パキスタンを襲った水害と気候変動

アジアニュース

僕にとってパキスタンという国家は、インドと対立している国家だ、というくらいの認識しかないのだが、今、パキスタンは歴史的な水害に見舞われているらしい。

パキスタン 大雨で洪水続く 死者1000人超 政府が援助呼びかけ

2022年8月29日 19時07分

パキスタンでは、大雨による洪水が各地で続いていて、ことし6月から28日までに確認された死者は1000人を超えました。被災した人も3300万人にのぼるとみられ、パキスタン政府は、国際社会に援助を呼びかけています。

「NHKニュース」より

記事を読んで、「大雨が降って大変なんだね」くらいの印象しか持たなかったが、写真を見るとかなり大変なことになっているようだね。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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パキスタン全土のうち1/3が冠水

平均雨量を大幅に上回る

えーと、まず、分かり易い写真を1枚。

パキスタンのバロチスタン州の惨状らしい。随分と水没している。

Balochistan in Pakistan (claims hatched).svg

この赤い部分がバロチスタン州らしいのだが、パキスタン最大の面積を持つ州で、水の不足のため人口密度が低い場所らしい。

パキスタンでは、6月中旬以降、各地で平年の雨量を大幅に上回る大雨が続いていて、広い範囲で洪水や土砂崩れなどが相次ぎ、被害が拡大しています。

「NHKニュース」より

どの程度の雨が降ったのかは、このニュースからはイマイチ分からないのだけれど、被害家屋99万棟、被災者3300万人(報道によって異なる)というから、相当な被害を受けている模様。

パキスタン、史上最悪レベルの大雨被害

2022年08月30日

パキスタンでは、史上最悪レベルの大雨災害に見舞われている。2022年7月の全国の平均降雨量は177.5ミリと平年の2.8倍になり、1961年以降で最多となった。国家災害管理庁(NDMA)は8月29日、6月以降のモンスーン降雨による死者数が子供386人を含む1,136人に達したと発表した。

「JETRO」より

平年の2.8倍の雨が降っちゃったようだ。

パキスタンではこの時期、モンスーンの影響による雨期を迎えているようだ。南アジアのモンスーンは、6月から9月頃迄続く雨で、隣国インドでも長雨による洪水に襲われることは珍しくない。この時期に纏まった雨が降り、年間降水量の3/4以上がこの時期に降るそうな。

実際に、今年はインドでも洪水被害があったと報じられている。

インド・アッサム州で大規模な洪水、420万人以上が避難

2022年6月21日

インドで近年で最大規模の降雨と洪水が続いており、北東部アッサム州では村や畑、住宅などが次々と水没している。当局によると、被害は州内35地域のうち32カ所におよび、これまでに少なくとも45人が死亡。また、470万人以上が避難した。

「BBC」より

隣国で雨が降っているのであれば、当然ながらパキスタンでも被害はある。

洪水発生

モンスーンの影響で洪水が発生したのは、パキスタンでも同じらしい。

洪水被害は、西部バロチスタン州、インダス川が通るシンド州北中部およびパンジャブ州南部などで大きくなっている。住宅被害は、全半壊家屋が105万軒、その被災者は3,300万人を超えた。中でも、シンド州は1,450万人で最も深刻な影響を受けている。家畜の亡失も全国で70万頭に上っている。インフラへの被害も大きく、延べ3,400キロ以上の道路が寸断され、橋も162カ所が崩落、各地で移動や物流に影響が出ている。シェリー・レーマン気候変動相は「今年は前例のないモンスーンで、9月も続くかもしれない」と今後の被害の拡大も示唆した(「ドーン」紙8月26日)。

「JETRO」より

ただ、洪水の規模はかなりのものらしく、「国土の1/3が冠水した」という驚くべき事態になっているのだとか。

パキスタン、洪水で国土の3分の1冠水 死者1100人超・人口の15%被災

2022年8月31日6:17 午前

パキスタンのレーマン気候変動相は、モンスーン期の豪雨と大規模な洪水によって、国土の3分の1が冠水したと明らかにした。死者はこれまでに1100人を超え、シャリフ首相によると、子ども380人が含まれる。

6─8月の降雨量は30年間平均を約190%上回り、全人口の15%に当たる3300万人が被災した。

「ロイター」より

日本各地でも、大雨が降って洪水が発生するような事態になったと毎年のように報じられているので、世界各地でこうした洪水被害が確認されて、このニュースはその一端に過ぎないとは思う。

「温暖化のせいだ!」

しかし、こうしたニュースが出てくる度に「温暖化だ!」「気候変動だ!」と騒ぎ出す方々がいらっしゃる。

科学者たちはこうした熱波が発生する確率は人為的な地球温暖化によって、温暖化がないとした場合に比べて約30倍に上昇すると結論付けていた。現在パキスタン国土の大部分が水没している。

現在の降雨や洪水がどれほどまで気候変動の影響によるものなのかはまだ科学的に明らかにされていないものの、南アジアを始めとする各地で地球温暖化が集中豪雨の可能性を増大させていることについては、研究者の間で意見が一致している。干ばつと格闘している地域が集中豪雨に見舞われると、極度の渇水と極度の豪雨との間で急速かつ極端に振れ、その被害はとりわけ甚大になる。

「東洋経済」より

災害が多発しているのは事実なんだけど、それが気候変動の影響なのかを証明することは難しい。何しろ、聖書の時代から大洪水というのは存在するのだ。インド神話でもギルガメッシュ叙述詩でもシュメールの神話でも、大洪水の下りは出てくる。

日本の神話でも洪水の下りが出てくる事から、古来から人類は洪水に苦しめられてきたというのは、疑いようがなく、聖書やインド神話、ギルガメッシュ叙述詩、シュメールの神話と、何れもこの周辺の話であることから、この地域で大規模な水害があるというのは、古代からままあった話であろうという推測は出来る。

だから「仕方ない」とかいう積もりは無いのだが、この洪水について「地球温暖化」がどうとか、「SDGs」がどうとか安易に結びつけるのは問題であると思う。記事でも「現在の降雨や洪水がどれほどまで気候変動の影響によるものなのかはまだ科学的に明らかにされていない」と明記されているしね。

にもかかわらず、東洋経済の記事は、「パキスタンの「洪水」ここまで深刻にした真犯人」などと煽るようなタイトルが付けられ、パキスタンの気候変動担当相は「気候変動がもたらした人道的災害」と息巻いて、二酸化炭素排出が犯人だと断定している。

もちろん、被災された方への支援をすることは吝かではないのだが、先進国なんだから支援して当然とか、意味がよく分からない。気候変動を犯人として決めつけるのは視野が狭すぎるんじゃありませんかね?そういうビジネスが跋扈ばっこするのは本当に嘆かわしい。

追記

コメント頂いた件に関連して少し。

パキスタン北西部、洪水の死者1100人に

2010年8月2日 1:26

パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州の当局者は1日、同国北西部を襲った大雨による洪水での死者が同州などで計1100人に上ったことを明らかにした。

氾濫した河川の水位は低下し始めているが、救助隊がまだ到達できていない地域があるほか、行方不明者もおり、死者はさらに増える恐れがある。

カイバル・パクトゥンクワ州は、パキスタン軍によるイスラム武装勢力掃討作戦への報復とみられる自爆テロが相次ぎ、少数派によるデモや暴動も起きている地域。洪水被害に対する政府の支援の遅れに住民から不満の声も出ている。

「日本経済新聞」より

2010年にパキスタンを襲った大洪水。今回はそれを更に上回る規模での洪水だったというから、ご愁傷様である。

こんな感じで川が氾濫したようだが、インダス川の恵みは時として流域に住む人々に牙を剥くようだね。

そして、翌年の2011年。

パキスタンの洪水:オックスファムが緊急援助対応を開始

2011 年 9 月 14 日

オックスファムは、パキスタン南部の洪水で何百万人もの人々に緊急の救済を提供しなければ、より多くの命が失われると警告しています。

国際援助機関は、シンド州の洪水被害者を助けるために緊急援助対応を開始すると述べた。

数日間の集中豪雨によって引き起こされた洪水により、現在約530万人が影響を受けているという。

報告によると、洪水によりすでに200人以上が死亡した。

~~略~~

月曜日、国連は、洪水と雨の影響を受けた 50 万人の人々に食料を提供するための取り組みを開始したと発表しました。当初は、被害が甚大なシンド州のバディン地区に集中していました。

米国はすでに食糧支援を行っている。また、テント、医薬品、その他の非食料品にも有望です。

中国は、緊急の人道支援に 470 万ドル (300 万ポンド) を約束しました。

「BBC」より

更に2012年の記事。

パキスタン洪水 先月来の死者400人超、470万人が被災

2012.09.30 Sun posted at 11:34 JST

イスラマバード(CNN) パキスタンの災害対策当局は29日、先月始まった洪水による死者が422人、負傷者が3000人近くに上ったと発表した。

当局によると8月22日以降の豪雨で、これまでに約35万人が避難を余儀なくされ、被災した人の数は470万人、村落の数は1万5000カ所余りに達した。

「CNN」より

何というか、ご愁傷様である。

パキスタンは政情が不安定で、インフレ率が高くなってきている。これはなかなか大変な状況で、国民生活も相当大きな影響を受けているようだ。

コメント

  1. 木霊様、皆さま、今晩は

    >現在の降雨や洪水がどれほどまで気候変動の影響によるものなのかはまだ科学的に明らかにされていない

    「気候変動」の定義は知りませんが、平年の2.8倍の雨が降ったならば「気候変動」ではないのでしょうか。

    それにしても・・・177.5ミリの雨・・7月のデータのようで、今月のデータは分かりませんが、雨に対する備えがなかったのでしょうね。雨が少ない地域のようですし。
    このような脆弱性のある国、地域はいっぱいあるのでしょうね。某国の地震に対する備えとか。

    おまけ
    その昔(ン十年前。いつだったか忘れた)砂漠の中の街、ラスベガスで「洪水」が発生したんだそうです。凹地に水が集まって冠水。その時の雨量は「3mm」・・・排水設備がなかったんだそうです。

    • こんばんは。本文中で「気候変動」について言及したのは、文字通り「気候が変動している」という単純な意味ではなく、人間が介在した文明社会の原罪を断罪するような文脈で使われていることを問題視したからです。ちょっと言葉が足りなかったかも知れません。
      例年雨が降らないから、災害対策をしていないみたいな政治的背景があって、数十年に一度か、数百年に一度の災害に対応していないということで、実は2010年にもパキスタンでは大規模な水害があって、大きな被害が出たことが言及されています。この時は、国土の1/5が冠水したそうですよ。その後でどんな対応をしたんでしょうねぇ。

      おまけで付けて頂いた砂漠の中の街の話、笑えませんよね。

      • 今晩は

        ン十年に一度の災害による被害と、対策に必用な費用とを勘案して【対策しない】というのも「あり」なんでしょね。政治としては、こういう冷酷さも必要ではないでしょうか。

        対策をしなかったならば「なぜ対策しなかったのか」と責めれれ、
        対策をすれば「起こるかどうか分からない災害のために、そんなに金を使うのか」と責められ、
        対策をしても被害が発生したら「対策が不十分。無駄金を使っただけ」と責められ・・・政治家も大変ですね。

      • ご指摘どおり、「対策」にどの程度のコストを掛けるのかというのは、なかなか正解の分からない話なんだろうと思います。
        日本ではそれで政治家が突き上げを食らうわけですが……。
        パキスタンの政情を考えると、「それどころではない」というのが実情なのでしょう。

      • 名前、書き忘れた。匿名 2022/09/03(土) 20:49:46 は「音楽大好き」さんです(^o^)

  2. こんにちわ、

    今回の大洪水の前に、パキスタンには目立った干ばつは無かったようですので、
    確かに季節雨が原因であり、例年の3倍量の雨水を湛えた雨雲が発生したのでしょうね。
    昨日、ウチのほうでは豪雨が降りましたが、ふいの大雨はありがたいもんじゃないです。

    • 豪雨が増えた印象というのは、あるかもしれません。
      パキスタンという国も、乾燥した期間が長い割に、雨がまとまって降ることが多い国のようですから、想定外の雨が降ってくると対応に右往左往する結果になるのでしょうね。

  3. 木霊さん みなさん こんばんは

    >インダス川の恵み

     我々が歴史で学ぶ四大河川古代文明(これがホントに代表と言えるかの議論はともかく)のうち、メソポタミア・インダスはおおよそ1〜2千年前までに、都市文明維持コストを、自然災害対策コストが上回って衰退したわけですが、見方によってはこれは、大きな気候変動の影響と思います。

     ところで逆説的ですが、比較して現在も穀倉地帯として継続するナイル・黄河流域は、災害が少なかったわけではなく有史依頼、毎年の大洪水があり、災害対応型文明として勃興し、また数千年に渡り「治水」が時の権力者の重要課題であり続け、近代になって産業革命の恩恵である重機を使い、画期的な治水改良が進んだわけです。

     インダス川の水害対策は、、、災害にあった方々には申し訳ないですが、、、まだまだ年数がかかるのではないでしょうか?

    —-メモ妄想(また出た、木霊さんゴメンナサイ、温暖化について)–

     事実
     ①地球の平均気温は上昇傾向にある(温暖化)
     ②大気中のCO2濃度は、地質学的年代から見て、異常といも言える急上昇をしている。
     ③地球の平均気温を決定する主要因は「温室効果」である。
       (産業や火山等の放出エネルギーは、太陽光入射エネルギーの1/1000以下)
     ④CN(カーボンニュートラル)は非常に限定された条件下でしか成立しない。
     ⑤SDGsは、巨大な複合利権である。
       (陰謀論者にはなりたくないですが、EV、自然エネルギーからみの事故ニュースが、こうも徹底的に遮蔽される現実を見ている身からしますと)
     
     ⑥ ①温暖化 ②CO2濃度上昇 の相関係数は正であるが、寄与度は低い。他に複雑かつ制御不能な変数が多数。
     ⑦ SDGsは複雑な事象を、インチキ単純化し、多くは温暖化対策やCO2排出削減に逆行する施策を「強要」している
      (わかりやすい例:森林伐採-紙製品置き換えによるプラスチック削減)

     推定
      a. ⑤とは言っても、温暖化抑制のため、人類に手がでるのはCO2排出削減ぐらいしか見当たらない。
      b.ハイブリッド自動車、CO2抑制発電等の技術は、まっとうにCO2排出削減貢献している
    c.既にだいぶ無理が出てきているので、10〜20年、近いうちにSDGsは破綻するであろう。

    • あ、申し訳ありません。 インダス川の水害対策、、まだまだ年数、、と言うのは、、
      確かに資本投入し重機を使えば堤防・ダムは今の時代すぐ作れますが、水害の要因は複雑です。稚拙な対策が副作用を生まないか? 結局机上検討では回答は出ず、トライ&エラーになるでしょうと言うことです。

      何せ、ナイル・黄河の治水は数千年のトライ&エラーの積み重ねですから、