再エネやEVの推進者が使う理屈が日本をおかしくする

政策

日経XTECHの記事が話題になっていたので、読んでみたのだが……。何じゃこりゃー。

再エネやEVの批判者が使う“古いデータ”が日本をおかしくする

2022.06.29

再生可能エネルギーや電気自動車(EV)についての批判が最近増えているように感じる。正当な批判も確かにある。例えば、太陽光発電であれば、自然林を周辺住民の同意なしに伐採、造成したり、固定価格買い取り制度(FIT)の穴をついて権利だけ取得し、システムの価格低下をぎりぎりまで待つケース、あるいはその権利の転売でもうけるケース、20~30年後の発電終了後の撤去計画や予算を明らかにしていないようなケースについての批判だ。筆者としてはそうした事業者の責任もさることながら、そうした業者のふるまいを許した制度設計に問題があったと考えている。

「日経XTECH」より

いやー、大丈夫デスカネ。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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電力は足りないのか、足りているのか

実感に合わない電力需要量の低下

論理展開はともかく、この記事が使っているデータが本当にあっているのか?と言う点は、検証すべきなのだと思うワケである。

ちなみに、2010年以前の日本は年間1000TWh以上の電力量を発電(あるいは消費)していた。ところが、2010年以後はほぼ右肩下がりで年間電力需要量が減っている。LED照明などの省エネルギー技術の普及などで電力需要量が10年で10%以上も減ったのである。明日、いきなり発電量を0.6%増やせと言われても、電力会社なら、電力ひっ迫警報が出るような日以外はそれほど苦労せず、発電源を調整して増やしてしまうだろう。ましてEVは2030年まで8年かけて増えるわけで、1年あたりで増やさなければならない発電量は0.1%以下でしかない。

「日経XTECH」より

ふーん。

電力需要量が低下しているという事実があるのかどうか。悪名高き電事連のサイトを覗いてみよう。

日本の電力消費

日本の電力消費量は、戦後、ほぼ一貫して伸びてきました。情報化の進展やエアコンの普及にみられるような快適な生活へのニーズが高まり、電力需要は伸び続けてきましたが、需要の増加にともなって新たな問題も出てきましたが、2011年に発生した東日本大震災以降、企業やお客さまの節電への取り組みにより、伸びは鈍化傾向となっています。

「電気事業連合会」より

確かに「電力需要の伸びは鈍化傾向」とは書かれている。が、減っているという認識ではないようだぞ。それと、その理由も「東日本大震災以降、企業やお客さまの節電への取り組みにより」と書かれている。この事は潜在的な需要が減ったことを意味しない。

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この図は、一次エネルギーに占める電力の比率を示していて一次エネルギーの輸入量は減少傾向を示しているが、一方で、電化率は増えている。

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電力供給量が減っているかというと、2011年までは順次発電量は増えている。減ったのは2011年以降の話だ。尤も、発電量は減っているのだから、供給される電力量が減り、それは即ち需要量の低下だと言うことは可能だ。

産業の電力消費量が減っている

実際、産業部門も家庭部門も電力消費が低下しつつあり、全体的な需要も低下している。ただしこれは、日本の産業界や民間が使う機器の省エネ性能が大幅に上がっていることが影響している。

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そして、日本国内での製造を行う企業が少なくなってきたことも影響していると思われる。企業は海外展開して製品を作り、或いは技術を奪われシェアを奪われて廃業していく感じなのだろう。

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コレは製造業限定のGDP。

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そして事業所数も減っている。

ザックリ言うと、国内の製造業は衰退しつつあって、電力消費量もそれに伴って減少傾向にあると言う意味だ。ただし、一時業所あたりの付加価値額が増えているところを見ると、集約が進みつつあるという意味でもあるのだろうが、結局のところ電力の観点から言えば節電というか、需要の減少という形となっている。

それでも電力は逼迫

では、何故昨今、電力の逼迫が叫ばれるのだろうか?そして、何故、電気料金はあれほどまでに高いのだろうか?

コレは単に日本国政府のエネルギー政策に失敗にある。具体的に言えば、電力小売り自由化とFIT政策が劣悪なまでに取り合わせが悪かったのである。

2016年(平成28年)4月1日以降は、電気の小売業への参入が全面自由化され、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。

「資源エネルギー庁のサイト」より

どっちも資源エネルギー庁の仕事だよね?

FITが創設されたのは、2012年7月のこと。再エネ発電は火力などほかの発電にくらべて発電コストが高く、なかなか導入が進まない原因になっていました。そこで、再エネ発電の電力を、ほかの電力よりも高値で買い取ることで、再エネ発電をおこなう事業者を増やし、再エネの導入を広めることを狙ったのです。

「資源エネルギー庁のサイト」より

不幸な事件が色々起こったとは言え、控えめに言って「脳味噌腐っているのか?」と、問い詰めたい。いや、結果から見れば不出来なエネルギー政策ではあったが、狙いはさほど悪くはなかったのだ。だが、彼らには世界情勢の変化をエネルギー政策の中身に取り入れるという観点が完全に抜け落ちていた。

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本のエネルギー政策に深刻なるまでのダメージを負わせた。当時の民主党政権は、最悪の上に最悪を重ねた選択をしてくれやがった。

何をやったかと言えば、権限なく各地の原子炉を止めた上で、FIT政策を推進したのである。

その愚かな政策の上で、2012年12月に発足した安倍政権は、電力小売り自由化を敢行してしまった。アホかと。ただまあ、一応擁護しておくと、電力の小売り自由化は2000年3月からで、この路線は決定付けられていたため、安倍政権の独断で止めると言うことは恐らく難しかった。

これが電力の逼迫を招く事になっていくのである。

ベースロード電源構想を捨てられなかったのが最大のミス

かつて、つまり2011年のあの惨劇を招く前までは、原子力発電をベース電源と見据えて、エネルギー政策を構築してあった。

電源構成

ベース電源に原子力と水力を、ミドル電源に火力を、ピーク電源に揚水式水力を、という構想で、原子力と揚水式はセットになっている割と理に叶った形になっていた。

しかし、この目論見が不幸にも崩壊する日が来る。

電源構成

慌てて計画を変更したが、やったことは表現を変更して「ベースロード電源」という言葉を導入し、不幸にも火力発電に頼る体制にシフトさせただけ。ところが、ここにFIT政策を加えるとどう言うことになるかというと……。

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こうなる。

お分かりだろうか?火力発電所の制御がかなりピーキーになっている事が分かる。

まあ、ザックリした絵となっているので、ここから「分かる」とまでは行かないが、少なくとも火力発電所の制御が忙しくなったことは理解出来るだろう。それと、図から揚水式水力がカットされていることが分かるだろうか?実のところ、この時点で揚水式水力のコンセプトが崩壊してしまったのである。

もうひとつの要因は再生可能エネルギー(再エネ)のコストです。2012年、再エネでつくった電気をあらかじめ決められた価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」が導入されて以降(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)、再エネの設備容量は年平均伸び率19%と急速に伸びています。再エネが普及することは大切なことですが、その一方でFITの買取費用は拡大を続けています。2020年の買取費用は約3.8兆円に達し、その一部は「賦課金」として私たち利用者が負担しています。一般的な家庭の平均モデル負担額で、賦課金の負担は774円/月にのぼっています。再エネの導入をはかりながら、国民の負担を抑制することが重要です。

「資源エネルギー庁のサイト」より

そもそも資源エネルギー庁は、FIT制度に重大な問題があることは既に把握していた。

2010年度から2019年度までの再生可能エネルギー5種の設備容量の推移を積み上げグラフで示しています。2010年度から2012年度までの年平均伸び率は9%、2012年度の固定価格買取制度導入以降、2019年度までの年平均伸び率は19%となっています。

でまあ、コノザマである。太陽光発電がアホほど増えてしまったのだが、この裏に暗躍したのが支那製の安い太陽光パネルである。制度設計の失敗を外国に求めるのはどうかと思うのだが、事実だから仕方が無い。

3.11以前と何が違うのか

ハッキリ言って、3.11以降に大きく日本のエネルギー政策を転換すべきだった。いや、転換はしたのだけれど、原発の再稼働を織り込んでいたことが失敗だったということかも知れない。

3.11前は、原子力発電で作り出される電力は非常に安価であった。安価に大量に作られる電力で、揚水式水力を組み上げておいて、必要な時に発電。理に叶った形である。これが深夜電気温水器などの促進にも一役買ったことは否めない。

ところが、3.11以降、原子力発電は絶望的になり、深夜でもコストの高い火力発電にて発電せざるを得なくなった。原発での発電コストも上がってしまったしね。揚水式水力発電が使いにくくなった理由もそんなところにある。

とはいえ、火力発電も原子力発電より大幅に高い!と言う訳ではなかった。だから従来のモデルを使い続けることもさほど無理はなかったんだけど……、ロシア軍のウクライナ侵攻が影響して化石燃料のが高騰したために、世界的な規模で電力価格が高騰することに。

原子炉の安全設計について「想定外」を口にした政治家が叩かれたが、こうした大規模戦争発生というのもまた予見できた話であった。それを織り込んだエネルギー政策の早期策定が必要な状況になった、と言うのが現状なのだ。

火力発電の抱えたリスク

ちなみにこれも、資源エネルギー庁のサイトが公開している資料なんだな。オマエラ、コレだけ条件があって何故予見できなかった!

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/046_04_01.pdf

まあ、ワーキンググループの資料なので、3月25日付けの資料とは言え、十分精査できていない……。そんなことは無いな。

再エネの導入拡大に伴い、変動再エネの出力変動を調整する火力発電の稼働率は、 低下傾向にある。今後、こうした傾向がより顕著になると見込まれる中で、電力市場や 電力分野の規制の在り方について、どのような検討が考えられるか。例えば、稼働率が低 いが需給逼迫時に欠かせない火力について、どのような対応が考えられるか。

「資源エネルギー庁のサイト」より

注目すべき内容は色々あるが、引用部分は結構深刻。

稼働率が減った上に休止・廃止する火力発電所が増えている実態がある。

この理由については、老朽化や資源価格高騰によって、採算のとれない火力発電所を休止するという経営判断があったからだと言われている。

もうお分かりだろう、電力が足りなくなっているのは、主力であるハズの火力発電所が営業を止めてしまったことによるものであることがハッキリわかる。

明日、いきなり発電量を0.6%増やせと言われても、電力会社なら、電力ひっ迫警報が出るような日以外はそれほど苦労せず、発電源を調整して増やしてしまうだろう。ましてEVは2030年まで8年かけて増えるわけで、1年あたりで増やさなければならない発電量は0.1%以下でしかない。

「日経XTECH”再エネやEVの批判者が使う“古いデータ”が日本をおかしくする”」より

故に、こんな事をほざいているが、実態はこの様な感じになる。

一度休止させた火力電源を再稼働させる場合、設備の補修箇所の選定、部品の発注から調達、大規 模な修繕工事、試運転等による検査が必要となるため、1年以上のリードタイムが必要。

※休止期間が長引けば、設備の劣化も拡大するため、復旧期間とコストはさらに増加。

「資源エネルギー庁のサイト」より

「それほど苦労せず、発電源を調整して増やしてしまう?」ふざけるなと言う話だ。

一旦休止を決めてしまった火力電力は、早々簡単に再稼働することは難しいし、そもそも老朽化が進んでいるために補修などが必要。そして、燃料高騰によってコストメリットの出ない施設にお金をかけたいか?といえば、まあムリだろう。

要はこれ、上でも主張したが、日本政府のエネルギー政策の失敗なのである。何度でも言ってやる!

太陽光発電頼みは自殺行為

太陽光発電を増やすのは国家としては自殺行為

さらにこの日経XTECHの記事はこんな事を抜かす始末。

加えて、日本の太陽光発電は2013年以降、年間6G~10GW(直流ベース)のペースで増えてきた。交流出力が5GWとして、これを年間の発電量として計算すると約5256GWh(5.3TWh、設備稼働率12%として計算)。つまり、2030年に必要なEVの電力量を1年足らずで賄っている。

「日経XTECH”再エネやEVの批判者が使う“古いデータ”が日本をおかしくする”」より

数字の上で辻褄が合いそうな話だが、電気自動車をいったいいつ充電するのか?と言う話。

供給電力量をトータルで見るから話がおかしくなるのだが、太陽光発電は昼日中にしか発電ができない。風力発電など論じるにも値しない。

一方、EVを使いたい方が充電するのはいつか?というと、大抵は夜間なのだ。いや、設備が増えればデスクワークする会社員が、働いている日中に充電するという需要は生まれる可能性はあるのだが、そもそも電力は貯めることが難しい。柔軟な需要に対応出来るのかと言えば、結局火力発電に頼らざるを得ないのである。

そして太陽光発電の設備稼働率が12%と低いのは発電できない夜間も稼働率の計算に入れてしまうためだ。太陽光発電は、発電が重要でない時間帯に発電できないことが、なぜか不利なデータとして一人歩きしてしまっているのである。

「日経XTECH”再エネやEVの批判者が使う“古いデータ”が日本をおかしくする”」より

必要な時に発電ができないクソ発電方法を、かくも持ち上げる理由がよく分からないが、「不利なデータを使うな」という根拠が、年間の総発電量の議論というのは、それこそ自分に都合の良いデータを使っていることではないか。

電力は貯めることが難しい(例外的に揚水式水力発電があるが、場所が確保出来れば増やすことで多少はコントロール可能だ)ので、必要な時に取り出して使うことは困難だ。つまり、ピーク時に必要な電力を論じる必要がある。

再エネコストが下がっている

そして、発電コストの値下がりについても論じているのだが、コレが待た杜撰だ。

再生可能エネルギーの太陽光発電、風力発電、そしてそれらを支える蓄電システムのいずれもが、累積生産量の増加に応じて製造コストがほぼ右肩下がりに安くなる「Wright(ライト)の法則」に沿っている。太陽光発電については「Swanson(スワンソン)の法則」とも呼ぶ。そして、製造コストだけでなく、製造時のCO2排出量なども右肩下がりに低下している。

「日経XTECH”再エネやEVの批判者が使う“古いデータ”が日本をおかしくする”」より

この話は事実だし、グラフにも説得力はある。

太陽電池モジュールの価格が右肩下がりで下がるスワンソンの法則

しかし、製造コストと製造時の二酸化炭素排出量の議論は別にすべきだし、太陽光パネルや風力発電施設の大半が支那製に依存している事を忘れてはならない。

ここで太陽電池の価格として10年前のデータ、例えば2019年の時点で2009年のデータを使うとどうなるか。2009年の太陽電池モジュールの価格はグラフから読み取って約3米ドル/W。一方、10年後の2019年には同0.3~0.4米ドル/Wで、ほぼ1/10になっている。言い換えれば、2009年のデータで2019年の太陽電池モジュールの価格を議論すると、10倍過大に見積もってしまう。

「日経XTECH”再エネやEVの批判者が使う“古いデータ”が日本をおかしくする”」より

製造コスト議論をするときに、原産国の政治的な影響を無視することは困難で、今、やたらと太陽光パネルや風力発電設備が安くなっている背景に、ウイグル人などからの搾取がある事を考えて、多くの国で支那製のものを敬遠する方向に話が進んでいる。

つまり、今後、太陽光発電設備や風力発電設備の値下がりが続くとは限らないのである。

太陽光パネルとウイグル問題! シリコン関連製品輸入禁止で高騰化する太陽光パネルとそれ以外の影響とは?

2021.09.14

太陽光パネルはシリコン半導体の集積体であり、半導体が光に反応して発電する仕組みになっているので、シリコンが必須となります。シリコンの生産シェアは8割が中国で、その半分ほどがウイグルで採掘・製造されています。そのシリコンの採掘に際して強制労働が行われているのではないかと数年前から問題になっていました。

「SMART MIRAI」より

これは燃料高騰の議論と同じで、原材料の輸入に問題が出ていることを考えると、今までの常識で測るのは議論を歪める。本人が「古いデータで論じるな」と言いながら、議論の前提がこうした政治的リスクを廃したものなのだから、ダブルスタンダードと誹られても仕方が無い。

なお、お断りするのが遅くなってしまったが、日経XTECHの記事は有料会員向けのものなので、以降の内容は言及出来ない。あくまで無料で読める範囲での言及に留めさせて頂く。

蓄電ベースのコストを計上

さて、それでも再生可能エネルギー発電を推進するとしたら何が必要かといえば、蓄電施設だ。

あらゆる論点で蓄電池(蓄電)の重要性に言及されている。

2050年に向けた脱炭素化エネルギーシステムのオプションの一つに蓄電池系が挙げられている。

「資源エネルギー庁のサイト」より

結局のところ、発電が不安定な再生可能エネルギー発電に頼るとするのなら、それを貯めておく施設を模索するしかなく、今のところ有力と考えられているのは二次電池の利用である。

2013年時点のロードマップなので内容が古くて申し訳無いが、随分以前から二次電池(いわゆる充電池)の系統への採用が模索されていた。

上で紹介した様な揚水式水力発電を増やせば良いのだが、どうしても高低差を作る必要があるために、設置できる場所が限定的であるという欠点がある。故に、比較的設置の容易な大規模二次電池の系統への接続によって、電力の安定供給が期待されていた。

2013年の時点でコレくらいのコストダウンが可能だろうと試算された。実際に2021年のデータでシステムコストは14万円程度(業務・産業用)になっている。ただし、設置コストを含めると18.7万円ということなので、十分に値段は下げられているとは言い難い。

そして、再生可能エネルギー発電が安定的な発電が出来ない以上は、こうした蓄電池との併用によって安定化を図る必要があり、このコストを発電コストに乗せる必要がある。

序でに言えば、原発に廃炉コストを乗せて計算するが如く、太陽光発電設備の廃棄コストも乗せて計算する必要がある。

……あるのだが、今のところそんなものを乗せて計算してしまうと、電気料金がお高くなってしまうのは避けられない。15万円/kW を寿命の20年で割っても0.9円/kwhと言う数字になる。尤もコレに土地代などが載るので、もうちょっと高くはなるが、無視出来ない数字ではある。

系統蓄電は今後の課題

なお、系統蓄電はまだ調査が始まったところなので、今後の課題とも言える。

「系統蓄電池」解禁へ、10MW以上は「発電所」に

2022/01/30 17:59

国内では、固定価格買取制度(FIT)により太陽光発電所が急増したことを受け、国の全額補助により、北海道の南早来変電所、宮城県の西仙台変電所、福島県の南相馬変電所、福岡県の豊前発電所内に10MWを超える大型蓄電設備が実証事業として配備された。これらは、一般送配電事業者の設備として、系統運用の安定化に活用されている。

また、系統規模が相対的に小さい北海道や離島では、メガソーラーや大型風力発電所を連系する際に大型蓄電池の設置が条件になっている。北海道八雲町に建設された約100MWのメガソーラーに併設された蓄電池は52MWに達し、国内で稼働済みの蓄電池システムでは最大となっている。

「メガソーラービジネス」より

今後、メガソーラー発電を許可するのであれば、この手の系統蓄電池の併設を義務づけるべきである。

政府もそれなりに計画には載せているようではあるが、思う様に進んでいないのも事実だな。

IEA(国際エネルギー機関)では、電源構成のVRE比率が20%を超えると系統運用が不安定になり、大規模なエネルギー貯蔵設備が必要になると分析している。英国のVRE比率はすでにこの水準に達している。日本のVRE比率は現時点で9%程度と見られるが、このまま需給対策を打たずに太陽光・風力が増加した場合、出力抑制率の上昇で太陽光・風力の投資収益性が下がり、普及の阻害要因になることは明らかで、大規模な蓄電池を系統に接続し活用することが必須になる。

「メガソーラービジネス」より

世界的にも必要だと理解されているので、是非とも導入して欲しい。

が、直ぐに導入出来ないのであれば火力発電所をペア(バックアップ)として考える必要がある。どちらにしても発電コストに影響はするだろう。

EVを増やすとどうなるのか

良く言われるのは、電力供給が足りないのにEVを増やしたら車が使えなくなるという議論だが、日経XTECHの記事ではその事も否定はしている。

でも、これもまたおかしな議論なんだよね。何故なら、総量で計算する前提だからだ。

例えば、テスラの急速充電機「スーパーチャージャーV3」は、最高出力250kW、ポルシェの急速充電機は270kW。一方で、一般家庭の契約アンペア数は、平均約35A(100Vなので3.5kW)すなわち、テスラやポルシェの急速充電機を稼働させると、70軒以上の家庭が出現した程度の電力負担がそのグリッドに生じることになる。

定量的な計算は、前提条件が整わないのでご勘弁願いたいが、これだけ見ても、特定の電力グリッドに、そうたくさんの急速充電機を設置するわけにはいかないことがわかるだろう。電力需要が供給能力を上回ってしまうと域内大停電になることは、18年に起きた北海道胆振東部地震の例を見ればわかる。

となれば、猛暑の真夏の帰省/Uターンラッシュ時でも電力グリッドが破綻しない範囲でしか、急速充電機は設置できない。今後、人口減少社会を迎えれば、電力供給能力に多少の余裕はできるだろうが、余剰設備は電力会社の経営を圧迫するから、そこに期待するべきではない。

「モーターファン」よ

ところが、家庭で充電すると7時間以上の充電時間が必要になるなど、色々と運用に支障が出るので、急速充電の方法が模索されているんだな。

だが、紹介した記事にあるように、急速充電を実現する為には色々と不都合が生じるのである。

ここで、家庭で充電する場合の供給能力を考えてみよう。一般家庭が通常手続きで契約できるアンペア数は、最大60A。現状で40A契約しているとすると、EV用に積み増しできるのは20Aだが、夜間なら家電に40Aは消費しないだろうから、EV充電に回せるのは30〜40Aを期待して良い。電力使用のピークは在宅者が多い20時ごろとなり、翌朝6時を過ぎると活動が始まって増えるから、22時から翌6時まで充電できるとして8時間。いちばん普及している3kW(200V15A)充電機を使用したとして、単純計算で24kWh、充電効率を90%として21.6kWhの充電量となる。

ならば、電池容量は21.6kWhあれば十分、とは言えないのは、完全に空になるまで使うことはまずないからで、50km走れる余力を残すとして7.2kWhを上乗せすると(実用電費は辛めに7km/kWで計算)、電池容量は28.8kWhとなり、それ以上大きくしても、使い勝手は良くならない、ということになる。

「モーターファン」よ

したがって、各家庭で夜間に充電するというのが現実的な路線ということになる。目から鱗の議論であったが、EVの普及というのはそういう割り切りを行った上での運用を含めて考えていかねばならないということになる。

つまり急速充電をやらない前提で、4人家族で1日13.1kWhの電力を消費するところ、一般的なEV2台で21.6kWh×2(1日で充電できる現実的な容量)。車種にもよるが20kWh充電して凡そ150km走ることが可能である。車の使い方にも寄るが、1日10km走るとしても15日は保つ。1ヶ月に2回充電か。

一月の4人家族の消費電力が393kWhで、EV2台体制だと+86.4kWh。凡そ2割使用電力が増える計算になるな。なお、充電時期をずらす賢い運用をしたとしても、1日の消費電力が34.7kWhになる日があるので、3倍弱の電力を消費する日が出てくる事になる。各家庭でばらつきはあるだろうが、休日前で遠出をしたい需要が高まる時期があることを考えると、現行の1.5倍程度の電力消費をすることまで想定する必要はあるだろう。

産業界のことまでシミュレートしていないが、トラックなどは大電力を充電する必要性が高く、より電力需要が高まる可能性がある。よって、大雑把にならしても、新車EVが100%の時代になれば無邪気に「今は電力需要が減っているから大丈夫だよ」などとはとても言えない。

実際のエネルギー政策は頭のいい人が色々シュミレートしたシナリオを考えて、積み上げて計算するんだろうさ。

ただ、こうやって考えていくと、再生可能エネルギー発電とEVを同時に進めていくと色々な不都合が想定されることは理解出来ると思う。

コメント

  1. EV用電池を交換式にして、スタンドで交換する。
    車していない電池を昼間に充電する。
    夜は、売電する。
    制度と規格を設計する必要があるが、アメリカ当たりの得意分野かな?

    • 交換式ですかぁ。
      小型電動バイクはそんな感じになっていますが、アレってかなり重い。
      大型電動バイクは軒並み交換できないタイプです。おそらく車載したら間違い無く外して交換というのは難しいでしょう。
      その上、充電が終わった電池はそれなりにリスクがあります。小型化、高密度化が実現しないと、交換式は難しい様に思いますよ。

      • 木霊様、皆さま、今晩は

        オフトピックですが・・・
        EV普及にとっては電池交換式は【本命】だと思います。

        急な要件で出かける時とか、外出先で「異常事態」が起こった時とかにクルマが使えないのでは困りますね。近隣の急速充電。。30分もかかるのに、何が「急速」だ。ガソリンを入れるならば、長く見積もっても10分だ。

        EVの普及を阻んでいるのはコレではないか、という気がします。

        重いとかは関係ないでしょう。電池の寸法などを規格化して、車体下から交換できるようにする。「電池スタンド」ではロボットさんが電池を交換する・・とすれば可能でしょう。

        自動車メーカーとしては、大きくて重い電池をどのように搭載するか、が大問題でしょう。実際、現EVの電池の形状ときたら、各車まちましのようです。現状では規格化は困難、というかムリでしょう。でもエネルギー密度を大きくできれば・・・・ですよね。

        さて、トピックに戻って
        EVの廃バッテリーを大量に使う電気貯蔵施設を作るそうです。TVで見たので、ネット上のどこに記事があるのか不明ですが。そういう施設が「普通」になれば、再生可能エネルギーいうのも実用品になるかもしれませんね。

        後は太陽電池を作るのに必要な電力をそうやって減らすか、ではないかな。

      • そうですか、僕も一時期は本命視していた時期がありましたが、交換方式がやっぱりネックかと。
        ガソリンスタンドに「ピットイン」して、床下の電池をゴッソリ交換という方式もアリかとは思いますが(ロボットで交換する)、これも防水性まで考えると余り良い方法とは言えません。
        上から積む方式は、車のバランス的に嬉しく無いんですよね。

        結局のところ、液体で燃料を補充できるやり方はかなり優れていると言わざるを得ないわけで。
        EV普及には、路面にコイルを埋め込んで、走行中に充電可能とかにする方が良いかも?とか思ってはいます。コレもインフラ問題が非常に大きく立ちはだかるのですが。EVに関しては、まだまだ発展途上であるような気がしますよ。

        一方で、電気貯蔵施設の早急な開発を望みたいところですが、コレも結局は二次電池の性能次第と言った感じでしょう。
        案外、全固体電池が優秀ならば、早期に実現できるシロモノかも知れません。何れにしてもブレイクスルーに期待ですね。

    • こんにちは、横合いから失礼します。

      電池交換式は、理想ではありますが、当面はハードルがかなり高いと思ってます。

      まず、統一型電池を誰が作るのか?
      たとえば、トヨタが、現時点で最高効率のバイポーラ型蓄電池をおいそれと他社が使える形で降級するとは、とても思えません。
      その電池がどれくらい劣化しているかとか、製造元による性能のばらつきとか、単位量あたりで価格決めれば問題ない化石燃料と違い、電池は容量が「見た目」で分からないところにも問題有りと思ってます。
      そして、今の時点で、同じ車であってもバッテリ容量が違う問題。テスラでも日産でも、同じ車でバッテリ違いをラインナップしてますから、これを統一型電池でまかなうとなると、販売戦略の見直しが必要でしょう。
      そして、脱着出来るバッテリは、明確に重量と強度(と信頼性)で不利になります。堅牢なバッテリボックスがシャシーの低い位置にガッチリ組み込まれる前提で、現時点のBEVは設計されているはずです(しない理由が無い)。
      これらのデメリットに目をつぶって人柱になろうという奇特な企業は、残念ながら、生き馬の目を抜く今の自動車業界ではあり得ないと思います。大変残念ですが。

      ※むしろ、大型トラックの方が、採用早いかも知れません。走る区間がだいたい決まってるし、絶対数は少ないし、管理しやすいし。

      逆に、本邦二輪車業界が手を組んだように、原付レベルのコミューターであればハードル低いですし、どんどん進めて欲しいとも思ってます。そこから得た何某かのブレークスルーが大型車に反映出来るかも知れませんし。

      繰り返しますが、バッテリ脱着は、当方も理想だと思います。
      しかしなにより、まずはバッテリそのもののエネルギー効率の改善が急務なのでしょう。

      ※大量のバッテリの置き場所を確保するGS(BS?)の整備も必要ですし。

      悲観的なことを述べましたが、可能な限り早く実現出来る事を願ってやみません。

      • 周回3周ぐらい遅れですので、私も横から 

        七面鳥さんと同じく電池交換式は当面ハードルが高いと私も思います。現在主流の技術を用いるならトレーラー式のバッテリー車をつなぐ、ぐらいでしょうか?

        私は主に安全技術面とそれにからむ政治面を述べます。

        2020年現在の「ヘビーバッテリーEV」と仮に名付けますが、K国アイオニック等採用、現在主流の「ヘビーバッテリーの交換は、例えて言えば「エンジンを掛けたまま、満タンのガソリンタンクを交換する」「より危険」な行為となります。

        安全技術面からの理由は、
        1.単なるソフト不具合や軽いショートで発火し一瞬で車両火災となる。
        2.火災は容易に消せない(通常7-8時間、水をかけ続ける)
         https://car-moby.jp/article/news/hyundai-ioniq5-catches-fire-and-takes-7-hours-to-extinguish-thermal-runaway-possibly-caused-by-thermal-chain-reaction/

        なんでこんな状態かと言うと、技術的に正しい選択がなされていないからです。
        正しい(と私が思う)姿は例えば「ミドルバッテリーEV」と名付けますが、日産LEAF等のミドルバッテリーは自主安全規格ですが、5寸釘を打ち込んでも発火しないし、トヨタFC車は銃撃安全までテストされている。

        しかしミドルバッテリーは、走行距離等で不満が残る、で、世界的には容量性能で勝るが、危険なヘビーバッテリーが主流となっています。
         人死にまで出したのは上記K国製が初ぐらいと思いますが、実際にはテスラ、VW、BMW、GM車でも消せない火災が多数発生しており、

        2.長時間消せない
        3.有毒ガスを発生し続ける
        4.消化水で冷やすしかないが、水に有毒物質が溶けだし環境汚染する

        という問題があり、欧州各国では「コンテナーサイズの水槽」を備えたEV専用消防車まで準備し、EV火災に備えています。
        https://www.autocar.jp/post/792078
        https://bestcarweb.jp/feature/column/466193?prd=2

        政治面を述べます。
         特に上の1.2.事例は、韓国ネットでは「走る棺桶ならぬ、走る火葬場」とも言われ、個人的にはタカタ・エアバック不良・リコール問題より遥かに深刻な問題と思いますが、、、、

        恐ろしいのはこれを、主要マスコミがほぼ報道せず、yahooニュースも1日半ほどで消えたこと。テスラ、VW、BMW、GM車の消えない火災も、水槽付き消防車も、殆どのみなさん知りませんよね? 冗談ない件数がありますが、主要ニュースでは報道されたことがない。意図的に遮蔽されている? EV車は環境だけでなく性能も勝ると世間に認知される必要のある勢力がある?

        遮蔽の理由はわからない。陰謀論者にはなりたくないですが、欧州SDGs利権とかロビーからむとしか私には思いつけない。

        いずれにせよ。何らかの大人の理由で、技術的な正しさが歪められると、物理法則は忖度なんてしませんから「無理が通れば、道理がひっこむ」

        各メーカーや保険会社もババ引きたくないですから、交換式は出ても10年以内にはないんじゃないかな?

      • 個人的に自動車修理工場の所長と話す機会があって、「EVどうなんですか」と聞いたのですが、「手を出したくない」とのこと。
        整備もそうですが、工場においておきたくないというのが本音らしいですよ。
        彼は個人的に相当勉強したようですが、プリウスの整備なども含めてお断りすることが多いのだそうで。
        理由は、整備が殆ど出来ないからなんだそうで。最近の車は色々なところがアッセンブリー交換となってしまって、修理に多額の費用がかかるのですが、プリウスは整備性が悪い上にその傾向が強い。それでもエンジンを搭載しているので整備出来るのですが、EVの方はそうは行かないらしく。分解整備となると、内部に搭載しているバッテリーの処理が非常に厄介なんだそうですよ。ですから、悔しいけれど「ディーラーに持っていってください」と言う事になるのだそうで。ところが、お客さんは「ディーラーに持ち込むと高額修理になるやら」という話になる。
        EV化は誰も幸せにならないのですよね……。
        なお、従来のエンジン搭載車もECU搭載部分は、殆どが電装屋に持ち込まれる状況らしく、「手が出せない部分が増えている」んだそうで。良くも悪くも時代の流れなのでしょう。

        で、本題の火災の話なんですが、EV整備の一番のネックは、デカいバッテリーを車体の下に埋め込んでいることが多いので、町工場ではそのバッテリーを取り外して整備ができない、という事になるんだそうで。そのままで整備するというのも危険らしく、メーカーからも「整備に要注意」という説明がある模様。
        取り外し可能なバッテリーだったらどうなのか?という話もちらっとしましたが、「それだと整備中に動かせないから困る」という事のようで。外したら外したで困るEVのバッテリーという構図なので、整備不能というしかないのだそうな。
        お応えが随分と筋の外れた話になってしまいましたが、EVの数が出回ると色々なところで社会的な問題が出そうという事を書き添えさせて頂きました。