め、軍事的にも武器供与など大きな影響を与えているのは事実で、しかし一方でアメリカ国内ではウクライナへの援助を続けることに疑問の声も多く上がるようになっている。

ここでどのような関与があるかで、今後の展開が大きく変わってくるのかもしれない。

追記

動画が公開されたようなので、ここでも紹介しておきたい。

スゲーな。

これで、ロシア軍側が無人機に対して嫌がらせをしていたことは確定して良いだろう。ロシア軍機が無人機に接触してプロペラを損傷したかどうかは、映像からは判断が難しい。

コメント

  1. おはようございます、

    米欧での銀行破綻情報を追いかけているとき、この事件が飛び込んできて、一時マーケットは悪材料で賑わいました。

    米軍のミリー議長が昨日の記者会見で、「黒海上空への無人機派遣は”演習”」と発表していましたが、欧州米軍が飛ばした無人機の役割が、ロシア軍情報の収集であったことは言わずもがなです。

    ロシア軍は、「無人機は激しい操縦の結果、制御を失い落下した」と発表。テレグラムにロシア機から撮影されたリーパーの映像を公開しましたが、リーパーは武装しておらず、特に意味がある映像には見えませんでした。

    今回の事件は、ロシア機の攻撃にしかみえません。リーパーは公海上空を飛行していたので、ロシア機の行動は威嚇や煽りの範疇を超えているでしょう。また、この事件をうやむやにすると、支那も東シナ海や南シナ海で同じことをし始めかねないですね。

    • マーケットも動揺したみたいですね。
      アメリカとしては、どのような態度に出るべきか決めかねている感じがしますね。
      無人機とはいえ、やられたことには変わりありません。放置は出来ないでしょうね。

  2. こんにちは。

    これ、完全に「意図的なニアミス」であって、無人機側がうっかりアップ取っていたら大惨事だったでしょうね。

    ロシアのパイロット、あまりに腕も、タチも悪すぎる。
    ※ダンプした燃料かけたいだけなら、ここまで接近しなくて良い。
    ※MQ-9のエンジンはターボプロップですから、ケロシン過多の空気を吸い込んだら、良くてフレームアウト、悪けりゃエンジン火災起こしてもおかしくない。

    米軍側は、墜落前に機密ファイルは消去処理したそうですが(戦地を飛ぶ機械ですから、それくらいの備えはあるでしょう)、果たして全て消えているか……
    ※実は物理的に破壊していて、為に、墜落せざるを得なかったとか。

    もしロシアが回収したとして、実は自爆装置がまだ生きていて、回収船の倉庫に入ったところで起爆、とか言ったら拍手喝采なのですが……

    • 動画を添付しましたが、Su-27の機動はなかなか見事ですよ。
      動いている対象に向けての飛行ですから、この程度の接触なら寧ろ「腕が良かった」と言うべきかと。
      まあ、とはいえ、一つ間違えばSu-27の方が危なかったのですから、こんな行動に何の意味があるのやら。

      今後も目が離せないニュースですね。

  3. ペラ曲がってる画像出てましたしあの位置のペラ曲げるなら尾翼なんかも大丈夫だったのかなと
    イランに無人機墜とされたりイギリス機が黒海でミサイル撃たれた後は護衛付けてますから、ロシアの主張する「特別軍事作戦のライン」を超えない空域では米軍も護衛付けるんじゃないでしょうか。

    • リンクを張った動画に、ペラが曲がっている様子が映っていますね。
      確かに、どうやって接触したのか?と首を傾げる位置が損傷していて、ピンポイントでペラに接触するというのはなかなか難しい気がします。

      水深900mの黒海の底に沈んでしまったMQ-9は、どちらが引き上げるかでまた一悶着ありそうですね。