日本、巨艦イージス建造へと報じられる

防衛政策

このブログでは、自衛隊の兵器に関して積極的に触れてはいない。けれど、コメント頂いたし、ちょっと扱っておきたいネタではある。ニュースソースとしては少し古いのだけれど、お付き合い願いたい。

巨艦イージス建造へ 陸上配備代替、ミサイル防衛―「令和の戦艦大和」の声も・防衛省

2022年09月01日07時56分

秋田、山口両県への陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画撤回から2年余りを経て、代替策となる2隻の「イージス・システム搭載艦」の建造計画が31日、防衛省の2023年度予算概算要求で明らかになった。

「時事通信」より

まあ、イージス・アショア配備計画が転けてしまったから、仕方のない面はあったんだけどさぁ。巨艦イージス建造ですか。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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陸上版イージスは必要だった

コウノタロウが潰したイージス・アショア計画

河野太郎氏に関して、個人的には政治家としての仕事ぶりの評価に関してはさほど低くはない。

まあ、保守派からの評判は悪いが、ソコは河野氏は父親の贖罪を背負っている部分があるのと、政治家としてのビジョンが無いという致命的な問題があるので、仕方が無い。その分を差し引いても、仕事人ではあると思うのだ。僕が評価した点はそういった部分である。

ただし、防衛大臣の職にあった時代の河野太郎氏の仕事で、イージス・アショア計画を潰したのだけは許せない。

イージス・アショア計画は、現在、海上自衛隊が保有している「こんごう型」4隻「あたご型」2隻「まや型」2隻、計8隻のイージス艦の活動を補完するものと位置づけられて持ち上がった話である。

海上に出て任務を行う従来型のイージス艦は、日本周辺海域を防衛するにはその守備範囲が広すぎる。

Aegis01

そこで、陸上にイージス艦機能を持たせた基地を作り、広範囲の探知を行う事でイージス艦の働きをサポートする計画であった。これがイージス・アショア計画である。

従来のイージス艦は、海上で活動する以上は天候に大きく左右される。荒れた海に出て活動するというのはなかなか難しく、また、24時間の監視業務も難しい。何より、長期間活動を拘束される乗組員のストレスは過大であり、家族のサポートも受け難いという課題を抱えているのだ。

したがって、陸上勤務の自衛艦が地上の基地で活動出来る拠点を作る事で、イージス艦が出来ない仕事をさせようという構想が持ち上がり、イージス・アショア計画として推進されたのである。

が、このイージス・アショア計画、構想自体は悪く無いと思うのだけれど、色々と事前準備に拙い点があったようで、その辺りが問題視されて最終的に計画が潰されてしまった。

ただ、個人的には河野太郎氏が持ち出した理由、「ブースターが演習場内に落下させることが難しい」というアホな内容には全く理解できなかった。アレで納得したのか?アノヒト。

迎撃するのであれば、ブースターどころか、迎撃したミサイルの破片が周辺に降り注ぐことは避けられない。そちらの方が被害甚大であるが、それでもミサイルの直撃を受けるよりはマシである。迎撃すると言うことの意味は、被害の減殺であって、被害を全て無くすということではない。寧ろ、そんな事も分からないのかとため息をつきたくなる。

ともあれ、日本におけるイージス・アショア計画は消えて無くなってしまった。

宙に浮いたSPY7

で、問題になったのがイージス・アショア計画に用いる予定であった大型レーダー「SPY7」の行き先である。製造元であるロッキード・マーティン社との契約が宙に浮いてしまったのだ。

実はAN/SPY7レーダーは、この問題が持ち上がった時点で未完成のシステムであった。おそらく、開発元のロッキード・マーティン社に日本からもある程度の出資があったのではないか?と思う。実際にレーダーに使われている多目的GaNデバイスは試作機の段階では富士通が供給していたし、投じた資金を回収したいという思惑があっても不思議ではない。

で、紆余曲折あって、結局、イージス艦を作って載せることになったというのが、今回の話の経緯である。

ミサイル防衛だけでなく、政府が保有を検討する反撃能力(敵基地攻撃能力)に転用できる長距離ミサイルも搭載。船体の大きさは海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」型(1万9950トン)に匹敵し、自衛隊関係者からは「令和版戦艦大和」の声も漏れる。

「時事通信”巨艦イージス建造へ 陸上配備代替、ミサイル防衛―「令和の戦艦大和」の声も・防衛省”」より

見方によっては、既に進行していた計画を破棄することができずに、イージス艦搭載型に振り替えたという風なこともできる。そして、そもそもAN/SPY7レーダーは地上配備を前提に開発されていたので、海上で使うという事になれば、多少手を加える必要がある可能性がある。更に費用が膨らむのは確実だろう。

実は、AN/SPY7レーダーを搭載する艦は、現状はアメリカにも存在しないのだ。

いずも型と同等の大きさ

ちなみに、このAN/SPY7レーダーを搭載したイージス艦の計画の概要が明らかになった段階で、軍事知識のある方々の中でざわめきが広がった。

海上自衛隊が保有する最大の護衛艦であるいずも型。

これがいずも型護衛艦の姿なのだが、基準排水量19,500t(満載排水量24,000t)と、世界のヘリ空母と肩を並べる程度の大きさとなっている。イタリア海軍保有のヘリ空母カヴール辺りと似たような大きさである。流石にアメリカ級強襲揚陸艦などと比べるとかなり小さく感じるが。

で、新造のイージス艦は、このいずも型を超える大きさになるようなのだ。

防衛省は設計費やエンジン取得費を要求。構想では基準排水量は約2万トンでいずも型とほぼ同じで、まや型の2倍以上ある。全長210メートル、幅40メートル程度を検討している。

「時事通信”巨艦イージス建造へ 陸上配備代替、ミサイル防衛―「令和の戦艦大和」の声も・防衛省”」より

分かり易いように表にしてみよう。

艦名新造イージス艦いずも型護衛艦
(ヘリ空母)
まや型護衛艦
(イージス艦)
戦艦大和
基準排水量約20,000t19,500t8,200t64,000t
満載排水量不明26,000t10,250t72,809t
全長約210m248.0m170.0m263.0m
最大幅約40m38.0m21.0m38.9m
機関方式不明COGAG方式COGLAG方式艦本式ボイラー
レーダーAN/SPY-7(V)OPS-50AN/SPY-1D(V)電探
イージス兵器システムベースラインJ7.BMTAベースラインJ7なし

幅だけ見ると新造されるイージス艦が一番大きい。おそらく基準排水量も大きくなるだろうと予想されているので、時事通信社が指摘する「大艦巨砲主義」という見方もできるのでは、とは思う。

ああ、参考までに戦艦大和のスペックも載せておいた。横幅だけみると確かに大和に近い。

同省は「船体の大型化で揺れを低減し、極超音速兵器への対処やレーザー兵器の機能を追加できる拡張性を備える利点がある」としている。同省関係者によると、アショアで配備する予定だった米ロッキード・マーティン社製の大型レーダー「SPY7」を転用するが、既存のイージス艦レーダーより重く、重心のバランスを取る必要があるため、船体が巨大化する。

「時事通信”巨艦イージス建造へ 陸上配備代替、ミサイル防衛―「令和の戦艦大和」の声も・防衛省”」より

新造イージス艦が大きくなっている理由は、AN/SPY7レーダーが大きく重いせいらしい。この辺りはハッキリした事は分からないが、前々から「AN/SPY7レーダーはデカい」という話があったので、矛盾してはいない。

敵地攻撃能力も搭載

そして、今回のイージス艦の最大のポイントは、迎撃ミサイルだけではなく攻撃ミサイルも搭載する予定であると言う点である。

弾道ミサイル対処の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」や巡航ミサイルを撃ち落とすSM6を搭載。射程が延伸化され、政府が検討する反撃能力に転用可能な12式地対艦誘導弾(ミサイル)も装備する計画。

「時事通信”巨艦イージス建造へ 陸上配備代替、ミサイル防衛―「令和の戦艦大和」の声も・防衛省”」より

12式地対艦誘導ミサイルは順調に開発が進んでいるらしいという噂があるが、ハッキリした事は不明だ。完成予定は令和10年(2028年)頃となっていて、射程距離は1000km以上を目標とされている模様。

攻撃力として十分かというとちょっと疑問ではあるが、今まで保有していなかった中距離ミサイルを手に入れられることは大きいと思う。

尤も、これに関してはかなり辛辣な声が大きいが。

自衛隊関係者は「性能を特化すると戦時中、巨費を投じたものの完成時に『大艦巨砲主義』が時代遅れになった戦艦大和のようになりかねない」と指摘した。

「時事通信”巨艦イージス建造へ 陸上配備代替、ミサイル防衛―「令和の戦艦大和」の声も・防衛省”」より

イイネ!何だったら、艦名は「やまと」「むさし」とかにしたら如何だろうか?……ちょっと難しいか。だったら「いぶき」「あまぎ」でどうですかね?

まあ、何になるかはちょっと楽しみにしておきたいと思う。

イージス・アショアの代わりになるのか

とはいえ、とはいえである。

元々のイージス・アショア計画と、今回の新造イージス艦の取得は、話としてはちょっと齟齬がある様に思う。代替計画であるとは言えないのでは無いだろうか。

迷走する日本のミサイル防衛。導入が決まった新イージス艦が“令和の戦艦大和”と揶揄される理由

9/19(月) 17:00配信

防衛省は陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を代替するイージス・システム搭載艦を2027年度末に1隻就役させ、28年度末にもう1隻を就役させると発表した。ただしこの最新鋭のイージス・システム搭載艦はも導入スペックもコストも規格外の大きさ。自衛隊関係者からは早くも「令和の戦艦大和」「無用の長物」との声が上がっている。

「yahooニュース」より

ちょっとおかしな切り口で批判する人がわらわらと出てきて面白いのだが、このブログではキヨタニの文章には触れたくないので別の方の記事を引用したいと思う。まあ、これも大概だったのだが。

まず、新型艦のスペックだが、全長210m、幅40m、基準排水量約2万トンになる予定だ。海自イージス艦「まや」型で8200トン、中国がアジア最大と豪語する「055型」で1.3万トン、コスト増で3隻しか建造されなかったアメリカの「ズムウォルト級」ミサイル駆逐艦ですら1.5万トンほどだ。

「yahooニュース」より

比較するのが「まや型」や支那版イージスの「055型」そして、アメリカ軍の保有するズムウォルト級ミサイル駆逐艦である。ちょっと意味が分からない。

比較対象として自衛隊最新の「まや型」や支那版イージス艦「055型」はまあ分かる。しかし、何故、ズムウォルト級?そして、大きさだけ比較して何の意味があるのか。

そして、あまつさえ戦艦「大和」の話を持ち出して、ホテル艦になるのではないか?という話をする始末である。

ただ、後半で持ち出した「島嶼部にイージス・アショア配備」という話には、賛同出来る部分がある。

おそらくだが、これまでイージス艦を運用した実績のある海上自衛隊に新造イージス艦の運用を任せたいという意向があることと、島嶼部に固定した基地を作るくらいなら、足止めして迎撃するにしても、海上を移動出来る基地的な意味合いを高めたいという妥協の産物だったと思う。

防衛省にとって、馬毛島の騒ぎのように、基地建設の話をするとあらゆるところから反対派が湧き出す現状に辟易しているのでは無いかと思う。

馬毛島・基地計画 市道廃止と市有地売却「西之表市の手続き不当」 反対派が監査請求へ

2022/09/21 10:3

西之表市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地整備計画に反対する市民団体「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」は20日、市に対し、防衛省への馬毛島小中学校跡地と隊員宿舎用地の売却、島内3市道の廃止の差し止めを求め、21日に監査請求する方針を固めた。

「南日本新聞」より

市民団体と称する活動家達が、あちこちで日本の防衛体制に対して物言いを付ける。その背後に支那の影響力があることは確実であり、資金援助も出ている可能性が高いのだ。しかし、民主主義国家の日本にとって、こうした活動を止めると言うことは難しい。

早期に迎撃システムを強化するためには、用地取得で様々な妨害に遭うよりも、運用実績のある海上自衛隊に運用を任せ、用地取得妨害を受けない大型イージス艦の取得というのは、日本の現状を考えれば割と現実的な解であるように思う。

計画段階ではメガフロート案とか、アーセナル・シップ構想とかがちらついていたことを考えても、辻褄があうように思う。つまり、今回の新造イージス艦計画は、イージス・アショア計画とは既に離れた位置にあると考えるべきである。

SPY-6を採用しなかった

なお、運用実績のないSPY-7ではなく、アメリカ海軍が採用を始めているSPY-6を採用する話も出ていたようなのだが、最終的には採用する事は無かった。これはSPY-7の違約金絡みの話という分析もあると思うのだが、それ以上に自衛隊がSPY-6の早期供給を受けられなかったのではないかと考えている。

日本版アーセナルシップとイージスアショア代替案(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
イージスアショア代替計画に浮上した発射機分離設置案の民間貨物船搭載案は簡易的なアーセナルシップ(弾庫船)となるのか。
海に戻るのは適切だったのか? 巨大な単胴船となるイージスアショア代替艦と極超音速兵器に対応する必要性(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
極超音速兵器の迎撃で海上に戻るのは適切だった? イージスアショア代替艦は結果的に正解だったのかどうか。

JSF氏が2020年のこれに関して詳しい説明をされているので、参照いただきたい。詳しい人の説明というのはありがたいね。

記事にあるようにSPY-6を採用しなかったことは、他の護衛艦との連携はするが、艦隊を組んで運用する気がない為ではないかという風に感じる。上で書いた様に、単純にSPY-6の早期供給(アメリカ海軍の要求している船の後になってしまう可能性が高い)諦めたことも大きいと思うが、既に供給が決定しているSPY-7の方が探知範囲の面でも有利であると考えた可能性はある。

極超音速滑空兵器に対応しなければならない

そして、JFS氏は「結果的に」と表現しているが、イージス・アショア計画では極超音速滑空兵器(HGV)対策が難しいという側面があって、海上を移動出来る新造イージス艦をチョイスしたことは、良かったのでは無いか?という見方があるようだ。

img

これは従来の考え方を示す模式図である。弾道ミサイルに対応する為にはイージス・アショア計画を推進することが適切であったように思う。が、HGVに対応させるためには考え方を変える必要はあったのだ。

良くも悪くも、HGVの脅威に対応しなければならない以上は、従来の計画を破棄してでも新たに対応を考えねばならなかったのだと思う。

極超音速兵器は地上レーダーでは探知が難しいため、多数の小型衛星による観測網「衛星コンステレーション」で探知・追尾する研究も盛り込んだ。

「讀賣新聞」より

こんな話もあるので、完全に仕様が固まっている状況だとは言い難い。他社の記事を見ても、しっかりした仕様が出ているワケではないので、これからまだ変わることが多いかもしれないね。

そしてそもそも、「新造イージス艦が適切なのか?」という点はHGVに対応させる話は、直接はリンクしないのだが、ソレに対応する方向に自衛隊は舵を切っているのだという事は分かる。

新造イージス艦の取得について色々な批判はあるのだろうけれど、柔軟な考え方は必要だろう。したがって、今後出てくる情報を注意深く拾っていきたいと思う。

あ、そうそう、新造イージス艦の動力、SPY-7レーダーは電力をかなり喰うようだし、原子力機関を採用したらどうだろうか?

追記

そうそう、HGV迎撃に関するトピックスを忘れていたので追記しておきたい。

自衛隊のHGV対処の研究:極超音速兵器迎撃ミサイル(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
自衛隊が研究する極超音速兵器迎撃ミサイル

未だ研究段階で、このHGV迎撃の研究がどうなるのかはよく分からないが、現状ではブースターなどが落っこちてくる可能性が高いようだ。

そして、HGVが目標に向かって突入降下を開始した後の終末段階での迎撃を予定しているようなので、日本列島を狙ってくるHGVが来た場合には、洋上に出て迎撃したほうが迎撃ミサイルの飛翔距離が短くなるので有利になると予想される。

超音速で飛んでくるHGVを迎撃する事が果たして可能なのか?はともかくとして、洋上に出て迎撃出来た方が都合が良いのは事実だろう。何しろ、迎撃した時に破片が降り注いでも洋上であるし、ブースターがが落っこちても洋上である。地上で被害拡大するよりはマシだと言える。

とはいえ、どの程度違うのか?という部分を含めて不明な点は多い。今後も新造イージス艦の情報に関しては追いかけていきたいと思う。

コメント

  1. こんにちは。
    本件、真っ先に思ったのが
    「こんなん、良い的だよな」
    なのですが、考えてみれば、地上配備型でも良い的である事は違いなく、多少なりとも動けるだけまだマシ、と言えるかも、と思い直しているところです。

    拠点防空に徹し、遠洋には出ず沿海をウロチョロして可能な限り潜水艦のエサになることを避けられれば、使い勝手もあるかも、と思うようになって来ております。

    逆にこんなもの、前に出したらそれこそ槍衾ですから。

    ところで河野太郎、お前だけは許さん。

    • 良い的になるのは間違い無いでしょう。
      ただまあ、それでも動けることはメリットですし、海の上であれば迎撃した後に弾の破片がどうこうといった批判もかわすことにはなります。
      かなり鈍足のようですし、外洋に出る仕様ではなさそうですよ。何処かの港か、内海に停泊して足を止めて撃つ感じの使い方になるような気がします。

      河野太郎氏は、TikTokの件でもやらかしていますからねぇ。

  2. 面白い記事をありがとうございます!河野太郎氏の弁解に関しては、ホントに謎なんですよね。もうちょいマシな言い訳、幾らでもあったんじゃないの?感が。ともあれ、施設課がパパッとバラしてどこでも出先でパパッと組み上げられるような代物であったなら、それが理想でもあったとは思うのですが。

    • 興味を持って頂けたのであれば幸いです。
      迎撃するにせよ、敵基地を攻撃するにせよ、まだまだ技術的課題は沢山あると思います。
      この情報は追いかけていきたいと思っていますよ。