DV防止法と困難女性の支援に関する法律の話

政策

本日は、いつもとは少し異なるテイストで記事を書いていきたい。まあまあ、重い課題なのであまり興味を惹かれない方も多いと思うが、結構重要な話なので是非ともお付き合い願いたい。

さて、「実子誘拐」という言葉をご存じだろうか。

自分の子供の誘拐ということが成立することが不思議に思えるが、略取・誘拐罪(刑法224条~229条)の成立要件は、人を従前の生活環境から離脱させ、自己又は第三者の支配下に置く犯罪と定義されている。

そして、その主体要件に関する判例として、共同親権者の一方(非監護者である夫)が他方の現に監護している親権者(監護者である妻)の元から連れ去った場合にも本罪が成立する(最高裁決定平成17年12月6日)との判断が示されている。

親による「誘拐」が容認されている日本の異常

2019/07/22 6:00

隠れた誘拐大国ニッポン――。近年、夫婦が別離した際などに、片方の親が子どもを連れ去り、もう片親が会えないという問題がメディアなどで取り上げられるようになっている。実際、配偶者と別れることを考えている相談者から、子どもの親権を確実に取るにはどうしたらよいかと聞かれたら、「日本では子どもを連れて家を出るのがいちばんだとアドバイスせざるをえない」とある弁護士は明かす。

東洋経済より

で、問題視されているのは国際結婚に絡んだケースである。

このブログでは「オウベイガー」という出羽守でわのかみの方々を揶揄する事が多いのだが、外交というシーンになると、「うちはうち、よそはよそ」という理論が通用しないことが多い。

スポンサーリンク
同カテゴリーの人気記事

この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

<同カテゴリーの人気記事>

スポンサーリンク

実子誘拐ビジネス

実子誘拐が表面化した理由

で、何が起こっているのかというと、日本人が外国人と国際結婚した場合に、何らかの原因で離婚、そして日本人が子供を連れて帰国してしまうというケースで、問題視されるのである。

一方、日本で事実上容認されている連れ去りは、海外でも大きな問題となっている。6月26日、G20に先駆けて東京のフランス大使館でスピーチを行ったフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、フランス人男性3人と面会した。いずれも、子どもが日本人妻に連れ去られたと主張している父親だ。1人は、元妻から送られてきた子どもの写真を持ってきていた。写真では子どもが両手を高くあげ、父親から送られた誕生日プレゼントを持っている。ただし、プレゼントの封は開けられていないままだ。

別の父親はマクロン大統領に、去年の夏のある夜に帰宅すると、家にはベッドと洗濯機、そして自分のパスポートしか残っていなかった、と話した。2人の子どもは妻に連れ去られてしまっていた。妻は家庭内暴力を訴えてシェルターに数週間避難していたのだ。もっとも父親はこれを否定している。

東洋経済より

海外において、先進国では「共同親権」という概念が支持されている。共同親権とは、保護者の双方が子供に対する親権を有する制度である。日本において、親権者の定義は民法818条に定められている。

(親権者)

第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。

 子が養子であるときは、養親の親権に服する。

 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

(離婚又は認知の場合の親権者)

第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

e-Govより

818条に定められているのは婚姻中の親権であり、次条で定められる離婚の際には、どちらかの一方を親権者として定めなければならないという規定になっている。つまり、離婚した場合には単独親権になるというシステムを採用しているのである。

ところが、アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツなどの国々では共同親権の状態は離婚後も続くというシステムを採用している。

ハーグ条約

というわけで、国際結婚をした後にも共同親権は継続するが、それを無視して帰国してしまうと、実子誘拐という形で指名手配されることになってしまう。日本の常識とは異なっても、国際結婚をして外国に移り住んだ場合には、外国の法律に従うのは当然の話。

国際間の連れ去りの被害者はまだラッキーかもしれない。国境を越えた子どもの誘拐に対応する「ハーグ条約」があるからだ。同条約は子どもが国境を越えて連れ去られた場合、子どもを元の居住国に直ちに返還することを原則としている。もちろん母親による連れ去りも対象だ。日本もアメリカやヨーロッパ諸国からの圧力を受け、2014年に91番目の国として同条約に署名している。2014年以降多くのケースがこの条約のおかげで解決してきた。

東洋経済より

そこで条約の登場となる訳なんだけど、記事にあるようにハーグ条約:国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(1980年)によって対応することになる。

日本は、2014年4月1日に締約国となったため、条約に従って、誘拐状態の解消が図られる。

ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)

それ以前は、日本国内において誘拐に相当しない状況であるために、引き渡しを合法的に拒むことが可能だったのだが、日本がハーグ条約を批准した結果、それは非合法行為となったために、警察などの介入が可能となった。加盟国は99カ国。アジアでは日本を含む8カ国が加盟している。

何の問題もない、ハズなんだけどねぇ。

DV防止法

正式名称を「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(DV防止法)というが、法目的に「配偶者からの暴力防止及び被害者の保護を図る」ことが明記されている。

DV防止法成立(平成13年4月6日)以前は、家庭内の問題について警察は民事不介入の原則により立ち入ることが出来なかったが、立法によって行政が仮定に介入することが可能となり、DVの発生に対処可能となっている。

これ自体は必要な法律だとは思うが、この法律、少々問題を抱えている。

この法律は、申立者が嘘をつかない前提で法設計がなされている。よって、「被害者の申告」のみに基づいて措置が執られることになっている。つまり、虚偽の申し立てによって申立者保護が決定された場合に、保護命令が出てしまうと、その解消が極めて困難ということになる。

被害申立をした申立者による訴えが、配偶者暴力相談支援センターや警察に認められた場合、程度によって、接近禁止命令、退去命令、子に対する近接の禁止命令などが出されることがある。被害者に認定されれば、シェルターと呼ばれる隔離施設に身を置くことができ、接近禁止命令などによって物理的に隔離がなされる設計になっている。

そうすると、虚偽による申し立て認定されたケースでは、申立者に対する法的保護によってその嘘の立証が困難となり(事実上、反論が出来ない)、関係各所に通達がなされるために社会的にも厳しい立場に立たされることになる。

コレに関連して児童虐待防止などに関する法律(平成12年5月17日)があるのだが、DV防止法と併せて深刻な問題を抱えている。

DV防止法の問題に関してはこんな記事が紹介されているので、一読願いたい。

DV加害者にされた男性は名誉をどう回復したか
3月下旬、注目された行政に対する裁判が決着を迎えた(参考記事:「突然子どもに会えなくなる『虚偽DV』の悲劇」)。訴えていたのは愛知県在住の公務員、佐久間利幸さん(仮名、40代)。決着に至るまでの年月――…

この被害者(注:虚偽の申告によって加害者に認定された男性のこと)は、DV防止法の適用認定をした行政を訴え、なんとか勝訴した。が、離婚し、親権を取り戻すどころか、子供への面会すら叶えられてはいない。

なお、この被害者に落ち度がなかったかどうかは、記事から伺い知ることは出来ない。故に、本当に行政の判断に問題があったかどうかについても不明である。判決では、行政の手続きに問題があったという事になっているからだ。

実子誘拐+DV防止法=ビジネス展開

さて、2つの問題を取り上げたが、DV防止法に関しては国際結婚においても生じうる問題である。

「実子誘拐」解決を阻む「でっちあげDV」の深層

2021年04月27日 06:00

一方の配偶者にある日突然子どもを連れ去られ、離婚を申し立てられ、大切に育ててきた子どもとの関係を絶たれてしまう実子の連れ去り問題。「実子誘拐」とも呼ばれ、実子誘拐被害者は毎年数万人、増え続けていると言われる。悪化する要因の一つが、裁判所や法曹界、行政やマスコミなどで加害者と“グル”になっている人たちの存在だ。ある被害者らは、彼らについて「実子誘拐ビジネスネットワーク」と呼んでいる。

サキシルより

この記事も国内での事例を取り上げてDV防止法の問題点を指摘しているのだが、が以外での事例においても、こうした法律を悪用して、自らの利益を追求する方々がいることが問題視されている。

DV防止法を悪用して実子誘拐をすると、被害者は手がかりを掴むことすら困難になってしまう。正確には、DV防止法などを根拠にしたDV等支援措置を行政に行使して貰うことで、手がかりを掴むことが難しくなると言う意味である。

総務省|住民基本台帳等|配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。

総務省のサイトにはこんなマニュアルが載っている。

コレを悪用してビジネスにしている方々がいらっしゃる。そして、コレが合法だというのだから質が悪い。一部活動をしていらっしゃる弁護士の方々は、それを熟知した上でビジネスにしているのである。

「疑わしきは被告人の利益に」の原則は、被告における虚偽に立脚した訴追において適用をすると、極めて強いカードになる。ただ、裁判における原則を依頼人が嘘をついている場合にも適用することは、順法精神に反することである。弁護士は依頼人の利益を守る立場にあるが、違法な点に目を瞑ってOKというわけではないのだ。

あまつさえ、それをビジネスにしようというのだから、悪意のある行為である。

離婚後の共同親権を合法化の動き

こうした実態に即して、離婚後の共同親権を法的に認める動きが出ている。

離婚後の子育てを考える 揺れるオーストラリア

2023年3月8日

離婚の後、親が子どもをどう育てていくのか。

現在、国の法制審議会が「親権」の制度を見直すかどうか議論を進めていて、2022年11月に、父と母双方を親権者とする「共同親権」を導入する案と、一方のみの「単独親権」を維持する案を併記する中間試案をまとめました。

そもそも「共同親権」とは?制度を導入している海外はどうなっているのか?取材しました。

NHKニュースより

尤も、離婚後の共同親権が必ずしも子供の利益に繋がらないケースも多々報告されていて、外国でも本当に共同親権を継続することが良いのか?という点は議論されているようだ。

そして、離婚後の共同親権において子供の利益を害するケースの多くは、子供に対するDVであるというから、かなり厄介な問題ではある。

共同親権、今国会は見送り 賛否まとまらず、民法改正案「時期尚早」

2023年2月28日 06時00分

離婚後も父母がともに子の親権を持つ「共同親権」を導入する民法改正案について、法務省は今国会への提出を見送る方針を固めた。共同親権は別居親が子の養育にかかわりやすくなるとされる一方、家庭内暴力(DV)や虐待から逃れにくくなるとの懸念もある。自民党などの推進派は早期提出を主張し、法務省も今国会提出を視野に準備を進めていたが、結論を出すのは時期尚早と判断した。法相の諮問機関である有識者らの法制審議会部会で議論を続ける。

東京新聞より

実際に、今国会での共同親権に関する民法改正は見送られてしまった。とはいえ、反対派の懸念は真っ当なモノが多く、見送りが妥当ではあると思う。

が、外国の法制度との軋轢によって、外交問題にまで発展しているものもあるので、議論が必要であることは間違いないし、一律単独親権という現行制度には問題があるのも事実である。

困難な問題を抱える女性の支援

困難女性支援

さて、こうした問題とは別に、このブログではこんな記事を取り扱っている。

まあまあ取り扱いの難しい記事なので、あまり踏み込んで話を書いてはいないが、一般社団法人colaboという団体は、困難女性支援を公的資金を貰いながら行うという団体である。

公金チューチューするNPOが結構な数存在していて、colaboや関連団体(若草/BOND/はっぷす)についても、非難されるような事をやっていたかどうかが焦点となっている。発覚した理由はcolaboが東京都の委託を受けて行った事業の報告書の内容が極めて杜撰で、東京都がこれを決算として問題なしと処理してしまったことが問題となっている。

Colabo問題 東京都、経費192万円認めず 領収書提示拒否などで

2023年03月14日

東京都監査事務局は3月3日、「若年被害女性等支援事業」で、会計報告に不正があったとされ住民監査請求が行われていた事業委託先の一般社団法人Colabo(コラボ、仁藤夢乃代表理事)に対し、約192万円を事業経費と認めないとする都の調査結果を発表した。

~~略~~

同事業は、都が国の補助を受け、性暴力や虐待などの被害、または被害に遭う可能性のある主に10~20代の女性を支援するもので、コラボ、一般社団法人若草プロジェクト、特定非営利活動法人BONDプロジェクト、特定非営利活動法人ぱっぷすの4団体に対して都が事業委託して実施していた。

福祉新聞より

構図としては、東京都が委託した「性暴力や虐待などの被害、または被害に遭う可能性のある主に10~20代の女性を支援」に関する事業に関し、決算報告が杜撰だったので、その一部を事業経費と認めないという判断を東京都監査事務局が行った。

しかし、この判断は、単に領収書原本の提示がなされないものに限り、実際には東京都の認めた予算以上の費用をcolaboが負担していたために、委託料の過払いは無かったとして、返還請求を行わないものとしている。

ただ、DV防止法又はその関連法を悪用してビジネスをしている構造的な問題があって、政府、官庁、業界の癒着による税金の浪費が、もしかしたらcolabo問題に現れているのでは無いか?という疑惑が持ち上がってきた。

疑惑は残ったままではあるが、こうした団体の活動全てを否定する話ではない。とはいえ、税金の使い方はクリーンにして貰わねば困る。あまつさえ、そうしたビジネスの被害者が子供達という構造になっているのが非常に大きな問題である。

子供家庭庁の発足と問題の拡大可能性

さて、こういった話を放置すると、新たに発足する事になっている子供家庭庁に大きな影響を与える事になると思う。

発足時から「背水の陣」こども家庭庁の存在意義

2023/3/9 01:00

岸田文雄政権が少子化対策に本腰を入れる中、4月1日に発足する子供政策の司令塔「こども家庭庁」に注目が集まっている。出産適齢期の女性の急減が見込まれ、今後10年間が少子化対策のラストチャンスともいわれる中、実効性のある施策を打ち出せるか。同庁は発足直後から背水の陣で臨むことになる。

産経新聞より

何故ならば、こんな法律が施行予定になっているのである。

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001056014.pdf

この「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律案」は、売春防止法(これも問題の多い法律なのだが)を発展的に解消する法律でもある。

困難抱える女性の支援 売春防止法から脱却へ | お知らせ | ニュース | 自由民主党
わが党は4月1日の総務会で、性的な被害や家庭事情、地域との関係性等で日常生活・社会生活に困難を抱える女性への支援の在り方について定める議員立法「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律案」を了承した...

この法律の制定にガッツリ絡んでいるのが、上に紹介した疑惑を持たれた4団体なのである。だからダメとは言わないが、法律構成を見ると、利権化しやすい法律になっているように読める。

そもそも、何故、「困難な問題を抱える女性」だけを支援するのだろうか。確かに、弱者になりがちであるという立場にはあるが、男性を排除する必要があるのか。売春防止法も「女子」に対する補導、保護厚生を謳っている。その流れで作られているのだから、当然に「女性」を支援するのだという法律構成になるのは分かるが。

(民間の団体に対する援助)

第十九条 国及び地方公共団体は、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間の団体に対し、必要な援助を行うよう努めるものとする。

(都道府県及び市町村の支弁)

第二十条 都道府県は、次に掲げる費用(女性相談支援センターを設置する指定都市にあっては、第一号から第三号までに掲げる費用に限る。)を支弁しなければならない。

~~略~~

(都道府県等の補助)

第二十一条 都道府県は、社会福祉法人が設置する女性自立支援施設の設備に要する費用の四分の三以内を補助することができる。

e-Govより

そして、こうした団体には手厚い保護が法律で義務付けられている。ところがこれらの団体の活動について適切か否かを判断できる法的根拠は何も書かれてはいない。なんと、アンタッチャブルなのである。

度々colaboを持ち出して申し訳ないが、一例としてこんな話がある。

Colaboバスカフェ、都が「当面の間休止を」 団体側は再考求める

2023/3/15 15:08

性暴力や虐待などの被害を受けた若年女性らに対する東京都の支援事業を巡り、都が事業委託先の一般社団法人「Colabo(コラボ)」(仁藤夢乃代表)に、新宿・歌舞伎町で行う活動を当面の間の休止するよう求めていたことが15日、都への取材で分かった。

産経新聞より

このバスカフェ、10代の女性に無料で食料や衣類・化粧品・生理用品の配布を行っているらしい。

少女を性被害・虐待から救う“10代限定”ピンクの「バスカフェ」を取材した|FNNプライムオンライン
家に居場所がなく夜の繁華街をさまよう少女を性被害や虐待から守るため、ピンク色のバスを使った新たな支援活動が始まった。バスは毎週水曜日の夜に渋谷、または新宿の繁華街近くに駐車して、テントやテーブルを並べたカフェスペースをオープンする。車体と看板に書かれた文字は「Tsubomi Cafe」。ただし、カフェとはいっても利用で...

確かに、10代の家出女性が夜の街を徘徊し、犯罪に繋がるケースが見られるのは事実なのだが、こうした受け皿が逆に犯罪の温床になっているか否かはチェックすることが出来ない。何しろ、「バスの撮影、当日の差し入れ、スタッフへの挨拶は禁止で、見学も10代以外は不可」ということになっている。

そして、子供家庭庁の設立によって、こうした団体への大幅な増額が予定されている。

ここでもDV防止法

で、支援法に関するニュースについて、毎日新聞が記事をかいているのだがこれまた香ばしい。

66年変わらぬ「売春防止」から脱却 新たな女性支援法が必要な理由

2022/2/17 15:00(最終更新 2/17 16:20)

DVや性暴力、貧困などに苦しむ女性を支援する「婦人保護事業」の見直しに向け、超党派の国会議員が、今国会で新法案の提出を目指している。事業の根拠となってきたのは売春防止法(売防法)だ。新法が成立すれば、売防法による女性保護の政策が根本的に変えられる。なぜ今、新法が必要なのか。困難を抱える女性の支援を巡る課題を追った。

毎日新聞より

売春防止法に問題があったのは事実である。

何しろ、基本的には春を売る側を取り締まる法律で、買春(買う側)は基本的に罰則対象にしていない。未成年の売春に関しては、児童売春・児童ポルノ禁止法によって規制される。

そうすると、買う側はずっとのさばる結果になるので、結果的に売春をなくすことが出来ないという構造になってしまう。

だから、困難な問題を抱える女性に対しては無制限に支援を行いますよ。売春する女性は消えて無くなりますよ。というロジックの法律を作る話になっている。

そして、前述したDV防止法を悪用すると、これまた女性側の申告のみで保護対象が決定されてしまう。

新規団体お断り

何とも恐ろしい構図になるのだが、それでも支援団体が善意で活動しているうちは機能するのである。そして、そこを担保するためにこんな話が。

民間団体支援強化・推進事業の実施について

令和4年3月29日

女性が抱える困難な問題において、多様化・複合化、複雑化が見られる現状を踏まえ、特色や強みを活かしながら、多様な相談対応や自立に向けた支援を担う民間団体による地域における取組みを推進するため、今般、別紙のとおり実施要綱を定め、令和4年4月1日から適用することとしたので、その適正かつ円滑な実施を期されたく通知する。

~~略~~

4 留意事項

3③の民間団体立ち上げ支援事業について、若年被害女性等支援事業の対象となる事業については、本事業の補助対象外となる。

厚生労働省のサイトより

これ、民間支援団体支援強化・推進事業に関する通知で、各地方自治体に出された文書になっているのだ。ところが、「民間団体立ち上げ支援事業」は補助対象外となっている。

新規に事業をする場合、地方自治体は補助できない構造になっている。

そうすると、新規に事業を立ち上げたい場合には、既にノウハウを持っている民間団体の指導を独自に受けなければならない。一見さんお断り制度になってしまっているのだ。

そもそも、多額の予算を投じて税金を使う場合に、最初から適切な使い方をしているのかという第三者のチェックできない構造にしているというのは、如何なモノだろうか。女性の支援を謳いつつ、実は困難な女性を食い物にし、DV防止法を悪用して子供の利益を害する。法律の立て付けが問題で、それが分かっているのに放置されている実態は、改善されねばならない。

そして新規立ち上げしたい団体は、既存組織にアクセスしないと事業開始すら覚束ない。当然、既存組織の「善意」を前提にした話であるから、どうなるのか。少なくとも外部からは中身の見えない状態で補助金を垂れ流す状態になり得る構造を放置してはならないのだ。

繰り返し言うが、救済されねばならない人々は多数いて、そうした人々の救済を掲げる既存団体の善意を否定する気は無い。が、法律を悪用する人々は確かに居るのだ。そこに目を瞑って公金投入というのは、やはりあってはならないと思う。団体の健全性を担保する仕組みまで、導入して欲しいものである。

追記

文中、説明しきれない部分があったので、補足しておく。

コメントで頂いていた「DV等支援措置法」について。

文中で用いた「DV防止法」(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)は、DV等支援措置を講じる上での根拠法の1つという位置づけとなる。

総務省|住民基本台帳等|配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。

文中に追記させて頂いた総務省のサイトの説明と共に、行政での取り扱いについても1つ引用しておきたい。

虐待・DV 家族に住所を知られたくない人のために

記事公開日:2021年08月17日

家庭内の苦しい関係から逃れるために引っ越した人にとって、家族に現住所を知られないようにすることは、安心して生活し、心の回復をしていくためにとても大切です。そのため、各自治体の役場では、本人以外が住民票の情報を請求しても開示しないようにする「支援措置」という仕組みがあります。しかし、支援措置を希望する人が窓口に行っても、役場内でルールが周知されていなかったり、事態の切迫性が認識されていなかったりするために、手続きができないばかりか、やりとりのなかでトラウマを喚起される「二次被害」が続発しています。

NHKニュースより

ちょっと記事のテイストに問題点を感じるが、支援措置を受けられる旨の説明と、それが実際にはそれなりにハードルがある旨の指摘がなされている。

で、こうした「支援措置」の対象になるのは、配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者であり、根拠法としてDV防止法、ストーカー規制法、児童虐待防止法が挙げられ、これらに準ずる行為として首長が認めた場合には、DV等支援措置を講じることが出来るという条例が定められているケースがある。

おそらく、コメント頂いた方の意図としては、これらをひっくるめたモノを指して「DV等支援措置法」としているのだと思われる。

この点、僕の勉強不足で、他の法域まで確認しておらず、条文ベースではDV防止法の確認のみに留めているため、「DV等支援措置法」と読み替えて頂けるのは結構だが、確認できたのはDV防止法までだよという理解でお願いしたい。

尤も、実子誘拐の話に踏み込む場合、おそらく児童虐待防止法まで読んでおくべきであったと思うので、その点は反省して今後に生かしたい。

コメント

  1. 書いてくださる内容は至極真っ当なんですが、じゃあなんで厚労省のパブリックコメントの期限を大きく過ぎてから記事にしたのかって意味では情報の鮮度が遅いと感じますね。
    ちなみに私は情報公開・透明性の担保が不十分と生活保護の適用拡大が妥当という根拠で反対の意見を送っておきました。

    • パブコメの前に問題提起出来なかった点に関しては、言い訳の余地がありません。
      その時点では僕自身もそのような法案が出ていることに気がついていませんでしたから。

      意見提出お疲れ様です。
      僕自身も時折、パブコメに参加する機会はあるのですが、もうちょっと積極的に関わっていければ良いと、反省する次第です。

  2. とうとう問題化する時代となりましたか。コレ、80年代に米国で頻発していた
    チャイルド・スナッチ問題ですよね?
    親権ない側の親が子供を連れ去り、奪われた側の親が私立探偵を雇い追跡するのは、80年代のアメリカン・ハードボイルドで流行していたネタです。
    有名なのはハヤカワ文庫のロバート・B・パーカーの「初秋」かな。
    「お前の二親は二人ともクズだ。ならばお前が生きる力を持つしかない!」
    探偵が拐われた少年を鍛える一夏の小説でしたが。実は北方謙三とか船戸与一とか、海外を舞台にした冒険スリラーを書く作家たちは、日本人の国際結婚が増える21世紀には、コレが普遍的な問題になってくると予言してました。
    あまり作品化されてないのは、2000年代まで国際結婚は、シナや南小中華、フィリピンなど、裕福ではない途上国の女性とのものが大半だったからです。
    ゴルゴ13も扱っていた気がしますが。
    で、男女を問わず日本人は、子供(幼い場合)を自己の所有に捉える傾向があって、いずれ文化的な違いから、その種の係争が頻発するとは言われてたんです。
    実際、数年前からネット界隈でニュースに出る事があったですしね。
    ある意味で私は、イスラエルのキブツでしたか……寄宿舎で家庭トラブルある子を教育するシステムや、フランスの軍に青年を入れ、軍事訓練の代わりに職業訓練をほどこすシステム……ああいうのが有効と想うんです。だって初秋の探偵が言うように、親がダメなら子供を強くするしか解決はないではないですか!
    少年院の教官だか刑務官だかの方に施術して話を聞いた事があるんですが、集団で強制装置による方法しか、まともな家庭の無い子は救いようがないと想うんですよ。少年自衛官制度とか活用できんものですかねぇ?
    マンガ家で自民党議員にもなった本宮ヒロシ氏は少年自衛官だったし。北斗の拳の原作者の武論尊氏は、本宮氏と同営の少年自衛官でした。軍隊教育がいかんと言う説が左巻きに強いですが、数々のヒット作を生み出したクリエイターが、
    リベラルな親の元で育った訳ではなく、
    集団教育の現場から産まれている事実は、人の社会的な視野は、厳しい環境下でも開花する事を表していると想うです。自由な環境下でないとクリエィティビリティが育たんてのは、左巻きの幻想ですよ。

    • チャイルド・スナッチ……。確かそんなタイトルの小説がありましたね。
      その手の作品は読んでいないのですが、両親の都合で子供が不幸になるというネタは、いつの時代にもあるネタとはいえ、やりきれないですよね。

      両親から引き離して子供を育てると言うことに関して、「その必要がある」と誰が判断するのかという問題をクリアできれば、社会的なシステムとして考えるべき課題なのかと思います。実際のところ、義務教育がある程度その役割を果たすと期待されていたハズなんですが、今やそういう機能を期待するのも難しい風潮になっています。
      自衛隊の教練課程は期待できるようには思うんですが、自衛隊にアレコレ押しつけてしまうのは、正直、オーバーワークだと思います。
      やはり教育に力を入れるのが正しい道だと思うのですけれどね。

  3. こんにちは。

    以下、書き殴りのような感じなりますが……
    ①国際結婚からの離婚に伴う親権と誘拐について:
    国家として、そのような訴えが諸外国から成された場合、国際法に照らして、「事情のいかんを問わず」被疑者を引き渡すべきと考えます。
    同時に、このような事態に至った経緯を「包み隠さず」公表し(プライバシーは考慮しますが)、「安易な国際結婚」に対する警鐘を鳴らし、「日本と諸外国の認識の違い」についての啓蒙を行うべきと考える次第。
    それでも軽い気持ちで国際結婚し、訴えられるヤツは……国から放り出して良いでしょう。
    ※子供が可哀想ですが、「大を救うには小を殺す」判断を、国というか政治家にはしていただかないといけないかと。

    ②バスカフェその他
    会計の不正から、東京都の承認のザルさ、提出した書類の偽造など次々ボロが出ている印象なのですが、どうにかして小池百合子に味噌を付けて、ああいった「無能な働き者」が首長に納まるのにも警鐘を鳴らしたいものです。
    ※「無能な働き者」ではなく「故意の破壊主義者」かも知れないのが何ともはや。少なくとも、神宮と葛西とその他の森林伐採は、当方の逆鱗に触れております。

    • 国際結婚からの離婚に関しては、文化に馴染めないということだけでなく、人権意識の差から離婚に至るケースも考えられます。
      そうした時に、現地で頼る相手のいない状況にて、独力で問題解決しろというのはなかなかにハードルが高い。もちろん、そういうケースも想定したうえで結婚しろという話なんですが、精神的余裕の無い中で判断を誤ったケースはあるのでは無いかと。つまり、情状酌量の余地はあると思うのですよ。
      まあ、逃げ帰ってきて対応しないという事を考えると、かなり問題ありだとは思いますが、詳しいコーディネーターによる救済措置はあっても良いと、そう思います。ただ、そういう女性を食い物にする仕事をされている方がいるんですよねぇ。善意だと言いつつ、ビジネスしているあたり悪質だと思います。

      バスカフェ絡みの話は、おそらくは民間に丸投げしていた状況で、騒ぎが大きくなって慌てて対応したというところで、会計関連に関しては組織内で隠蔽工作を画策しているのではないでしょうかね、自己弁護の為に。

      このビジネスは、なんと潰したいところですね。

  4. 実子誘拐について取り上げていただきありがとうございます。
    一点ですが、文中の「DV防止法」の件は、「DV等支援措置」のことかと思います。
    DV防止法に基づく保護命令は、裁判所での弁明手続きがあるため利用例はあまり多くありません。
    一方、DV等支援措置は、裁判所も関与せず自治体への届だけで悪用できるため、DV防止法の代わりに多用されています。
    DV等支援措置は法律ですらなく、総務省から各自治体への通達でしかありません。
    法律を越えた通達で運用されており、法治国家の体を成していない状況です。

    • DV等支援措置の乱用ですか。
      通達を役所が悪用してくることは、割とあるので珍しくはないのでしょう。ですが、冤罪の当事者になってみるとこんな理不尽なことはないわけで。
      保護する対象には安易に適用可能にすべきという判断は分かりますが、不適切な運用を生みかねないというのは、困った点ではあります。
      「法治国家の体をなしていない」と、強い言葉を発するのは適切ではないようには思いますが、運用が不適切だったときのフォローまで考えられていない実態は、看過出来ないですね。