ドイツ、開き直って石炭火力発電を増やす決定をする

欧州ニュース

まあ、ドイツはそうだよね。他に選択肢がない。

独、ロシア産ガス減で緊急措置

2022/6/20 00:00 (JST)6/20 00:17 (JST)updated

ドイツのハーベック経済・気候保護相は19日、ロシアからの天然ガス輸送量の大幅な減少を巡って声明を発表し、ガス消費量を減らすため、石炭火力発電の利用を増やすなどの緊急措置を講じると明らかにした。「安定供給はまだ保証されているが、事態は深刻だ」と説明した。

「共同通信」より

環境先進国みたいな顔をしているけれど、ドイツを見習ったら原発の再稼働はまず必須である。

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脱炭素より対ロシア

ドイツの発電比率

改めて説明するまでも無いが、ヨーロッパでは「脱炭素が加速している」ことになっている。だが、環境先進国だといわれるドイツはこんな感じである。

2019年のデータなので、現在は太陽光発電の割合はもっと増えているはずではある。2019年の再エネ比率は、「風力20.7%+太陽光7.6%+バイオマス他8.3%+水力3.1%=39.7%」でグラフにはなっていないが、2020年には再エネ比率は44.6%になっている。(注:電力を輸出する分があるので、ドイツ国内で消費する電力の比率は2020年で46.3%)

サイトによってもデータが異なるのであくまで参考値だとして捉えて欲しいのだが、2021年度も再エネ比率を伸ばしただろうと思われる。

グラフで見ると、2019年のデータではあるが天然ガス火力発電は14.9%という事になっていて、発電分野だけに限って見ると案外天然ガスには頼っていない。

ロシアはドイツ向け天然ガスの削減

それでも、ロシアからの警告があって恐らく天然ガスの供給は減る。

ドイツ向け天然ガス削減で隣国も影響 ロシアへの警戒感高まる

2022年6月18日 6時00分

ロシア最大の政府系ガス会社が、ドイツ向けのパイプラインを通して供給している天然ガスの量を大幅に減らすと発表する中、ドイツ政府は、ドイツを経由してガスの供給を受けるフランスなど、隣国にも影響が出ていると明らかにし、ロシアの動きに警戒感が高まっています。

ドイツ政府は、17日の天然ガスの供給状況を公表し「ノルドストリーム」を通して送られるガスの量がおよそ60%減り、ドイツとパイプラインでつながる隣国のフランス、オーストリア、チェコといった国への供給にも影響が出ていると明らかにしました。

「NHKニュース」より

一応、事前にドイツは手を打つことは発表していたのだけれど、「直ぐ」というわけには行くまい。

ドイツが初めて液化天然ガス基地の建設に着手…脱ロシア依存急ぐ

2022/05/06 22:37

ドイツ政府は5日、液化天然ガス(LNG)の輸入拠点となるターミナル建設を北部ウィルヘルムスハーフェンで始めた。国内初のLNG基地として今年末にも操業を開始し、天然ガスのロシア依存軽減を急ぐ。

「讀賣新聞」より

このニュースを見て驚いたのは、「ドイツ国内初」というところである。今まで、ドイツはLNG基地を必要としていなかったのだ。

LNG基地は何をする場所かというと、タンカーでLNGを輸送してくる場合に貯蔵及び液体から気体に戻す機能を持っている。天然ガスの輸送は液体の状態で行うのが一般的であり、従って、港付近に基地を用意して液化と気化を行う必要がある。輸出する側が液化、輸入する場合が気化だね。

しかし、液体のまま使えないので、気体に戻してからパイプラインで国内に供給するのである。当然、ロシアからのパイプラインは、気体のままで送られてくるので「そのまま使える」のだ。

ドイツは、ロシアのウクライナ侵攻後、ガスの調達先の見直しを進め、ロシアへの依存度を侵攻前の55%から35%(4月中旬)まで引き下げた。LNG基地の整備は北部ブルンスビュッテルなどでも進める。

「讀賣新聞」より

何しろ、ドイツの天然ガスのロシア依存度は55%と極めて高く、なんとか35%まで引き下げたものの、更に供給量は6割減という風に通告されている。

便利な天然ガスをロシアから取り上げられてドイツは大騒ぎなのだ。

ドイツは未だに石炭火力発電頼み

ところで、冒頭の石炭火力発電を増やす話だが、実際の所、2019年では「褐炭18.6%」と「無煙炭9.3%」で合計27.9%が石炭火力発電頼みであった。ここから、2020年、2021年と比率を減らしたものの、未だに2割程度は石炭火力頼みなのがドイツの実情である。

ちなみに、ドイツがよく使っている褐炭というのは品質が悪い石炭燃料であり、燃焼効率が悪く二酸化炭素排出量も多い。品質が悪いので国際的な取引が行われず、値段が付かないほど安いと一般的には言われている。

しかしドイツでは比較的多く産出されるので工業的に使われている。

そんな訳で、ドイツが石炭火力発電を増やす決定というのはさほど意外な決定ではないのだ。

そして、ロシア軍のウクライナ侵攻があってもなくても、ドイツは早晩、脱炭素の方針を転換せねばならなかったという話もあった。

戦争は「大転換」の言い訳に ロシア依存だったドイツが超強気に急変した理由

2022.3/8 19:48

3月4日、ガソリンスタンドの前を通ったら、衝撃的な数字が目に飛び込んできた。レギュラーガソリンの値段が1.9ユーロを超えている! 同日のレートで換算すれば、1リットル240円を超えてしまったわけだ。ちなみに2020年のレギュラーガソリンの平均価格は1.29ユーロ、21年が1.58ユーロで、今年の1月は1.72ユーロになっていた。それがその後の1カ月でさらに急騰し、しかも、上昇はまだ止まりそうにない。

~~略~~

一方、スペインは、ドイツと競うほど再エネ(主に風力)にのめり込んだ結果、補助金の膨張で国庫が逼迫し、補助金をやめたら、今度は風力電気事業が瓦解した。現在、電気の供給は乱れ、電気代は暴騰している。これを見習えというのは無理がある。しかもドイツは昨年の末、すでにガスの逼迫や電気代の急騰が明らかだったにもかかわらず、残っていた原発6基のうちの3基を止めた。どう見ても自滅政策である。

「Sankei Biz」より

この記事、ドイツのエネルギー事情に関するライターとしては有名な川口マーン惠美氏によるものなので、多少割り引いて読む必要はあるのだが、ドイツ在住の彼女の肌感覚の部分は参考になるとは思う。

結局のところ、メルケル政権が目指したドイツ像にはかなりムリがあったのである。

ドイツばかりは責められない

ちなみにだが、石炭火力発電を増やす決定をしたのは、ドイツだけではない。

オランダも石炭火力発電増加へ

2022/06/21 09:04

オランダ政府は20日、ウクライナに侵攻したロシアへの天然ガス依存度を下げるため、石炭火力発電の利用を増やす方針を発表した。脱炭素に向けてこれまで稼働率を35%に抑えていたが、制限を解除する。ロイター通信などが伝えた。

「佐賀新聞」より

あれー、オランダと言えば風車のイメージが強いんだが、石炭火力発電の利用を増やすんですか?

「さすてーなぶるじゃぱん」より

最新データは見つけられなかったが、オランダは2017年頃のデータだと、石炭火力発電は3割程度使っていることが分かる。ちなみに石油は5割だ。流石、ロイヤルダッチシェルのお膝元である。

何というか、案外、化石燃料頼みなんだよね、世界各国は何処でも。

日本では褐炭を利用する研究が

そう言えば、COP26では日本に対して「化石賞」なる賞を出して喜んでましたね?

日本に「化石賞」国際的な環境NGO “温暖化対策に消極的”

2021年11月3日 15時30分

イギリスで開かれている気候変動対策の国連の会議「COP26」に合わせて、国際的な環境NGOは、温暖化対策に消極的だと判断した国を選ぶ「化石賞」に日本を選んだと発表しました。

「化石賞」は、国際的な環境NGOのグループ「気候行動ネットワーク」が、温暖化対策に消極的だと判断した国をCOPの会期中に毎日選んでいて、2日の「化石賞」に日本とノルウェー、それにオーストラリアを選んだと発表しました。

日本を選んだ理由についてはCOPの首脳会合での岸田総理大臣の演説にふれ「火力発電所の推進について述べた」などとしています。

「NHKニュース」より

このサイトでも言及しているが、日本では未だ石炭火力発電の開発を続けている。

どうやらそれが気に入らなかったらしいのだが、しかし結局コノザマである。

石炭で脱炭素?日豪で挑む世界初の水素プロジェクト

2021年4月28日 17時58分

水素で走る車や列車。ニュースでは耳にするけれど、まだどこか遠い世界の話と思っていませんか?

それもそのはず。燃焼や発電の際に二酸化炭素を排出しない水素は、“脱炭素”の切り札として注目されていますが、製造コストが高いため普及が進んでいないのが現状です。

その課題を克服しようという世界初のプロジェクトが、日本とオーストラリアの間で進められています。カギを握るのは、なんと「石炭」なんです。

~~略~~

日本の企業連合が目をつけたのが、オーストラリア南東部のビクトリア州に豊富に眠る「褐炭」と呼ばれる石炭です。

「NHKニュース」より

ドイツは案外日本とオーストラリアが推進するこの事業に興味津々なのかもしれない。

その名を「HESCプロジェクト」というのだが、スケジュールとしては2020年代半ばに商用化実証を実施と言う事になっていて、スケジュール通りに行けば2030年には商用化が実現する運びになるとされている。尤も、子の手の実験は上手く行かない事も多いので、量産効果が出て商売として成立するかは微妙な感じではある。

スケジュール的にも世界的なエネルギー不足に対応出来る感じでもないしね。

そんな訳で、ドイツは「背に腹は代えられぬ」ということで、石炭火力発電所を増やすことに踏み切った訳だ。英断だとは思うが、よくもまあそれを発表できたものだなと感心はする。

ともあれ、これで「脱炭素、ナニソレ美味しいの?それより電力の安定供給を!」の時代は数年は続きそうである。

コメント

  1. こんばんわ

    欧州主導の「脱炭素」と日本の「脱原発」には呆れるばかりです。
    昨日ドイツが石炭火力発電増強を発表するや否や、欧州委員長が「早まるな、再エネにさらに投資せよ」と非難声明を出していました。
    ドイツの石炭火力復帰は間違ってはいないのですが、むしろどうして原子力じゃないのかと。
    欧州委員会は今年2月に、原子力をクリーンエネルギーとして認定しています。

    • 原子力発電は直ぐに建設出来ませんからねぇ。
      実は、原発を作れる国って、世界にそんなに多くないのですよ。
      ドイツはシーメンス社やバブコック・ノエル・ニュークリア社など原子炉メーカーがあるにもかかわらず、国内で原子炉を作ったのは1989年が最後。何故かロシア型の原子炉も結構残っていて(東独にある原子炉だからだと思われる)、新たに作る事が出来るかはちょっと怪しいです。
      原発大国のフランスもここ20年ほど建設をしていません。イギリスも然り。そんな訳で、新たに建設をお願いするのであれば、日本、アメリカ、韓国、支那あたりにお願いするしかないわけですね。直ぐに建設ができるワケでも無いというのもなかなか悩ましいところです。

      • おはようございます。

        なるほど、ドイツは再エネに拘っているだけという事情ではないのですね。
        ドイツに必要だったことは、電源の多様化だけでなく、化石燃料の仕入先の分散化もだった、ということになりそうですね。

      • ドイツは再エネに拘って見せていたけれども、かなり無理していましたからねぇ。
        まあ、なるようにしかならないので、興味深く見守っていきたいと思いますよ。