半導体冬の時代、SKハイニクス社は経営危機へ

大韓民国

韓国経済の柱となっている半導体業界がかなりヤバい状況になっている。

日本、半導体製造装置の対中輸出規制で米国と協調へ-関係者

2022年12月12日 23:23 JST 更新日時 2022年12月13日 11:21 JST

日本とオランダは、先端半導体製造装置を対象とした米国の対中輸出規制への参加に基本合意した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたもので、中国の技術推進の野心に大きな打撃を与える可能性がある。

Bloombergより

「アメリカの戦略のとばっちりを受けた」というような認識を、韓国は持っているかも知れない。それは強ち間違いとは言えないのだが、しかし、逃げる時間は十分にあった。

日本は重い腰を上げてようやく半導体製造装置を支那に輸出することを止める方向に向かった模様。では、韓国は?

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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国家戦略に合わない買収

チップ4

過去に、こんな記事を書いた。

「アメリカの半導体覇権を脅かす存在は許さない!」という明確な意思が感じられるチップ4の方針ではあるが、支那に覇権を握られると安全保障上の明確な脅威になるというのもまた事実である。

どちらが正しいか?で選ぶのではなく、どちらを選び取ったら利益が出るか?と言う観点で考える2択なので、日本としてはアメリカを選ぶほかに選択肢は無い。

では韓国は?というと、コレが難しい。韓国はそもそも貿易偏重で国内の市場が小さいために内需は期待できない。で、外国に製品を売って儲けるスタイルだったのだけれど、いつの間にかアメリカ主体だった貿易スタイルが支那中心の貿易スタイルに変わってしまった。

で、このうちの主力製品半導体が、槍玉にあがったのだから当然に韓国は当事者である。故に、アメリカが提唱するチップ4にホイホイと乗っかることは出来ないという事情がある。何しろ、輸入も輸出も支那頼みなのだから。

半導体製造装置のシェア

ところで、日本とオランダの半導体製造装置のシェアなのだが、アメリカを含めて参加国でほぼ独占状態にある。

日米とオランダの3カ国が協調すれば、先端半導体の製造に必要な装置を中国が入手することはほぼ完全に阻止される。米国の規制はアプライド・マテリアルズとラムリサーチ、KLAによる供給を制限しているが、制裁を効果的なものにするには東京エレクトロンとオランダのASMLホールディングの参加を必要としていた。

Bloomberg「日本、半導体製造装置の対中輸出規制で米国と協調へ-関係者」より

徐々にシェアが低下しつつあるという報道もあるが、アプライド・マテリアルズ、ラムリサーチ、KLA、東京エレクトロン、ASMLホールディングがそれぞれ支那への部品供給を止めてしまえば、文字通り支那の半導体業界は瀕死になる。

そうすると、一見、韓国の半導体産業が潤う、つまり支那では半導体部品を作る事が出来なくなるので、韓国から輸入しなければならなくなるというような形になるようにも思える。ところが、特にSKハイニクス社に関して言えば、そういう簡単に割り切れる話でもないのである。

インテルから買った不良債権

SKハイニクス社は、一時期インテルからSSD事業部を買って大喜びをしていた時代があった。

IntelがSK hynixにSSD事業売却、米Solidigm始動

2022.01.05

米Intel(インテル)のNANDフラッシュメモリー事業の韓国SK hynix(SKハイニックス)への売却。その第1段階が完了したと、Intelは2021年12月29日(現地時間)、SK hynixは同年12月30日(現地時間)にそれぞれ発表した Intelのニュースリリース SK hynixのニュースリリース

今回の事業売却は20年10月に発表された。SK hynixはIntelに90億米ドルを支払うことで、IntelのNAND事業を買収する。SK hynixが取得するのは、NANDフラッシュメモリーを搭載したSSDの事業と、NANDフラッシュメモリー部品とそのウエハー処理(製造)事業、中国・大連市にあるNANDフラッシュメモリーの工場(Fab 68)である。

日経XTECHより

実のところ、この時代に既にインテルのSSD事業部は赤字部門で採算割れしていた。SKハイニクス社はこれの黒字化が出来ると踏んで購入したという経緯であった。

韓国SKハイニックス、インテルNAND事業買収の第1段階完了

2021年12月30日10:33 午前

韓国の半導体大手SKハイニックスは30日、米同業インテルのNAND型フラッシュメモリー事業買収計画の第1段階を完了したと発表した。中国を含む8カ国の規制当局から承認を得た。

SKハイニックスは買収総額90億ドルのうち70億ドルを支払う。

~~略~~

NANDメモリーチップの生産能力拡大を目指すSKハイニックスにとってはこれまでで最大の買収となる。

同社の朴正浩・副会長兼共同最高経営責任者(CEO)は、この買収によりSKハイニックスのNAND型フラッシュメモリー事業は世界トップレベルに入る転換期を迎えると述べた。

ロイターより

世界トップレベルに躍り出る!と、鼻息も荒く買収をした訳だが、どうもコレが宜しくない。

そもそもインテルの半導体部門は、微細化のプロセスに失敗して10nmでプロセッサを量産できずに苦しんでいて、巨額の投資が必要であった。そこで利益を生みにくく、当時既に赤字化していたNAND部門を売却することにしたのである。

ただ、表向きの理由はNAND部門の赤字だが、もっと深刻な問題としてこのNAND部門の工場が立地条件に起因してこれから足を引っ張る可能性が強かったという理由もある。それは、日経XTECHの記事にもあるが、工場が支那の大連市にあったからである。アメリカの戦略に合致しない工場をいつまでも持ち続けるのは、企業としてのリスクが高いと判断したのだろう。

もちろん、諸々の理由を理解した上でSKハイニクス社は買収を行った。この買収によって世界シェアを奪えると目論んだのである。

好調に見えたが

もちろん、SKハイニクス社の目論見が完全に外れたということではない。

サムスン電子とSKハイニックスに暗雲、半導体の需要鈍化に投資見直し

2022.09.16

韓国半導体大手の韓国Samsung Electronics(サムスン電子)と韓国SK hynix(SKハイニックス)が2022年7月末、2022年4~6月期の連結決算を発表した。両社ともに4〜6月期の業績は絶好調だ。しかし両社は2022年7月以降、世界的なインフレ傾向と景気悪化による電化製品の出荷減少から、半導体市場の需要が鈍化すると予測する。

特に業績が好調だったのがSKハイニックスだ。同社の2022年4〜6月期の売上高は13兆8110億ウォン(約1.4兆円)と過去最高になった。米Intel(インテル)からスピンアウトした米Solidigm(ソリダイム)を買収・子会社化したことで、その売り上げが加わったことも奉功した。

営業利益は4兆1926億ウォン(約4300億円)で前年同期比55.6%も増加した。DRAM価格は下落したがNAND型フラッシュメモリーは価格が上昇し、全体の販売量が増加。第4世代の10nm(ナノメートル)世代プロセスの(1a)DRAMと176層NAND型フラッシュメモリーの歩留まりが改善し、収益性が向上した。

日経XTECHより

この記事、前半を読むとSKハイニクス社は買収に成功して大儲け!というように映るのだが、しかし、半導体の需要予測は「減速」と出ており、今後はこれ程好調な売り上げを見込めないだろうという風に予測されている。

ただ、問題はもっと大掛かりで、冒頭に紹介した記事にあるように半導体製造装置販売各社が支那への輸出を止める方向で動き始めた。そうなると、大連市の工場におけるメンテナンスや設備更新は事実上不可能となる。

当然ながらこの大連の工場を支那から持ち出す事もできないので、支那に売り渡すしかないということになりそうだが、支那と一蓮托生になるという選択をするのであれば、頑張って製造を続ける(製造装置は支那または韓国から持ち込む)という事もあるだろう。あまり現実的では無い選択肢だね。

更に、SKハイニクス社はこのインテルからの買収の前に支那で大規模な工場建設もやっている。

SK Hynix、中国無錫市に地元投資企業と共同で集積回路工業団地を着工

2021/10/13 20:43

中国の無錫市政府は、SK Hynixと中国の政府系投資会社である新発集団が計20億元(約350億円)を共同投資する「無錫中韓集成電路産業園(=集積回路工業団地)」の着工式典を10月7日に行ったと発表した。

これは、中国政府の半導体自給自足方針に沿った総投資額303億元に達する無錫市の19の集積回路重大プロジェクトの1つで、同市にとって5つ目の集積回路工業団地となる。

TechTより

うん、SKハイニクス社は支那と心中する積もりなんだな。

組織改編で乗り切ろう!

で、こんな状況で、流石にSKハイニクス社も焦ってはいるようだ。

「半導体の危機を乗り越えよう」サムスン電子とSKハイニックスの組織改編

2022.12.13 09:39

サムスン電子とSKハイニックスなど韓国国内の半導体企業が組織の再整備を終え、本格的に「半導体の冬」対応に乗り出した。景気低迷で売上は減少し、米中覇権戦争が加速化する複合グローバル危機の中で突破口構築に乗り出したのだ。

12日、業界によると、サムスン電子DS(半導体)部門は最近、組織改編で「アドバンスド・パッケージチーム」を新設した。パッケージ技術を研究する組織として半導体の後工程市場への対応に取り組む予定だ。6月にタスクフォース(TF)形式で先に構成されたが、関連分野の重要性が高まり、今回の改編で正式チームに昇格した。パク・チョルミン・メモリー事業部常務が責任者を担った。

中央日報より

何か戦略を練るということらしいのだけれど、中央日報の記事にはあまり具体的な事に触れられていない。かけ声は勇ましいが、組織改編したくらいで何か改善するのかは謎だ。

そう言えば、インテルから購入した工場の支払い、実はまだ終わっていない。

第1次クロージング(2021年末):8兆ウォンを支払う
第2次クロージング(2025年03月):2兆3,000億ウォンを支払う 2025年03月まで大連工場の運営権は『SKハイニックス』には譲渡されない

当時のドルウォンレートでの計算(買収額は90億ドル

Money1様より

組織改編はしたが、現段階でSKハイニクス社に元インテルの工場の運営権は無い。今後、支那の工場には半導体製造装置関連の部品が入って来にくくなるにも関わらず、当面は整理することも出来ないのだ。

これから儲からなくなることが分かっている部門の運営権すら無いという、傑作な状況になっているのである。赤字を垂れ流し続けるしか無いが、梃子入れをしようにも部品購入もままならないという。

何というか、「頑張って」と言うしか無ない状況だ。

コメント

  1. こんばんわ、

    支那の半導体産業は壊滅的という噂を最近よく耳にしていましたが、つい先日中共は国内半導体産業の育成に乗り出すと発表しました。
    https://nordot.app/975308246029484032?c=388701204576175201

    そして、木霊さんのこの記事をみて、気になってSKハイニクスの株価を覗いたところ、今日の時点で株価が今年のピークから60%ダウンという惨憺たる結果になっていました。反転の兆しがみられないので、投資家が逃げ出しているのでしょう。
    https://www.bloomberg.co.jp/quote/000660:KS
    (因みに、サムスン電子も似たような状況でした。)

    SKハイニクスは、大規模買収の効果を帳消しにされたようなものです。これは企業レベルではかなり危ない状況でしょう。また、支那が国内半導体産業の育成に舵を切れば、韓国外資は切捨てられる可能性もあります。半導体戦国時代に、韓国生き残れるか注意深く見ていきたいと思います。

    • ご指摘通り、韓国の半導体産業自体が傾いています。
      サムスン電子の話を持ち出すと少しややこしくなりそうだったので、言及しませんでしたがあそこも結構危ないです。
      株価も影響を受けていますが、現状ではウォンは高くなりつつありますね。更に貿易赤字が膨らみそうな感じになっていますね。

      SKハイニクスはどうやって生き残るんでしょうねぇ。

  2. こんにちは。

    ネズミは、沈みそうな船から逃げ出す、って話がありますが。

    ネズミが逃げ出した後の、天敵の居ない生物学的なニッチを埋めようと大挙してGがやって来たけれど、船ごと沈んじまったらおだぶつ、ってところでしょうか。

    自分から崖っぷち覗きに行くヤツは、止められないんですよね……

    ※でも、それでも後から文句言いに来るから始末が悪い。

    • そう言えば、民主党が解体する時に民主党のビルからネズミが出てくる爆笑映像がありましたが、ちょっと思い出してしまいました。
      生物は危機察知能力が高いと言われますが、人間は鈍いですよね。やっぱり余計な事を「信じている」からなのかも知れません。