自衛隊の静岡への災害派遣が決まった経緯は

災害

首長の能力が試される話であったと思う。

大雨被害の静岡県、自衛隊への災害派遣要請まで2日間 担当者は

2022年9月26日 17時29分

台風15号による記録的な大雨で土砂崩れや浸水が相次ぎ、甚大な被害を受けた静岡県は26日、自衛隊に災害派遣を要請した。大規模な断水や集落の孤立化など、早期の解決が困難な被害が確認されたが、派遣をめぐる調整に時間がかかり、要請まで2日間を要した。

「朝日新聞」より

災害地域の被害の現状を把握することが、災害発生時に最も優先されるべき事項で、その対応が自前で行えるのか、災害派遣要請をするのかの判断までが首長に求められる責務である。が、知事や市町は素人なんだよねぇ、その手の判断に関しては。

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自衛隊の災害派遣

自衛隊法によって災害派遣要請

さて、ちょっと面倒だが、やっぱりここは自衛隊法を引用してこなければならないだろう。

(災害派遣)

第八十三条 都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。

 防衛大臣又はその指定する者は、前項の要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる。ただし、天災地変その他の災害に際し、その事態に照らし特に緊急を要し、前項の要請を待ついとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、部隊等を派遣することができる。

 庁舎、営舎その他の防衛省の施設又はこれらの近傍に火災その他の災害が発生した場合においては、部隊等の長は、部隊等を派遣することができる。

 第一項の要請の手続は、政令で定める。

 第一項から第三項までの規定は、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第二条第四項に規定する武力攻撃災害及び同法第百八十三条において準用する同法第十四条第一項に規定する緊急対処事態における災害については、適用しない。

「e-GoV」より

自衛隊が「災害出動」するためには、自衛隊法83条1項に基づく都道府県知事の要請を必要とする。同条2項で「緊急性」を判断した場合には防衛大臣の判断によって自衛隊を出動させることが可能だ。

つまり、今回のケースでは、自衛隊の派遣が必要と判断された場合には、一義的に静岡県知事の川勝氏の出動要請が必要であった。そして、状況を把握できていない川勝氏に要請をする立場にあったのは静岡市の首長である田辺氏であり、道路の寸断された川根元町の町長だろう。

調べて見ると、田辺氏は平成23年3月11日に発生した東日本大震災をうけて「安心・安全な街づくり」を掲げて静岡市の災害対策の見直しを表明した人物らしい。自民党静岡県連が推しているのか。そして、県知事の川勝氏とはかなり意見の対立があると。

情報把握は市町村レベルでの努力が必要

知事としても情報が上がってこなければ対応出来ない。

静岡市では6万戸を超える大規模断水が起き、復旧の見通しが立たない。川根本町では土砂災害で山間地の道路が寸断され、一部集落が孤立化した。こうした市町から同日午前に要請を求められて判断したという。

今回の災害をめぐっては、県は23日夜に警戒態勢に入り、24日午前3時に災害対策本部を設置した。

「朝日新聞”大雨被害の静岡県、自衛隊への災害派遣要請まで2日間 担当者は”」より

静岡県は、今回のケースで初動体制は特に問題なかったように思う。

台風15号は温帯低気圧に 静岡で記録的大雨 関東など激しい雷雨

2022年9月24日 20時27分

台風15号と台風から変わった温帯低気圧の影響で、静岡県では平年の9月1か月分を超える記録的な大雨となったほか、関東や東北南部でも激しい雷雨になりました。発達した雨雲は海上へと抜けつつあり、大雨の峠は越えましたが関東を中心に、このあと数時間は急な雷雨に注意が必要です。

「NHKニュース」より

23日の22時頃には大災害に発展する兆しが気象庁から発表されており、静岡県は翌日3時には災害対策本部の設置をした。

当然、災害対策本部に求められたのは、情報収集である。夜間で連絡がとれなかった部分があったにせよ、翌朝にはある程度被害の把握が出来た可能性は高い。

同6時半には静岡市、川根本町を含む23市町に災害救助法を前日付で適用することを決め、県内の被害状況の把握を進めながら陸自の派遣要請について市町側と調整。だが、25日まで要請は見送った。担当者は「市町側の意向を確認していた」と話した。

「朝日新聞”大雨被害の静岡県、自衛隊への災害派遣要請まで2日間 担当者は”」より

ところが、何故か25日になるまで災害派遣要請を川勝氏は見送ってしまった。静岡市や川根元町の意見を聞いていたらしいのである。

記録的な大雨 静岡市では約5万7000世帯で断水続く

09月25日 18時41分

台風15号の影響で記録的な大雨となった静岡市では、およそ5万7000世帯で断水が続いていて、給水所には水を求める多くの人が訪れていました。

静岡市では、清水区内に水道水を供給する川の取水口で、流木などが詰まって水の取り込みができなくなって24日昼前から断水となり、現在は、およそ5万7000世帯で断水が続いています。

「NHKニュース」より

24日昼前から断水が発生していたにも関わらず、何故その判断になったのだろうか?

取水口のトラブル

断水の原因は取水口のトラブルらしい、と言うことが報じられたのは24日。

【台風15号】流木が取水口に詰まり断水 5万5000戸に影響 静岡市

2022年9月24日 土曜 午後9:00

温帯低気圧に変わった台風15号は県内に記録的な大雨をもたらし死者も出たほか、静岡市では断水が発生している地域もあります。

~~略~~

静岡市清水区では興津川の取水口に流木などが詰まってしまったため、約5万5000戸で断水が続いています。

市によると流木を取り除く作業は川の水位が依然として高いことから思うように進まず、清水区内の10カ所で応急給水が行われています。

「FNNプライムオンライン」より

つまり、初日から給水トラブルが長引くだろう事は予想されていたことになる。翌日になって手作業で撤去作業が開始され、26日には重機を入れての撤去作業が始まったが、取水口のトラブルを解消して給水が復旧するまでには10日以上の時間を要すると見込まれているようだ。

もちろん、静岡県としても手をうたなかった訳では無い。

断水続く静岡市へ東海3県から給水車10台派遣へ

09月25日 10時11分

記録的な大雨の影響で大規模な断水が続く静岡市を支援するため、東海3県から10台の給水車が派遣されることになり、名古屋市からは24日夜、給水車1台が出発しました。

「NHKニュース」より

東海三県から給水車をかき集めて、断水している地域に水を届ける努力をしていた。が、24日に要請して対応出来る給水車は10台。

5万5000戸が断水で苦しんでいることを考えると、全く数が足りないのでは?静岡県内に何台の給水車があるかは知らないが、合計20台あったとしても1台あたり2750戸へ給水をしなければならない計算になる。

給水車は最新のもので3000Lの水を積載でき、1日1人あたり必要な水3Lを1000人に届ける事が可能である。だが、2~3日の断水ならともかく、1週間から10日程度の断水となると、洗濯やトイレ、お風呂など、必要とする水の量はかなりの量になる。給水車が小さければ、運べる水の量はもっと少なくなる。

25日は、市と海上保安庁があわせて28か所に給水所を設けて対応していますが、復旧のメドは立っていないということです。 このうち、有度生涯学習交流館の給水所では、3トンの水が用意され、多くの住民が車や徒歩などで次々に訪れていました。

「NHKニュース”記録的な大雨 静岡市では約5万7000世帯で断水続く”」より

給水車意外にも給水できる場所が設置されているため、全く足りないと言うことにはならないのかも知れないが。

静岡市清水区 断水の約半数世帯で生活用水の供給始まる

09月27日 11時58分

台風15号の影響で大規模な断水が続いている静岡市清水区では、27日から県の工業用水などを活用し断水している世帯の約半数でトイレや掃除などに使える生活用水の供給が始まり、住民からは安どの声が聞かれました。

「NHKニュース」より

工業用水も利用する事で、ある程度生活に必要な水を確保する目処が立っている感じではあるが、しばらくは被災地の方々は不便な生活を強いられる事になりそうである。

派遣された自衛隊の任務は?

「遅い」と批判される災害派遣された自衛隊の任務ではあるが、一体何だったのだろうか。

そして、記者から「もう少し早く出す判断はなかったのか」と問われると「まず何を支援要請をするのか、具体的な中身を固めなければいけない。総合的に協議をし、ふたつの柱、一つは取水口の復旧支援、もう一つは孤立集落の解消を県に対して要請することになったということです」と述べた。

「yahooニュース」より

なる程、静岡県としては、「自衛隊に何をして貰うか」を決めかねていたらしい。結局、「取水口の復旧支援」と、「孤立集落の解消」を要請したらしい。うーん、ちょっと被害状況をしっかり把握できてはいないんだけど、「孤立集落の解消」任務は、自衛隊にお願いするか消防隊のレスキューをお願いするかという感じだろうか。

孤立集落は3市町600世帯 静岡県内、自衛隊が給水活動開始

11時間前

記録的な豪雨となった台風15号の影響で、県内の孤立集落が3市町約600世帯に上っていることが26日、県や各市町のまとめで判明した。県は自衛隊に災害派遣を要請。静岡市清水区では、市立清水病院などで給水活動が始まった。

県によると、26日午後6時現在、静岡市、島田市、川根本町で計34地区が孤立している。静岡市によると、葵区梅ケ島や清水区両河内など市内19地区の孤立集落計578世帯については、住民の安否とライフライン(一部地域は発電車両、衛星電話で対応)を確認できている。緊急搬送の体制を整え、必要物資の提供も実施する。他の孤立地区ではバイクなどによる物資供給はできている。

「静岡新聞」より

何れにしても、装備に乏しい静岡市が動いて問題解決を図るよりは、自衛隊の出動が適切であった可能性は高そうだ。

だが、これ、本当に24日に判断出来なかったのだろうか?

そして26日午前11時に開いた会見で、静岡市の田辺信宏市長(61)は自衛隊の派遣要請について「一昨日の災害対策本部の時からその話はあったんですけれども、昨日、私も現場を視察しましてこれはもう、週明け、連休明けたら県に要請しようと本部会議での決定となりました」とコメント。

「yahooニュース」より

田辺氏の発言を見ると、24日には対策本部でその話が出ていたらしい。

市長と知事の仲は悪い

リニア中央新幹線の問題で、田辺氏と川勝氏は何度も対立している。そうした「仲の悪さ」が今回の災害派遣要請の遅れに繋がった可能性はあったのでは、と邪推してしまう。が、こんな記事もあるので、静岡市に設置された災害対策本部の判断が不味かった可能性が高そうではある。

静岡市清水区の断水、取水口に重機投入へ 最短4日で給水可能 市対策本部会議

2022.9.26

静岡市は26日、災害対策本部会議を開き、台風15号に伴う記録的豪雨により発生した清水区の大規模断水などの対応を協議した。断水の原因となった興津川承元寺取水口(同区)をふさぐ流木や土砂を撤去するための重機は27日に投入予定という。重機が入れば、最短4日間で生活用水の給水が順次可能と見込んでいる。

「静岡新聞」より

26日の段階で「最短4日」などといっているのだが、自衛隊への協力要請が通ったことで、時間を短縮できそうだという判断になったのだろうか。

25日に田辺氏本人も現地視察に入っていて、県と協議をしたのは週明け26日。判断が遅いよ。県も積極的に動かなかった、市は判断を遅らせた。結果的に判断が遅れたわけだ。

自衛隊に災害派遣要請をしたら全て解決などというつもりは無いけれど、使えるリソースは全て使って住民のライフライン確保に動いても罰は当たらないんじゃないかな。

誰が判断すべきか

まあ、結果的にこの判断が正しかったかどうかは検証されるべきではあるが、派遣要請するのであればもっと早く判断したら良かったのでは。せめて現地視察に入ってその日のうちに判断するくらいの判断力は必要だと思う。そういったスペシャリストが、地方行政を司る場所にいないことが問題なのかも知れないけれど。

ともあれ、毎年のようにあちらこちらで水害が発生して、その対応について首長が批判される流れになっている。でも、選挙で選ばれる素人に何の判断ができるのだろうか。市長が現地視察に行って「酷いですね」「じゃあ、明日には市に相談しましょう」か。暢気かっ!災害派遣要請が遅れれば、復旧も同様に遅れるのである。

おそらく、田辺氏は自衛隊に災害派遣要請をして「何をして貰えるのか」すら把握していなかったのではないだろうか。

川勝氏も随分とおかしな事を宣う人物ではあるが、田辺氏もどうしようもないな。静岡市にだって、24日時点で現場を視察した人間がいたハズだ。その人物が報告を上げたら翌日に市長が現地視察?いやダメでしょう。何のための災害対策本部なのだか。やはり最初の現地視察で判断すべきだった。

本件で自衛隊の災害派遣が妥当であったかは分からないが、そもそも初動が不味かったのは事実だろう。日本の災害発生時の行政の在り方は首長の力量に大きく左右される。プッシュ型の災害派遣決定が可能な組織を作ることができれば、この状況はもう少しマシになるのかなぁ。そう言えば、熊本地震の時にもこの手の話は問題になった気がする。

追記

はい、解決。

断水解消、コップの水道水に8歳男児「感動した」…女性「まずはシャワー浴びたい」

2022/09/29 06:59

静岡市は28日、台風15号の大雨の影響で断水した清水区で、27日に水道管への通水を始めた約3万1000戸で、飲用が可能と確認されたと発表した。10月2日までに、多くのエリアで飲用が可能になる見通しで、5日までに全域での復旧を目指す。

「讀賣新聞」より

作業が全部終わったわけではないけれど、自衛隊の皆さんお疲れ様でした。引き続き、必要な作業があれば宜しくお願いします。無能な為政者が悩んでいる時間、勿体なかったね。

コメント

  1. 静岡県出身者に言わせると
    「元々静岡県民は地震への備えをしっかりしていて水もお風呂に溜めている」
    「県と市は何も出来ないので自分で自分の身を守る事が見に染みていて、ニュースを見ても住民の悲壮感がみられない。」
    「首長が役に立たないと住民が不幸だというのは静岡県だから仕方ないよ。」
    「温暖な気候で食べ物が道端に勝手に生えるところだから気楽に生きてる」
    との事
    神奈川県出身のわたしから見るとそういう言葉で解決できる話ではないですが…

    • 静岡民すげー!
      土地柄なんでしょうか?
      静岡県はさほど地震や災害による被害の大きい地域だという認識がありませんが、よく考えたら活火山のお膝元であります。しっかりとした防災意識があるのかもしれませんね?

      • 木霊さん みなさん こんばんは

        >自分で自分の身を守る

        美徳であると語られることも多く私も少し前までそう思っていましたが、、、隣国の状態を色々見たあとでは 危険信号でもある。と認識を改めました。

        ①美徳であると考えられる例
         行政も出来ることは限られる。ならば自分たちで出来ることは出来るようにして、行政に協力しよう。
         「自分に合衆国が何をしてくれるかと問うより、自分が合衆国に何を出来るかを問うて欲しい」

        ②危険信号の例
         ・政府など信用できない、政府の規則(法律)に従って災害に合っても、それは法律守った方がバカ。他人など信用できない、約束など守るほうがバカ、騙されるほうが悪い。。。。低信用・無法社会

         同じ「自分の身は自分で守る」でも正反対の民意となります。静岡県民の方々が①であることを願いますが、今の首長等を見ると②に近づいていないか、、、静岡県民さん、お気を付けて。

      • 菅義偉氏が言っていましたが、「自助と共助と公助」がキーワードとして挙げられておりまして、先ずは自助、それが出来ない範囲で共助、公助でフォローをということが必要なんだと思います。
        全員が自分自身で自分の身を守れるのであれば、地方行政は不要です。そのバランスこそが大切なんだと思っています。
        ご指摘の②、有事における倫理感の希薄化は、更なる混乱を招きます。そうならないためにもセーフティネットがあり、最後には救って貰えるという安心感が必要なのだと思っています。

  2. 何を要請すべきか。な、会議の場で、「当の自衛隊に何ができるか、やるべきか、意見を聞かなかったの?」と、言う疑問が…
    いやまぁ、自分の手に負える事態なら自分の手で終わらすのはわかるんですけども…出来るだけのことはやってたようですし…

    • この話は、考えて見るとジレンマがあるような気がするのです。
      「自衛隊は一体何ができるのか」ということを全国の首長は殆ど知りません。理解している首長もいるかも知れませんが……。
      一方で、自衛隊は要請がなければ動けません。当然、要請が入って来るまでは情報も入ってきません。
      これ、自衛隊で災害派遣事前調査部隊を持っていて、災害の度に許可を必要とせず全国の調査をする(地震発生時には戦闘機を飛ばして調査しているようですが)ことができ、能動的に首長に連絡をとって、「こんな活動が可能です」と、積極的に動けないものでしょうか。……現在の法律構成、予算を考えると、無理でしょうが。
      自衛隊でなくとも、民間調査会社でも何でも良いのですが、プッシュ型の災害救助部隊が作れないものですかねぇ。