なかなか進まない馬毛島計画

防衛政策

一応、ちょこっとだけ進んだようだ。

馬毛島 自衛隊基地建設計画 地元の1市2町が再編交付金の対象に

2022年9月28日 11時33分

鹿児島県の馬毛島にアメリカ軍の訓練などに使う自衛隊基地を建設する計画をめぐり、防衛省は施設整備に必要な手続きが進んだとして、地元の1市2町を再編交付金の自治体として指定したと発表しました。

「NHKニュース」より

まだ、再変交付金指定している段階かね。

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馬毛島計画

馬毛島は何に使うのか

過去にもこの件に関するニュースには触れているのだが、久しぶりなのでちょっとだけ整理しておこう。

馬毛島の買収が決定したのが平成31年(2019年)のことである。そう、安倍政権時代に決着を着けた話で、この決定は戦略的にも大きな意味があった。

在日アメリカ軍の空母艦載機訓練の移転先などとして、鹿児島県の馬毛島で計画されている自衛隊基地の建設をめぐって、地元の西之表市が今月、島にある市の所有地を防衛省に売却するための議案を市議会に提出しました。

「NHKニュース”馬毛島 自衛隊基地建設計画 地元の1市2町が再編交付金の対象に”」より

NHKニュースにはかなりあっさり風味で説明されているが、「在日アメリカ軍の空母艦載機訓練の移転先」というのは、コレまでは硫黄島でやられていた。

見て頂ければ分かる通り、硫黄島は遠い。本土から随分と離れていて、小笠原諸島の南端近くにある島として知られているが、島には海上自衛隊と航空自衛隊の基地があるのみで、民間人の立ち入りはできない。ここで実験機や戦闘機の訓練がなされているのだけれど、何しろ本土から遠い地理的条件にあり、訓練をするにしても時間がかかるというデメリットがある。

一方、今回話題にした馬毛島は九州の南端、種子島の近くにある無人島である。馬毛島に基地を建設した後は、訓練に使うことが決まっている。

航空機の離発着訓練

防衛省も、「距離が問題だよ」と書いているね。

img

で、防衛省の説明では、こんな風な説明になっている。

我が国島嶼部に対する攻撃への対処等のため、南西地域に自衛隊の活動・訓練拠点を整備

南西諸島は南北に長大ですが、自衛隊の施設は限定されており、自衛隊の活動・訓練拠点の「空白地域」です。 緊急時の活動拠点、平素の訓練拠点が必要です。

「防衛省のサイト」より

NHKのニュースと話が違うね。偏向メディアNHKでは「アメリカ軍の訓練などに使う自衛隊基地を建設」と書いてある。間違ってはいないが、この書き方だと「アメリカ様の訓練に使う基地を建設して差し上げる」というような印象が強い。実際には自衛隊の基地を建設して、自衛隊も使うのである。

だから、正確にはアメリカと共同で利用する基地の建設だ。

FCLP

アメリカ軍は、空母艦載機離着陸訓練(FCLP)をやりたいので、適切な場所を確保したいと考えていて、これまでは硫黄島を空母に見立てて離発着訓練をやっていたのだが、馬毛島に基地が建設されればFCLPも馬毛島を利用する事になると思う。

ただ、日本だって護衛艦「いずも」などをF-35Bで離発着できる仕様に変更。今後は海上自衛隊にも離発着訓練は必須になってくるだろう(艦載機を航空自衛隊が扱うかどうかは分からないが、訓練は必須である)。

計画は前々からあった

ちなみにこの話、結構前からあったのだ。

元々、戦後に開拓事業で入植を開始したが失敗。無人の島となった馬毛島を、馬毛島開発株式会社なる怪しげな会社が買収。なんと、レジャー施設の建設を計画しはじめる挫折。結局、放置されるに至った。

ところが、この無人島の存在に目を付けた右翼活動家が馬毛島をネタに儲けようとして、馬毛島事件(昭和61年)を起こす。そしてまたもや放置される。

平成7年に、立石建設(後のタストン・エアポート社)が買収し、開発を進めようとするも挫折。平成19年になって、ようやくFCLP利用計画が持ち上がる。普天間基地の移設候補地にという検討(民主党政権下)もされたのだが、結局、実現せず。平成23年に再びFCLPの移転計画がもちあがって、今度は日米の共同文書に明記されることになった。

とまあ、この計画は紆余曲折はあったが、正式には平成23年(2011年)に動きだし、買収に至ったのが平成31年(2019年)と、実に計画から8年もかかったわけだ。

ところで、島の航空写真を見ると、面白い事になっている事が分かる。タストン・エアポート社が利益を当て込んで巨大滑走路の建設に着手していたのである。この開発によって、土砂が周辺海域を汚染するというような問題も起こったが、この開発の一部は無駄にならない可能性はあるようだ。

こんな感じの開発がなされる予定になっているので、滑走路用に整地された土地の一部は利用が可能っぽい。自分の儲けのために開発に金を注ぎ込んだタストン・エアポート社だったが、国益に還元できるので何よりである。なお、同社は既に倒産しているらしいが。

再編交付金

で、こういった基地が出来るとなると、周辺の町は交付金が貰える事になる。冒頭の話はその交付金の対象として、周辺地域の自治体が選ばれたというニュースだ。

これを受けて防衛省は、施設整備に必要な手続きが進んだとして、28日付けで、馬毛島と対岸の種子島にある西之表市、中種子町、南種子町の1市2町を再編交付金を支給する自治体に指定したと発表しました。

再編交付金は、アメリカ軍の部隊の駐留などを受け入れた自治体に国が支給する交付金で、馬毛島で基地建設と訓練が行われた場合は、従来より交付額が高くなるよう省令が改正されています。

「NHKニュース」より

「金を配る」という意味ではモヤモヤする話ではあるが、以前住んでいた町の近くに原発があり、原子力交付金を貰っていた僕がモヤモヤするのはちょっと違うかも知れない。この手の交付金は至る所にあるのだ。

そして、この再編交付金をたっぷり貰っているのが沖縄である。

再編交付金とは、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法(平成19年法律第67号)第6条により、再編関連特定周辺市町村に係る再編関連特定防衛施設における駐留軍等の再編による住民の生活の安定に及ぼす影響の増加の程度及びその範囲を考慮し、当該駐留軍等の再編の実施に向けた措置の進捗状況及びその実施から経過した期間に応じ、当該再編関連特定周辺市町村に対し交付されます。

「沖縄県のサイト」より

これが基地運動に繋がってしまう(反対派も賛成派も問題視する)というのが、何とも。「金を出すから黙っていろ」というメッセージにも感じるからねぇ。

しかし、こうした特別なお金がなくとも、自衛隊基地が出来ると地元にお金が落ちる構造になっている。

宿舎

航空自衛隊の馬毛島基地(仮称)に恒常的に勤務する自衛隊員は、150名~200名程度を見込んでおり、自衛隊員とその家族は、種子島に整備する宿舎に居住することとしています。

宿舎は、西之表市、中種子町、南種子町に配置します。
用地調査をもとに、部隊運用、交通の便、周辺環境などの様々な条件を考慮し、宿舎の設置場所を選定しました。

「防衛省のサイト」より

基地の近くに宿舎などができ、人口が増えるだけでも消費が生まれる。過疎地の経済にとっては大きな影響がある。基地経済と揶揄されることもあるが、単純に人が増え、施設が出来るだけで、関わる仕事が増えるのだから。

防衛政策にとって重要な意味がある

支那にとっては邪魔な施設

さて、この様な計画が持ち上がって、ようやく軌道に乗りつつあるが、反対活動も活発化している。基地が出来るとなれば、何が何でも反対する活動家が雨後の竹の子のように出てくるのは避けられない。

何故ならば、ここに基地を作ることは支那にとって都合が悪く、支那から資金援助を受けて活動する彼らにとっては活躍の場になるからだ。

コレは前の記事でも紹介したのだが、支那が太平洋に出ようとすると、この周辺海域を通過せざるを得ない。その近くで戦闘機が発着訓練をしているのだから、人民解放軍の船が通過する時に気を遣わなければならなくなることは、説明するまでも無いだろう。戦闘機が訓練と称してブンブン飛び回っているのだから、その付近を航行するのがやりにくいのは当然である。

発着訓練はとっても大切

一方で、曲がりなりにも空母のような護衛艦を手に入れようとしている海上自衛隊にとって、いや、或いは空母勤務になる航空自衛隊にとって、発着訓練は絶対に避けて通れない。

もちろん、練度を日々高めている佐世保勤務の米軍第七艦隊や岩国勤務の海兵隊にとっても、発着訓練が近くで実施可能になることは、大きな意味があるだろう。厚木基地や岩国基地、硫黄島でもFLCPは出来るのだが、色々と制約もある。

FLCPができる場所が増えることは、兵士の生存率を高めることにも繋がるのである。

馬毛島に基地いらぬ

2022年9月5日(月)

馬毛島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地建設強行に反対する集会が4日、同市で行われました。主催は「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」。市民約130人が参加しました。

~~略~~

日本共産党の田村貴昭衆院議員が連帯あいさつし、米国は馬毛島を含めた南西諸島にミサイル部隊を分散させ、中国に対抗する戦略だと指摘。「戦争が起これば標的になるのは馬毛島を含めた南西諸島だ。島の未来がかかっており、私も頑張り抜きたい。全国で運動と世論を広げていこう」と強調しました。立憲民主党や社民党の国会議員らも参加しました。

「しんぶん赤旗」より

基地建設と聞けば何でも反対なのが日本共産党だが、興味深かったのが「米国は馬毛島を含めた南西諸島にミサイル部隊を分散させ、中国に対抗する戦略」と、言及したことである。

しかし、馬毛島にミサイル部隊を配置はしないだろうし、完全に支那側の主張をしていて苦笑を禁じえない。そして、相当嫌なんだろうね、支那は。

基地を作ると標的になる?

そもそもおかしいのである。支那は日本と敵対する気がなければ、ミサイル部隊が分散されたところで、気にする必要がないではないか。そして、ミサイル部隊を分散させる気でいるのは自衛隊だ。

南西諸島が要塞化 増す島民不安 自衛隊ミサイル部隊の「壁」

9/20(火) 6:02配信

政府が、台湾や中国に近接する南西諸島への自衛隊配備を急いでいる。海洋進出を強める中国を念頭に、ミサイル部隊による「壁」を築く構想だ。だが「要塞(ようさい)化」が進む島は有事の際に標的になりかねない。住民をどう避難させるかの議論は置き去りになっている。

「Yahoo!ニュース」より

サヨクの議論でいつもわからないのは、「基地を作ると攻撃される、標的になる」というロジックを使うことだ。

確かに、有事において拠点攻撃というのは常識であるからして、基地が標的になると言うのは間違いではあるまい。ただ、基地が狙われるとしたら空爆かミサイルによる攻撃からであるだろうから、周辺にある市街地が直接被害にあうとは限らない。

逆に言えば、基地がなくとも拠点として重要であれば、敵の攻撃にさらされるのである。恐らく、占領されてブチャのように蹂躙されることもあるだろう。そういった攻撃は地政学的に決定されるのであって、基地があれば寧ろ抑止力としての機能が期待できる。

捨て石論の矛盾

そして、この記事ではサヨクお得意の捨て石論が登場である。

部隊配備が進む一方、住民を避難させる方法や施設の検討は追いついていないのが現状だ。岩田清文・元陸上幕僚長は、米中対立で取り沙汰される「台湾有事」に伴い、「南西諸島は戦闘地帯になる可能性がある」と指摘。「本格的に武力攻撃を受ける事態になれば自衛隊に住民を保護する余力はないだろう」と話す。  

米軍基地負担は軽減されず、逆に軍事要塞化される中で、沖縄には「再び捨て石にされる」との不安が膨らむ。ミサイル部隊配備に伴い新設された弾薬庫がある宮古島・保良(ぼら)地区に住む下地薫さん(68)は「島から逃げようがなく、身も守れない。住民が置き去りにされている」と嘆いた。

「Yahoo!ニュース」より

そもそも、日本軍が沖縄を捨て石にした事実はない。

仮に、沖縄が捨て石にされていたとしたのであれば、当時の海軍には相応の戦略が存在したことになる。

「捨て石」は、囲碁における手筋の1つで、意図的に相手に石を取らせ、後に自分の利益となるように打つ石の事を意味する。だが、硫黄島にせよ沖縄本島にせよ、当時の日本軍にとって、その拠点を奪われれば、戦略的に不利になることは明らかであった。

仮に捨て石として機能させるのであれば、沖縄で日本軍を損耗することは悪手でしかない。

陸軍戦死者67,900人
海軍戦死者12,281人
捕虜10,000人
沖縄県民死者・行方不明者122,228人
内民間人死者94,000人
<沖縄戦における日本側の被害>

日本本土の前縁として敵の出血・消耗を強いる防波堤と想定していたという意見もあるようだが、それは結果としてそうなっただけで、アメリカ軍の進軍のルートを考えれば、沖縄か台湾が地上戦の舞台となることは避けられなかった。

「捨て石論」が成り立つ為には、アメリカ軍の進軍ルートを日本軍がある程度コントロールできる必要がある。が、現実的にはそれは不可能だった。そして、沖縄では遅滞戦闘が求められ、多くの本土の軍人たちが散っていた。

引用記事は岩田清文氏の発言を都合よく解釈するように文が構成されているが、台湾有事になれば南西諸島は戦闘地域になることは避けられない。そして、それは基地の有無に関係がない。

そして、現状において自衛隊が住民保護できるだけの装備を備えていないのも事実なのだ。

少しでも被害を減らすために検討されているシェルターも、戦争を招くなどと意味の分からない理屈で反対する始末である。

ちょっと話がそれて来たので、沖縄関連の話はここで終わりにしておくが、馬毛島への基地建設は防衛拠点を作る意味でも重要で、基地を作ったから狙われるという話は主客転倒である。

結局のところ、沖縄や先島諸島の防衛力強化と同様に、馬毛島への基地建設も日本の防衛政策にとって重要な意味を持つのである。反対派がどこの勢力なのか、ということも含めて、政府はその必要性を改めて国民に説明すべきだろう。

コメント

  1. 木霊さん みなさん こんばんは

    馬毛島 よく知りませんでした。情報ありがとうございます。
    進行遅々としていても少し前進、良いことかと。。

    硫黄島が訓練場

     確かに遠い。時間もかかりますし、何より兵站補給を前提とした演習が成立しない。のが問題ですよね。
    昨今、航空万能さんのウクライナ情報を見るにつけ、兵站のための交通路確保がいかに重要か、歴史小説等で知識で知っていてもあまり役に立ちそうにない。 前提に立った演習、が行えるだけ、馬毛島の基地化や演習拠点化は重要ですね。

    余談
     ・巨大イージス艦を補完する形で、イージスアショアを置けないかな?
     ・巨大イージス艦
       ・発電能力もうんとあげて、レールガンやマイクロ波兵器の実験環境としても整えて欲しい。
       ・マイクロ波兵器、
             現在自衛隊で研究中のはドローン・UAS程度しか落とせないけど
               https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2019/doc/nishioka.pdf 
      
             理論的にはHIIAロケット初段の代替になるくらい、なので超音速ミサイルや戦闘機でも落とせるはず
               http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2017_10/jspf2017_10-484.pdf

     ・馬毛島に基地いらぬ

        ・ もうね。市民団体とか、最低「政党」「政治家」は、海外資金を規制し、ハニトラなど非合法化しないと、
        ・ 高市早苗大臣の主張は非常に尤も&とにかくハイブリッド戦争無防備はヤメロ!
         https://news.yahoo.co.jp/articles/e2173dc76daa7e0b5fb2869bfc0d72419d0aa7f6

    • 興味深い計画なので、このブログでは追いかけては居るのですが、ろくな情報が出てこないのが残念ですね。
      記事に書いた通り、練習できる拠点を得られると言うことは、自衛隊にとっても非常に大きな意味がありますし、支那に対する嫌がらせという意味でも美味しい位置です。
      頑張って計画を進めて欲しいですね。

  2. こんにちは。

    >日本軍が沖縄を捨て石にした事実はない。

    捨て石にするなら、何故虎の子の大和を出そうとしたのか?って話ですよね。
    ※座礁させて砲台にするにしても、捨て石にするには色々とデカすぎる。
    沖縄戦も硫黄島も、捨て石にしては被害が大きすぎる。

    直接関係ないですが、少し前、沖縄の高校生が、反戦運動か何かで大規模集会みたいなところでスピーチしてる映像が地上波でちらりと流れまして。
    「おじいやおばあが嘘をついているというのか!」
    って涙ながらに訴えてました。
    残念だけど、嘘、つくんですよね。
    保身のための故意の嘘かも知れないし、老化による記憶間違いなどによる事実誤認かも知れませんし、「誰かにそう言われ続けて記憶がねじ曲がった」のかも知れませんが。
    人生経験の少ない、純朴な青少年は、文字通り赤子の手をひねるように、狡猾な大人に騙されて担ぎ上げられる、その様を、現地の集会と、それを地上波に流すマスコミと、二重に思い知りました。
    そして馬毛島も尖閣も、そういう誰かの意図によって紆余曲折あって今の形に至ってる、そこには善意などなく、ただ保身と欲だけがあるのだと、そういう事かと。哀しいことですが。

    • どうしても記事建設の重要拠点は、政治的なイデオロギーに左右されがちです。
      沖縄は、サヨクの最後の楽園と呼ばれる土地であります。
      九州も随分と外国の勢力に入り込まれていて、政治的にも少々不安定な部分がありますから、こういった反対運動が激化しやすい土地なのかもしれません。

      日本軍に関しては、結果的に敗戦を迎えてしまったわけですから、批判されることはある程度は仕方が無いと思います。
      ですが、ありもしない事実をレッテル貼りするようなことは止めて欲しいですね。戦争中ですから、相当ヤバい事もやっていたでしょう。が、当時どうだったのか?ということと、今の常識でどうなのかという話は違いますから。