欲しいのは分かるんだけど、購入は可能なのかな。
豪、米原潜最大5隻を購入か 2030年代と報道、中国に対抗
2023/03/09
ロイター通信は8日、オーストラリア政府が米英豪3カ国の安全保障枠組み「AUKUS」の合意に基づき、2030年代に米国のバージニア級攻撃型原子力潜水艦最大5隻を購入する見通しだと報じた。複数の米当局者の話としている。インド太平洋で海洋進出を強める中国に対抗する狙いがある。
共同通信より
計画では、2030年代前半にバージニア級潜水艦を3隻購入し、2隻追加購入を検討しているのだとか。
うん、欲しいのは分かるんだ。
本当にバージニア級を入手可能なのか
アタック級潜水艦をキャンセル
オーストラリア海軍の保有する潜水艦として有名なのは、コリンズ級潜水艦である。
1996年に就役したコリンズ級潜水艦は、海軍の中でもかなり不評だったらしく、設計の段階から不評だったが、運用に支障が出るほど問題があった。未だに運用に問題が残っているようで、近代化改修計画もあるのだが。
そうした状況であったために、後継艦の取得が計画された。それがアタック級潜水艦である。
日本の三菱重工が名乗りを上げたことでも有名になったが、結果的にはフランス企業のDCNSが受注。オーストラリア国内で潜水艦を建造する話になった。それがアタック級潜水艦で、12隻建造されるはずだったんだが……。結果からいうと、1番艦が出来る前に計画がキャンセルされてしまった。
このキャンセルの原因は、様々な理由が囁かれているが、割とどうでも良い。問題は、コリンズ級潜水艦の後継艦が消えてしまったことなんだな。
AUKUSがスタート
キャンセルの要因となったと言われているのがAUKUSだ。
オーストラリアがアメリカとイギリスと組んで、原子力潜水艦を手に入れるということにする枠組みなんだけれども、今から計画スタートすると完成までには10年も20年もかかる。オーストラリア国内で作るなんて話になれば、実現可能かすらも怪しい。
オーストラリアがアメリカとイギリスと組むという話は、防衛戦略として考えると意味のあることではあるが、米英との共同開発の次期原子力潜水艦8隻というのが一体どこに行ってしまうのかは、今のところ明らかではない。
で、具体的な話として出てきたのが冒頭のニュース。これが、繋ぎで購入するのか、新開発の潜水艦に相当するのかは不明ではあるが、新しく開発するよりは実現性は高い。
高いんだけど、アメリカ海軍は怒っているんじゃないかな?
実は、アメリカ海軍でも潜水艦が足りていないのだ。
潜水艦をよこせ!
えーと、先ずはこちらの記事。
Navy frustration building over late weapons, ship deliveries
Thursday, Jan 12
ARLINGTON, Va. — Exasperation is growing over the U.S Navy’s inability to get missiles and weapons delivered fast enough to keep its own magazines full, let alone offer more assistance to Ukraine or other partners in need, several leaders said at this week’s annual Surface Navy Association conference.
~~対訳~~
ヴァージニア州アーリントン – 米海軍は、ウクライナや他のパートナーへの支援はおろか、自国の雑誌を充実させるためにも、ミサイルや武器を迅速に届けることができないことに苛立ちが高まっていると、今週開催された水上海軍協会の年次会議で複数の指導者が述べた。
DefenseNewsより
分かりにくい言い回しだが、要はアメリカ海軍には武器が足りていないよという怒りの声だ。
The Navy is buying two submarines a year, but industry is only delivering at a rate of 1.2 a year.
~~対訳~~
海軍は年に2隻の潜水艦を購入しているが、産業界は年に1.2隻のペースでしか納入していない。
DefenseNewsより
特に潜水艦の調達が遅れていて、5年間で10隻納入されるはずだったバージニア級原子力潜水艦は、6隻しか納入されていない。そして、オーバーホール作業もスケジュール通りに進行しておらず、記事の時点で19隻の潜水艦が整備中か、整備待ちの状態になっているという。
防衛産業界のキャパシティは、以前から不足気味になっていたのだけれど、ウクライナへのロシア軍侵攻によって、兵器の増産が求められている結果、更にその供給スピードが落ちてしまったと言うことらしい。
似た記事は去年の2月にも出ていた。
Submarine maintenance backlogs and delays take toll on fleet’s development work at sea
Feb 17, 2022
SAN DIEGO, Calif. — The U.S. Navy attack submarine force inventory is at a low, and maintenance backlogs are making it harder to conduct important development work, the commander of the submarine force in U.S. Pacific Fleet said this week.
~~略~~
Additionally, Jablon said in FY21 the fleet lost the equivalent of 3.5 submarines to repair periods that ran longer than planned.
“That’s about seven and a half SSNs that I cannot use last year because of awaiting maintenance or maintenance delay,” he said.
Even with that smaller fleet, he told Defense News, “we meet all our operational commitments. We’re able to ensure that our ships are combat ready when they deploy. We meet the requirements of our combatant commanders that are placed upon us.”
DefenseNewsより
こちらの記事も、メンテナンスの遅延で使える潜水艦が減っているということが書かれている。
支那に対抗するためにはバージニア級潜水艦入手は有効だが
こうしたニュースを勘案すると、オーストラリア海軍がバージニア級潜水艦を入手するのはちょっと難しいんじゃないか、と。
確かに、支那に対抗するという意味では、アメリカからバージニア級潜水艦を購入するというのは非常に魅力的な話だ。それが実現可能であれば、だが。
まあね、まだ先の話なので、アメリカ兵器産業のラインが拡張されれば、或いは供給可能なのかも知れないけれども、別のアイデアを考えた方が良いのかもね。
え?日本の「そうりゅう型潜水艦」を退役させて供与?それも現実的じゃないなぁ。日本の潜水艦製造能力も高くはないんだ。性能は高くても、沢山は作れないんだよね。可能性があるとすれば、「おやしお型潜水艦」を退役させて供与する線かな。オーストラリア海軍は欲しがらないだろうけど。
アメリカ海軍から退役潜水艦を貰うというアイデアもあるとは思うけど、原子力潜水艦の供与は難しいんだよな。燃料入れ替えのメンテナンスが結構手間がかかるから。
追記
コメントを貰って、はて、以前にどこかで書いたような?という気になったので記事を探したらあった。
引用しているのは毎日新聞の記事だが、日本の潜水艦にVLSを搭載するのは既定路線のような感じでの記載になっている。
海中に潜む潜水艦は他国に位置を把握されにくい。いざとなれば海中からも反撃できる能力を持つことで、抑止力を格段に向上させられると判断した。
搭載するミサイルは国産の地上発射型ミサイル「12式地対艦誘導弾(12式)」の射程を1000キロ超に伸ばした改良型や、米国から購入する巡航ミサイル「トマホーク」など外国製の長射程ミサイルを想定している。潜水艦からの長射程ミサイルの発射は、主に水平方向に放つ魚雷発射管を使う方法と、船体の上部から撃ち出せるVLSを使う方法の二つがあるが、VLSの方が多数の発射が可能なことからVLS方式を採用。大がかりな装置となるため、新造を含めて検討する。
毎日新聞「政府、ミサイル垂直発射型の潜水艦整備へ 海中からの反撃能力行使も」より
そして、この時は、VLS搭載するなら12セル以上のデカい艦にして!と、要望を書いた。しかしそうすると、速力が必要なので、必然的に原子力潜水艦の検討をする必要があろう。
つまり、AUKUSではなくJAUKUSにする計画を、発動しなければならない。
で、そのために必要なのが何かというと、スパイ防止法ということになる。色々法整備が必要だね!だが、AUKUSに日本が加わるとなれば、オーストラリアの原子力潜水艦の入手というのも別のルートを開くことになる。防衛装備品の輸出に関しては、アタック級潜水艦入札の時にも随分と話が出ていた。
ここは、計画に乗っておくべきなのではないだろうか?岸田氏なら、出来るぜ。何しろ、防衛関係の話に限って言えば、歴代総理大臣が誰一人として成し遂げられなかったことを次々と実現している実績がある。それは、過去の総理大臣の遺産を食いつぶす行為に映るかも知れないが、紛れもない岸田氏の実績としてカウントして良いと思う。
コメント
こんばんは。日本も持てないですかね? ミサイルを水中発射できる奴を。
持てれば、それを何隻か日本海などに沈めておけば、核を保有していなくても、
「万一に核を搭載している可能性」に、シナや南小中華はビビると想うんですよ。リスクを考えて、簡単には日本を脅す事が出来なくなるかと。
そういえばそんな記事も書きましたね。
追記で紹介して見ましたので、参考にしてください。
こんにちは。
そこでAIですよ!
操艦はAIに任せて、メンタルモデルにイオナと名付けて、艦番はもちろん401で……失礼しました。
実際問題、通常兵器をVLSに仕込んで日本海(だけじゃなくて東シナ海でもいいのですが)に潜んでも、それほど脅威ではない(破壊力が足りない)ので、やはり兵器も核、したら推進力も核、でないと戦術戦略的に意味を持たないですよね……抑止力としては。
岸田が、そこまで戦後のパラダイムをぶち壊してくれるなら、支持するのもやぶさかではないですね。
岸田の決まり文句が「文句を言うヤツは増税だ!」だけでは、ちと、キャラが弱いので(違
七面鳥様〉
あっ、そう使うのか! なるほど!
そこでAIサブマリン登場か。なるほど!
AI制御型原潜なら何年でも海底に潜める。人間いらない!
いや、お見それしました。
うん、そこもでやってくれるなら岸田首相でも良いです。
アルペジオ……。
いや、そこはナデシコでは?
ま、まあ、さておき。やっぱり潜水艦にVLS積むなら原潜にしたいですねぇ。そして、そうだとすると核弾頭が。
まあ、何にせよ、一気にそう言った課題を解決するのは難しいので、先ずはVLSでしょうか。
それとも、ドローン型ということも考えられますが、それなら魚雷や機雷でもOKという話になりそうな気も。
聞いた話ですが、現行6隻あるコリンズ級は耐用限度はまだ先ですが、故障が多く、戦力不足なので、今後コリンズ級を改修するにしても豪海軍はたいそう不満であるとか。
方や、支那の紅皇帝が2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍に指示を出したらしいですし、南太平洋諸国への浸透工作も軍民併用で進んでいるようです。
豪州は潜水艦事業に関しては、おそらく舞台裏で支那に工作されていたのだろうなぁと思っています。
コリンズ級潜水艦、6隻あるのに1隻しか使えないような事態に陥ることもあるようで。
オーストラリア海軍としては、信頼性の低いコリンズ級潜水艦はなんとか早く更新して欲しいハズ。
しかし、結果として延命するしかない状況なんでしょう。
支那の影響工作も確かにあるとは思いますが、オーストラリアはそもそも工業力が低い国ですから、自国で作ろうという決意は素晴らしいのですが、ちょっと計画に無理があります。そこが問題なのかと。