防衛大臣、自衛隊の燃料が足りないことを明かして予備費を充てることを発表

防衛政策

これ、最初見た時に「何を発表しているんだ」とビックリしたのだが、よくよく考えてみるに、かなり頑張った案件なんじゃないかと思い直した。

防衛省、自衛隊機の燃料に予備費507億円 価格高騰で

2022年9月20日 16:00

浜田靖一防衛相は20日、警戒監視や災害派遣といった任務に必要な自衛隊機などの燃料を確保するため2022年度予算の予備費507億円を充てると発表した。記者会見で説明した。燃料価格の高騰で購入予算が足りなくなる恐れがあった。

政府は同日の閣議で物価高対策などでの予備費の支出を決めた。

浜田氏は「調達価格の上昇によって1、2カ月以内に燃料購入の予算が不足する見込み」だったと明かした。22年度当初予算で自衛隊の燃料購入費は989億円を計上していた。

「日本経済新聞」より

そもそも、「燃料購入費が足りない」ということの意味が分からないし、これを公表することもどうかとは思う。思うのだが、既に弾薬や燃料が足りずに何年もやり繰りしてきた自衛隊の実態を考えると、「足りないから充当する」という当たり前の事がやられたことは、歓迎すべきことではある。

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不遇な自衛隊

パンとご飯を両方とったら処分

ルールを守ることを徹底される自衛隊ではあるが、こんな哀しいニュースがあって物議を醸した。

二択の米・パン、両方取ろうとした自衛隊員が停職→「厳しすぎ」の声 広報「処分は適正」その理由

2022年06月21日19時39分

埼玉県狭山市内の航空自衛隊入間基地で、ご飯かパンしか選べないのに両方を取ろうとした隊員が停職3日の懲戒処分になったと地元紙に報じられ、ネット上では、厳しすぎるのではないかとの声が相次いでいる。

「J-CASTニュース」より

色々な経緯があって、処分自体は適性であったようだ。自衛隊の広報によれば、だが。

それによると、空尉は、不正をした当日、朝寝坊をしてしまったため、食事の時間を十分に取れず、時間を短縮するために、自分からご飯の量を減らした。そして、食事の後に食堂の外に持ち出して食べようと、1食分のパン2個を不正に取って、配膳係に見つかった。

「これは、乾物の不法領得になります。空尉は、そのことへの認識が不足していました。ご飯を減らしたら、パン1個ならいいというわけでもありません。空尉がしたことは、服務規律の維持に反する行為です。他の隊員がパンを食べられなくなりますし、食事には税金が使われています」

航空自衛隊では、量やカロリーを計算したうえで、ご飯なら1杯と一律に決まっているという。お代わりなどができないのは、予算がないからということではないとした。

「J-CASTニュース”二択の米・パン、両方取ろうとした自衛隊員が停職”」より

自衛隊広報の説明は確かに理に叶っている様には思うのだ。だが、この話が本当なのかは少々疑問に思う情報もあった。

これは横田基地広報のtweetなのだが、一般人から見ても少ないよね?カロリー計算されて必要な量を提供されているとは言え、身体を使う仕事なのだ。十分な量の食事を食べるという点で不足を感じる。本当に「おかわりが出来ないのは予算が足りないからではない」というのは事実なのだろうか。

自衛隊、劣悪環境で人材難 「人的資本」軽視のツケ

2022年9月7日 2:00

「寒冷地や標高の高いレーダーサイトの隊舎はエアコンを整備しない基準だった。エアコン整備を一気に進めるよう促したい」。元防衛相の河野太郎氏が6月、ツイッターに投稿した。

自衛隊員が生活を送る隊舎に「冷暖房設備を整備する」と原則が変わったのは2022年3月末だ。それまでエアコンがない施設があるのは一般的で、九州でも高地なら冷房はなかった。

「日本経済新聞」より

さらに、自衛隊の設備はかなり老朽化して不十分である事が知られており、身体が資本の自衛隊員に対して、冷暖房設備すら事欠く環境というのは如何なものか。在っても使わないことと、そもそも備えられていないことは意味が違う。

設備の老朽化

隊舎の老朽化に関してはかなり深刻なようで、耐震構造にすらなっていないところがあるようだ。

自衛隊施設の4割が旧耐震、進まぬ改修

2022.08.25

宿舎を除く自衛隊施設2万3254棟のうち、4割超に当たる9875棟が旧耐震基準の建物だと分かった。2020年度末時点の国有財産データを基に防衛省が整理した。同省は阪神大震災を契機として、1995年度に耐震化対策事業に着手した。予算が付いた施設から順次、耐震改修を進めてはいるが、進捗は芳しくない。

「日経XTECH」より

何というか、多くの公共施設でも似たような現状があるとはいえ、バブル期に増産されて適切な維持費を維持できなくなった公共施設と、多くの隊員達が利用する隊舎とを同列に扱うべきではないと思う。耐震基準に満たない隊舎が地震で壊滅して、自治体が応援依頼をしても自衛隊の出動が出来ないなどというアホな展開になったら目も当てられないではないか。

実際に老朽化した隊舎の現状が、写真を検索すると出てくるのだが、かなり酷い。「我慢しろ」と言われれば、出来なくはないのだろう。だが、慢性的に老朽化が放置されている現状は、やはり宜しく無い。贅沢させろなどとは言わないが、一時が万事この調子なのが困るのだ。

防衛装備品の稼働率低下

それ以上に深刻なのは、防衛装備品の稼働率の低下である。

このブログでは韓国軍の兵器に関する情報を扱っていて、「韓国軍お得意の共食い整備」などと揶揄しているが、世界のどこの軍隊でも共食い整備というのはあり得る。韓国軍の在り方はちょっと特殊ではあるが、自衛隊だって共食い整備が恒常化している嘆かわしい実態はあるのだ。

防衛装備品、5割が稼働できず 弾薬など脆弱な継戦能力

2022年9月5日 19:00

「稼働できる航空機が足りません。編隊を組む演習では規定の機体数が用意できないです」。航空自衛隊でこんな悲鳴が上がる。

陸海空の3自衛隊全てで同じ声がある。近年は航空機や戦車など装備品の稼働率が大幅に低下している。

「日本経済新聞」より

世界のベストセラーとなっているF-15戦闘機やF-16戦闘機(日本ではF-2戦闘機)は、現在、世界中で慢性的に予備部品が足りない状況にある。

これは、F-15やF-16が初飛行からかなり時間が経過して、あっちこっちで部品の老朽化が進んでいることや、期待の寿命を延ばすための延命治療をやっている国が多い事なども関わってくるので、一概に「お金がないから修理できない」という話であるとも言い難いのだが、全体的な傾向としては防衛費が足りないために予備部品の在庫を削っている状況であると言える。

そして、それ以上に脆弱なのが弾薬の備蓄である。これははそのまま継戦能力に直結するので、いざ戦闘が始まると、途端に顕在化する問題でもある。

今はロシア軍のウクライナ侵攻によって、ウクライナが1ヶ月も経たないうちに武器弾薬がそこを尽きて継戦が困難になって世界各国からの支援を受けた事例があって、恒常化している自衛隊の弾薬不足にもスポットが当たった恰好だが、これまでは自衛隊の装備を充実させることが悪であるかのように扱われてきた。

武器弾薬の不足で戦えぬ軍隊など、笑い話にもならない。国内では憲法の絡みもあって「自衛隊」という名前で「軍隊とは違う」という扱いがなされているが、外国から見れば世界屈指の練度を誇る軍隊なのである。弾薬がないので戦えはしないが。

それなりの規模でそれなり装備を持つ軍隊を、おかしな法律の枷を外して各国並みに動けるようにする、それだけの話なのだが、それが戦後70年間できていない。

燃料費を補充

とまあ、そんな背景があって冒頭のニュースを読んでみると、違う風景が見えるのではないだろうか。

原油高騰が自衛隊直撃「2カ月以内に燃料費が底突く」 予備費対応へ

2022/9/20 15:15(最終更新 9/20 15:32)

浜田靖一防衛相は20日午前の記者会見で、原油価格の高騰により自衛隊の燃料購入予算が枯渇する見込みとなったため、予備費約507億円を不足分の補塡(ほてん)に充てると発表した。浜田氏は「自衛隊の部隊運用に必要な燃料の調達価格が上昇しており、1、2カ月以内に予算が不足する見込みとなった。今月中に予備費を措置しないと部隊運用に支障が生じてしまう」と述べた。

「毎日新聞」より

これは毎日新聞より引用して、内容もほぼ同じである。要旨は当初予算で計上された燃料購入費として989億円では足りなくなったので507億円補填したという話で、燃料費が如何にカツカツで計上され、燃料価格が高騰した結果、既に用意した予算を使い切りそうだということだ。

当初設定された燃料購入費が本当に妥当であったか?と言う点は些か不安な要素ではあるが、この手の予算は前年度の実績を踏襲することが多い。よって、常にやや足りないくらいの値段設定だったのだと推察される。そこへ燃料価格高騰が直撃したので、早々に予算が尽きた。

「足りぬ足りぬは、工夫が足りぬ」と例年ならば切り捨てられるところを、防衛大臣の浜田氏は「予算を付けろ」と押し切ったわけだ。もちろん、10月にも燃料費が尽きてしまうという状況を鑑みれば、半月分くらいは誤魔化せるかも知れないが、2ヶ月も足りない状況を続けられないという現実的な判断があった可能性はある。

馬鹿正直に「足りない」と言うだけならば誰にでも出来る。実際に予算をもぎ取って予算を充当できたのだから、最低限の仕事をしたと評価できるだろう。少なくとも「足りないなら、他の予算を削って充てろ」というアホな判断をしなかっただけマシなのだ。

そして、燃料費だけでなく、装備品を含めて全体的な見直しをすべきなのだ。

財務省の陰謀

そういう意味では、このニュースは唾棄すべきものだ。

防衛費に海保予算算入も 鈴木財務相

2022/9/16 12:17

鈴木俊一財務相は16日の閣議後記者会見で、防衛費の算定方法をめぐり、海上保安庁予算など安全保障に関連する経費を幅広く算入することに含みを持たせた。自民党内では防衛費の増額を求める声がある。現在は防衛省予算と在日米軍の再編関連経費などを防衛費に位置付けており、算定方法見直しで要求水準に近づける狙いもありそうだ。

「産経新聞」より

防衛省予算に海上保安庁予算を含んで、見せかけ上は増えたようにしようという駄案だが、これはそもそも警察の機能と自衛隊の機能を一緒にしようという極めて乱暴なものである。

本来であれば、海上保安庁とは別にコーストガードと呼ばれる実力行使能力を含んだ沿岸警備隊を作って、それを防衛省に組み込むべきなのだ。海上保安庁は海上での警察の機能しかない。

なお、日本の場合は警察は警察で大きな問題を抱えている。警察庁は地方警察を纏めるための組織で、実行部隊を持たない。アメリカならばFBIという中央警察組織があるのだが、日本にはそれに相当する組織が存在しない。その弊害がモロに出てしまったのが安倍晋三暗殺事件である。地方警察に要人警備を任せるという実情がそもそも歪なのだ。

……話が脱線してしまったが、自衛隊と警察の予算をまとめると言うアホな発想は、流石財務省と言わざるを得ない。どうしてもやりたいなら、海上保安庁の管轄を国交省から防衛省に移すべきだろう。だが、それはできない。結局この国の在り方を歪めようとしているのは財務省なのではないか。

岸田氏は、「防衛予算をしっかり増やす」と明言したのだから、財務省に負けずに必要な予算を計上する方向で頑張って欲しい。案外、今の防衛大臣の浜田氏は、その方面で話がわかる人物のようだ。

電子戦部隊配備

先日はこんなニュースがあった。

「来年度は電子戦部隊も配備」浜田防衛相が与那国陸自を視察

9/21(水) 19:59

浜田靖一防衛大臣が21日に与那国島を訪れ陸上自衛隊の施設を視察しました。 陸上自衛隊の与那国駐屯地は2016年に設置され、南西諸島周辺の警戒監視業務に当たっています。

~~略~~

浜田大臣は那覇駐屯地や知念分屯地に配備されている電子戦部隊を来年度、与那国駐屯地にも配備する計画を明らかにしました。

「Yahooニュース」より

脆弱だった日本の電子戦部隊は、ここ数年で多少増強されてきたようだが、今回、与那国重頓知に配備する計画が明らかになった。

配備計画自体は恐らく制服組の立案だろうが、防衛大臣に理解がなければこの手の政策は前に進まないものである。おそらく台湾有事関係の装備増強は岸氏の時代から準備がなされていたのだと思うが、現職大臣の理解があってこそ実現可能であることには変わりない。

遅ればせながらも、ミサイル部隊の強化と電子戦部隊の配備が決まったことは喜ばしい。この調子で頑張ってもらいたいところである。

コメント

  1. 「たまに撃つ 弾がないのが 玉にキズ」
    とか言われて久しいので、そっちにお金が廻るのは大歓迎です。
    トレペも潤沢に買ってあげて下さい、と。

    メシのまずい軍隊は、士気が下がりますから……

    • 漏れ聞く情報を拾っていくと、かなり酷いみたいですからね。
      ただまあ、徐々に改善している部分もあるようで。
      待遇改善という部分を含めてもうちょっとお金を使って欲しいとは思います。実弾演習もかなり少ないらしいですからね。