積極的な動きが見られないので、本日は短い記事で済ませたいと思う。
韓国大統領、トラック運転手の職場復帰命令拡大を準備
2022年12月5日8:38 午前
韓国の尹錫悦大統領は4日、トラック運転手のストライキが長期化する中、セメント業界以外にも職場復帰命令を拡大する準備を指示した。
ストは10日以上続いており、政府と労働組合の最低賃金を巡る交渉は進展がないままとなっている。
ロイターより
韓国の物流ストライキが長期化を続けている一方で、韓国大統領のユンユンは職場復帰命令を出し、これが多少功を奏したらしく範囲を拡大する構えを見せているようだ。
ストライキは続くのか
ゼネストをうつ!
労使交渉をするにあたって、ストライキは労働者に認められた重要な権利ではあるが、ストライキの原則として政治的要求や社会運動が絡んだモノになってはならないということになっている。
ストライキが社会的混乱を招くような状況になってはならず、日本においては公務員にはストライキが認められておらず、民間企業においてストライキが認められるにしても、それが社会的に大きな影響を与えるところまでは権利として認められていない。
また、日本において運輸事業に関しても(郵便や水道、電気、ガス、医療なども同列に扱われる)、公益事業的性格を有することから、ストライキの実施には事前予告が必要と定められている。昨今ではストライキによる社会的影響というのは最小限に留められることが多い。
とはいえ、これが国際スタンダードかというと、諸外国では大規模なストライキが発生することもままあり、最近だとフランスのストライキが結構大規模ではあった。
フランスで年金改革巡り大規模スト、交通機関など停止
2019年12月6日3:53 午前
フランス全土で5日、マクロン政権の年金制度改革に反対する大規模ストライキが行われた。公共交通機関はほぼ停止したほか、パリ中心部では警官隊がデモ参加者に催涙弾を発射するなど、混乱が続いた。
ロイターより
フランスでは、この手の大規模ストライキが希に発生するようで、2019年の前は2010年、その前が2007年などなど。10年くらいのスパンで結構社会問題に発展するような大規模なストライキが発生している。アメリカでもイギリスでもそれなりにストライキは発生している。
イギリスでなぜストが増えているのか 交通や医療、学校・大学でも
2022年12月2日
イギリスでは今年、さまざまな分野でストが相次ぎ、市民生活に影響が出ている。
物価高騰に伴う生活費上昇を乗り切るため、何万人もの労働者が給与での支援を求めている。公共交通機関や郵便局のストなどが相次ぎ、学校も教職員のストによる閉鎖が多発している。作業員のストのため、ごみの回収は遅れ、法廷弁護士のストのために裁判所の業務も滞っている。
来年になってもストは起きる見通しで、医療従事者や公務員による労使協議が続いている。
BBCより
こうしたストライキ、労働者が横の繋がりを使って大規模なストライキ、ゼネラル・ストライキと呼ばれる事になってくると、大統領の辞職などと言う流れになることも。
報道官によると、大統領は4日、石油精製や鉄鋼生産といった業界にも職場復帰命令を出す準備を進めるよう閣僚に求めた。
一方、労働組合の全国組織「全国民主労働組合総連盟」は、6日にゼネストを計画している。
ロイター「韓国大統領、トラック運転手の職場復帰命令拡大を準備」より
韓国は確実にその流れになっているね。
温度差がある
ただし、こういった労使交渉の在り方について疑問を持つ層もあるようで。
[社説]合理的市民意識、政府原則対応が民労総政治ストライキを追い出す
入力2022.12.02 17:52 修正2022.12.03 00:29
公権力さえ優しく知っている「無所不委」集団全国民主労働組合総連盟に亀裂が現れている。民主労総指導部は貨物連帯ストライキを中心に地下鉄、鉄道などの支援性同時ストライキでユン・ソクヨル政府に打撃を与えようとしたが、個別労組の離脱で総ストライキ動力が急速に弱まった。大韓民国最強の既得権集団に対する各界の警戒心が高まった姿だ。
ハンギョレより
ストライキの大前提として、社会的な合意形成が得られる点がある。上に触れたように、ストライキを行って社会的影響が大きくなりすぎると、国民からの批判が高くなってしまう。
市民の変わった意識も注目される。市民不便を見据えた非合理的なストライキを容認しないという共感帯が強く形成されている。今回の地下鉄ストライキについてオンライン上には「国民は不便を負う準備ができている」とし、弱者コスプレで自分たちの利益を握るだけに急急な貴族労組の「年次行事」激ストに嫌悪感を示す文が多かった。
ハンギョレ「[社説]合理的市民意識、政府原則対応が民労総政治ストライキを追い出す」より
ストライキにおいて声高に叫ぶ「お題目」に、社会的な納得を得られるだけの説得力が必要となるのだが、今回の韓国のコレは、少々政治的に過ぎるのでは無いか?という印象が強いようなのだ。
大統領のユンユンが、職場復帰命令を出した事も大きく関わっているようだが、今回バックにいる野党系の民主労総の旗色がちょっと悪くなってきたよと言うことだろう。
今回の韓国ストライキの政治的意味
苦しい言い訳
さて、ちょっと切り口を変えてこんなニュースを紹介しておきたい。
北朝鮮軍による射殺事件 文前大統領が初の立場表明「深い憂慮」
2022.12.01 17:12
韓国の文在寅前大統領は1日、自身の政権時代に黄海上で起きた北朝鮮軍による男性公務員射殺事件の捜査について「安全保障体制を無力化する分別のない行いに深い憂慮を表する」との立場を表明した。
聯合ニュースより
久しぶりにコメントを出したムン君だが、何の話をしているのかというと、在職中に起きた事件の話である。
韓国海洋水産部所属の公務員だった男性は2020年9月、北朝鮮に近い韓国北西部の小延坪島付近で漁業指導船乗船中に行方不明となり、翌日に北朝鮮側海域で北朝鮮軍に射殺された。当時の文政権は男性が自らの意思で北朝鮮に渡ろうとしたと発表した。だが、海洋警察は今年6月、男性が自らの意思で越境したと断定できる根拠が見つからなかったとして、当時の判断を覆した。
聯合ニュース「北朝鮮軍による射殺事件 文前大統領が初の立場表明「深い憂慮」」より
実は、コレと大きく関係があるのではないか?と言われているのが、日本の自衛隊航空機に対する火器管制レーダー照射事件である。
何れもスパイが暗躍していた疑いが強く、北朝鮮の指導部の関わりが強いと言われている事件である。このカラクリを明らかにしようという捜査に対してムン君が「それはダメだ!」と、慌ててコメントしたという恰好になっている。
このような立場を発表したのは、検察が当時の安全保障の責任者だった徐薫前国家安保室長の逮捕状を請求するなど、文政権の関係者を筆頭に野党に対する圧力が度を越していると判断したためとみられる。
聯合ニュース「北朝鮮軍による射殺事件 文前大統領が初の立場表明「深い憂慮」」より
ただ、既に外堀が埋められている状況なので、ムン君逮捕は時間の問題ではないだろうか。ストライキの別側面として、こういったユンユンの采配を邪魔しようという野党の政治的意図が込められている可能性が高く、野党党首の李在明氏も逮捕に怯えていることを考えると、全く関係がないという事は言えないんじゃないかな。
追記
さて、新しい記事を起こしても良かったのだけれど、大した内容ではないので追記と言うことで。
弱まるストライキ動力…「業務開始命令」を受けた拒否者66%が「復帰する」
入力2022.12.05 03:04
貨物連帯ストライキ(輸送拒否)に参加している拒否者の多くが政府業務開始命令を受けたら「復帰する」という意思を明らかにしたことが分かった。政府が法と原則通りに対応すると、11日目に入ったストライキの動力が徐々に弱まっているという分析が出ている。
4日本紙取材を総合すれば国土交通部は先月29日セメント貨物分野運送拒否者2500人余りに業務開始命令を発動し、記事に毎日郵便(登記)や携帯電話メールで業務開始命令書を送っている。去る3日まで運送業者を通じて住所を確保した455人には命令書を登記で送った。住所を確保できなかった264人には文字で命令書を送った後、業務復帰を督促する電話をかけた。すると264人のうち185人が電話を受け、このうち175人が「復帰する」「すでに復帰した」と答えたということだ。「復帰意思がない」と答えたのは10人に過ぎなかった。文字で命令書を送った拒否者のうち66%、電話通話で連絡した拒否者のうち95%がストライキを解いて運転台を取り戻そうとしたということだ。セメント貨物記事は80%ほどが民主労総傘下の貨物連帯組合員だ。
朝鮮日報より
機械翻訳を使っているので若干翻訳が怪しい部分もあるが、内容は理解頂けると思う。
要は、ストライキに参加している運転手達は、さっさとストライキなど止めて業務に戻りたいというのである。ストライキが長引けば報酬は入ってこない。
韓国には少し特殊な判例があって、ストライキ中の労働者の賃金を保障する必要があるとされている。ただし、これはストライキ理由が使用者側にあると認められた場合であり、当面の生活費は何れにしても持ち出しとなる。裁判の結果、負ければお金は戻ってこないしね。
貨物搬送を生業としているトラックドライバーは、個人事業主が多いようで、そんな訴訟をやっている場合ではないし、しかし貨物連帯に逆らうのは嫌だと。
だから、「業務開始命令書を送ってきてくれ!」なんてことを政府に訴えるトラックドライバーがあとを絶たないのだとか。
コレは何処に向かっていくのだろう。
追記2
無事?終了した模様。
韓国のトラック運転手組合、スト終了 世論の支持得られず
2022年12月9日1:38 午後
韓国のトラック運転手組合は9日、組合員による投票で、全土でのストライキを終了することを決めたと発表した。
世論の支持が得られず、尹錫悦大統領が職場復帰命令を出すなど、強硬姿勢を維持したことが背景。運転手は収入と職を失うリスクが高まったと話している。
ストによりサプライチェーン(供給網)に混乱が生じていた。
ロイターより
ストライキを起こしたそれぞれの労働組合は、匙を投げた状態で何の条件ももぎ取れずに終了。
韓国大統領のユンユンが勝利した感じの結果になったようだ。このストライキで4000億円相当の損害を出したという報道があったが、今年2回目のストで1兆円弱の損害が出ましたって結果になって、韓国経済にも少なくない影響はあったようだ。
コメント
こんにちは。
>運転手達は、さっさとストライキなど止めて業務に戻りたい
工場のラインで、仕事中にW杯をスマホでみて、その間も賃金出るわ、スト中も賃金出るわのヒュンダイその他の労組と、個人事業主メインのドライバー間の「格差」が出てきた感じですね。
このあたりからも、労働者自身の一体性が失われて、何らかの亀裂、あるいは崩壊が始まるのかな、と思います。
というか、あの労組は崩壊した方が良い。
左派組織の厄介なところは、構成員の為の活動をやってくれないんですよ。
ソレが露呈したからこそ、日本では随分と労働組合というのが風化してしまいました。
しかし、本来、賃上げ圧力と経営者との間を受け持つ組織がなくなってしまったことも、日本においては賃金が殆ど上がらないというおかしな状況を生む原因になってるのではないですかね。