クリミア大橋爆破で戦争のステージが変わるか

ウクライナニュース

なかなか凄いことになってきたな。

クリミアとロシア結ぶ橋で火災 ロシア“爆発 近くで3人死亡”

2022年10月8日 23時24分

ロシアが8年前一方的に併合したウクライナ南部のクリミアとロシア南部を結び、ロシアが戦略的に重要とする橋で大きな火災が起き、橋の一部が崩落しました。

ロシア側は爆発があったと主張し、プーチン大統領が原因の究明に向けて指示を出すなど警戒を強めています。

「NHKニュース」より

ウクライナのクリミア半島とロシアとを結ぶ橋。ここが爆破されて何が起きるのかと言えば、ロシア軍のクリミアへの兵站輸送に甚大な影響が出る。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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兵站破壊

犯人はウクライナ軍?

ロシア本土とクリミア半島を結ぶこの橋は、2015年5月に建設工事が開始され、2019年12月に鉄道部分が開通することで、交通輸送網として機能するようになった。

ロシアによるクリミア侵攻は2014年3月のことなので、クリミア併合宣言の後に工事が行われて急ピッチで建設された、ロシアによるクリミア半島支配の象徴ともいえる橋である。

何しろ、ロシア大統領のプーチン氏が、クリミア併合の翌日に建設することを表明したというのだから、その意気込みが伺える。

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で、この爆破について、ウクライナの大統領府顧問がTwitterで犯行声明を出すという異例の展開となった。「これが始まりだ。違法なものは全て破壊されなければならない」という、なんとも勇ましいTweetである。

ロシア側はテロと批判

でまあ、これに対してロシア側は怒り心頭である。

一方、ロシア外務省のザハロワ報道官はSNSに「ウクライナ政府の反応は、テロリストの本質を示している」と投稿し、ウクライナへの敵意をあらわにしました。

「NHKニュース”クリミアとロシア結ぶ橋で火災 ロシア“爆発 近くで3人死亡””」より

この言い草だ。

嘘か真か、その爆破のシーンも撮影されていたそうな。

トラックによる自爆テロ的な犯行のように見える映像だが、少々怪しい。下の写真と位置が整合しないようにみえるのと、ロシア側からのトラックが破壊工作をしたことになる。ウクライナ軍の犯行にするには、少々苦しいところ。

クリミア大橋爆発 プーチン氏、インフラ警備の強化を命令

2022/10/9 09:08(最終更新 10/9 09:09)

2014年にロシアが一方的に「併合」したウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶ橋「クリミア大橋」で起きた爆発をめぐり、ロシアのプーチン大統領は8日、橋や電気と天然ガスをクリミア半島に供給するインフラの警備を強化するよう指示する法令に署名した。ロイター通信が露メディアの報道として伝えた。

「毎日新聞」より

プーチン氏もインフラ警備の強化を命令したそうだが、内心は怒りに震えていただろうねぇ。何しろ、クリミア大橋は道路と鉄道の2本が並走する格好の橋になっているのだが、鉄道橋の方も深刻なダメージを受けている。

道路の法を爆破して、並走している鉄道にどのようにダメージを与えたのかは不明だけれども、走行中の貨物列車の燃料タンクが爆発している。「橋梁に損傷はない」と報じるメディアもあるけれども、橋の上で火災があった以上は、線路に深刻なダメージを負った可能性は極めて高い。高温で燃焼する燃料タンクの熱で線路が曲がったり脆化したり、コンクリートが劣化したりと、様々な不味いことが考えられる。炎上してしまった貨物列車の撤去も困難ではあるが、撤去したとしてもすぐに線路が使えるわけでもない。事実上、この橋の機能は失われたと考えるべきだろう。少なくとも、点検なしに使うことは難しいね。

いや、やっぱり駄目だ。橋桁に深刻なダメージがありそうだよ。

ロシア側の主張はどうでもいいのだが、重要な兵站の一部が寸断されたことは間違いがなく、ロシア軍がクリミア半島の占領を続けることは次第に困難になるだろう。

4月の「モスクワ」撃沈に続く大きな波紋

NHKニュース記事にもあるのだが、このクリミア大橋の破壊は、ロシアにとって大きな意味があり、黒海艦隊旗艦の巡洋艦モスクワが沈没した事に匹敵するような大きな事件であった。

ロシア軍がウクライナに侵攻し始めた2月末から3月にかけては、かなり絶望的な空気が流れていたと思う。ウクライナ全土が占領されるのは時間の問題だ、という空気が確かにあったと思う。

ところが、4月に入って世界中がロシアに対する経済制裁を実施しはじめ、巡洋艦モスクワの撃沈によって、大きく空気が変わった。この頃からウクライナ軍による反転攻勢のニュースが出始めたのである。

火災が起きた「クリミア大橋」は「ケルチ橋」とも呼ばれています。ウクライナ国防省はツイッターに「ウクライナのクリミアにおけるミサイル巡洋艦モスクワとケルチ橋という2つの悪名高いロシアのシンボルが沈んだ」と投稿しました。

「NHKニュース”クリミアとロシア結ぶ橋で火災 ロシア“爆発 近くで3人死亡””」より

巡洋艦モスクワは、クリミア半島に常駐する黒海艦隊の旗艦として象徴的な意味があったし、クリミア大橋はロシアによるクリミア支配のシンボル的な意味があった。

しかし、この両方を失ったことで、ロシアの兵站は崩壊してクリミア半島への物資搬送は極めて困難になる。

ロシアとしてはウクライナ軍による卑劣なテロ行為だということにしたいようだが、この主張はなかなか厳しい。何しろ兵站の破壊というのは軍事上認められている行為で、ウクライナ軍による破壊工作であることが明らかになったところで、ウクライナ軍に否があるというよりは、防衛できなかったロシア軍側の体制の問題ということになる。

核兵器の使用がチラつかされる

ちなみに、このクリミア大橋の爆破によって、「ロシアの報復」というのが問題になってくる可能性があると、毎日新聞は報じていた。

クリミア大橋の爆発、焦点はロシアの報復 9月には核兵器を示唆

2022/10/9 18:01(最終更新 10/9 22:23)

ウクライナ南部クリミアとロシアを結ぶ「クリミア大橋」で8日に起きた爆発は、ウクライナ侵攻で行き詰まるロシアの苦境を浮かび上がらせている。

~~略~~

ロシア当局によると、8日午前6時過ぎにクリミア大橋の車道を走行中のトラックが爆発し、並行して走る貨物列車の燃料タンクに引火して炎上、車道の一部が崩落した。2014年からクリミアを実効支配するロシアの当局は復旧作業を急ぎ、午後4時から一部車道の走行規制を解除し、その後に列車の運行も再開したという。

「毎日新聞」より

いやその前に、信じ難い事が書かれている。「午後4時から一部車道の走行規制を解除し、その後に列車の運行も再開」だと?上に紹介した写真はフェイクだとでも言うのだろうか?

毎日新聞さんよ、ロシア当局の発表だからといって、そのまま乗せるのはどうかと思うぞ。

そして、ロシアにTwitterで喧嘩を売るウクライナの国家安全保障国防会議書紀。

前日の7日がプーチン露大統領の70歳の誕生日だったことを踏まえ、ウクライナのダニロフ国家安全保障国防会議書記は、橋が爆発する様子とバースデーソングの動画をツイッターに投稿して皮肉った。

「毎日新聞”クリミア大橋の爆発、焦点はロシアの報復 9月には核兵器を示唆”」より

いやー、これにはプーさんもニッコリだね!

この笑顔を凍りつかせるような橋の爆破に、当然ながら報復が考えられるのだけれど……。

クリミアに続いて、9月末にはウクライナ東・南部4州の「併合」も一方的に宣言したロシアは、自国領とみなす地域が攻撃されれば、核兵器の使用も辞さないとの立場を明示する。特にクリミアが攻撃された場合には、メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)が7月の時点で、ウクライナが「終末の日を迎える」と直接的な表現で警告していた。

クリミア大橋の爆発後には、ロシア下院のスルツキー国際問題委員長が「ウクライナの関与が確認された場合、我々の対応は厳しいものになる」と表明。今後、ロシア政府が爆発の原因をどう説明して、どのような対抗措置に出るのかが焦点になりそうだ。

「毎日新聞”クリミア大橋の爆発、焦点はロシアの報復 9月には核兵器を示唆”」より

核攻撃かぁ。

流石にそれはないと信じたいところだけれども、今のロシアなら何でもありという気はしてしまう。

この件だけでもフェイク動画やフェイク画像が色々出ているため、どれが本当なのかということを含めて悩ましいところだが、仮にウクライナ大橋が機能を停止しているとすれば、ロシア軍によるクリミア防衛は極めて困難なものになる。

一方で、ロシア側が主張するように鉄道橋が生きているのであれば、戦局へのダメージは少ないのかもしれない。

ウクライナ大橋の機能がどこまで残っているのか?で、戦局は随分と大きく変わりそうである。完全に機能を麻痺させることが出来ていたとすれば、ウクライナがクリミアを取り戻す第一歩になるのではないだろうか。

なん……だと?

ロシア外務省による発表で、破壊されたクリミア大橋の運用再開が報じられたようなのだが。あれだけダメージ受けている様に見えても使えるの、か?

追記

コメントを頂いたが、どうやらクリミア大橋の機能は生きているらしい。

何というか凄いな。鉄道橋は伏線あるうちの片側が使えない状況っぽいな。オドロキなのは派手に焦げたはずの道路やガードレールまで無事だということである。

こうやってみると、ミサイル攻撃などがあった、或いはボートなどを使った河川上の爆発を利用したという噂は否定できそうである。

ただ、道路で爆発が起きて、並走する鉄道橋まで破損したにもかかわらず、その間にあった道路が無事というのは不可解だ。とはいえ、おそらくこれが現実なのだろう。どこまで橋に損傷があるかは分からないが、少なくとも現時点で使える部分が残っている事になる。

追記2

さて、誕生日プレゼントとしてクリミア大橋が爆破されたプーチン氏だが、この行為に対してロシア側は「テロ」だと非難している。

ロシア プーチン大統領 橋爆発をウクライナ側のテロ行為と非難

2022年10月10日 10時54分

ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミアとロシアをつなぐ橋で起きた爆発について、プーチン大統領は、ウクライナ側によるテロ行為だとする見方を示し、非難しました。

プーチン大統領は10日に安全保障会議を開催する予定で、事態の一層の緊迫化は避けられない情勢です。

「NHKニュース」より

いやだなー、特別軍事作戦に決まっているじゃないですか。

プーチン大統領がウクライナ側によるテロ行為だとする見方を示したことに対して、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は9日、ツイッターへの投稿で「プーチンがウクライナのテロ行為を非難。それはロシアにとって、あまりにも皮肉なことだ。さきほどロシアの航空機はザポリージャの住宅街に12発のミサイルを打ち込み、13人が死亡した」と書き込み、非難されるべきはロシア側だと訴えました。

「NHKニュース”ロシア プーチン大統領 橋爆発をウクライナ側のテロ行為と非難”」より

ウクライナ側も、流石にプーチン氏のこの発言は看過できなかったようだ。

しかし、本当にテロと認定して良いのだろうか?

兵站補給線であるクリミア大橋は攻撃しても軍事目標と見做される

10/10(月) 5:05

10月8日にロシアが建設したクリミア大橋(ケルチ大橋)で大爆発が発生、自動車橋の橋桁が落下し、また爆風火炎によって隣接する鉄道橋の石油タンク貨車に引火し激しく炎上する事態となりました。攻撃方法はいまだ詳細は不明です。攻撃者は戦争中のウクライナが疑われていますが自分からは明言していません。

そして10月9日にロシアのプーチン大統領はクリミア大橋の爆発を「ウクライナ特殊機関によるテロ行為」と断言して非難しています。ですがこれはテロ行為とは言えないでしょう。ロシアとウクライナは全面戦争中であり、クリミア大橋は最前線への兵站補給線として機能しているからです。つまり「軍事目標を狙った破壊作戦」だとは言えます。

「yahooニュース」より

それについて解説されているのが、軍事ブローガーのJFS氏であり、参考になる。僕から解説することはほぼ無いので、読んで頂ければ良いと思う。

要は、ロシア側の反論は精彩を欠き、説得力がないと言うことになる。クリミア大橋の機能が全て止まったわけではないようだけれども、一番警戒しなければいけないインフラが破壊されてしまったことはロシアとしては認めたくない事実である。

橋よりもプーチン氏の威信の方が大きく傷が付いたのかも知れない。

追記3

おそらくは、「報復」なのだろう。

ウクライナ首都キーウで3回の爆発音 約1時間後に再び爆発音も

2022年10月10日 16時35分

AFP通信によりますと10日、ウクライナの首都キーウで3回の大きな爆発音が聞こえたということです。またロイター通信もキーウの中心部にあるビルから黒い煙が上がっていると伝えています。

NHKの取材班が滞在するホテルでは、最初の爆発のおよそ1時間後にも再び、爆発音が聞こえました。

「NHKニュース」より

ロシア軍の兵器は一部で枯渇を始めているけれども、未だミサイル攻撃が出来る程度には残弾が残っている模様。

前線での戦闘に勝利できずに後退を続けるばかりで、クリミア大橋も破壊される始末のロシア軍にとって、一般市民の住む都市への爆撃は腹いせなのだろう。クリミア大橋爆破の件は「テロリストの仕業だ」とウクライナ側を非難したが、民間人への爆撃はもっと卑劣な行為ではないのか。

コメント

  1. おはようございます。仕事の前にコメさせていただきました。

    そのボカチン喰らったケルチ大橋ですが、昨夜知ったことは;
    〇鉄道は旅客輸送が再開された
    〇道路は残った片方が部分再開された
    でした。。

    いやいや、どちらも爆発と高温燃焼で相当に傷んでいるはずです。
    政治を優先して、安全性を無視するところは、さすがロシアです。

    すでに道路側は”お化粧”も終わっているようです。
    こういう突貫芸なところは上手ですね。笑
    https://twitter.com/tinso_ww/status/1579135249615048706

    • おはようございます。
      情報ありがとうございました。
      動画を見ましたが、見事に開通していますねぇ。なかなかの衝撃だったはずですから、検査してどの程度のダメージがあったかくらいは調べそうなものですが。

      • こんばんわ、

        その後の経過が少し気になって、SNSを覗いてみたところ、復旧作業中の鉄道橋の映像が出回っていました。
        https://twitter.com/MrKovalenko/status/1579550128930975744

        注目すべきは、黒焦げになった燃料運搬車輛や湾曲したレールよりも、レール下の床版(橋桁上部)のほうで、映像を観ると凹んで傾斜しているところがあります。
        橋桁内部はみえないので、なんとも言えませんが、構造的に脆くなっているであろうことは疑いないところです。

      • 動画、見ましたよ。
        レールの変色具合からして、焼きなまし状態になっていることは疑いようがありませんね。そして、車輪があった場所が溶けて歪んでいる……。相当高温になったことが伺えますし溶融はしていませんから800℃以上1000℃未満の範囲で加熱されてクリープ試験をしたかのように変形したという感じですね。
        当然、ご指摘の床版の変形も、加熱した上で荷重を受けた結果ですから、強度的に低下していることは疑いようがありません。鋼鋼板のようですから、溶接部分に熱が入って脆性割れということになるでしょう。正直、熱が入った部分は切り取って新しい部材で繋ぎ直さないと危なくて使えないと思います。

        生き残っている2車線の道路の方は、思いの外綺麗でした。影響はないのかな?熱の影響は鋼橋とは違って一瞬だったので、ダメージは少なかったのかも知れませんね。

  2. こんにちは。

    今ちょっとググりましたが、
    2008年8月3日:首都高5号池袋線でタンクローリー火災
    2008年10月14日:全面通行再開
    という事で、この時は復旧まで2ヶ月強かかってますね。

    状況が同じとは言えないですが、似たような構造の建築物で、似たような燃料火災なので、タメージも似たり寄ったりなのかな、と思う次第。
    首都高も掛け替えまではしてませんから、修繕補強で行けるのでしょうけれど……

    「運行が再開された」のと、「平常ダイヤで運行」は全く別ですからねぇ……

    • 状況的に、列車に満載した燃料が爆発炎上していますから、ローリー火災よりもダメージは大きかったのだと思います。
      しかし、ロシア発のトラックに可燃物が満載されていて、都合良いタイミングで爆破というのはかなり難しそうです。列車を巻き込んだのは偶然だったのかもしれませんが、狙ってやったとすれば相当周到な計画が練られていたのでしょう。
      運行再開は、運行しても差し支えない強度が確認出来たことを意味しますが……、大丈夫なのかは気になります。