侮蔑罪の厳罰化に効果はあるのか

政策

インターネット上の誹謗中傷というのは、僕を含めて注意しなければならないことであると理解しているが、法規制でなんとかなるのか?という点は少々疑問ではある。

侮辱罪厳罰化、改正刑法が成立 「拘禁刑」を創設

2022年06月13日11時08分

侮辱罪に懲役刑を導入し、法定刑の上限を引き上げる改正刑法が13日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。深刻化するインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷に歯止めをかけるのが狙いで、今夏にも施行する。

「時事通信」より

厳罰化、ね。

あまり書くべき事は無いのかも知れないが、少し触れておこうと思う。

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基本的なこと

名誉毀損や侮蔑などについて

先ずは、情報の整理からだ。

名誉毀損と侮蔑について、簡単に説明していく。先ずは名誉毀損からだ。

名誉棄損

名誉毀損罪(刑法230条)は、事実を摘示し、公然と、人の社会的評価を低下させた場合に成立します。

法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金です。

名誉棄損罪の構成要件

1.公然と
2.事実を摘示して
3.人の名誉を毀損することで
4.違法性阻却事由がないこと

「刑事告訴・告発支援センター」より

名誉毀損について重要な点は、「事実の摘示」が真実性を問われないことかな。具体的な人を特定して悪し様に言うと、事実であろうとなかろうとNGなのである。ちなみに「人」の範囲には法人格を有すれば企業なども含まれるので気をつけよう。「人」ではなく「物」に対する感想や書評は名誉毀損にはならない。

例えば、ライオン株式会社の衣類洗剤について「汚れが落ちにくい」「ニオイが嫌い」とかは問題ないのだが、ライオンという企業に対する悪口は名誉毀損にあたるといった具合だ。

ここで、名誉の毀損というのは、「社会から受ける一般的評価を低下させるおそれのある行為」が要件となるので、個人的に言われたことが気に入らない程度では該当しない。

後は、「人」が公益性のある、例えば政治家や官僚などであれば、真実又は真実相当性があれば名誉毀損にはあたらないという点も重要かな。

基本は、対象となる人に面と向かって言って、気分を害するような話はネットでもしないことだね。

次に侮蔑についてだけれども。

侮辱

侮辱罪(刑法231条)は、事実を摘示せずに、公然と、人を侮辱した場合に成立します。

法定刑は、拘留又は科料です。

「侮辱罪」の構成要件

「公然」とは、多数に対して、または少数に対してでも、他に広まる可能性がある場合、もしくは不特定に対して知らせることであり、インターネット上の書き込みなども、実際の閲覧数にかかわらず「公然」に該当します。

「事実を摘示しない」とは具体的事実を伴わないということであり、「馬鹿野郎」「このハゲ!」「チビ」「デブ」「ブラック企業」などの誹謗中傷が該当します。

「刑事告訴・告発支援センター」より

侮蔑について重要な点は、「事実の摘示」が行われない場合に適用されることかな。一般的に罵倒する言葉に該当するのは全てNGである。

侮蔑罪は意外にハードルが低いので要注意だ。ネット上で個人を特定して罵倒したのは総じてNGになるし、公益性は関係ないので政治家に対して行っても侮蔑罪の適用はあるわけだ。

なお、侮辱罪は「親告罪」といって、その名誉棄損された事実や行った人物を知ってから半年以内に告訴しないと起訴することが出来ない。これまでは、だが。

改正案は適性か

記事には余りしっかり触れられていないので、何処が改正のポイントかについて少し説明したい。

 現行法法務省案
法定刑勾留(1日以上30日未満)
または科料(1000円以上1万円未満)
1年以下の懲役か禁錮
または30万円以下の罰金
控訴時効1年3年
幇助罪適用できず適用可能に
情報開示請求なしなし

法定刑が重くなったこと、控訴時効が1年から3年に延長されたことは、ある程度評価しても良いと思う。ただ、遺失物横領罪、つまり落とし物を自分の物とした場合は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料とされていることを考えると、法定刑は軽いのかなと思う。

分かりにくいのが「幇助罪」だが、「あの人がこんなことを言っていたよ」と噂を広める行為にも侮蔑罪が適用されることになる。これ、例えばTwitterのリツイート行為が該当する可能性が高い。イイネを付ける行為もちょっと怪しいな。

残念な事は情報開示請求のところで、匿名を使っているネット上で侮蔑行為をした人物を特定することはかなり難しい。匿名であることを隠れ蓑にして相手を誹謗中傷或いは侮蔑するということが問題なので、今回の法改正では、多少の効果はあるのかも知れないが、どちらかというと「厳罰化した」というアリバイ作りの側面が強いだろう。

これは、表現の自由などとのバランスに苦慮した結果とも言えるが、効果は殆どないような気がする。

よって個人的な感想にはなるが、まだまだ軽い印象は強い。が、気軽にSNSで書き込みをしてしまう現実を考えると厳罰化よりも学校教育などを徹底する方が先決なのかも知れないね。そういう意味では学校の先生のネットリテラシーが低いことこそが大きな問題なのかもしれない。

効果の程は

そんな訳で、「効果があるか」といえば、「ない」と思うのだが、今後の課題に対する第一歩だという風に考えれば、今回の法改正は評価すべきだと思う。

国会審議では、野党から厳罰化が言論弾圧につながるとの強い懸念が示された。このため、表現の自由に対する不当な制約になっていないか、3年後に検証する付則が追加された。

「時事通信”侮辱罪厳罰化、改正刑法が成立 「拘禁刑」を創設”」より

あと、良くも悪くも付則追加というのは意味があることだとは思う。ただ、再検討をする際には、是非とも「緩すぎたから更に厳罰化する」と言うことも含めて検討をすることを切に願う。

そして、効果を出すためには教育が重要である。学校の話を子供達に聞いたら、ちょっとはその手の話が出ているようだが……。子供の方が残酷だからねぇ、匿名性を利用したイジメに発展しやすいのだと思う。家庭でもその手の指導は考えていく必要があるんだけど、親世代がアレだからねぇ。時間はかかるのかも知れない。

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