マジか。
韓国型ロケット「ヌリ号」 21日午後に打ち上げ再挑戦…「できる限りのことをした」
2022.06.18 09:31
打ち上げが2度延期された韓国型ロケット「ヌリ号」(KSLV-II)が21日にまた打ち上げに挑戦する。科学技術情報通信部は17日、オンラインで行ったヌリ号点検現況および今後の計画に関するブリーフィングで、21日午後4時に決定したヌリ号の2回目の打ち上げ日程を発表した。
「中央日報」より
早速日程を決めちゃったわけだが、これって問題は解決したってことでいいんだろうか?
問題は解決したのか?
レベルセンサー問題
先日書いた記事のリンクを張っておこう。
色々なトラブルで打ち上げ延期となったヌリ号だったが、1段目の酸化剤タンク用レベルセンサが通電しても反応しなかったために一旦発射台から降ろされることになった。
韓国航空宇宙研究院(航宇研)は15日にヌリ号を組立棟から発射場に移した後、17日まで問題のレベルセンサー点検作業を行った。研究陣はレベルセンサーの問題の原因を大きく電線、信号ボックス、センサーの問題とみて点検を進めた。16日には比較的点検が容易な電線と信号ボックスを点検し、これらの部分は正常と判断した。16日に行った点検現況ブリーフィングで、航宇研のコ・ジョンファン韓国型発射体開発本部長は「電気線と信号ボックスではなくレベルセンサーの問題なら、1段目と2段目の連結部分を分離する必要があり時間が必要だ」と説明した。
「中央日報”韓国型ロケット「ヌリ号」 21日午後に打ち上げ再挑戦…「できる限りのことをした」”」より
レベルセンサーには電線が接続され、信号ボックスを介して制御盤の方に接続されていると見て良いようだ。
そして、ロケットの外部からアクセスできる部分の電線と信号ボックスの点検をまずやった。
なるほど、それは仕方があるまい。ただ、この時点で問題がなかったので、疑わしきはタンクの中にあるレベルセンサーということになる。
レベルセンサーの交換はしなかった
ところが、結局のところレベルセンサーの交換はやらなかったようなのだ。
しかし航宇研側はこの日のブリーフィングで「レベルセンサーの問題ではあるが、1段目・2段目の分離までは必要なく、部分品を取り替えることができた」と説明した。コ本部長は分離せずにレベルセンサー問題を解決できた点について「点検を綿密にした後、レベルセンサー全体の取り替えよりも電気部品を取り替えればよいと判断した」と説明した。研究陣は分離が必要かどうかを判断するために図面を再検討し、該当部分に人が入って電気部品を取り替えることができるかを議論し、実際、可能だという判断に基づいて、この日午後に部品を交換したという。
「中央日報”韓国型ロケット「ヌリ号」 21日午後に打ち上げ再挑戦…「できる限りのことをした」”」より
意味がよくわからない。
研究陣がヌリ号で取り替えた部品は長さ1.2メートルほどの電気コア部品だ。酸化剤タンクの中のレベルセンサーは浮ひょうが柱にそって動いて値を測定する。柱の中の電気部に電気が流れて信号が発生し、柱の外の浮ひょうが動きながら位置を測定するという原理だ。研究陣はこのセンサー全体でなく柱の中の電気部だけを交換し、1段目と2段目の分離なく問題の解決が可能だったと説明した。
「中央日報”韓国型ロケット「ヌリ号」 21日午後に打ち上げ再挑戦…「できる限りのことをした」”」より
「浮ひょう」を使っているということは、浮体式レベルセンサーを使っているということになる。一般的には浮体式は比較的故障の少ない単純な構造のセンサーと言われているが、電気部品を使っている以上はトラブルを招くこともある。
だから、故障しやすい電気部品を交換したという理屈はわかるんだけど……、どうにも日程を優先したとしか思えないような処置だな。
リスクの少ない方を選択
コレに関する責任者の回答はこのようなものだ。
科学技術情報通信部の権ヒョン準(クォン・ヒョンジュン)巨大公共研究政策官も「決して予備日に合わせようと急いだのではない」とし「ヌリ号に火薬類が装着された状態であり、分離は利益よりリスクが大きいと判断し、できる限りの点検をした」と伝えた。
「中央日報”韓国型ロケット「ヌリ号」 21日午後に打ち上げ再挑戦…「できる限りのことをした」”」より
分離してしまうと、イロイロと駄目になってしまうものも多いから、やれる範囲での修理をやったと。
本当に大丈夫か?それ。
「秋まで遅延? 想像したくない」…エラー点検に入った韓国型発射体「ヌリ号」
2022.06.17 06:54
打ち上げが延期された韓国型発射体(ヌリ号・KSLV-Ⅱ)の作動異常の原因分析のための手続きが始まった。
韓国航空宇宙研究院のコ・ジョンファン韓国型発射体事業本部長は16日午後、オンラインブリーフィングを開いてヌリ号点検現状を説明した。今後の発射日程はまだ決まっていない。問題原因により打ち上げ日程が相当期間先送りされる可能性も提起される。「2回目の打ち上げ日程に梅雨が考慮されるか」という取材団の質問にコ本部長は「秋まで遅延されるのは想像したくない」と話した。
「中央日報」より
だいたい、前の日に「秋までの遅延は想像したくない」とか本音を漏らしていたのだが、万全の体制で打ち上げるべきところを、小手先の交換で済ませてしまった。
研究チームが考える1段ロケットの酸化剤タンクレベルセンサー問題の原因は大きく3つだ。レベルセンサー内部のエラーと信号や電気をつなげる電線類(ハーネス)エラー、信号処理ボックス(ターミナルボックス)エラーの可能性だ。研究チームはこの中でハーネスとターミナルボックスエラーから点検することにした。ヌリ号の1段ロケット構造上、この部分への接近が比較的早くて容易であるためだ。
ヌリ号1段は下からエンジン部や燃料タンク、タンク連結部、酸化剤タンクの順に配列されている。酸化剤タンクと燃料タンクの間の空間にターミナルボックスのような搭載物が搭載された構造だ。このタンクの連結部に点検窓(人が接近したり、必要ならば入って点検したりできるように作った窓)がある。
研究チームはこの点検窓を通じてヌリ号の内部に接近し、ターミナルボックスと周辺の電気信号線を点検する作業を行う。
「中央日報”「秋まで遅延? 想像したくない」…エラー点検に入った韓国型発射体「ヌリ号」”」より
そもそも、ハーネスやターミナルボックスでの問題発生は、確率としては低い。
そこで問題が見つかってくれれば、それでテストはおしまいという考え方はなかなかリスキーだ。
ただし、ハーネスとターミナルボックスで問題が発見されても酸化剤レベルセンサーもさらに点検する必要があるかは研究チームが熟慮中だと明らかにした。
「中央日報”「秋まで遅延? 想像したくない」…エラー点検に入った韓国型発射体「ヌリ号」”」より
通常であれば、レベルセンサーまでアクセスして交換作業をするなどの手順が必要なのだが、最初からそこまでやる気はなかった模様。
これに先立って、ヌリ号の組み立てで1・2段の連結には2~3日がかかったという。だが、コ本部長は今とあの時の状況は違うと説明した。打ち上げ準備を終えたヌリ号の内部には段分離などに使われる火薬類やエンジン点火装置などが搭載されているためだ。補完作業に注意を払わなければ、ややもすると事故が起きる恐れもある状況だ。
「中央日報”「秋まで遅延? 想像したくない」…エラー点検に入った韓国型発射体「ヌリ号」”」より
分解するとなると厄介というのは分かるが、レベルセンサーの電気部品のみ交換で、果たして大丈夫なのかは疑問が残る。
通常は、正常に作動するかをテストして、異常がなければ組み付けということになるはずだが、残念ながらタンクの中に酸化剤を注入してテストなんてことは難しい。ぶっつけ本番ということになるわけだ。
大丈夫ですかねぇ?
追記
おお、運ばれた模様。
韓国国産宇宙ロケット「ヌリ号」、21日に打ち上げ再挑戦
2022/06/20 10:33
韓国の国産宇宙ロケット「ヌリ号」が20日、発射台に移送された。ヌリ号は今月15日にセンサーの誤作動問題でいったん発射台から下ろされていた。計画通り進めば、21日午後4時に打ち上げに再挑戦する。
「朝鮮日報」より
大丈夫なのか?という疑問は尽きないけれども、大丈夫と判断されたのだろう。

そういえば、ヌリ号ってむき出しで搬送するんだねぇ。搬送はAGVっぽいな。細いからコレでもいいのかも知れないが、若干不安定な印象を受ける。

日本はしっかりとカバーかけて搬送しているんだよね。組み立て段階も完成品段階も。

韓国がここまでしないのは、これまで打ち上げをやってなかったからなのか、単純に予算の問題なのか。
まあ、別に良いんですけど。
コメント
木霊様、皆さま、今晩は
> タンクの中に酸化剤を注入してテストなんてことは難しい。
なのですが、コレをやらないとロケット全体を失う事になりかねない・・って、分かっているのでしょうか?
なんで、外して別の容器で模擬テストやるか、完全動作確認をした新品と入れ替えるかくらいはすると思ったのですが、どうも違うっぽい様で。
大丈夫なんですかね?
レベルセンサーが何のためについているのかはよくわかりませんが、「最悪、使えなくても大丈夫」という判断があったのかもしれません。じゃあ、何のために発射台から降ろしたのか、という話になりますがね。
おはようございます。
また”いつものように”いろいろ隠しているのではないかと疑っております。
ロケット発射直前にアレコレ発覚しても手遅れなのですが、メンツに拘って、
技術を蔑ろにするなら、成功は覚束ないでしょう。
隠しておいて、成功できれば良いんですけどね。
なんだかんだ言って上手く行ってしまうと、むしろ成長がないというか。
まあ、他国のことでありますから、無責任に応援したいと思います。
エンジンを止めるタイミングを得るためのようです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhts/34/5/34_220/_pdf
によると、
燃料、酸化剤が沢山残っている –> もったいない、性能にかかわる。
燃料、酸化剤が無い状態でエンジンが稼働する –> 気泡がターボポンプに吸い込まれ、過回転、大事故の可能性がある。
という事のようです。
おーなるほど、レベルセンサーってそんな用途に使っているんですね。
勉強になりました。
しかし……、そうだとすると何故浮体式を使ったのか。
レベルセンサーにもイロイロありますが、浮標を使うタイプは構造は単純ですが精度はあまりよろしくない。特に、液面が下がっているときには使い勝手が悪いはず。哨戒いただいた資料にもあるように、測温抵抗体府あたりが無難な気がするんですが。
圧倒的な予算不足。と、いう側面もあるようで、予備パーツなんかも碌に調達できてないんでは。なんて話もあるようですね。成功さすには金が必要ですが、成功しなきゃ金出してくれないという悪循環…前回文たんが、実態はどうであれホルホルしてた間に大金を引っ張ってこれてれば良かったのでしょうけれど。
勿体ない話ですよね。
こういう分野に金を突っ込むなら、しっかりと注ぎ込まないと、検証が疎かになってしまいます。
失敗までが大切な経験になるはずなんで、中途半端で終わらせるメリットはないんですが。
こんにちは。
またいつもの「パリパリ」「ケンチョナヨ」の悪い癖が出た、としか思えませんね。
まあ、その原因は予算にもあるのでしょうけれど。
結果として、全てが無駄になることだけはないことを祈るのみです。
あと、こっちに部品落とすなよ、と。
まあ、「適切な判断であった」という可能性も残っています。
上手く行く事を期待しましょう。