日米で軍民デュアルユース連携へ

外交

方向性としては良いと思うんだ。

軍民デュアルユース連携、日米首脳会談で一致へ…日本の民生技術で抑止強化

2023/01/11 05:00

日米両政府が、民用と防衛の双方で活用できる「デュアルユース(両用)」技術を巡る連携強化に乗り出すことがわかった。岸田首相とバイデン米大統領が13日にワシントンで行う日米首脳会談で一致する見通しだ。中国との覇権争いに向け、米側には日本の民間技術力への期待が高く、無人機や人工知能(AI)、量子技術などでの協力が想定されている。

讀賣新聞より

これ、まだ「予定」で、実際に決まるのは1月13日の日米首脳会談で、という事になっている。だが、会談が決定した時点で、会談で取り扱う話題は概ね方向性が決定しているので、報道に出た時点で結論も決まっていると考えて良いだろう。

余り人気のなさそうなニュースではあるんだけど、本日はこの話題に軽く触れておきたい。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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結局は軍事技術開発への途を拓くってこと

デュアルユースって?

改めて説明するのも烏滸がましいとは思うが、大切な部分なので説明しておきたい。

日本のロケット成功ゼロ 昨年、18年ぶり 後継機開発難航 イプシロン失敗響く

2023/1/9

人工衛星を打ち上げる日本の輸送ロケットの2022年の成功回数が、18年ぶりにゼロになった。世界の22年の発射実績は11月までに過去最多を更新している。世界の宇宙ビジネスが活況を呈する中、日本が取り残されかねない。

~~略~~

最大の誤算は、H3の開発が難航したことだ。当初は20年度の発射を目指したが、主エンジンでトラブルが相次ぐなどして延期され、初号機の発射は今年2月12日に決まった。

毎日新聞より

毎日新聞が日本の失敗について実に嬉しそうに記事にしていて、「成功ゼロ」(喜)という感じのタイトルを付けていてカチンと来たのだが、敢えてこれを紹介した理由はH3ロケットのコンセプトが理由である。

H3ロケットとは

H3ロケットは、種子島宇宙センターから試験機1号機の打ち上げを予定している次世代の大型ロケットです。 日本が宇宙への輸送手段を持ち続けれるように、現在運用中のH-IIAロケットの後継機として開発されています。 今後20年間を見据え、毎年6機程度を安定して打ち上げることで産業基盤を維持するという運用の世界を目指しています。 そのためには、政府の衛星だけでなく打ち上げサービス市場から民間の商業衛星の受注が不可欠です。 世界中で新しいロケットが開発される中、商業衛星に利用してもらうためには、日本国内だけでなく世界中の利用者から使いやすいロケットとして注目されるような新しいロケットを作る必要があります。

JAXAのサイトより

H3ロケットは、成功率の高いH2Aロケットの後継機として開発が続けられている国産ロケットなのだが、価格を下げることが至上命題になっていて、いくつかの民生品を組み込んで作り上げられている。

このことが影響したかは不明だが、技術的課題が見つかって何度も打ち上げが延期となっている。その問題の1つがターボポンプ振動問題で、これはある程度解消できたっぽい。

ともあれ、このニュースを紹介した理由は、H3ロケットが民間企業主導で開発が進められ、部品の一部に民生品が使われるタイプのロケットであるからだ。

民生品を使うと何故安くなるのか?というと、量産効果によるコストダウンが出来る部品を使うからである。

デュアルユースとは、軍事と民間の両方に使える技術のことであり、要は生産数を増やすことでコストダウン出来るように、民間利用を前提とした軍事開発をしましょうねということになる。

GPSは民間転用品

なお、軍事と民間の線引きというのは余り意味が無い。

よく知られているのはGPSで、もともと軍事用に開発された技術なのだが、精度を落として民間でも利用できるように民生利用の用途を解放したものである。他にもインターネット技術なんかもその典型だし、ミサイル開発もロケット技術と共通点が多いので、ミサイル開発はある意味デュアルユースに近い位置づけになっていると言っても良いだろう。

他にも山のようにあるのだが、例えばダイナマイトだって元々は戦争用に開発されている。「ノーベルが本来は土木工事の安全性向上のために開発した」という風説があるが、開発者のアルフレッド・ノーベルは、その父の時代から兵器産業で稼いでいた事実があり、爆発物の研究も軍事利用を想定したものであった。開発段階から軍に開発した爆発物の売り込みをかけていたし、ダイナマイトも軍に売り込んでいる。ノーベル賞の設立の功績はあるが、これは彼が「死の商人」というレッテルを気にした晩年、遺言書に「ノーベル賞を作ってね」ということを書き記したことに起因している。

意外なところでは紙おむつかな。こちらは軍事利用目的と言うよりは、宇宙開発の途中で宇宙飛行士が必要として、高分子吸収体を使った紙おむつが開発されるに至った。ただ、宇宙開発自体が軍事開発目的(注:国民の目を反らす意図があったとされる)であったことを考えると、これも似たような経緯と言えるかも知れない。あ、紙おむつそのものは、スウェーデンで赤ちゃん用に開発されたのが最初らしいが、こちらは経済封鎖に起因する綿布の不足で代替品を模索した結果、紙を重ねて吸水するタイプのものが考案されている。

そういえばゲーム機PS2が「軍事転用されるー」と騒ぎになった事があったが、これは実際に利用されたという話では無くて、軍事転用のおそれがあるとして輸出規制がなされたからである。

何が言いたいかというと、軍事用とか民生用とか、線を引くことには余り意味がないのである。軍事に有用であれば軍事転用されるし、民間利用ができそうであれば民間転用されるのである。

アメリカと共同開発するメリット

で、デュアルユースに話を戻そう。

日本政府は昨年12月策定の国家安全保障戦略で「官民の先端技術研究の成果の防衛装備品への積極的な活用」を掲げるなど転換を図ろうとしている。これを機に、米国としても技術力や開発能力の高い民間製造業や研究機関を抱える日本の技術を対中などの抑止力強化に生かしたい考えだ。

讀賣新聞「軍民デュアルユース連携、日米首脳会談で一致へ」より

日本政府がこんな惚けた事を言っているが、恐らくこの話の本旨は軍事技術開発の解禁だろうと思う。

軍民両用技術で歩み寄り 学術会議が見解、政府は評価

2022年10月28日 5:00

科学者の代表機関、日本学術会議が民生と軍事の両方で使える「デュアルユース」技術の研究を事実上容認する新たな見解をまとめた。これまで軍事研究への反対姿勢を貫いてきたが、一律に制限するのは現実的ではないと判断した。安全保障の面からも推進したい政府と歩み寄った。

日本経済新聞より

一応、日本の技術的な発展を阻害する組織のお墨付きをもらったデュアルユースだが、軍事研究の解禁こそがアメリカから迫られているポイントである。

デュアルユースの有力候補となる無人機を巡っては、日米首脳会談に先立つ12日の日米防衛相会談で、日英伊が新たに開発する次世代戦闘機を支援する形で一体運用する無人機の共同研究で合意する見通しだ。日本の無人機技術に対する米側の期待の高さの表れといえ、今回の首脳合意により、民間技術を生かした日米協力の幅が広がるとみられる。

讀賣新聞「軍民デュアルユース連携、日米首脳会談で一致へ」より

何となく、「共同開発」と言いながらも、アメリカから技術をチューチュー吸われちゃいそうだけれども、軍事的な共同開発の道に関しては、例えば三菱重工がSM-3のBlock IIAの開発参加(Block IIBにも参加しているようだが)など、いくつかは既に実例がある。

ただ、手続きが面倒なので、共同開発OKにするためにも連携強化しておきたいという流れなんだと思う。民生利用を加速したいのは価格の問題であることは上に指摘した通りで、アメリカも軍事費をどっやって減らすかという悩みは深いので、日本が乗ってくるなら歓迎するという感じなんだろうな。

恐らくはその先に見据えるのは、記事に指摘されている次世代戦闘機F3の開発や、それに随伴飛行する無人機の開発、そしてAUKUSへの参加可能性の話まで見据えた話に繋がるんだろうと思う。

まあ、やってくれるなら歓迎する。

それと、日本学術会議は民間の機関にすべきだよ。アレは政府機関から切り離さないとダメだって。

追記

関係あるニュースかは分からないけれども、こんなニュースもあったね。

西村経産相が訪米 次世代原子炉の開発や建設 日米連携で一致

2023年1月10日 11時56分

アメリカを訪れている西村経済産業大臣は、グランホルムエネルギー長官と会談し、エネルギー安全保障の強化や脱炭素化の推進に向けて、次世代原子炉の開発や建設で連携していくことで一致しました。

NHKニュースより

岸田政権になってから、こういう今までタブー的な扱われ方をしていた話が進んでいるね。これが、アメリカの脅しに屈したから、と理解すべきか?というところは悩ましい。

ただまあ、次世代原子炉開発は必要だろうとは思うよ。日米で次世代技術関連の連携を進めると言うことなんだけど、関連企業の業績的なことまで考えると、諸手を挙げて喜ぶべきかは悩ましい。

コメント

  1. 木霊様 皆様 こんばんは

    >「共同開発」と言いながらも、アメリカから技術をチューチュー吸われちゃいそうだけれども

    これ、米・英国の立場に立てば「そうは言っても日本にちゃんとしたスパイ防止法がないので イーブンな技術ギブ&テイク は不可能」ってことになるので、スパイ防止法の制定等、政治の役割は重要と思います。

    ついでにいうと
    >日本学術会議
    の民営化は比較的らくちんなので、自民党優位のうちにさっさとやって欲しい。

    そんで、もっと重要かつやっかいなのが、弁護士法にちりばめられた「日本弁護士連合会」の利権・権限の数々。弁護士は連合会に従う義務がある、日教組よりヤバイ、
     本来、歴史的にも「法曹会」があるので全部そっちに権限移行すべきなんじゃ? と思うけど、ハードル高そう。

    • スパイ防止法は、本当に欲しいですね。
      議論は難しいとは思いますが、何とか法制化して欲しいところ。スパイだらけの国会で、コレを如何に通すかがポイントでしょう。

      日本学術会議に関しては、単純にパージすれば良いのですが、ご指摘通り日弁連はかなり厄介な組織ですね。自浄作用があれば良いのですがそれも難しそうですし。

  2. 軍民両用なんてどこの国でもやってることだし、ここは米大統領から”検討使”の日本首相に、話を通してもらえればいいでしょう。
    日米間の軍民両用が進展すれば、政府のお墨付きを得て、日本国内での軍民両用も進むからね。
    つまりは、外圧効果だ。
    実のところ、軍民両用の解禁は、事業の拡張やシナジー効果が期待されるので、内心ではうれしい企業は多いだろうと思う。

    • 「アメリカにごり押しされたー」くらいで良いので、さっさと整備して欲しいと思います。軍民両用というより、軍用研究の解禁こそがキモだとは思っていますが。
      進んでいくと良いですねぇ。