防衛装備品の輸出を国主導で推進する方針へ

防衛政策

随分と遅い決定ではあるが、頑張って欲しい。

防衛装備品の輸出「国主導」で推進、国家安保戦略に明記へ…防衛産業の立て直し図る

2022/09/25 05:00

政府は、年末までに改定する国家安全保障戦略に、防衛装備品の海外輸出を「国主導」で推進する方針を明記する調整に入った。政府が外国との受注交渉に全面的に関与し、防衛関連企業への財政支援を導入する方向だ。事実上の企業任せだった手法を転換し、輸出拡充を図る。

「讀賣新聞」より

これの背景には、恐らく韓国のポーランドへの大量輸出成功などがあったのだと思う。長らく防衛装備品の輸出は実現しなかったが、この判断が成功へのキッカケになれば良いとは思う。

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兵器のセールスは政治

日本防衛産業の衰退

こちらの記事で軽く触れたのだが、日本の防衛産業はかなりの勢いで衰退の途にある。日本の民間産業も、支那や韓国、台湾勢に押されて苦戦し、一部産業は完全に斜陽産業化してしまった。嘗ての余裕は民間産業にはないのである。

そうした中で、多数の防衛産業に従事していた民間企業が相次いで撤退を決めた。

自衛隊の航空機や車両などを生産する防衛産業は納入先が防衛省・自衛隊に限られるなど経営に制約が多く、衰退傾向が続く。03年以降、100社超が防衛分野から撤退した。

「讀賣新聞”防衛装備品の輸出「国主導」で推進、国家安保戦略に明記へ…防衛産業の立て直し図る”」より

防衛産業で利益を出すことが難しいことと、防衛産業で設けることが「悪」であるかのような風潮が、日本の防衛産業の衰退に拍車をかけている。

日本の防衛産業が「弱い」理由は他にもある。日本で製造する武器弾薬は「ガラパゴス兵器」の割合が多い。自衛隊以外の商売相手がいないので、少量生産で価格を下げることが難しいのだ。

その点、隣国韓国は実に巧いことやったと、その様に思っている。大統領がトップセールスで兵器を売り歩くのだ。韓国の経済基盤が脆弱で技術力に不安が残る国とは言え、残念な事に兵器産業は政治のバックアップ無しには成り立たない。

スウェーデンの防衛装備品

その好例となるのがスウェーデン軍の話だ。

実はこの辺りの話は、航空万能論様のサイトに詳しく書かれているので、本ブログでは簡単に纏める方向で話をしていきたいが、参考になる部分のリンクは貼っておこう。

グリペンが売れない理由、優れた品質や価格が決め手と勘違いしているため
米Foreign Policy誌は25日、スウェーデンのグリペンが海外市場で売れないのは「防衛装備品市場でもアダム・スミスの原理が通用すると信じ、優れた品質や競争力のある価格を提示さえすれば顧客に選ばれると勘違いしているからだ」と指摘した。
SAAB、グリペンの輸出が失敗続きなのは機体の問題ではなく政治の問題
SAABでCEOを務めるヨハンソン氏は今月26日、グリペンの海外輸出について「極度のフラストレーションを抱えているが、これは機体の問題ではなく政治の問題だ」と主張して注目を集めている。
日本政府、企業に任せきりだった防衛装備品の海外輸出を国主導に変更
読売新聞は25日「政府は企業に任せきりだった防衛装備品の海外輸出を国主導に切り替え、潜在的な顧客の要望に合わせるための改良や仕様変更にも支援を行う案を検討中だ」と報じている。

スウェーデンの兵器で有名なのがSAAB社のグリペンである。このブログの読者にもご存じな方は多いと思うのだ。

制空戦闘・対地攻撃・偵察などを過不足なくこなす、スウェーデン製の小型戦闘機で、STOL(短距離離着陸)性能や整備性に優れる機体だとされている。そして、高性能な割に比較的低価格である。

「良いものを安く」という優秀な戦闘機なのだが、残念ながら世界的に見るとユーザーはさほど多くない。

スイスやチェコなど、スウェーデンの隣国でもグリペンC/Dの売り込みは行われ、国情を考えればグリペンの導入が妥当だったはずだが、両国ともどうやらF-35Aの購入に傾いているようだ。

ロッキード・マーティン、スイスで勝利したF-35Aをスペインとチェコにも売り込む
英国のジェーンズは3日、新たに欧州のスペインとチェコでF-35のプロモーションが活発に行われていると報じている。
スイスで国民投票に必要な署名が提出される、F-35導入禁止の憲法明記を問う?
17日に12万人分以上の署名をスイス当局に提出したF-35導入反対派は「来年3月末までに国民投票でF-35導入禁止の憲法明記を問いたい」と要求、これを無視してF-35導入を進めるのは「非民主的だ」と政府に圧力を加えている。

特にスイスが訳の分からない状況になってっていて興味深いが、結局のところ兵器の販売は政治そのものなのである。この点は航空万能論様のサイトでも同様の指摘があるが、兵器の性能そのものが問題になるというよりは、各国で協調出来る態勢を横目で見ながら最適な兵器の選定を行うというのが、実情なのである。

スウェーデンは、政府が兵器を販売するのではなく、完全に民間企業に丸投げして、「良いものなら黙っていても売れる」という姿勢なのだとか。売れる訳が無いのだ。

韓国は逆

一方の「成功例」として示した韓国の事例は、このブログでも何度も取り扱っているので、改めて説明する必要は無いと思うのだが……、整理しておこうか。

こちらの記事ではあり肯定的に取り扱ってはいないが、K2ライフルは、M16ライフルを改良してライセンス生産をして安価に売るという手法で、多数の国で採用されるに至っている。十分成功した事例であると言えるのでは無いだろうか。

そして、ポーランドにも売れてウハウハなFA-50軽戦闘機。性能的にはグリペンよりかなり劣るシロモノだったのだけれど、Block20になってかなり改善された部分があって運用出来る目処が付きそうなことと、何よりF-16V戦闘機やF-35A戦闘機との共通点が多いことで、乗り換えが現実的であることなどが評価されているようだ。

正直、グリペンの方がオススメなんだが。

そして、K2戦車もトルコやポーランドに売れたことで自信を深めている商品だと思う。欧州への販売実績を積んだことで、導入を検討する国も増えるのではないかとは思っている。

ポーランドが買った兵器としては、K9自走砲もあるのだが、これは世界的に売れている優秀な兵器だ。性能が優秀かはさておき、トルコ、フィンランド、インド、ノルウェー、エストニア、オーストラリア、エジプトなど多数の国で売れたということは、大きな意味がある。

この他にも歩兵戦闘車AS21「レッドバック」辺りも売れそうな気配で、政治力を使って世界に武器を売り歩いていることが興味深い。何より、失敗も積み上げてはいるがそれ以上に成功事例も増えていることが特徴的である。

現場は「使いやすい兵器」を、各国の軍は「優れた兵器」を、各国政府は「外交的に有利となる兵器」となるので、韓国は特定のニーズに応えることが可能な兵器の提供ができる事を示し、結果的に売れたわけである。大した技術力はなくてもそこそこ使える事が重要で、それ以上にそこそこ使えることをアピールすることが大切なのだ。

韓国はそれに成功したわけだ。素直に称賛すべきだろう。

武器輸出にようやく踏み切った日本政府

さて、こうした事例を踏まえて考えれば、日本で武器輸出が解禁された後、成功事例が殆どなかった理由が理解出来よう。

政府は14年、装備品輸出を事実上禁じていた「武器輸出3原則」に代わる「防衛装備移転3原則」を決定した。輸出促進を狙ったものだったが、完成品の輸出はフィリピンへの防空レーダー1件しかない。

3原則の運用指針は、移転する装備品の用途を救難や輸送、警戒監視などに限っている。護衛艦や戦闘機などは輸出できず、輸送機や車両などが想定される。今後、こうした制約の緩和の検討も進める見通しだ。

「讀賣新聞”防衛装備品の輸出「国主導」で推進、国家安保戦略に明記へ…防衛産業の立て直し図る”」より

平成26年(2014年)になってようやく日本政府は装備品輸出を解禁した。

ところがそれ以降、8年ほど実績はほぼゼロ。売れそうな雰囲気になった兵器もあったにはあったが、結局は販売に漕ぎ着けるところまではいけなかったのだ。

日本の自衛隊で使われる兵器は優秀ではあるが、国内で使われることに特化しているので、他国での運用を考えると、購入に至るまでの魅力がない。価格競争力という点でも劣っている。

記事では、経団連からアメリカの制度を真似て対外有償軍事援助(FMS)に相当する制度を導入するように迫っていることに触れられているが、政府が制度を整備して民間企業の後押しをすることが求められているのだ。そのためには企業だけではなく大学でも研究開発が進められる必要がある。

武器販売は悪なのか

「死の商人」という言葉がある。一般的には、戦争を利潤獲得の手段として兵器などの軍需品を生産・販売して巨利を得る人物や組織への批判的な呼称、または営利目的で兵器を販売し富を築いた人物や組織への批判的な呼称として使われる。

言葉だけが一人歩きして、武器を売る人物や組織を「死の商人」と非難する向きもあるようだが、武器がなければ戦争は起きないか?というと、現代においてもそんなことは無いのである。

中国とインド、国境周辺で衝突 殴り合いや投石で死者

2020年6月16日 19時52分

インド陸軍は16日、中国との国境が画定していないインド北部ラダック地方で中印両軍による衝突が15日夜に発生し、インド側の軍幹部や兵士の計3人が死亡したと発表した。1962年の国境紛争後、国境付近では両軍のにらみ合いが続発したが、死者が出るのは極めて異例だ。

インドメディアによると、被害は殴り合いや投石などによるもので中国軍にも死者が出た模様だ。双方の軍幹部が事態の沈静化に向け、協議に入っている。インド外務省報道官は「インドの行動はすべて実効支配線のインド側で行われており、中国にも同様の行動を期待する。対話に基づいて国境地帯の和平を築いていく」とコメントした。

「朝日新聞」より

極めて希な事例だという事にはなっているのだが、武器はなくても争いは起こり死者は出る。武器があれば犠牲者は増える結果になる可能性はあるが、武器が「抑止力」として機能して迂闊に手が出せない状況を作り出す事例もある。核の傘理論などはその実例だ(「理論」と書いた様に実証された話ではないのだが、それでも概ねその効果はありそうだという事にはなっている)。

そして、それ以上に防衛装備品の共通化は、共同作戦を行う部隊同士に利益になり、国家間の外交カードとしても意味が出てくる。それの好例がAUKASなのである。

AUKASはオーストラリアが作る原子力潜水艦の技術を、アメリカとイギリスが供出するというような話なのだけれど、機密の塊の潜水艦を複数の国が協力して建造するという流れは、高度に政治的な意味合いが強く、防衛協力を強化するという意味合いが極めて強い。

日本が、こうしたレベルの防衛協力に参加していくためには、やはり政治が動かなければならない。ようやくそこに気が付いたのか、と、ため息をつきたくなるが、頑張って進めて欲しいとは思う。岸田政権はその点は努力している感じはする。おそらく、前政権である程度の方針は固められていたとは思うし、AUKASに対する日本なりの回答であるように思う。

ただね、本気で売る積もりなら、輸出を前提とした兵器開発が出来る環境を整えるのが重要なんだよねぇ。日本の90式戦車とか売り出したら、それなりに欲しい国はあると思うんだ。AUKASを見据えているのであれば潜水艦がそれに該当することになる。ソコまで思いきることが出来るかどうかが、この政策の成否を分けることになると思う。

コメント

  1. 木霊さん みなさん こんばんは

    まずは第一歩を評価したいと思います。願わくばコケないように、、、

    対豪州潜水艦 失敗したのはフランス横やりもありますが、政府主導でなかったのも大きいですよね。
    90式戦車、、より「圧倒的性能を日本が誇る」のは潜水艦だと思うので、こちらで頑張ってほしい。

    >ただね、本気で売る積もりなら

     韓国の兵器の成功(多分?)は、PCマザーボードを台湾が制覇した事例を思い起こさせます。キーワードは「オープンスタンダード」

    現在のPC標準アーキテクチャは、元をたどれば碌に特許も押えず回路図まで全公開までしいたIBM-PC(ATまで)が基盤となっていて、当初台湾はコピー技術しかなく品質も劣っていたが今は世界一品質。その後クローズドに路線変更したIBMは惨敗

     一方アップルは圧倒的ユニーク技術を売りにした独善的世界一、、ジョブズ健在時は顧客マーケッティングなどしなかったらしい、、の地位を築いています。

     日本PC(NEC)は、ガラパゴス・でも顧客要求に細かく、、、で余計にガラパゴス悪化、、悪どい寡占商売、、等重なって世界に置いて行かれました。

    兵器のハナシに戻って
     韓国兵器は他国技術の劣化コピーですが、米国クローズドに対し、現地生産・技術移転に関して非常に大判ふるまいで互換機
    PC的人気を得ていますね。 日本の兵器がこれをしても時間もかかれば、そもそも勝てない気がします。ただ潜水艦に関してはアップル路線もいけるのではないかなあ?と、、、。

    • 潜水艦をアップル路線で、ですか。
      確かにありかもしれませんが、潜水艦の技術って沢山の国にばらまくようなものでもないんですよね。
      AUKUSのような結びつき方なら技術融通できそうですが、日本の場合は下手な国に技術を流すと敵対する国に技術が流れてしまうリスクが。台湾にも潜水艦を売りつけるのはリスキーですから。

  2. 武器販売は政治とセットで進めるべきというのは正しい印象があります。
    自動車販売と同じようなサービスを兵器分野でも展開するには現地工場・現地資材・現地人員の育成三つが必要ですし、運用支援だって要ります。
    南朝鮮の兵器は西側システムの運用習得の踏み台として安価で生産も現地で行えるというのが購入の決め手であったと思われますし、備品関係から提携を進めていくのも民間能力に長らく偏ってきた日本では有りではないかと思っています。

    • 民間レベルで考えれば、メンテナンスの出来ない機器を買うなんて事はあり得ないワケです。
      したがって、兵器だって日本政府が保証を付けるタイプの有償援助(FMS)という感じの後押しくらいはすべきだと思いますよ。
      韓国のやり方はまさに「技術も輸出しちゃうよ」という、自国技術ばかりで出来上がった兵器であるかのような装いで売りつけるパターンですから、「巧い」と言わざるを得ません。
      日本政府の姿勢も変えざるを得ないのです。