ポーランドの原発建設を巡ってアメリカと韓国がバトル

北米ニュース

正直言うが、韓国に勝ち目はない。

米原子力企業が韓国の原発輸出めぐり提訴

Write: 2022-10-25 14:58:12/Update: 2022-10-25 15:00:09

アメリカの原子力関連企業ウェスティングハウスは21日(現地時間)、ワシントンの連邦地方裁判所に韓国電力公社と子会社の韓国水力原子力を相手取って訴訟を起こしました。

ウェスティングハウスは、韓国水力原子力がポーランドの原発建設プロジェクトに入札した次世代加圧軽水炉「APR1400」は、自社の技術で作られたものであり、韓国水力原子力が知的財産権を侵害したと主張しています。

「KBS WORLD」より

いくつかのサイトで取り扱ってるのを見かけて、「またか」と思ったのだけれど、意外にこの問題が正確に把握されていなかったので、少し解説をしてみたいと思う。

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「また」訴訟を起こされる韓国

APR1400は誰のもの?

韓国標準型原子炉、それがARP1400の韓国内での通り名である。

ただし、韓国には原子炉を作り上げる技術はなかったので、スイスのABB社と技術提携を行って、ABB社製のSystem80と呼ばれるタイプの原子炉をベースにOPR-1000というタイプの原子炉を作り上げた。更に、ABB-CE社のSystem80+をベースにAPR-1400というタイプの原子炉を作り上げている。

ここでちょっとややこしいのは、アセア社はスウェーデンの会社で、ブラウン・ボペリ社がスイスの会社。両方とも電機の会社で1988年に合弁会社としてアセア・ブラウン・ボペリ社(ABB社)を立ち上げている。

更に、1990年、アメリカのコンバッション・エンジニアリング社(CE社)を子会社化。これがABB-CE社である。後に、アメリカのウエスチングハウス社の傘下に入っているので、冒頭のニュースでは、韓国電力公社と韓国水力原子力社がウエスチングハウス社に訴えられる構図になっているんだな。

で、話がややこしいのは、ウエスチングハウス社はSystem80やSystem80+に関する特許技術をアメリカ国内で複数持っていて、世界的にも欧州を中心に特許を取得している点だな。

でも、実際にSystem80が原子炉として建設されたのは、韓国内のみ。韓国ではOPR-1000という型の5機の原子炉が建設されている。

一方のAPR-1400も4基が建設されている模様。

ただ、これが韓国からアラブ首長国連邦に輸出されたのはのちの話である。

UAEで建設される「韓国の原発」

何が凄いって、韓国が「自国の技術です」という体で輸出したことだ。その辺りの話に関してはこちらの記事に書いた。

で、このUAEへ輸出の際に、問題が発生。この記事で触りだけちょろっと書いたのだけれど、引用しておこう。

ABB-CE社にとって、原子力技術は「虎の子」であったが、残念な事にアメリカではスリーマイル島原子力発電所事故(1979年3月28日)より原子力発電所の建設ができないでいる。そうした背景から原子力事業はあっちこっちの会社を転々とし、今は東芝グループ傘下にあるウエスチングハウス・エレクトリック社がライセンス管理をしているようだ。だが、これもまた権利関係がややこしい事になっているようで。

実際に、ウエスチングハウス・エレクトリック社が韓国電力に対してAPR-1400に使われた技術に関する知的所有権を主張するような事もあって、輸出にストップがかかる騒ぎがあった。これがどうやって解決されたかは不明だが、「韓国水力原子力(韓水原)が独自技術で建設した韓国型原発「APR1400」」というのは嘘であることが分かる。

「弊ブログ”UAEの韓国世原発、運転承認される”より」

この時には余り気にしていなかったのだが、本来、韓国からUAEに輸出されるケースで、アメリカが横槍を入れられるとしたら、特許権を韓国かUAEに持っている必要がある。

おそらく、韓国で原子炉を作ったのだから、原子炉に関する特許を韓国内に持っていたのだろうと思っていた。

アメリカ国内で訴訟

ところが、今回のニュースではこんな記載が。

アメリカの原子力関連企業ウェスティングハウスは21日(現地時間)、ワシントンの連邦地方裁判所に韓国電力公社と子会社の韓国水力原子力を相手取って訴訟を起こしました。

ウェスティングハウスは、韓国水力原子力がポーランドの原発建設プロジェクトに入札した次世代加圧軽水炉「APR1400」は、自社の技術で作られたものであり、韓国水力原子力が知的財産権を侵害したと主張しています。

「KBS WORLD”米原子力企業が韓国の原発輸出めぐり提訴”」より

あれ、訴訟はアメリカで??

また、「APR1400」に使われている技術は、連邦法により海外への無断での移転が禁じられていて、アメリカ政府の許可なしに韓国企業が第3国に輸出することはできないとしています。

「KBS WORLD”米原子力企業が韓国の原発輸出めぐり提訴”」より

えーと、知的財産権の侵害では?

てっきり僕は、特許権が問題だと思っていたのだが、調べてみると、アメリカには輸出管理規制法、特許法、経済スパイ法の3つがあって、特に輸出管理規制法では「一定量を超えて、海外での外国製品に組み込まれた米国が出所である部品、構成部品、材料、または他の製品、外国製ソフトウェアに編入された米国が出所である技術」について、管理されるとある。

日本の特許法の概念からすると、これは随分権限を逸脱した強力な法律で、アメリカ国内に拠点を持つ外国企業に対して請求が可能な権利として規定されている。

すげーよ、アメリカ。

これは言ってみれば、サムスン電子が韓国から日本以外の外国に輸出する製品の中に、日本の部品特許やら製法特許やらが含まれていると、その件に関して日本にあるサムスン電子を相手に申立が出来るという、極めて強力なツールである。

流石にこれには抜け道があって、事前にライセンス申請がしてあれば勝手に輸出できるわけだが、その際にはライセンス料をずっと支払っている必要があるわけで。

アメリカ側の牽制

で、韓国メディアは、ポーランドに韓国から輸出する原発の競合先がウエスチングハウス社なので、嫌がらせではないかと分析している。

2043年までに合わせて6基を建設することになっているポーランドの原発事業の受注をめぐって、韓国とアメリカが競合しているなか、韓国水力原子力に対し法的に歯止めをかけようとしているものとみられます。

また、ポーランドだけでなく、サウジアラビアやチェコなど、韓国水力原子力が原発事業を受注したほかの国々についても言及し、けん制しました。

「KBS WORLD”米原子力企業が韓国の原発輸出めぐり提訴”」より

だが、そもそも知的財産権というヤツは、嫌がらせ目的で使われることの多い権利である。アメリカの知的財産権は、少々度が過ぎる部分が多いように思われるけれど、それでもアメリカの国益保護という意味では強力なツールとなり得る。

そりゃ、アメリカにしてみたら、アメリカで技術開発された技術を、韓国が勝手にコピーして外国に持ち出すわけだから、たまったものではないだろう。

とはいえ、System80にしてもSystem80+にしても、設計から20年以上経過していて、本来であれば特許権の保護範囲からは外れる技術。特許法は技術の開示と推進を目的として、利用と独占のバランスを取っている。だがそれは国内向けの話なのだ。そして韓国が強気でいる理由は、特許の保護期間が切れていることと、アメリカにとって第三国への輸出案件だからということが関係していると思われる。だけどそれ、UAEの時に既に失敗しているよね?

日本であればこういったケースに対応できる法律はないのだが、アメリカには「その技術、アメリカにルーツがあるよね」というだけで牽制が出来てしまう恐ろしい法律がある。

原発輸出は韓国政府が重点的に推進してきた事業であり、韓米間の協力を約束した分野だ。ユン大統領は25日、是正演説で「原発輸出を積極的に支援する」と話した。ユン大統領とチョ・バイデン大統領は去る5月首脳会談で第3国原発市場進出など原子力協力強化を合意した。韓水原がポーランドの原発受注に失敗し、訴訟で負ければ、この問題が韓国産電気差別論議に続くもう一つの韓米対立要因として浮上するものと見られる。

一方、ポーランドは6~9ギガワット(GW)規模の原発6基を建設する新規原発事業を推進中だ。このうち最初の原発事業者選定を控えている。この原発事業には、韓水原とウェスティングハウス、フランスEDFなど3か所が提案書を提出して競争している。ハン・スウォンは最低価格を使い、ウェスティングハウスが二番目に高い価格を提示した。

ただ、死神副首相は近いうちに韓国を訪れ、原発事業に対する議論に乗り出すことが分かった。ポーランドは、初の新規原発事業とは別に、民間企業主導の第二の新規原発事業を進める方針だ。これに先立ち、ポーランドメディアはこの事業を主導する民間エネルギー企業ゼパクが韓水原と事業意向書( LOI )を締結する可能性が高いと報道した。

「NAVER」より

韓国が原発輸出にあたって、アメリカにとって不当な安値で入札をしたことが、アメリカにとってはそれは許せる話ではなく、そもそもそれはアメリカのCE社の技術だろう?という話になる。だから、輸出管理規制法を利用して嫌がらせをしているというのが、今回の大筋の話の流れだろう。

韓国にとっては厄介な法律があって、腹立たしい思いだろうが、技術開発スパンの長い原子炉の技術に関して言えば、特許法だけの保護期間では短すぎる。それなりに保護期間を伸ばす方法もないわけではないのだが、本件はおそらく特許法だけでは弱い。

だからこそ、ということなんだろうね。

韓国が素直にアメリカに金を払って解決すればよいのだろうけれど、そうすると入札金額では釣り合いが取れないのだろう。技術開発にお金をかけない韓国にとっては、アメリカの言い分は理解し難いことかもしれないけれど。

追記

あっさり負けた模様。

ポーランドの原発アメリカを選択… 電気自動車に続いて原発「差別」論争

入力2022-10-29 19:30 | 修正 2022-10-29 19:55

韓国政府が受注に供与してきたポーランドの初の原子力発電所建設第1段階事業者に米国企業が選ばれました。
安保論理に当社が再び差別を受けたという議論が提起された中、米国企業との共助の可能性も提起されます。
ワシントン最中落特派員です。

~~略~~

ただし、独自の原発施工能力が落ちたウェスティングハウスが競争者である韓国水力原子力と共助し、韓水原もポーランド原発2段階事業に対する協力意向書を来る31日締結する計画です。

「MBN」より

「差別された!」と噴出しているようだが、完全敗北というわけではなかったようだ。ふーん、施工能力が落ちたから現地の施工は韓国が協力するとな。

……確かに、東芝がアメリカに原子炉を作ろうとして、現地の作業者が使えなさすぎて作業が進まなかったという残念な話があっただけに、原子炉建設はアメリカであったとしてもハードルは高いのだろう。

だけど、UAEの話を聞いていると、韓国の技術者もそんなに質は良くないみたいだぞ。大丈夫なのかな、この話。

追記2

おっと、韓国も受注出来たらしいというニュースが。

Poland, South Korea to cooperate on nuclear power project

October 31, 20228:13 PM GMT+9

Seoul and Warsaw signed outline agreements to develop nuclear power in Poland, ministries from both countries said on Monday, as Poland strives to phase out coal and lower its carbon emissions and South Korea seeks to revive its nuclear industry.

~~対訳~~

ポーランドと韓国、原子力発電プロジェクトで協力へ

ソウルとワルシャワはポーランドで原子力発電を開発するための概要協定に署名したと、両国の省庁が月曜日に発表した。ポーランドは石炭を廃止して炭素排出量を減らすことに努め、韓国は原子力産業を復活させようとしているためである。

「ロイター」より

これは、どうなんだ。

誤報というわけではなく、アメリカも原子炉を造るし、韓国も原子炉を造るという事になったようだ。スゲーなポーランド。その決断が失敗とならなければ良いけど。

別に、アメリカの技術が優れているから、任せておけばOKなどという積もりはないけれど、UAEの例を考えると、ちょっとマズイ判断だったんじゃないかなと。

コメント

  1. ダンピング受注しないと売れる物がない南朝鮮にとってはアメリカの輸出管理規制法で受注勝負になった場合殺されるのは割と良くありそうですよね。

    とにかく急いでドル調達しないと自転車操業すら止まって死ぬのに大変そう(ハナホジ)

    • 韓国のたちの悪い所は、この手の知的財産権絡みの案件でも、「自国の技術だ」と言い張って輸出しようとするところですね。
      当然、韓国が受注して建設を勝手に始めたとしても、現地に立ち入って調査すれば直ぐに分かる話ですが、アメリカがポーランドに「調査させてくれ」と横車を押すのも難しい。
      まあ、その辺りはアメリカも十分に理解していて、上手いこと締め上げるのでしょうけれど。

      「急いでドル調達」の下りですが、僕は既にその段階にすらないと踏んでいます。
      おそらく、「急いでウォン調達しないと」という次元の話で、しかし韓国銀行がウォンを大量に刷ればインフレが加速してしまって国民が飢える。けれど、別の記事でも書きましたが、債券を出して調達しようとしても金利の問題で首が締まる一方で、それどころかクラウディングアウト状態で資金の枯渇は目前。大量倒産が発生する前に手を打ちたい韓国政府に打つ手がないという悲惨な状況です。

  2. こんにちは。

    こういう、詰めが甘いというかガバガバというか、知財その他の認識がまるで現代基準に合っていない(その意味では本邦企業の古い経営者にも散見されますが)あたりが韓国だなぁ、と思うのですが。

    とりあえず、何でもかんでも「韓国型」って言うの(Kなんちゃらもですが)、見ていて痛々しいのでいいかげん止めてくれませんかね……厨二病こじらせたヒキニートみたいで……

    • 日本でも、戦略的に特許された技術を守ろうという動きがあって、漸くですが秘密特許」の話が出てきました。
      そもそも特許法というのは国内を想定して作られた制度ですから、外国に対してどういう効果を及ぼすかという点について、国防の観点から見るという発想は無かったのですよね。
      パリ協定みたいなところで多少は調整しているようですが、この手の議論は非常に時間がかかるのがネックであります。

      では韓国は、というと、こちらはなかなか大変なお国柄なので、実際に「ガバガバ」と言われても仕方が無い感じですね。
      韓国型というのは自尊心の表れなのでしょうけれど、なかなか是正することは難しいかも知れませんよ。