なかなか大きなうねりになりそうだ。
中国抗議デモに米当局は慎重な反応、習主席や政府への直接批判避ける
2022年11月29日 9:21 JST
バイデン米政権は、中国政府の「ゼロコロナ」政策に対する同国内での抗議行動の広がりについて、慎重に反応している。バイデン大統領は2週間前の習近平国家主席との米中首脳会談で、両国関係の緊張緩和に取り組むことで一致していた。
Bloombergより
支那の情報分析というのは、支那からの発信や日本の報道機関からの情報だけを見ているだけではなかなか難しいと思う。
が、この記事はアメリカ政府からの発信となっている。アメリカ政府の政治的な意図はあると思うが、情報分析力やその正確性は日本のメディアが遠く及ばないところにあるからだ。
そこから、支那における「抗議運動の広がり」に関する情報が発信されたのだ。
天安門の悪夢再び?白紙革命は収まりを見せない
アメリカは慎重な対応を
この記事で、米国国家安全保障会議(NSC)の戦略広報調整官に任じられているカービー氏はこんな発言をしていると紹介している。
ただカービー氏は、抗議への対応を巡り習主席や中国政府を直接批判することは控えた。新型コロナウイルスを徹底的に封じ込めるゼロコロナ政策への不満から抗議行動が拡大し、当局は沈静化のため各地に警察を大量配備した。
カービー氏は「人々は集会の権利や、政策、法律、命令への反論で平和的な抗議を行うことを認められるべきだ」と指摘。「平和的に抗議する権利をわれわれは引き続き支持する」と語った。
Bloomberg「中国抗議デモに米当局は慎重な反応、習主席や政府への直接批判避ける」より
「ゼロコロナ政策の不満による抗議行動が拡大していること」と、「支那当局が沈静化のために各地に警察を大量に配備した点」だ。御丁寧に、支那を直接批判しない指摘なんだそうな。
そして、「平和的に抗議する権利をわれわれは引き続き支持する」と、アメリカは暗に「弾圧行動をしたら、問題にするよ」と示唆している。
一体、支那では何が起こっているのだろうか?
学生に帰省を促する当局
参考になる記事がこれ。
中国の“白紙運動”とは。習近平体制のゼロコロナ政策に抗議、新宿駅でも集会「人の命が失われている」
Dec. 01, 2022, 10:40 AM
中国各地では厳しいロックダウンなど感染を徹底して封じ込めようとする「ゼロコロナ政策」を続ける習近平体制への抗議活動が相次いでいる。一連の抗議活動は「白紙革命」「白紙運動」などと呼ばれ、日本国内でも呼応する動きが始まっている。
BUSINESS INSIDERより
先ずは、支那で起きつつある動きだが、「白紙革命」と言われる動きなんだそうな。スローガンを記さないのは中国国内の言論統制を回避するためらしく、A4の白紙を掲げることが運動のシンボルになっているようだ。
恐らく色々な意味が込められているとは思うのだが、一番大きいのは、習近平態勢への不満だ。ゼロコロナ政策を撤回(白紙化)しろ、という意味なんだろうね。
そしてこの運動の担い手が、どうやら学生達らしい。
「ゼロコロナ」抗議続く中国、学生警戒し「懐柔」と「統制」…帰省を支援・学生間の連絡は防止
2022/11/30 07:33
中国の 習近平政権は、各地で広がる「ゼロコロナ」政策への抗議活動を受け、学生ら若者の動向に神経をとがらせている。1989年の天安門事件では民主化運動を学生が主導した経緯があるためだ。抗議活動は封じ込めると同時に、若者が反体制に傾くことがないよう、懐柔や統制に動いている。
讀賣新聞より
支那当局は、直接的に弾圧するのではなく、学生を早めに帰省させて分断することで、運動の鎮圧化を図っているようだ。
これらを関連付けた記事がこちら。
10日間で「白紙革命」を鎮圧せよ 習近平氏が恐れる悪夢
2022年11月30日 0:00
何も書いていないA4の白紙を皆が手に持って高く掲げる「白紙革命」「白紙運動」が、中国共産党大会の最高指導部人事で完勝したばかりの極権・習近平(党総書記・国家主席=シー・ジンピン、69)を直撃している。
日本経済新聞より
讀賣新聞の記事にあるように、六四天安門事件の動きに似ていて、学生中心の運動は燃え広がりやすく、ここから火を付けると支那全土に広がる。少なくともその実績があるからこそ、支那当局もこの動きを恐れているのだろう。
米政府系のラジオ自由アジアによれば、中国教育省は27日、抗議活動の拡大を受け、各地の大学トップらを対象とした緊急会議を開いた。「外国勢力の(学生らへの)介入を厳しく防げ」と求め、学内で外出禁止が続く学生らの帰省を支援するほか、学生間の連絡や往来の防止を指示したという。
讀賣新聞「「ゼロコロナ」抗議続く中国、学生警戒し「懐柔」と「統制」」より
27日に緊急会議を広めて止めようとしたが、既に時遅し。各地に運動が広がりつつあるという。
規制緩和の動き
こうした抗議活動を止める方向に動くと共に、支那のゼロコロナ政策に変化の動きも見られている。
中国広州市、複数地区でコロナ規制緩和
2022年11月30日4:33 午後
中国南部の広州市は30日、複数の地区で新型コロナウイルスの感染予防ルールを緩和した。地元政府が発表した。
広州では先週末、厳しい新型コロナ感染抑制策に抗議するデモが行われた。ここ数日間は感染者が減少している。
ロイターより
感染が拡大基調にあるのに、何故か武漢ウイルスに対する規制を緩和するという不自然な動きに出ている。もちろん、規制緩和した広州市では「感染者が減少」していることになっているので、建前上は抗議活動とは無関係である。
が、当局が数字を如何様にも操作できてしまうことを考えると、「無関係」と断ずることは適当では無いだろう。
もう1つ。
中国、コロナ対策は「新たな段階」と表明-オミクロン病原性弱い
2022年12月1日 4:01 JST
中国の新型コロナウイルス対策は新たな段階に入りつつあると、政府の対コロナ政策を担当する孫春蘭副首相が述べた。中国政府が戦略の修正を図ろうとしている可能性があらためて示された。
Bloombergより
オミクロン株は毒性が弱いので、「われわれの闘いは新たな段階にあり、新たな課題に向き合っている」と宣ったそうだ。
えー、今更ですか?
PCR利権
脱ゼロコロナ
さて、少々話は過去に遡る。
PCR利権にメス入れた李首相、脱ゼロコロナが始まった
6/22(水) 10:30配信
ロックダウンの犠牲を払った中国は、「ゼロコロナ政策」の勝利を宣言したがっている。しかし、ロックダウンの経済への打撃は並ではない。国務院のトップ李克強首相はゼロコロナ政策の悪影響を最小限にしたいと考えているようだ。異例の10万人拡大会議を機に取り戻した権限を使って、 “釜底抽薪”( 問題解決のためには、根本原因を取り除かなければならないというたとえ)、つまりゼロコロナ政策より経済安定を優先する政策を打ち出した。
yahooニュースより
これは今年6月頃のニュースで、当時まだ要職にあった李克強氏が、ゼロコロナ政策について異を唱え、経済安定を優先すべきだとぶち上げた。
結果、この動きは実らず、秋の共産党大会で李克強氏は見事に更迭されてしまった。いや、正確には2期10年の任期制限に伴い首相職を2023年3月に退く予定であったが、10月の段階で中央委員会を外されてしまったので、事実上の更迭となったと言うべきだろう。
「中国はPCR検査実施に約3,000億元(約6兆円)を費やした。その半分は今年だけで使われた」と中国華創証券グローバル経済研究グループが試算している。あまりに簡単に儲かるため、「ゼロコロナ」ビジネスに群がる企業が増え、水増しや不正請求も続出した。
yahooニュース「PCR利権にメス入れた李首相、脱ゼロコロナが始まった」より
ゼロコロナ利権は、非常に大きな腐敗構造となってしまったために李克強氏がメスを入れたのだが、これが習近平氏の怒りを買う結果となる。「腐敗を叩く」のが習近平氏の大方針だったにも関わらず、だ。
このゼロコロナ利権、どうやら気に入らない同僚の健康データを操作して相手を失脚させるなど、「色々な使われ方」をしたらしい。当然ながら、こうした腐敗構造は地方に行くにしたがって強くなる。
そこにメスを入れようとした李克強氏の考えは、的を射たものであったはずなのだが……。
直前の6月6日に、「光明日報」の公式SNS「微博」で一つの言葉が話題となった。それは‘‘陋习如刺该拔除(古くて悪い習慣はとげの如く、抜き除くべきだ)“であった。
“習”は習近平を連想させる言葉だったので、すぐに話題となった。「習降李昇」は本当ではないかという密かな期待を込められる形で、中国語圏ではその写真が拡散された。
yahooニュース「PCR利権にメス入れた李首相、脱ゼロコロナが始まった」より
取り上げられ方が露骨だったために、習近平氏のメンツにいたく傷を付けたらしい。
だが、PCR利権によって搾取される側の人民は、行動の自由は制限されるわ、経済的にも困窮するわで、息の詰まるような生活を強要される。李克強氏の決断に乗る事ができたのであれば、習近平氏の未来はまた違ったものになったかも知れないが、それはメンツが許さなかったようだ。
江沢民が逝く
そして、本日はこんなニュースが駆け巡った。
中国 江沢民元国家主席死去 習国家主席の権力基盤さらに強化か
2022年12月1日 4時03分
中国の市場経済化を進め、世界2位の経済大国となる基礎を築いたとされる江沢民元国家主席が30日死去しました。中国では、江氏の政治的な影響力は大きく低下していましたが、習近平国家主席にとってはみずからをけん制する有力者の1人がいなくなったことで権力基盤がさらに強まるとみられます。
NHKニュースより
巨星墜つ。
江沢民が支那において大きな業績を残したことは有名で、支那の有力者と言って間違いないとは思う。が、タイミングが非常に良い。いや、悪い。そして、倖田來未は無事だ。
白紙革命の真っ只中で、支那の経済大国化を牽引した人物がここで逝くという結果になったのだが、高齢だったのでいつ亡くなってもおかしくは無かったとは思う。が、これで「何が起こるか」は予測が難しくなってしまった。
白紙革命が更に燃え上がる可能性もあるし、習近平政権がこれを理由にデモ鎮圧に乗り出す可能性もある。「弔意を示せ!」と、デモを止めさせる可能性があるという事だ。どちらに転んでも碌な結果にはなりそうにない。何故ならば、六四天安門事件が発生する切っ掛けは、胡耀邦の死であったとされている。
支那の自由化、民主化に向けて動いていた胡耀邦だったが、志し半ばで心筋梗塞を起こして倒れ、1989年4月15日に死去してしまう。これが切っ掛けになってデモが燃え広がり、六四天安門事件(同年6月4日)に発展してしまう。
そこかしこで経済的な問題を抱えているところまで、当時の情勢と似ているというのが一番の問題かも知れないが、白紙革命を止める事が難しい以上、大きな動きに発展する事は避けられまい。
習近平指導体制が継続できるか?というところにまで来ているように思われる。直ぐに体制崩壊には至らずとも、危ういトリガーになりつつある白紙革命をどうやって終わらせるかが、彼にとっての試練だろう。
追記
コメントで「乱」「変」の話題に触れられていたので、ちょっと調べて見たら以下のような使い分けがなされているということだった。サイトによっても表記揺れがあるので、定義がしっかり決まっているわけではないのかも知れない。
- 「乱」: 大きな騒動によって、世の中の安寧が失われること。権力構造の変革を伴うことが多い。
- 「変」: 異常な出来事や社会的な事件、政変や動乱が起こること。権力構造の変革を伴わない。
- 「役」: 辺境の地での戦い・外国での戦いなど、兵を率いて遠征する戦いを指す。
- 「陣」: 局地的な戦闘・城攻め等に用いられる。
なる程、概ねの傾向はこんな感じのようだ。例外もあるみたいだけど、歴史的な戦いについてこの様な使い分けがなされているようなのだけれど、近代は使わないのかな?
コメント
うんうん、東京でも一部の在日支那人たちによる反共産党集会が行われているそうですよ。
いま世界中でみられる在外支那人デモの主張は、反ゼロコロナ政策への支援から、いつのまにか、反共産党・反習近平にすり替わりつつあるようですね。
曰く、「独裁は要らない」、「自由が欲しい」、「共産党は退陣せよ」云々。
紅皇帝習近平は、早くも世界から自由思想に包囲されるのでしょうか!?
駅前で支那人が集まって反対集会をやっていたようですね。
祖国でやれと言いたいところではありますが、祖国でやると即命に関わりますから、それを言うのは酷かも知れません。
紅帝習近平はどうするんでしょうね。
こんにちは。
日本の歴史においては、「変」は成功、「乱」は失敗した革命運動、というのを最近知りました<お恥ずかしい。
果たして、「白紙革命」はどっちになりますやら。
国外でどうこう、というのは、
・日本人は無関心
・欧米はチャイナマネーに毒されている(日本もか)
ので、あまり交換は期待出来ないと思ってますが、中国国内の動きがイマイチわからないのが歯痒いですね。
江沢民氏が無くなり、李克強氏は更迭された(と聞きます)とのことで、「裸の王様」がこれからどうなるか、全く予断を許さないかと。
正直、ワールドカップよりこっちの方がニュースソース的には価値があるはずなのですが……
> 日本の歴史においては、「変」は成功、「乱」は失敗した革命運動
そうなんですか。何故違うのかと漠然と思っていましたが、学校で教えてくれたらもっと興味を持てたのに。お恥ずかしながら知りませんでしたので、教えて頂きありがとうございました。
全裸皇帝習近平、どうするんでしょうね。
興味深い動きであります。
>木霊様 みみこ様
コメント&追記感謝であります。
その時々で、厳密に定義し切れてなかったり、既に慣用句的になっていたりするものもあるのでしょうか。
いずれにしても、
「学校で教えてくれたらもっと興味を持てたのに。」
全くその通りでありますね。教育側は、もっと生徒が興味を持てるように考えた方が良い。
「変」と「乱」、それはちょっと違うような…。
「長屋王の変」がありませんか。
「変」と「乱」はサイトによって若干定義に揺れがあるようですね。
色々な定義を覗いてみましたが、追記に書いたような感じの定義が矛盾が無さそうです。
こんな感じの事まで歴史の事業で教えてもらえると、楽しかったかもしれないのに。学生時代に知ることが出来なかったのがちょっと残念です。
どう転んでも穏便には済みそうにない爆薬庫と言いますか…中露ともに、独裁というか、中央集権体制の限界が見えてきた気がするのです…
ヤバいところに火を付けちゃいましたからね。
武漢ウイルス漏洩が切っ掛けでこんな事になっちゃいましたから、自業自得な部分もあるのですが、判断を誤りましたよね。