日本の潜水艦もついにVLS搭載の時代に?

防衛政策

この手の研究は既にやられていると思ったのだけれど、未だだったのか。

トマホーク搭載の潜水艦を視野、「実験艦」新造を検討…防衛大綱に開発方針記載へ

2022/10/29 05:00

政府は、長射程ミサイルを発射可能な潜水艦の保有に向け、技術的課題を検証する「実験艦」を新造する方向で調整に入った。年末までに改定する防衛計画の大綱に開発方針を盛り込む見通しだ。実戦配備に進めば、米国政府に購入を打診している巡航ミサイル「トマホーク」の搭載も視野に入れる。

「讀賣新聞」より

正直、日本の潜水艦は待ち伏せ戦略が主体なので、ミサイルをぶっ放すことは想定されていない。魚雷発射管から対地ミサイルを発射することもできるのだが、発射口には限りがあるので、複数種類のミサイルを発射管から発射するようにすることは余り好ましくはないだろう。

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変わる潜水艦ドクトリン

VLS搭載

で、そうなってくると、VLS(Vertical Launching System:垂直発射送致)の搭載はどうかという話になる。

実験艦は2024年度にも設計に着手し、数年かけて建造する計画だ。ミサイル発射方式は、胴体からの垂直発射と、魚雷と同様の水平方向への発射の両案を検討する。実験艦の試験を踏まえ、10年以内に実用艦の導入を最終判断する。

「讀賣新聞”トマホーク搭載の潜水艦を視野、「実験艦」新造を検討”」より

実際に検討するらしい。

10年以内に導入を最終判断って、遅いのだけれど、相応の時間がかかることは避けられない。「今更?」と問い詰めたところで意味は無いのである。

VLSを潜水艦に設けると、こんな感じになる。

ミサイルを発射するハッチを艦体の上側に設けるのだけれど、そのためには今の3,000t級潜水艦ではちょっと大きさが足らない。

参考になるのが韓国が作っている3,000t級潜水艦、島山安昌浩級潜水艦で、6セルのVLSを搭載して水中排水量が3,800tとなっている。

他の事例では、原子力潜水艦であるアメリカのバージニア級は12セルのVLSを搭載して水中排水量7,800t、ロサンゼルス級のフライトII及びフライトIIIが12セルのVLSを搭載して水中排水量7,200t弱ということになっていて、別格のシーウルフ級や、戦略ミサイル原子力潜水艦であるオハイオ級、コロンビア級などは参考にならないものの、アメリカの潜水艦は概ね7,000tオーバーとなっている。

韓国の潜水艦は小さな艦体に無理矢理VLSを詰め込む形にしてあるが、恐らく居住スペースが犠牲になっているのだろう事と、214型潜水艦が単殻式であったことを考えると、島山安昌浩級潜水艦も単殻式であろうと思われ、それらが艦内スペースを広くとれる理由でもある。

故に、動力に原子炉を積むかという議論はあれど、VLSを搭載するのであれば、せめて6セル以上で4,000tオーバークラスは必要になると思われる。

新造艦たいげい型潜水艦

では、我が国の最新の潜水艦はどうか?というと、大型化の一途を辿っている。

3隻目の最新鋭潜水艦「じんげい」、三菱重工神戸で命名・進水式 24年引き渡しへ

2022.10.12

三菱重工業神戸造船所(神戸市兵庫区)で12日、防衛省向け潜水艦「じんげい」(約3千トン)の命名・進水式があった。最新鋭艦「たいげい型」の3隻目で、同造船所で建造される潜水艦は戦後30隻目となった。

全長84メートル、幅9・1メートル、高さ10・4メートルで、乗員約70人。先代の「そうりゅう型」に比べ、探知能力が向上したソナー(水中音波探知機)を備え、静粛性を高めた船体構造が特長。リチウムイオン電池の電力で動き、航続能力も向上させた。建造費は約699億円。

「神戸新聞」より

世界でも珍しいリチウムイオン電池搭載艦で、基準排水量は3,000tと報道されている(注:水中排水量は公表されておらず、おそらくは4,000tオーバーだと思われる)。

なお、兵装には非公表だが魚雷発射管6門をそうりゅう型潜水艦から踏襲していると思われ、ハープーンや対艦ミサイルを発射出来ると報じられている。

搭載されるUGM-84 ハープーンは、アメリカ製のミサイルで、射程は124km以上とされている。ハープーンは魚雷発射管から発射されるタイプなのだが、全長は4.63m、直径は34.3cmとトマホークミサイルに比べて少々小型である。

トマホークが全長5.56m、直径52cmなので、魚雷発射管から射出する前提であれば、おそらくは結構な改造が必要となる。新しく搭載された18式魚雷の仕様なども含めて詳しい情報は余り開示されておらず、何とも言えない部分もある。おそらくは、現状の魚雷発射管からの射出は難しいのだろうね。

とまあ、そういったことを考えていくと、VLS搭載をする為には艦体を大きくする必要があるだろうと思われるし、駆動方式がディーゼル・エレクトリック方式で問題がないのか?ということも含めて考える必要があるのだろう。

長射程のミサイル発射を可能とする

この話、結局のところ、日本の潜水艦運用の方針に大きく関わるだろうと思われる。

対地の長射程ミサイルを発射可能な潜水艦は、米英仏中露などが保有する。韓国も弾道ミサイルを発射できる潜水艦を配備している。

「讀賣新聞”トマホーク搭載の潜水艦を視野、「実験艦」新造を検討”」より

「潜水艦から対地ミサイル攻撃ができる様にする」というのは、これまでの日本の潜水艦運用ドクトリンにはなかった発想である。

待ち伏せして、艦船や潜水艦を攻撃することが海上自衛隊の潜水艦の任務であったため、その方向で様々な技術が開発されたのだけれど、長距離対地ミサイルを搭載するとなると、異なるドクトリンが必要となる。

潜伏している段階で対地ミサイル攻撃をした後、その海域を急速離脱できる能力が必要となる。単に対地ミサイル攻撃をするだけなら、たいげい型潜水艦の改修でもイケルと思うけれど。

まあ、そんな訳で、良くも悪くも研究開発に着手するしか無いし、色々直ぐに実現する訳でも無い。事ほど左様に国防態勢を変化させるには時間がかかるのだから、為政者がしっかりとしたビジョンをもっている必要がある。

コメント

  1. こんにちは。

    昔の潜水艦みたいに、輸送用のコンテナの代わりにVLS積めたコンテナ引っ張って歩けば……

    って、それは、末期のガ島とかに米届ける苦肉の策ですが。

    • いやー、流石に潜水艦でそれは難しいでしょう。
      それなら大きくした方が。
      でもまあ、デカい潜水艦と言われた伊四百型潜水艦でも、水中排水量6560t程度ですから、今の原子力潜水艦が如何にばかデカいか。