スポンサーリンク

泰栄建設の債務再編計画に韓国政府が介入

大韓民国ニュース
この記事は約8分で読めます。

この話、とうとう韓国政府が出てきたな。

韓国政府が市場安定化の方針、泰栄建設の債務再編計画を受け

2023年12月29日午後 1:02

韓国の崔相穆・経済副首相兼企画財政相は29日、中堅建設会社の泰栄建設の債務再編計画を受け、早急の市場安定化策が必要になれば政府は韓国銀行(中央銀行)と協力して対処する方針を表明した。

ロイターより

一企業の債務再編計画に政府が介入しなければならないほどの事態というのは、なかなか大変だね。

っと、少しコメントの返信や記事更新が滞る事態になっておりまして、ここ一週間ほどは更新できないかもしれません

PFの悪夢

PFの不良債権化

えーと、この件、去年末にこんなニュースとして報じられてきた。

泰栄建設がワークアウト申請間近か、建設大手もPFの不良債権化で危機

Posted December. 28, 2023 08:27, Updated December. 28, 2023 08:27

請負ランキング16位の泰栄建設が不動産プロジェクトファイナンス(PF)の不良債権化により、早ければ今週中にも「ワークアウト」(企業改善作業)を申請する可能性が高まっている。不動産PFの不良債権化への懸念と建設費の高騰で上場建設会社55社のうち17社は負債比率が200%を超えるなど、泰栄建設をはじめとする韓国国内大手建設会社も財務構造の悪化に直面し、建設業界の危機が経済全体に広がりかねないという懸念が出ている。

東亜日報より

この記事でのポイントは2つ。1つは泰栄建設は韓国の不動産開発業界で中堅処であること。もう1つは、不動産PFの不良債権化が問題になっているということだ。

トップ企業が債権問題を抱えているというのではなくて、中堅処が破綻するという話なのだから、建設業界を整理縮小する機会なのでは?と思うわけだが、今回の話は、巨額の融資が焦げ付くことと、それが不動産PF債に起因することが問題なのだ。

韓国信用格付け会社によると27日、今月までに泰栄建設が返済しなければならない融資額は3956億ウォンに上る。来年は総額3兆6027億ウォンの偶発債務が満期を迎える。

東亜日報より

今月までに返済しなければならない融資額は400億円規模、来年は3,600億円規模か。一企業での負債としては結構大きな額だね。

プロジェクトファイナンスはプロジェクトが成功しないと資金回収ができない

ここでプロジェクトファイナンス(PF)とは一体何か?ということなのだが、みずほ銀行のサイトの説明を引用しよう。

一般的なプロジェクトファイナンススキーム図のイメージ図
  1. スポンサーが出資を行い、借入人となるプロジェクト会社を設立します。
  2. プロジェクト会社は、業務遂行にあたり、プロジェクト関係者と各種契約を締結します。
  3. プロジェクト会社は、銀行団と融資契約を結び、プロジェクトの建設・運転資金等の融資を受けます。
  4. プロジェクト会社は、プロジェクトの事業より生み出されるキャッシュフローから元利金の返済を行います。
MIZUHOのサイトより

今回韓国で問題になっているのが不動産PFで、簡単に言うと「不動産PFは事業の生み出す将来の価値を見込んで資金を前もって借りる」という商品だ。

利益の前借りというのは、リスクの高い商品であることを意味しているのだが、通常の場合はこのリスクは正確に見積もられれば、プロジェクトが失敗したとしてもさほど問題にならない。

不動産PF債の悪夢

では何が問題なのか?といえば、2022年のレゴランド・コリアの問題と酷似した構造だといえば、分かって貰えるだろうか。

2022年にはテーマパーク「レゴランド・コリア」のデベロッパーがデフォルト(債務不履行)に陥ったことによる不動産債務危機が韓国市場を揺さぶり、企業の借り入れコストは一部で約10年ぶりの水準に跳ね上がった。当時は当局が市場を支える措置で危機を食い止めた。だが、23年7月には、不動産関連融資の損失への懸念からMGセマウル金庫で預金流出が起き、プロジェクトファイナンスを巡る懸念が再燃した。

Bloombergより

レゴランド・コリアの問題は、春川市に建設されたレゴランド・コリアが集客難によって運営が上手く行かず、テーマパーク完成後に周辺の土地の売却益で工事費を得るという目的が達成できなかったという不幸な面はある。

なにやら、埋蔵文化財が発見されたことで、土地の売却目処が立たなくなったらしい。

この埋蔵文化財問題は確かに不幸ではあるのだが、そもそもレゴランドという施設が集客力の小さい傾向にある。日本にもレゴランドは存在するが、コアなファンがいるとはいえ、低年齢向けの設備だけにディズニーやUFJと比肩するような集客力はないのが実情だ。

つまるところ、レゴランド・コリアのデベロッパーは見通しが甘かったのである。しかしこれを強行したのは江原道知事で、不動産PFの保証も地方行政が担うような格好になっていた。ところが、レゴランド・コリアの運営主体であるマーリン社が不渡りを出した時に、江原道知事は掌を返して「知らん」と言い放った。で、事実上のデフォルトに陥ってしまったと言うわけだ。レゴランド・コリアの信用を担保するのが江原道の関与だったのだが、これが無かったことになった。

詐欺みたいな話である。

スポンサーリンク

根本的な問題

韓国電力問題

とはいえ、これは韓国電力の債権発行問題も絡んでいるだけに、韓国政府にも責任がある。韓国電力は電気代の赤字を穴埋めするために、電気料金値上げを韓国政府に打診したが、韓国政府はこれを拒否。韓国電力はその赤字を埋めるために債権を乱発していた。

値上げできない韓国電力、債券発行72%増やす…韓国金融市場に暗雲

2023.04.06 13:00

資金調達に行き詰まる韓国電力が債券(韓電債)の発行を増やせば金融市場が不安になりかねないとの懸念が出ている。政界で電気料金引き上げを防いだのに伴う否定的効果だ。

中央日報より

その結果、クラウディングアウトが発生し、レゴランド・コリアのコマーシャルペーパー(CP)の買い手がつかない事態に陥った。

レゴランド・コリアの見通しも甘かったし、債権者の投資のやり方に問題はあったが、一番大きな問題は運営危機に陥った段階で、お金が確保できないことにある。

遅延率は1年で2倍

こうした状況は、あちらこちらで発生。そりゃ、バンバンと韓国電力が債権を発行し、この債権は政府保証がついている。

そうすると、一般企業は資金調達のためには、もっと利率の高い商品を用意しなければならなくなる。

韓国で強まる「不動産PF危機説」…貸付延滞額、延滞率ともに1年で2倍に

登録:2023-12-26 00:43 修正:2023-12-26 09:47

韓国の5大銀行の建設業に対する貸付の延滞額と延滞率が1年の間に約2倍に跳ね上がっている。高金利が長期化し、不動産市場の低迷と原材料価格の上昇が続いていることで、テヨン建設をはじめとして、営業活動のキャッシュフローの悪化で流動性の危機にさらされる建設会社が増えている。政府はついに最近、不動産プロジェクトファイナンス(PF)事業所に対する「秩序ある調整」に着手したが、年末年始を迎えて軟着陸できるかどうかをめぐる懸念は高まりつつある。

ハンギョレより

要は、この話は泰栄建設だけの話ではなく、あっちこっちに飛び火する可能性が高いのである。そりゃまあ、韓国電力に問題があるのだから、クラウディングアウトの影響は多数の不動産開発業に及ぶ。

実際に、遅延率は1年で2倍である。

更に、政策金利は高止まりしている状況が続くので、資金繰りに困る。

韓国中銀、金利据え置き 現行政策の長期維持を示唆

2023年11月30日午後 2:13

韓国銀行(中央銀行)は30日、政策金利を3.50%に据え置いた。インフレリスクを回避するため、政策金利を長期間現行水準に据え置く可能性を示した。

据え置きは7会合連続。ロイターがエコノミスト36人を対象に実施した調査では全員が据え置きを予想していた。

中銀はインフレ予想を2.4%から2.6%に引き上げた。経済成長率予想は2.2%から2.1%に引き下げた。

ロイターより

アメリカの政策金利が下がらない限りは、韓国の中央銀行としても簡単に金利を下げることができない。つまり、一般企業は債権を発行した場合に、高い利率を設定しなければならないのである。これで事業が順調であれば問題はないんだけど、韓国の不動産業がバブルの影響で左前なので将来的な展望がない。

スポンサーリンク

連鎖倒産を防ぐには

で、韓国政府はどのように動いているのかというと、取り敢えずは銀行に「助けてあげて」と働きかけることと、債務再編計画を第三者を入れて実施すること、を決めたようだ。

泰栄建設の債務はプロジェクトファイナンス(PF)関連を含めて総額4兆5800億ウォン(36億ドル)に及ぶ。同社は28日に債務再編計画を明らかにしていた。

ロイターより

だが、泰栄建設を救ったとしても問題は解決しない。政府介入によって債権者を救う話を持ち出しても、無限に救済することはできないからだ。

住宅産業研究院のキム・ドクレ主任研究委員は「建設業は後方連鎖効果が大きいため、建設業界が動揺すれば実体経済への打撃は避けられない」として「今回の危機が建設会社の連鎖倒産など深刻な事態に発展することを防ぐためには、不動産市場の正常化のための規制緩和が急務だ」と話した。

東亜日報よ

連鎖倒産を防ぐための手を打つことは必要で、その為の政策をうつ必要がある。だが、規制緩和してもねぇ。

韓国、住宅価格の再下落が懸念材料

2023年10月26日

韓国では、不動産規制の緩和によって住宅価格が下げ止まっているものの、国内外の要因から再び下落する可能性が高い。住宅価格の下落は、逆資産効果などを通じて景気を下押しする恐れがある。

~~略~~

住宅価格の下落を懸念した韓国政府は、価格の急落にブレーキをかけるため、2022 年末から不動産規制の緩和措置を講じている。主な措置として、①住宅購入者に対する融資規制の緩和、②住宅所有者への減税、③住宅供給拡大策の実施、④賃貸事業者への税制支援が挙げられる。こうした住宅市場の需要と供給の両面から手厚い支援を実施した結果、本年 8 月の住宅取引件数は前年同期比+18.1%と 2 カ月連続で 2 桁増となった。また、9 月の住宅価格は前月比+0.1%と小幅ながら上昇し、住宅価格の急落は一服している。

日本総研より

この日本総研のレポートにもあるのだが、去年実施した不動産規制緩和措置は、一定の成果を上げた。だが、構造的な問題があるから長続きしないと指摘している。

正直、現状ではあまり良い材料がないのが韓国の実態だけに、しばらくは苦しい状況が続くのだと思う。これで、5月の選挙に与党が負ける事態になると更に状況が悪化する。下手をすれば、ユンユンは弾劾裁判を喰らって辞任に追い込まれるかもしれないのである。

韓国の先行きは、暗いねぇ。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >ここ一週間ほどは更新できないかもしれません。

    義務ではないのですから、お時間の許す時に、ごゆるりと……

    ……にしても、韓国のPFは、まぁ酷いもんですよね。

    >トップ企業が債権問題を抱えているというのではなくて、中堅処が破綻するという話

    トップが破綻しない、とは誰も言ってないんですよね……

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      いやー、お返事が遅くなりました。
      まあ、無事に帰ってきましたので、また宜しくお願いします。

      PFでトップが破綻、あるでしょうねぇ。133.1兆ウォンのうち71兆ウォンが不良債権化すると予想されているようで。

  2. アバター 砂漠の男 より:

    韓国人の発想はギャンブラーや893のそれと同じ。
    PFのスキームは、たとえて言えば、競馬のギャンブラーがレースの賭け金から得られる予想賞金を担保に、金融機関から賭け金を借りるようなものだ。素ってしまえば後には借金しか残らない。こんな金融商品は、日本では金融監督庁が認めない。
    みずほFGがこんなところに投資しているなら、預金者は預金を引き揚げたほうがいいね。
    むしろ、みずほFGはどうするんだ?

    • 木霊 木霊 より:

      みずほFGはまだ手を引く気はなさそうなんですよね……。
      あんな賭ケ狂イ国家……(失礼

      まあ、なるようにしかなりませんよね。
      どこかで徳政令が。

  3. アバター 匿名 より:

    韓国経済は、詐欺とギャンブルで出来ている。
    この言葉が真実か間違いか?

    • 木霊 木霊 より:

      欺された方が悪いというのが、大陸の考え方ですからねぇ。
      半島もそれに準ずるのでしょう。