原発政策の大転換に騒ぐメディア

政策

このブログでは原発再稼働を切々と訴えてきたので、この方針に賛成はするんだけど、今回の方針には「一部に賛成」ということで。

脱炭素社会へ政府が基本方針 原子力政策の方向性は大きく転換

2022年12月22日 19時28分

政府は、2050年の脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給のため、原子力発電の最大限の活用と二酸化炭素の排出量に応じて企業などがコストを負担するカーボンプライシングの導入などを盛り込んだ今後の基本方針をまとめました。

このうち原子力発電については実質的に上限の60年を超える原発の長期運転を認めることや、これまで想定してこなかった次世代型の原子炉の開発・建設に取り組むといった内容が盛り込まれました。

NHKニュースより

ドラスティックな政策変換という評価と、「事故が-!」と騒ぐ方々とも違う反対論を一応展開しておきたい。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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原発の利用促進には概ね賛成

次世代型の原子炉を開発

さて、原発関連については方針が2つ。

新たな基本方針では、安全最優先で原発の再稼働を進めるとした上で、 ▽廃炉となる原発の建て替えを念頭に次世代型の原子炉の開発と建設を進めるほか、 ▽最長で60年と定められている原発の運転期間については審査などで停止した期間を除外し、実質的に上限を超えて運転できるようにするなど、最大限活用する方針を打ち出しています。

NHKニュース「脱炭素社会へ政府が基本方針 原子力政策の方向性は大きく転換」より

1つめの「廃炉となる原発の建て替えを念頭に次世代型の原子炉の開発と建設を進める」という方針だけれども、「原発の建て替え」ということの意味がちょっと分からないのだけれど、次世代型の原子炉の開発はやらないという選択肢はないので、これは「良い政策」であると思う。

良くも悪くも、原子炉の開発は続けていかねばならない。これは、「より安全な原子炉」を手に入れるためには、開発を続けるしかないし、老朽化したものを建て替える為にも開発が必要(同じものを建てても意味が無い)なんだと思う。

もちろん、「使わない」という選択肢はアリなんだと思う。

僕自身は「使った方が良い」とは思っているんだけれど、しかし放射性廃棄物の問題もあるから「もう止めよう」という考え方はありで、その場合は今原子炉の建てられている敷地に放射性廃棄物を一時的(一般人にとっては恒久的)に保管するという決定をする必要があると思う。その決断が出来るのであれば、別の発電方法を探すべきだ。

最長で60年の原則を変える

一方で、「最長で60年」の原則は変えるべきではないと思っている。

もちろん、停止中の期間を60年の期間に含めるのかということも含めて議論すべき内容なんだけれども、原子炉に使っている機器のうち、取り替え不可能な部分もあって、本当に60年以上保つのか?という懸念はある。

“原発60年超運転可”方針 規制委が老朽化対応へ新制度案了承

2022年12月21日 14時43分

原子力発電所の運転期間について経済産業省が実質的に60年を超えて運転できるようにする方針案を取りまとめたことを受けて、原子力規制委員会は原発の老朽化に対応するための新しい制度の案を了承しました。

原発の運転期間は現在、法律で原則40年、最長60年と定められていますが、経済産業省は今月16日、原子力規制委員会の審査などで運転を停止した期間を除外し、実質的に60年を超えて運転できるようにする方針案を取りまとめました。

~~略~~

案では、運転開始から30年以降は、10年を超えない期間ごとに機器や設備の劣化状況を確認したうえで管理計画を策定し、規制委員会の認可を得るよう義務づけます。

NHKニュースより

まあ、実際には劣化状況の確認をした上での管理計画を策定するので、ここに穴がなければ「無理なく運転可能」という判断は出来るんだろうけど、しかし、原子炉は暴走したら取り返しの付かない事故に繋がる可能性を秘めているのだから、安全サイドでの判断をすべきである。

一方で、運転開始から実質的に60年を超える原発の安全性を確認する具体的な方法については、改めて議論するとしています。

NHKニュース「“原発60年超運転可”方針 規制委が老朽化対応へ新制度案了承」より

で、「その方法はこれから議論」だというのだから、顎が外れそうである。

いや、安全に使う為にも、原則40年、最長60年のルールを変えるべきじゃないとは思うんだよね。もちろん、今のところ60年を迎えて廃炉になった原子炉は存在しない(高浜1号が48年、2号が47年)ので、本当に60年保つのか?と言うことも含めて、明らかにはなっていない。

そういう意味では、短いスパンでの劣化状況確認は必須である。

安全最優先で原発の再稼働

いずれにせよ、安全最優先で原発の再稼働をせざるを得ないのが、日本の現状である。もちろん、文句を言っている層もある。あるのだが、全国で13万人程度である。

原発の再稼働など中止求め13万人余の署名 経産省に提出

2022年12月2日 16時51分

政府が原発の最大限活用を掲げ、再稼働の推進や次世代型原子炉への建て替えなどを検討していることについて、全国の市民団体などが中止を求める13万人余りの署名を集め、2日、経済産業省に提出しました。

NHKニュースより

「全国の市民団体」というのが胡散臭いが、個人的にも「再稼働反対の署名のお願い」というヤツを見かけ、これがかなり意図的に意見誘導を狙ったものだった。今回のこの経済産業省に提出された署名が同じものだったかどうかは定かでは無いが、そういう事例もあったことは書き添えておきたい。

で、全体的な世論は?というと、容認する意見の方が多い。

原発再稼働「賛成」58%・「反対」39%、初めて賛否が逆転…読売・早大世論調査

2022/08/24 21:36

読売新聞社と早稲田大学先端社会科学研究所は全国の有権者3000人を対象に世論調査(郵送方式。回答率69%)を共同実施し、岸田首相のイメージを多面的に探った。有権者の50%が首相を「改憲派」とみており、「護憲派」との回答は39%だった。経済政策に関しては「分配重視」との見方が52%を占め、「成長重視」は36%。外交安保では、穏健路線の「ハト派」が66%で、 毅然きぜん ・強硬路線などを指す「タカ派」の21%を上回った。政策面で硬軟両面に通じるイメージを併せ持っていることが浮かび上がった。

讀賣新聞より

調査の母数が少ないのだが、いくつかの調査で概ね再稼働賛成派が反対派を上回る状況になっている。要は「電気料金の値上がりは嫌だ」という層が多いのだろう。

再生可能エネルギー発電はダメなの?

奇しくもこんなニュースがあった。

えりも町 強風にあおられ太陽光パネル半数近く飛ばされる

12月23日 11時17分

日高のえりも町にある東洋地区では22日夜、強風にあおられて設置されている244枚の太陽光パネルのうち、半数近くが飛ばされました。

NHKニュースより

再生可能エネルギー発電といえば、太陽光パネル発電というところがあるんだけど、結構、日本中で色々な問題を起こしている。

奈良で突風か 太陽光パネルなど被害 気象庁が調査

08月17日 17時59分

17日午前、奈良市東部の山あいの地区で、風で太陽光パネルが吹き飛ばされるなどの被害が起きました。

NHKニュースより

こちらも似たような話だね。

メガソーラー建設に「待った」 災害・環境破壊で反発

2022年2月8日 2:00

脱炭素社会の実現に不可欠な大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を巡り、事業者と住民間でのトラブルが全国で相次いでいる。

日本経済新聞より

そんな事もあって、反対派がかなり盛り上がっている。

なお、風力発電などもかなり問題視されているようなので、今後はそう簡単に再生可能エネルギー発電を推進ということにはならないようで。

こうしたなか、政府はすでに再稼働した10基に加え、2023年夏以降、原子力規制委員会の審査に合格した7基の再稼働を目指すとしていて、仮に17基全てを動かした場合、海外から調達するLNG=液化天然ガス、およそ1兆6000億円分を輸入せずに済むと試算しています。

NHKニュース「脱炭素社会へ政府が基本方針 原子力政策の方向性は大きく転換」より

再生可能エネルギー発電の全部がダメとは思わないし、研究開発はすればいいんだけど、安定的な電源確保と、エネルギー需要の増大によるエネルギー価格の乱高下の影響を回避するためには、先ずは再稼働を目指すしかないと思う。

先ずは、国内に残った33基の有効活用と、次世代炉の開発。これは避けて通るべきでは無く、その方向性を示せたことは大きかったのだと思う。

処理水の排出とその先の問題

とはいえ、とはいえである。放射性廃棄物の処理の問題に向き合わないというのは「逃げ」である。

福島第一原発の処理水放出「日本だけの問題ではない」 オンラインで国際フォーラム 世界各国から反対意見

2022年12月17日 21時01分

東京電力福島第一原発の汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出計画を巡り、福島県民らでつくる「これ以上海を汚すな!市民会議」が……

東京新聞より

東京新聞が香ばしい記事を書いていたが、福島第一原発の処理水の海洋放出は前進している。

原発処理水の海洋放出向けて 放水口になる構造物を海底に設置

2022.11.19

東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、来春にも行われる海洋放出に向けて、東電は18日、同原発から沖合1キロにある海底トンネルの放水口に、「ケーソン」と呼ばれるコンクリート製の箱型の構造物を設置した。

ケーソンは長さ12・2メートル、幅9・2メートル、高さ9・6メートルで、水深12メートルの位置に据え付けられた。最終的に、現時点で約600メートルまで掘削が進む海底トンネルと接続され、上部から処理水が海中に放出される。

海洋放出に当たって、東電は処理水に残る放射性物質トリチウムの濃度について、国の基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満になるよう、福島第一原発の港湾外から取り込んだ海水で希釈する。

いわき民報より

風評被害を回避するために、1km沖合に放出口を作る工事が進められ、概ねこの工事が終了したようで、2023年の春には海洋放出が行われる運びとなっている。

溜まり続けた処理水の海洋放出が動き出したのは菅義偉政権の時代だったが、岸田氏がこの方針を引き継いでくれて進んでいる事は何よりである。

優先順位の早い処理水の問題の解決に向け、取り上げず動き出した点に関しては評価したいところ。ただ、本丸は放射性廃棄物の処理であって、コレを置き去りにして考えてはならない。

とはいえ、解決策は中間保存と称して長期保存を考えるしか無い。最終処分ということを決める事は容易ならざることなのだ。では何処に?となるとこれまた困難なのだが……、現状で考え得る選択肢としては、国が何処か一地域を国有地として買い取り、何処の県にも属さない地域として切り離した上で、長期間維持管理するくらいしか方策が無さそうである。

カーボンプライシングという欺瞞

一体何に値段を付けるのか

さて、一方で反対したい政策はこちら。

また、カーボンプライシングについては、 ▽企業などが排出量を削減した分を市場で売買できるようにする排出量取引を2026年度から本格稼働させるほか、 ▽2028年度から化石燃料を輸入する電力会社や石油元売り会社などに「賦課金」として一定の負担を求める制度を導入することにしています。

NHKニュース「“原発60年超運転可”方針 規制委が老朽化対応へ新制度案了承」より

アホの子なのか?と疑問を抱いてしまうのは僕だけではないと思うのだが、「カーボンプライシング」というのは二酸化炭素排出量に応じた「課税」をする考え方である。

更に値段を付けたことで、取引可能に使用ということなんだけど、一体何が売り買いされるんですかねぇ?

この文章のうち、「企業などが排出量を削減した分」というのが曲者で、前年度二酸化炭素排出実績から今年度の数字の差を評価するという仕組みらしいのだけれど、二酸化炭素排出のデータは総量を図る事ができるわけは無いので、全てが自己申告によるものとなる。

もちろん、数字の根拠としては、例えば自動車の走行距離だとか、工場の運転時間だとか、そういったものが加味されるハズだが、「本当にソウナンデスカ」と言うことを誰にも確認出来ないと言うところが困る。

何しろ、二酸化炭素の排出量を直接的に計測できないのだから。

そうすると、一体何が取引されているんですか?という話になってしまう。

化石燃料割賦金

更に、化石燃料を輸入する電力会社や石油元売り会社に「割賦金」を求めるというのは、筋の悪い話だ。何故ならば、現在、ガソリン価格高騰を抑えるために税金が投入されている。

なぜガソリン価格が「25円」も安くなる!? 期待高まる「トリガー条項」が発動されない背景は? 緩和措置との違いとは

12/10(土) 9:10配信

2022年12月2日、2022年度の第2次補正予算が成立しました。

これにより、2022年12月末までとなっていた燃料油激変緩和措置の発動が、2023年3月末まで延長されることがほぼ確実となりました。

yahooニュースより

この状況を鑑みて、割賦金を設定するという発想が理解出来ない。実質的な増税負担に他ならないからである。

石油の価格が上がる要因となる割賦金の設定は、経済を冷え込ませるには十分な効果が期待できる。日本経済を停滞させる素晴らしい政策だといえよう。

どうして岸田氏はこうも増税路線が好きなのか。どうせ増税するなら新聞やテレビ局から搾り取る方向に舵を切れば良いのに。

本当に脱炭素に?

そもそも、カーボンプライシングが本当に制度か可能なのかについても疑われている。

日本版カーボンプライシング、23年度始動 本当に脱炭素の切り札?

2022/12/22 16:05(最終更新 12/22 23:34)

二酸化炭素(CO2)に値段をつけて排出企業にコスト負担を求める「カーボンプライシング(CP)」。岸田文雄政権は22日、2023年度から日本版CPを段階的に導入する方針を決めた。その仕組みは、CO2排出枠を売買する「排出量取引制度」と、エネルギー企業に対する「炭素賦課金」の2本柱。政府の掲げる50年の温室効果ガス排出「実質ゼロ」の実現に向けた“切り札”になるのだろうか。

毎日新聞より

余り引用したくない毎日新聞だが、カーボンプライシングに疑問を呈している。

23年度からは、企業が削減目標を自主的に設定し、削減実績に応じて排出権を取引する。市場への参加は自由だ。ただ、目標を自主設定すると、あえて低い目標を設定した企業がたやすく目標を達成し、排出権を得やすくなり、公平な取引が成り立たない。このため、26年度からは各社の削減目標が妥当かどうかを第三者機関が認証する制度を始める。

毎日新聞「日本版カーボンプライシング、23年度始動 本当に脱炭素の切り札?」より

結局、どこまで第三者機関の認証制度が機能するのか?と言う辺りにかかっている。

記事にも「目標を自主設定すると、あえて低い目標を設定した企業がたやすく目標を達成し、排出権を得やすくなり、公平な取引が成り立たない」という本質的な問題について言及があるが、妥当性をどう担保するのか?という点はかなり困難を極める。

カーボンプライシングが国際的な潮流だという事もあって、仕組み作りに本気にならざるを得ないという実情があるにせよ、本当に外国の報告を信用出来るのか?という問題も含めて、この議論はかなり難しいように感じる。

もっとぶっちゃけて言うと、この流れの中に支那を取り込むのか?本当に?ということだ。いや、発展途上国を名乗る国々も大概怪しいと思う。

いや、信用出来ない国を論っても仕方が無いので、日本国内のことに限定して考えることにしよう。

例えば、原子力発電所を建設して発電に使うということを考えた場合、発電時には二酸化炭素が出ないことは知られている。

一方で、燃料となるウランの採掘や精製には二酸化炭素排出は避けられない。その輸送にももちろん二酸化炭素排出は関わってくる。そして、これらの作業を電力会社の管轄で行われないわけで、業種によって誰が排出量負担をするのかという話になる。

つまり、公平性の問題を解消することが難しいと思う。

もちろん、こうした採掘や精製、輸送などに関わる企業は、二酸化炭素排出量に応じたコストを費用に載せると思われるのだけれど、電力会社がそのコストを負担するとは思えず、価格は需要者にのしかかってくるものと思われる。

あれ?そうすると、二酸化炭素排出量を減らそうというモチベーションは、一体、どこから出てくるのだろうか。どうにも胡散臭い話になりそうである。

と言うわけで、カーボンプライシングの方には反対なんだよね。

コメント

  1. 梅雨や台風、地震といった自然災害が頻発する日本で、一番環境変化に弱い太陽光発電を推し進めるのは、本当に阿呆なことだと思いますね。潮力や水力、地熱あたりの高効率化や静音化の研究を進めていくことが日本には合っているのではないでしょうか。

    • 潮力発電は面白いと思うのですが、残念ながら今のところ有効な設備が出来ていませんね。是非とも開発して欲しいところです。
      水力に関しては、時間がかかるので地道に増やすしか無く、小水力発電をビル内部に義務付けるとか、そういう方法を考えていくべきではないかと。メンテナンス義務まで負わせるのがちょっと大変ですが、有効な手段では?と思っています。
      地熱は……、これもなかなか時間のかかる話ですから、直ぐにという事は難しそうですね。それでも、世界トップクラスの地熱発電システムを構築する技術がありますから、是非とも続けて欲しいですね。

  2. こんばんわ、

    原発の話ではないのですが、昨日鈴木財務相が記者会見し、防衛費に建設国債を充てることは可能と明言したことが報道されました。
    https://jp.reuters.com/article/japan-minister-of-finance-idJPKBN2T70KZ

    この話は、来年1月の通常国会まではっきりしないと思いますが、原発再稼働も含めて、政策として必ず実現してほしいですね。

    • 防衛費に建設国債を、と言う話は別記事で少し言及しましたが、あって然るべきの判断です。画期的な話ですね。
      何だったら、原発も国債を発行して、ある程度国が責任を担う形に出来ると良いように思うんですが。