油圧機器大手カヤバが部品製造撤退でC2輸送機の機能部品が足りなくなる

防衛政策

これは日本の産業構造的な問題なんだよな。

部品企業撤退、運用に支障も C2輸送機、代替先確保急ぐ―防衛装備庁

2022年06月03日07時07分

航空自衛隊C2輸送機のブレーキなどを生産する企業が今年2月に事業からの撤退を決めたことで、C2の運用面への影響が懸念されている。防衛装備庁は撤退企業の協力を得て、速やかに事業の引受先を探すとしている。背景には衰退への危機感も指摘される防衛産業の実態がある。

「時事通信」より

さて、ニュースの内容ははC2輸送機のブレーキ部品を作っていたメーカーカヤバが、航空機産業から撤退してしまって、困ったねというニュースである。

自動車の改造などに興味があった人であれば「あの、カヤバか!」と思うだろう。モータースポーツの世界ではかなり有名なメーカーだからね。意外にも航空機部品にも手を出していたらしい。

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国産輸送機の夢

C2輸送機

おっと、C2輸送機について少し説明しておこう。

川崎重工が開発製造した輸送機で、C1輸送機の後継として開発された機体である。22機が調達される予定で、現時点で15機が配備されているそうな。現時点で日本が開発した航空機の中では最大サイズで、最大積載量36tで、36t搭載した状態で4,500 kmの航続距離を誇っている。

軍事作戦を展開するにあたって、非常に重要な要素となるのはロジスティクス(兵站)である。その兵站を支える手段の1つが輸送機の存在だ。コレを軽視すると直近ではウクライナに侵攻したロシア軍みたいな事になる。ロシア軍は兵の練度が低いのも問題だったのだけど。

さておきC2輸送機は、開発時に短距離離陸に拘ったため最短離陸滑走距離は500m、短い滑走路でも飛ばすことが可能である。不整地着陸能力は要求されてはいないが、有しているとされている。

哀しいかな、未だに日本国内のみの採用なので調達価格が高いのがネックではあるが、海外に売っていける輸送機ではある。

利益が出ない

さて、そんな国産輸送機ではあるが、ブレーキ部分もスペシャルメイドで、カヤバがそのブレーキ部品を担当していたそうだ。

油圧機器大手のカヤバは2月の取締役会で、航空機器事業からの撤退方針を決定した。同社は戦前、旧日本軍の零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の油圧緩衝脚などを製造していた歴史ある企業。ただ、利益率が低く調達数も少ない防衛産業の厳しい現状にさらされていた。

「時事通信」より

しかし、「利益率が低く調達数も少ない防衛産業」というのは、なかなか業績を圧迫する。

国産兵器を国内で採用するのみと言うのは、こういった問題点を少なからず抱えていて、多分、カヤバが航空機器事業から撤退する判断は、航空機産業そのものが縮小していることも問題なのだと思うが、防衛産業として日本政府が企業を守る気が無いことが大きな問題なのである。

これ、安全保障的には極めてマズイ。

C2のような大型装備品の生産には、防衛省から直接受注する川崎重工業のような「プライム企業」に加え、関連部品を造る多くの企業が関わる。業界内には「戦車は千社」という言葉もあり、関係者は「部品一つが欠けるだけで装備品全体に影響する」と懸念する。

装備品生産からの撤退は今回の例にとどまらない。プライム企業だけでも、この5年で三井E&S造船や住友重機械工業などが手を引いた。防衛省幹部は、カヤバの撤退について「氷山の一角だ」として、適正な利益水準の維持など抜本的対策が必要との認識を示した。

「時事通信」より

結局、自民党を含めて「国防とは一体何なのか」ということを真面目に考えてこなかったことのツケを防衛産業に関わる企業が支払わされてきたのである。

利益が出ないだけなら未だしも、赤字で部品を作らねばならないのである。やってられないというのが本音だろう。

防衛産業は国防に極めて大きく影響する

そもそも、C2輸送機もP1哨戒機も優れた機体ではあるが、巨額な開発費を投入してそれをどのように回収していくかというビジョンがないというのが致命的である。

こんな状態で「防衛産業から企業が撤退していく」と嘆いたところで、そんなの当たり前である。民間企業は責められない。

しかし一方で、国産兵器の開発を全て止めてしまったら、それこそ有事における対応力は極めて低くなってしまう。これも国防政策の一環として考えるべき課題だったのだ。

安保環境の激変で大転換 日本学術会議「軍民両用」研究を否定せず 年間10億円の血税投入「浮世離れ」組織、民営化案浮上で目くらましか

2022.5/17 11:47

日本学術会議の姿勢が注目されている。多額の血税が投入されながら、特定の政治勢力の影響力が強く、自国の防衛研究に過度なブレーキをかけてきたが、国会で、民生と軍事の「デュアルユース」(軍民両用)の先端技術について、「研究を否定しない」とする姿勢を明らかにしたのだ。

「ZakZak」より

今更、日本の軍事研究を協力に禁止してきた日本学術会議が方針転換したが、そもそも軍民両用の技術なんて妄想の類である。何処で線を引くかというだけの話で、その色分けに何の意味もない。

実際に、日本の一眼レフカメラがロシアや北朝鮮の無人機に使われた話は記憶に新しいし、オモチャ用のエンジンが無人機に使われていたことを考えても、区別なんか付けても意味はないのだ。

そういった面も合わせて、「兵器の輸出」だってもっと積極的に考えていくべき問題である。たとえば、オーストラリアと一部の兵器を共有できれば、共同作戦を採る場合にも有用だ。同盟国のアメリカに兵器を売るのは難しいかもしれないが、それでも米軍に採用されれば大きなメリットが生まれるのも事実。

国防について、国民は今一度しっかりと考えねばならないだろう。そして、政治家に対して国防に対して真剣に考えろということを突き付けるべき時代なのである。

コメント

  1. 木霊様、皆さま、今晩は

    こういう「特殊な」取引の場合、製造設備、治具、人材の雇用、育成まで含めた契約にする必要がありますね。
    今後○年間は即座に製造できる態勢を維持せよ。そのための費用は支払う、といった契約が必用だと思います。コストが嵩みますが、それこど輸出でもなんでもすればいい。

    戦闘機であっても戦闘しなければ問題はないだろうし、「カップラーメン」であっても戦場の兵士が食べれば「軍事物資」でしょう。
    ウクライナ以前は軍備は「戦争をしない」ための装備だったのですよね。

    • ご指摘通りではありますが、多数の民間企業と特殊な条件で契約をするというのは、なかなかハードルが高いかと。
      根本的な問題は、軍事費が少なすぎることなんですが、その辺りは一応改善される模様。
      軍事費を積んでも、この問題を解決していくためには相応の時間が必要なんですけどね。

      ともあれ、輸出出来るようにするのは喫緊の課題だと思いますよ。

  2. 当にその通りで、民生ハイラックスに台座を着けて機銃を据えたら立派な戦闘車両の出来上がりな訳で。これも武器輸出になるのか?

    我が国の武器・兵器が多くの国々に配備されたら、平和希求の憲法に反するとか自己満足以外に利益を産み出すのか? 民生品が軍事転用されている事実の前に、そんな綺麗事が通用するのか?

    もっと言えば、日本の装備が人に危害を加える事は罷りならんとか言う人に問いたい。日本が攻め込まれた時に武器を使う事は、人に危害を加えるから罷りならんと言うのかと。

    • 「死の商人」などという言葉を使って、武器商人を批判する向きがあるのですが、アレもどうかと思います。
      武器がなければ争いは起こらないなどと言うのは、幻想です。

      建前だけで武器輸出を締め上げるのもう止めて欲しいですね。

  3. 根本の問題として、防衛費が少なすぎてそういった分野にまで十分な資金が回せていない点が大きいですね。
    調達数が少なくて利益が出ないのはどうしようもないので、防衛関連事業を一定の規模で維持する企業には減税その他で補填すればいいものを……
    今後、防衛費の見直しでその辺が改善することを祈るばかりです。

    • 防衛費は増やすことが決まってはいますが、決まっているんだったらさっさと増やせば良いのに先送りしちゃいましたからね。

      防衛産業に関して、税制的な優遇措置を、というのは良いかも知れません。
      構造的見直しは必須ですから、そういった方面での改善も望みたいですね。

  4. こんにちは。

    部品製造メーカが撤退する、とは聞いてましたが、カヤバだったとは、そこまで調べてませんでした。

    カヤバと言えば、茅場式という飛行機を作ったパイオニアの一社でもあるのですが……経営難には逆らえませんよね。
    それもこれも、防衛省の脳無しと財務省の銭ゲバのせいかと思うと、やるせなさでいっぱいです。

    • 防衛省も財務省も、「国内産業育成」という方面で気が回っていないのですよ。
      経済産業省辺りが手を打ってくれることを望みたいです。
      ちょっと話は逸れますが、経産省と言えば秘密特許のことでもかなり苦戦が予想されます。特許制度と相容れないんですよね「秘密」って。どのようにバランスを採っていくのやら。