なにか、隣国みたいなことを言い始めたな。
政府、ミサイル垂直発射型の潜水艦整備へ 海中からの反撃能力行使も
2022/12/13 17:33(最終更新 12/13 18:14)
政府は、長射程ミサイルを海中から発射可能な垂直発射装置(VLS)を備えた潜水艦を保有する方針を固めた。近く閣議決定する「防衛力整備計画」など安全保障関連3文書に明記する。政府は安保3文書に他国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有を明記するが、陸や海上からに加え海中からも反撃能力を行使可能にし、抑止力強化に努める。
毎日新聞より
海上自衛隊の潜水艦にVLS搭載って、ありっちゃー、アリだと思うんだけど。しかし、確実に新造艦が必要だよね。
政治的駆け引きと新たな潜水艦の登場
たいげい型潜水艦は6隻で打ち止めか
海上自衛隊の潜水艦は、現在、たいげい型潜水艦が最新で、リチウムイオン蓄電池を採用した、世界でも珍しいタイプの機関を備える潜水艦である。一応、そうりゅう型潜水艦の11番艦「おうりゅう」、12番艦「とうりゅう」はリチウムイオン蓄電池搭載型ではあるが、リチウムイオン蓄電池を搭載することを前提に設計されているわけではないので、ちょっと違う。
で、たいげい型は令和9年度までに6隻を就役させる予定なのだが、その後の計画はずいぶんと変更になりそうだというのが、今回の報道から伺える。
海中に潜む潜水艦は他国に位置を把握されにくい。いざとなれば海中からも反撃できる能力を持つことで、抑止力を格段に向上させられると判断した。
搭載するミサイルは国産の地上発射型ミサイル「12式地対艦誘導弾(12式)」の射程を1000キロ超に伸ばした改良型や、米国から購入する巡航ミサイル「トマホーク」など外国製の長射程ミサイルを想定している。潜水艦からの長射程ミサイルの発射は、主に水平方向に放つ魚雷発射管を使う方法と、船体の上部から撃ち出せるVLSを使う方法の二つがあるが、VLSの方が多数の発射が可能なことからVLS方式を採用。大がかりな装置となるため、新造を含めて検討する。
毎日新聞「政府、ミサイル垂直発射型の潜水艦整備へ 海中からの反撃能力行使も」より
たいげい型潜水艦は、対地・対艦兼用ミサイルを搭載しているのだが、射程は250km程度である。当然、魚雷発射管からの発射を前提としているので、多数の発射には対応できない。
トマホークを購入しようという話が持ち上がったときから、潜水艦にもトマホークを搭載しようという話はちらほら出ていたが。
トマホーク搭載の潜水艦を視野、「実験艦」新造を検討…防衛大綱に開発方針記載へ
2022/10/29 05:00
政府は、長射程ミサイルを発射可能な潜水艦の保有に向け、技術的課題を検証する「実験艦」を新造する方向で調整に入った。年末までに改定する防衛計画の大綱に開発方針を盛り込む見通しだ。実戦配備に進めば、米国政府に購入を打診している巡航ミサイル「トマホーク」の搭載も視野に入れる。
讀賣新聞より
どうやらこの実験艦、VLS採用の可能性が出てきている。……あれ?以前にも似たような事を書いた気がするぞ。
ありゃ、割と最近の記事だった。ただ、この時は「検討」だけだと思っていたのだが、どうやら日本政府は本気っぽいね。
防衛3文書の改定
で、本日出たのが税制改正大綱案で、コレには先日より岸田氏が「増税を盛り込む」と怪気炎を上げていたために、増税方針が盛り込まれるかが焦点だった。
結果的には、「増税などの措置」というところでお茶が濁されたが、完全に増税に前向きな岸田氏にブレーキを掛けた形と評価すべきか、増税ありきで今後も続くと判断すべきか。
防衛費増額へ 3税目増税など税制改正大綱案 自民党が了承
2022年12月16日 16時16分
自民党は、防衛費増額の財源を賄うため法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税などの措置を取ることを盛り込んだ、税制改正大綱の案を了承しました。
了承された税制改正大綱の案では、防衛力の抜本的な強化に必要な財源として、5年後の2027年度に1兆円余りを確保するとして、法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税などの措置を複数年かけて実施するとしています。
NHKニュースより
また、これと同時に防衛3文書の改定を行うことを決めた。
政府、反撃能力の保有を決定 防衛3文書を改定
2022年12月16日4:58 午後
政府は16日、「国家安全保障戦略」など防衛3文書を改定し、敵の基地などを叩く反撃能力の保有方針を閣議決定した。専守防衛を掲げる日本は他国の領土に届く攻撃的な武器をそろえず、米軍に「矛」の能力を依存してきたが、中国の軍事力増強をはじめ安保環境が変わる中、方針を転換する。
~~略~~
具体的な装備は防衛力整備計画の中で定め、自衛隊が運用する12式地対艦誘導弾の射程を伸ばすほか、新たに開発する高速滑空弾を量産、米製巡航ミサイルのトマホークなどを取得する。いずれも2027年度までに配備する。
地上や護衛艦にだけでなく、自衛隊機や潜水艦への搭載も計画する。攻撃目標の位置情報を捕捉する人工衛星や無人機などもそろえる。
ロイターより
防衛費の増額と、その方針を決定的に転換するという点で画期的な発表ではあるが、「増税してでも防衛力を高める」という決意と好意的に解釈すべきか、財務省の陰謀によって増税を飲まされたと解釈すべきかは悩ましいところだ。
何にせよ、GDP2%というのは自民党の選挙公約でもあったので、防衛費を増額していくこと自体は既定路線である。
支那は過激に反応
既にこう言った方針は、支那に漏れ伝えられているようで、前日にはこんなニュースが。
日本が「中国軍事脅威論」誇張を止めるべき
2021年12月15日16:20
日本の政府高官は最近、中国の国防政策について累次にわたってとやかくをいい、中国は、透明性を欠いたまま、継続的に高い水準で国防費を増加し、軍事力の質と量を広範かつ急速に強化し、日本を含む地域と国際社会の強い脅威になっているなどと煽り立てる。それに踏まえ、日本は新たな国家安全保障戦略や防衛計画の大綱を策定し、防衛力を確実に強化する必要があると表明した。日本が「中国軍事脅威論」を再び煽り立てることは、防衛費を引き続き増加し、軍事力を増強し、戦後軍事分野での「縛り」を解き放つための口実にする思惑がある。
人民網より
支那の妄言を聞きながら翌日に防衛三文書改訂の発表か、なかなか面白いタイミングである。いや、恐らくは逆なのだろう。支那が牽制をかけてきていたが、岸田氏はそれを振り切って閣議決定をした、と。
……流石に好意的に捉え過ぎだな。
ただ、良くも悪くも、これまで安倍氏ですらこの方針転換を実現できなかった。そのことを考えれば、「タイミング」とはいえ岸田氏は大きな決断をしたと評価すべきだろう。
VLS搭載潜水艦は望ましいのか
ただまあ、VLSを潜水艦に積むのは「ロマン」はあっても、現実的かというとなかなか難しい。前回の記事にも書いたんだけどさ。
お隣韓国は、3000t級潜水艦に6セルのVLSを搭載する計画らしいのだが、正直、6セル程度のVLS積んだところで、破壊力のでかい弾頭を積んだ弾道ミサイルでも採用しなければ、戦略的な意味は薄い。
潜水艦で対艦攻撃するなら、潜航していて魚雷をぶっ放す方が確度は高いし脅威度も高い。VLSを採用するということはロングレンジ攻撃を前提としなければ、発射位置が特定されやすかったり、ミサイル搭載効率が悪くなったりと、メリットが薄いのだ。これまでの海自の潜水艦運用を考えれば魚雷発射管から長距離ミサイルを発射するほうが理にかなっていると思う。
これまでの報道から見て、潜水艦に長距離巡航ミサイルを搭載するのは、敵基地攻撃能力の獲得という文脈で語られているようだが、トマホークでロングレンジの攻撃をするなら多数のミサイルで波状攻撃をするという使い方を想定するのだろう。
そうなってくると、とても3000tや4000tでは大きさが足りない。せめて12セルのVLSを搭載して排水量は倍以上にして欲しいんだよねぇ。このあたりをどう考えるかで、次期型潜水艦の仕様が決定されると思う。少なくともどこかの国のように中途半端なものを作るべきではないと思うよ。
コメント
トマホーク巡航ミサイルは魚雷発射管から発射可能、VLS搭載は潜水可能深度が上がり、艦の耐用年数が減る事を海自側がどう説明するか注目しよう。
韓国海軍が余剰浮力の無い潜水艦からVLS全弾発射演習をしてくれれば、全て解決しそうだけど。
トマホーク巡航ミサイルを潜水艦搭載VLSから発射する前提だと、今までの海自の潜水艦運用スタイルと根本から変わってくるんですよね。
その辺りも含めて検証していくのでしょうけれど、増員も必須だし、直ぐに体制を整えるのも難しいでしょう。
取り敢えずは魚雷発射管から発射するスタイルを採用するというのも一案でしょう。
こんにちは。
魚雷発射管からの放出にしろ、VLSにしろ、弾道弾や巡航ミサイルを撃つにはそれなりに浅いところまで浮上しないといけないので、そこは怖いところですよね(居場所がばれる)。
艦のつくりとして、どうしても脆弱な弾倉をヴァイタルパートに抱え込むのも怖いですし、「着底してひたすら待つ」型(なのかな?)の海自潜水艦の戦い方も変わるでしょう。
その代わり、太平洋側に出て自由に動ける海自潜水艦は、台湾有事や南沙諸島にも睨みを利かせられますから、戦術的には選択肢が増えるかも、とも思います(中国朝鮮の潜水艦は、第一列島線で必ず日米に補足される前提)。
単純に、見たいか見たくないかで言えば、見たいですが>VLS付きの海自潜水艦。
何本積むか、どう戦うか、そこが研究出来ているのか……技本からは聞いたことないですが……
今までの方針を完全に否定する考え方ですからねぇ、潜水艦へのVLS搭載は。
VLS搭載するなら、足の速い船にする必要がありますから、原子力機関搭載というところも検討する必要があるでしょう。
ソレが許されるのか?と言うことも含めてしっかりと戦術的な観点から検討し直して欲しいところです。
正直、クワッドやAUKUSにくっついていく積もりなら、原子力潜水艦ということも視野に入れるべきなんでしょう。
リチウム蓄電池を搭載するものでも、長時間の潜水行動がやれるっぽいですけれど。