アメリカはイランの脅威にも苦慮

中東ニュース

さて、ロシア軍によるウクライナ侵攻の問題ばかりに目が行きがちだが、中東もイランを中心に面倒くさいことになっているようだ。

米、イランの脅威から目そらさず サウジとの関係見直しで=国務省

2022年10月12日4:38 午前

米国務省のプライス報道官は11日、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」による大幅減産決定を受けたサウジアラビアとの関係見直しにおいて、イランの脅威から目をそらすつもりはないと述べた。

「ロイター」より

このロイターの記事、ちょっと読んだだけではサッパリ意味が分からない。何か、アメリカの国務省の報道官が、「イラン?ああ、イランね。忘れていないよ」と、そんな感じのコメントを出した風にも読める。

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イラン国内での抗議活動の激化

外務省の出すスポット情報

先ずは、10月6日に出された外務省のスポット情報から紹介していこう。

イランにおける抗議活動の発生に関する注意喚起

2022年10月06日

【ポイント】

●イランにおいて、ヘジャブ指導を受けた女性の死亡に対する抗議活動がテヘラン市を含むイラン全土で継続しており、死傷者及び拘束者が発生しています。

●当面の間、不測の事態に巻き込まれないよう、幅広く最新の情報の入手に努めつつ行動してください。また、抗議に参加する意図はなくとも、抗議活動の現場においてデモ隊と治安当局の衝突等に巻き込まれるおそれがあるため、抗議活動が行われている場所には近づかないなど、自らの安全確保に努めてください。

「外務省のサイト」より

ふむ、抗議活動がイラン全土で継続中なので、渡航する場合には十分に気をつけろ、という事らしい。

渡航に関しては「黄色」の「レベル1:十分注意してください」が大半で、「薄橙色」の「レベル2:不急不要の渡航は止めてください」が一部地域に、「橙色」の「レベル3:渡航は止めてください」が沿岸地域に出ている他、「赤色」の「レベル4:退避勧告」が沿岸部に出ている。

外務省の出すスポット情報は、よほど危険な状況にならないとレベル4まで出さないのだが、命の危険がある場合には赤くなるワケだ。

ここまで緊張が高まっている理由として挙げられているのがこちらの事件だ。

イラン革命防衛隊の司令官、米軍の空爆で死亡 バグダッド到着後

2020年1月3日

イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップ、カセム・ソレイマニ司令官が3日、イラク・バグダッドで米軍の空爆によって死亡した。米国防総省は、「大統領の指示」によって司令官を殺害したと認めた。ソレイマニ司令官は、イラン国内できわめて重要で人気の高い、英雄視される存在だった。

「BBC」より

アメリカが空爆によってソレイマニ将軍の殺害を行い、これに対する報復攻撃としてイラン側がアメリカ軍基地に弾道ミサイルをぶち込んだ。

イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃 イランが司令官殺害の報復と宣言

2020年1月8日

米国防総省は7日夜、イラク国内で米軍が駐留する少なくとも2カ所の空軍基地が、十数発の弾道ミサイルで攻撃されたと発表した。ドナルド・トランプ米大統領が「何もかも大丈夫だ!」とツイートする一方で、イランのジャヴァド・ザリフ外相は「我々はエスカレーションを望んでいない」とツイートした。

「BBC」より

野蛮な国だな!え?どっちがって?そりゃ、イランもアメリカも両方ともだよ。アメリカに近い立ち位置にいる日本としても、この関係悪化の影響は避けられない。

そもそも仲が悪いのは何故?

アメリカとイランとの外交は19世紀に始まっており、当初は比較的良好だったようだ。第二次世界大戦まではかなり親密になっていて、その背景にあるのがイランにおけるイギリスやロシアに対する嫌悪感であったようだ。

ところが、イラン・イスラーム革命(1979年)の勃発によって、この関係は終わる。

「イラン近代化の父」とされるモハマンド・レザー・シャー・バフラヴィー(パフラヴィー2世)は1941年にイラン皇帝の座につくと、近代化政策を強力に推し進めた。2代目にして最後の皇帝となったシャーは、アメリカの支援を受けて権力を拡大したのだが、女性解放などの政策を推進したためにイスラム法学者の反発を招き、その上、1970年代中盤に発生したオイルショックの影響で経営が破綻。その結果、求心力を失って国内の混乱を招き、イラン・イスラーム革命が勃発。

新たなイランの指導者となったアーヤトッラー・ホメイニーは、アメリカを「大悪魔」・「不信仰者の国」と痛罵し、関係を悪化させた。

特に、イランアメリカ大使館人質事件(1979年11月4日)の発生は、アメリカとイランの間の国交を回復不能になるまで引き裂いたと言われている。

その他にも様々な事件があったのだけれど、ここでは割愛する。

ああ、イスラエルに対する姿勢がアメリカとイランとで異なる点も、相容れない理由の内の1つと言えるかも知れない。

イランの国内情勢も悪化

さて、冒頭に紹介したスポット情報には、「ヘジャブ指導を受けた女性の死亡」の抗議活動に関する記載がある。

イラン抗議デモ 女性への警察官の暴行否定も収束見通し立たず

2022年10月8日 11時17分

イランでデモが広がるきっかけとなった女性が死亡した理由をめぐり、イラン政府系の専門機関は「脳の病気が原因だ」とする調査結果を発表し、警察官による暴行が原因だとする疑惑を否定しました。 しかし、デモは8日も呼びかけられていて、収束の見通しは立っていません。

~~略~~

イラン各地でデモ隊と治安当局の衝突が続く中、アメリカ国務省のパテル副報道官は7日、記者会見で「イラン政府は平和的なデモに対し残虐な弾圧を加え、100人以上を殺害した。信用できる人権団体の情報だ」と述べました。

「NHKニュース」より

なかなかの混乱っぷりだな。

抗議活動が行われるだけならば良いのだが、どうやらイランでは市民に対して当局が暴力を振るって弾圧をしている模様。

イラン抗議デモ 政権側「デモ参加の少女2人は自殺」と強調

2022年10月12日 6時58分

イランでスカーフのかぶり方をめぐり、逮捕された女性が死亡したことに抗議するデモが続くなか、デモに参加していたとみられる10代の少女2人が死亡し、政権側は、いずれも自殺で、デモとは関係ないと強調しています。

「NHKニュース」より

そもそものデモの発端が女性のスカーフの被り方が不適切だったことだというのだから、日本ではちょっと考えられない。どうやらスカーフの被り方は法律にも記載があるらしい。

パフラヴィー2世の時代には、女性解放を謳ってヒジャブやスカーフなどを外す方向に動いていただけに、なんとも複雑な感じがする。イスラム法学者達の主張は、既に1970年代から時代に合わなくなってきていたのに、イスラーム革命はそれを覆した。

イスラームでは女性の人権が蹂躙されているのに、こういったシーンでは日本のパヨクさん達やフェミニスト達は立ち上がろうとしないんだねぇ。

話が逸れてしまったが、デモは、逮捕された女性が死亡したことで大きくなり過激化したようだ。治安当局が抗議活動を行っている女性を襲撃したという動画も拡散されていて、混乱は収まりそうにない。

アメリカやイスラエルが仕組んだ

それどころか、最高指導者がこんな寝言を言う始末である。

最高指導者アリ・ハメネイ師は3日になって初めて、各地のデモに言及。マサ・アミニさん(22)が死亡したことで「みんな深く悲しんでいる」と述べた。ハメネイ師は、抗議デモはアメリカやイスラエルが仕組んだものだとの考えも示し、治安当局はデモ取り締まりを継続する必要があると述べた。

「BBC”イランの女子生徒たち、スカーフ外して準軍事組織の関係者を罵倒”」より

イランの法律に何か文句を言うつもりはないけれど、国内の混乱をアメリカやイスラエルのせいにするのはどうかと思う。イランとしては、関係が良くないアメリカやイスラエルのせいにしておけば、簡単なのだろうが、ちょっとその決めつけは乱暴すぎるだろう。

何しろ、自由を求める自国民を弾圧しているのは他ならぬイラン政府なのだ。

複数の人権団体はイランの治安当局が市民を多数殺害していると非難している。南東部シスタン・バルチスタン州の州都ザヘダンで9月30日に起きた治安当局による反政府デモの取り締まりでは、83人が死亡したとされている。

パキスタンおよびアフガニスタンと国境を接するシスタン・バルチスタン州には、イランでは少数派のイスラム教スンニ派が多く住む。治安当局は、ザヘダンでの騒乱は武装したバルチ分離派が当局を攻撃したことで起きたと主張しているが、市内最大のモスクのイマーム(指導者)はこれを否定している。

「BBC”イランの女子生徒たち、スカーフ外して準軍事組織の関係者を罵倒”」より

実に支那と親和性の高そうな話ではあるが、残念な事に世界ではこういった為政者達が沢山いるのだ。イランの混乱に乗じてアメリカやイスラエルが介入するという展開も可能性としてはあるのだが、流石に多方面に手を出せるような状況似ないアメリカは、当面静観の構えだろう。

中東の不安定化は世界経済にも影響

ただ、中東が混乱すると原油価格不安定化など不安要素が増えるため、混乱がこれ以上広がって欲しくないというのもアメリカの偽らざる願いだろう。

イラクから米軍を撤退させたアメリカは、イラク国内でシーア派の内部対立が深刻化して内戦に突入するかも知れないという状況を迎えたことを苦々しく思っているだろう。その隣国イランでもこんな状況なのだから、中東の和平は遠ざかるばかりである。

イランで拡大のデモ イギリスが風紀警察や革命防衛隊幹部ら制裁へ

2022年10月11日(火) 11:36

中東イランでスカーフの着用などをめぐる女性への弾圧を受け、抗議デモが拡大する中、イギリスは、イランの風紀警察やイラン革命防衛隊の幹部ら7人に制裁を科すことを決めました。

~~略~~

イギリスのクレバリー外相は声明で、「この制裁はイラン指導部に明確なメッセージを送るものだ。女性を抑圧し、国民に激しい暴力を加えたことについて責任を追及する」と強調。

同様の制裁はアメリカが既に発動させているほか、EUも検討しているということです。

「TBS NEWS」より

各国がイランに対する制裁に乗りだしているので、この話は更に面倒くさくなるだろう。

そしてこの混乱の一端には、ロシアの国力低下や支那からのチャイナマネー流入が減った事などがあって、情勢は更にややこしい。元々、中東は世界経済への不安定要因ではあったのだが、ウクライナ情勢が加わって混沌としているのが現実である。前の記事で紹介したが、ロシア軍にドローンを供給しているのがイランなのだから。

更に悪いことに、日本のエネルギーは9割が中東に依存している。日本としてもこれを座視する訳には行かないのだけれど。

コメント

  1. イスラムとかいう中東環境用ローカル宗教のままでいた方が絶対に幸せだった宗教を無理やり広げた連中って絶対宗教的熱狂(権威や権力込み)で酔った馬鹿だよな。
    まぁ宗教的熱狂で戦争するのって便利なんだけど(EU4並感)
    地元ローカルとしては生活や政治で非常に有用で族滅合戦を防ぐ妥協ルールとして通用していたのにさぁ。
    キリスト教もやってること大概糞だけど。儒教に至っては現代だと害だらけだけど。
    イランがイスラム革命なんてやったせいでリムランドにおける流通ルートが破壊されて支那が膨張する原因になった説割と個人的には有りかなって思います。

    • 宗教的な話を持ち出すとややこしくなるのでできるだけ避けたいところではありますが、一神教はどうしても他の宗教が認められないという流れになりがちであります。そして、一神教を使って政治をやると、相手を殲滅するという流れに乗りがちであります。
      そんなわけで、イスラム教圏の方々は衝突回避というのが難しいのでしょうというのが僕の理解です。
      欧米もキリスト教徒ばかりですから、色々妥協できない部分はあるんでしょうね。

      中東の部族間紛争に首を突っ込んだところで碌な結果にならないことは歴史が証明しているのですが、石油が出るところというのがネックですよね。
      上手い解決方法があればいいんですが。

  2. こんにちは。

    >新たなイランの指導者となったアーヤトッラー・ホメイニーは、アメリカを「大悪魔」・「不信仰者の国」と痛罵し、関係を悪化させた。

    宗教家が首長になってろくな事にならなかった好例みたいな感じですが、それももう40年前なんですよね。
    翻って、本邦を同様に「絶対悪」「戦犯国」と痛罵し、関係を悪化させている国がすぐ隣に……
    40年後が(悪い意味で)楽しみです。
    ※アレも宗教みたいなもの、ご本尊がないだけ余計にタチが悪い。

    • 宗教家が強い政治力を持つと、どうしても、ねぇ。
      そういう意味では支那共産党も宗教みたいなものですし、習近平氏は支那で神(皇帝)になろうとしていますから、まあ、ろくなことにはならないでしょう。
      あ、共産党大会も始まるんでしたっけ。
      韓国?韓国はスルーで良くないですか?

      • 木霊さん みなさん こんばんは

         うーん イラン・イラク、、、旧ペルシャの戦乱について、みなさん、、プロパガンダに騙されていませんか?
        プロパガンダの例
         ①イスラム教問題 ②石油資源問題、、、真実もかなり含まれてますが、プロパガンダに騙され、〇〇教を悪者にしてませんか? 

         旧ペルシャ地域は、、、地政学上の悲劇とでも言いますが、判明している限り3〜4千年前 、石油資源もイスラム教もキリスト教もなかった頃から、文明・交易の要所、、、高度な文明発達と、グダグダの戦乱 を繰り返し、

        どちらかと言えば戦乱期の方が普通であった地域です。この地政学的要件を理解しないとこの地域の瀬略は誤る(ノーマン・シュワルツコフ:湾岸戦争多国籍軍総指揮官の言)

         地政学的に争いの元となっていた、、、(地域住民はたまったもんじゃない被害者側ですね)

         前提はここまでとして、、、

         >「ヘジャブ指導を受けた女性の死亡」の抗議活動
         なんか事実関係が不透明すぎて、BLM運動とそっくりですね。私もバックを疑います。

         >アメリカやイスラエルが仕組んだ、、、寝言
         寝言ですか? イランにとって、アメリカは核合意の一方的破棄等、前科がありすぎて、疑うに十分と思いますが

         >一神教はどうしても他の宗教が認められないという流れになりがちであります。そして、一神教を使って政治をやると、相手を殲滅するという流れに乗りがちであります。

         これ、完全に誤解です。

        キリスト教もイスラム教も、出だしは新興の、ただし世界宗教(ユダヤ教みたいな民族限定でない)で、元の教えとしては異教には寛容です。

          でユダヤ・キリスト・イスラムは同じ最高神(エホバ=アラー)を崇める、我々日本人から見れば同じ宗教の分派でしかない。
         しかし、、、宗教的な純粋性を求める人々は「内部の異分子」を外部より顕著に嫌悪します。 パヨクの内ゲバみたいなもんですかね?

         これが正体、実質的には同じ宗教なのに細部が異なるキリスト教・イスラム教が世界1.2位の宗教勢力となり、、、、、
         内ゲバを世界戦にしてしまっているのが、現在の悲劇のモトなので、こういう前提で物事を考えないとプロパガンダに騙されます。

        結論、、、、飛躍ですがぁああ、、、

         いきなり核合意破棄してくるなんて、トランプって何考えてるの? どうやって付き合えば良いの? と ハーメネイ師から相談を持ちかけられた日本の天才 安倍晋三 さんを失ったのは日本どころか世界の損失!

         あのときの日本タンカー攻撃は恐らくイスラエルと個人的には考えてます。。。

      • 中東問題に関して、以前このブログで別の方からも突っ込まれた記憶があって、「なる程なぁ」と感心した記憶がありますが、あれは「民族紛争」ではなく「部族紛争」であると、そんな理解であります。
        民族間の対立ではなく、部族同士の抗争。
        宗教はその理由付けの1つに過ぎないのだろうと、そういう理解であります。
        だからこそ、節操なくアメリカやロシア、支那から支援を受けますし、どこがどうやってくっついたという話がややこしく絡まっていっている気がするのです。
        多数派を握った部族が政治の中枢を握るので、あの辺りの国々は果たして国家として機能しているのか?という疑念がついて回ります。
        「地政学的に」という文脈で説明されている点は同意いたしますが、部族間抗争の色の方が強いという印象を未だに持ってはいます。

        なお、イスラーム教の排他性は、歴史的に確認出来る話であり、現在に至ってもなお見られます。正直他宗教に寛容であると言われても、ピンときません。尤も、信者全員がそうであるという事ではありませんし、攻撃性の高いテロリスト組織がイスラームの名を語っているに過ぎないという側面のあるでしょう。それがプロパガンダによるものであるといわれれば、反証できるだけの材料は持ち合わせませんが、心証としては排他性は高めであると、そう感じています。

        また、イラン国内の抗議活動がBLM運動同様に工作によるものの可能性があり、その黒幕になりかねないのがCIAやMI6だという可能性はもちろんあるのでしょう。しかし、アメリカにもイギリスにも、そうした行動を起こすだけの動機があったとは思えません。

        最後に核合意破棄ですが、僕自身はトランプ氏の判断は支持しています。有名無実な核合意があって、実際に核合意下でも核開発は続けられていたわけですから、それをご破算にした判断はありだったのではないかなと。

        尤も、これは僕の意見ですし、今のところしっかりとした裏付けのない話が多いのですが。

      • 木霊さん みなさん こんばんは

        ついで、石油資源やイスラムで説明できないペルシャ地域戦乱の例

         イラン・イラク戦争 陣営(wikipedia より)

         イラン側
          ・イラン ・イスラエル ・シリア ・リビア
         イラク側
          ・イラク ・米国

        まあ、宗教や石油資源では説明できないと思われませんか?