防衛と洋上風力発電の危ない関係

防衛政策

先日こんなニュースがあった。

岸防衛相、風車問題「政府一丸となって取り組む」

2022/6/14 11:42

岸信夫防衛相は14日の記者会見で、風力発電の風車が航空自衛隊の警戒管制レーダーなどに影響を及ぼす恐れがある問題について「自衛隊の円滑な運用の確保と風力発電の導入促進の両面から事業者との早期の協議に努めている」と述べた。

「産経新1聞」より

この話、防衛大臣の岸氏は一体、「何」を気にしているのか、ということなんだよねぇ。意外に勘違いしている人もいるようなので、少し解説してみたい。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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風力発電の実態

風力発電の風車の問題

風力発電の風車、諸外国でも実用化されているんだけど結構トラブルになったりもする。

風車プロペラ破損

2014/02/16

豊橋市細谷町の風力発電設備「細谷風力発電所」風車部分のプロペラが15日正午ごろに破損した。けが人などは出ていない。管理会社のミツウロコグリーンエネルギー(本社=東京都)が破損箇所の撤去などを行う予定。同社担当者は「原因ははっきりしない。

「東日本新聞」より

良くあるのはプロペラの破損だね。

これは、細谷風力発電所の風車ブレード破損事故の写真とその記事で、GE製の風車で定格出力は1500kWとさほど大きなものでは無いのだが、ローター直径70.5m、ハブ高さ64.7mという大きさなので、最高到達点は99.8mとそれなりの高さがある。

風力発電設備など38件の事故原因と再発防止策、経産省WGまとめ

2022.01.17

風力発電や太陽光発電など、新エネルギー発電設備の事故原因究明や再発防止策を検討する経済産業省のワーキンググループ(新エネルギー発電設備事故対応・構造強度WG)は1月12日、8年間に起きた38件の集計結果を報告した。WGの審議の対象となった事故は、ほとんどが風力発電に関するものだ。事故の形態は、ブレードの折損・飛散22件、火災7件、ナセル等落下5件、タワーの倒壊・座屈4件。原因が不明だった事故もある。

「InfraBiz」より

8年間で38件が多いのか少ないのか。累積で2500基くらいが導入されていることを考えると、事故率は1.4%程度はあるのか。

ただ、ブレードの破損や飛散、火災などがそれなりに発生する事と、タワーの倒壊・座屈が4件あった事を考えると、重大事故に繋がるリスクはそれなりにあると理解した方が良さそうだ。

低周波問題

あと、風力発電で問題だと指摘されるのが低周波問題だ。

低周波音という風力発電のデメリット

風力発電は再生可能エネルギーの中でも発電コストが低く、将来を有望視されるエネルギー源ですが、懸念材料がないわけではありません。風力発電の普及において、最大の懸案材料となりえるのが低周波音被害です。

~~略~~

日本で風力発電の低周波音問題がクローズアップされたのは、2007年のことです。愛知県で風力発電トラブルが発生した際です。同年1月に、愛知県豊橋市と田原市には各1基の風力発電機が運転を開始。その後、田原市で2名、豊橋市で26名が健康の不調を訴え、行政が乗り出す事態となりました。一般的に、低周波音の調査では、調査員が現地の低周波音を実際に耳で確認したり、測定器を使って低周波音の音域や音の強さ(デシベル)を計測します。法的紛争にまで発展した田原市と豊橋市では、環境省も腰を上げて実測を行いましたが、結果はシロ。人体に悪影響を与える種類の低周波音は発生していないという結論となりました。

「Sustainable Japan」より

トラブルは発生して、実際に体調不良を訴えた人が出てきたのだが、調査の結果は「シロ」だったという。ただ、この時の調査は不十分であったのでは無いかという疑いはでていて、因果関係が否定されたわけではないようだ。

石狩風車の低周波音測定結果と健康被害 元札幌医科大学講師・山田大邦氏の論文より

2018年2月8日

政府・経済産業省は、化石燃料を消費せず二酸化炭素を出さない風力発電や太陽光発電を「クリーン・エネルギー」といって建設を促進している。これに対して大型風車が建っている地域の住民から、健康被害の訴えがあいついでいる。ところが、原因となっている低周波音について厳格な測定がおこなわれたことはあまりなく、ずさんな測定で「問題なし」として住民の訴えが退けられている地域も少なくない。さらに環境省は平成28年、「風車騒音は聞こえない超低周波音ではなく聞こえる騒音の問題として扱う」という指針を提案した。

「長周新聞」より

実際に環境省としても問題の存在は把握しており、研究者が研究被害について調査している事実はある。どうやら、可聴音だけが問題というわけではないようなのだ。

尤も、低周波の問題は風車だけではないのだけれど。

風車がレーダーに干渉

さて、そんな風力発電ではあるが、基地周辺に作られると困った事が起きる。

この問題では、全国で設置が増加している風車が空自レーダーの電波に干渉し、敵の戦闘機やミサイルの探知が遅れる可能性が浮上。防衛省と経済産業省が設置事業者に対し、計画段階での事前相談を呼び掛けている。

「産経新聞”岸防衛相、風車問題「政府一丸となって取り組む」”」より

これがどう言うことかというと……。

img

こういうことではないかと。

つまり、レーダーで監視すべき水平線の方向に風車がずらりと並んでしまうと、レーダーが風車の位置を拾って、邪魔をする事になると。

陸地にあってもこんな感じだと困るよね。

日川浜海水浴場のビーチから隣りの柳川浜にある神栖風力発電所の風車群を遠望。㈱ミツウロコの子会社が運営していて、5基で10,000KWの発電量だそうだ。<br />ここの海岸は、いつも強い海風が吹いていること、民家から離れていることから風力発電には絶好の土地柄なのである。

陸地に並んでも問題になりそうである。

その上で、風車市場に中国系など外資が入ってきていることについて「どこ製のものか以前の問題としてレーダーに支障をきたす可能性がある。まずは、その点を検討していかないといけない」と述べた。

「産経新聞”岸防衛相、風車問題「政府一丸となって取り組む」”」より

コレが荒唐無稽な話ではないことは、気象庁でも確認されている。

風力発電施設が気象観測レーダーに及ぼす影響

 我が国では、気候変動対策やエネルギー需給構造の変化を背景に、再生可能エネルギーの導入が積極的に推進されています。このうち風力発電施設については、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針(令和元年5月に閣議決定)」に基づき、従来に比べてはるかに巨大な発電用風車を多数設置する計画が国内各地で進められるなど、今後導入の加速化が予想されています。

「気象庁」より
風車が気象レーダーに及ぼす影響のイメージ

気象レーダーと警戒管制レーダーは構成が違うものの、送信波が風車によって反射、或いは散乱する可能性は高く、遠方の飛行体を確認出来ないという事も考えられるのだ。

 気象レーダーの送信波が風車にあたると、以下の影響が生じるおそれがあります。

  • 送信波が遮蔽される        ⇒ 風車より先の観測ができない
  • 多重散乱により偽のエコーが発生  ⇒ 誤った降水・風を観測
  • 強い反射波をレーダーが受信    ⇒ 受信機の破損、気象レーダーが停止

少なくとも検出精度は低下することが考えられる。

洋上風力発電には別の問題も

こういったレーダーの問題の他にも、洋上風力ならではの問題も考えられる。

三菱商事も困惑? 「風力発電業界」は国家窮乏策を望むのか

2022年2月14日

産業育成については中国の経験から論じてみよう。中国では17年以降に洋上風力の導入が加速し始めるが、その背景にあったのが国内の風力発電システムメーカーの「競争の激化」であった。

中国は世界最大の風力発電導入国であり、陸上風力は2000年代後半に国内メーカーの成長がコストダウンを先導したことが導入の大きな後押しとなった。洋上風力についても国有企業である上海電気が16年には設備の82.6%と圧倒的なシェアを押さえていたが、20年にはそのシェアは38.5%にまで急低下、遠景能源と明陽智能がともに21.7%にまでシェアを急上昇させた。

上海電気の洋上風力発電システムはドイツ・シーメンスの技術ライセンスを受けて生産するものであるが、遠景は国内の東方電気と共同開発した国産技術を用いたシステムであり、上海電気製と比べ価格は3割程度安いという。まだ数年の歴史しかない中国の洋上風力であるが、既に11社の風力発電システムの最終的な組み立てを行うアセンブリーメーカー、21社の運用企業が存在しており、こうして「競争の激化」が進んでいることで洋上風力の発電コストが急激に低下し、それが近年の導入急拡大の追い風となっている。

「Wedge ONLNE」より

実は、支那メーカーが陸上風力、洋上風力共にシェアを拡大し、システム設計はドイツのシーメンス社が行ったものだが、支那メーカーが製造している。価格競争力も一流である。何しろ国有企業だ。このため、風力発電に使う風車は殆どが支那製だ。

その結果、風車設置に当たっては、洋上風力の場合には周辺海域の潮の流れや水深など海洋データの取得を許す事になり、合法的に支那企業が日本の該当海域の詳細なデータを得ることができる。そういう面でも防衛上のリスクがソコに存在する訳だ。

何か技術的に対決する方法があるのかも知れないが、注意しなければならない話であることには違いない。

コメント

  1. こんにちは。

    もう、台風で死ぬ風力と、降雪で死ぬソーラーは止めて、地熱と潮汐で行きましょう!

    ※課題は山積ですが。

    ※黒潮にタービン並べる案は見たことあります。

    • 再生可能エネルギー発電はまだまだの部分が大きい発電手法ですからね。
      開発をしてより良いモノを手に入れるという意味では、風力発電も太陽光発電も頑張って開発して欲しいと思います。日本にはエネルギーが乏しいのですから、電力を発電する手法が増えるに越したことはありません。

      地熱と潮汐もそれなりに課題はありますが、安定的な発電という意味では良い面も沢山あると思います。こちらも開発を続けて欲しいですね。
      そのためには資金を投入しないとダメなんですが。

  2. 逆に大量設置すれば巡航ミサイルの盾にできるんでは。と、いう冗談はさておきまして。
    吹き止むこと無い豪風に期待できる場所に、巨大な風車を設置しよう。と、いう発想自体がまず、技術的と言うか物理的に無理無茶無謀の三拍子揃っちゃってる事は、もっと広く周知されるべきなんでは。と、思うところではあります。ブレードは剛体じゃないんですから…まぁ、頑丈な巨大構造物を成形する技術開発は続けるべきとは思いますが、流行りの持続可能性なんかとは、何気に最も縁遠いところにあるのが風力だよなーという気はするのです。モノがデカいとメンテ大変ですってメンテ。

    • ご指摘の通り、風力発電はメンテナンスが非常に厄介でして。
      実際に、メンテナンスをする時は常に高所作業が付きまといますし、ブレードを外してメンテナンスというのもなかなか難しい話。
      結果どうなるかというと、技術力のない、無計画な導入者が風車を放置する事態になってしまうのですよね。日本国内にもそういった墓標が各地にあると聞きます。
      デカいから邪魔だけでなく、破損して落下してくると危険ですから、放置は止めさせなければなりませんね。