この手の記事は嫌われると思うのだけれど、好き嫌いに関わらずかなりヤバい状況に進行しつつあることは認識しておいた方が良いだろう。特に選挙前にこの点を指摘しておかないと、政治家に国政を誤らせることになる。
EU、ロシア産原油禁輸の制裁を正式承認 近く発動へ
2022/6/3 04:33(最終更新 6/3 09:17)
欧州連合(EU)は2日、大使級会合を開き、ロシア産原油の禁輸を柱とする新たな対露制裁案を正式承認した。近く発動する。
「毎日新聞」より
これは本日付のニュースで、ロシア産原油の禁輸という方向性は少し前から検討されてはいた。
方針転換は必至
レミングスの群れ
ヨーロッパ諸国の人々はもう少し賢いとは思っていたのだが、何か方向性が決まると、わーっとそっちの方へ向かって走って行ってしまう気がして仕方が無い。
もちろん、ロシア軍のウクライナ侵攻やEUへの挑戦を突き付けるようなやり方をされているのだから、ロシアを許すか、許さないかの2択を突き付けられれば、ヨーロッパ諸国の立ち位置からして「許さない」を選択するしかないのである。
それでも、ロシア産原油の禁輸、或いはその先にある天然ガスの禁輸を選ぶのは、時間の問題だろう。
ロシアのウクライナ侵攻を巡る制裁は6回目となる。EUは5月30日の首脳会議で、6カ月以内に海上輸送による露産原油の輸入を停止し、年末までに石油精製品を禁輸することで原則合意。一方で、難色を示していたハンガリーに譲歩し、同国などが主に利用するパイプライン経由での原油輸入については当面、禁輸対象から除外した。
「毎日新聞”EU、ロシア産原油禁輸の制裁を正式承認 近く発動へ”」より
ただし、為政者として自国の国民が寒さに凍え、大量の死者を出すのを良しとすべきではないのだろう。
実際に、イギリスから警告が出ている。
英国政府のブリーフィングで、ロシアのウクライナ侵攻による今冬の停電を警告
2022.05.31
英国政府関係者はロシアのウクライナ侵攻により、この冬に停電が起こる可能性があると政治家に警告を発し始めています。
タイムズ紙によれば、政府の「合理的な」最悪のシナリオでは、ロシアがヨーロッパへの供給をさらに断てば、広範囲にガス不足が発生する可能性があるといいます。来年初めの朝夕のピーク時には、最大600万世帯で電力が配給制になる可能性があると、国会議員へのブリーフィングでは指摘されています。
「cafe-dc.com」より
各国とも危機感を共有しているはずなのだが、ヨーロッパは電力網を構築することで不足分を融通するようなシステムを導入している。
電力が不足する
他国から融通する、その発想があるのがヨーロッパで整備された電力網に由来するのだが、こんな感じになっている。

これは自然エネルギー財団のサイトに公開されている図なのだが、こうした電力網を模倣して自然エネルギー財団はアジアスーパーグリッド構想を打ち出している。そのため、それなりに正確な図なんだろうとは思う。
問題は、ヨーロッパ諸国がそれぞれ原油や天然ガスの輸入について、「ロシア産はダメ」という方針を打ち出していることだ。どこもかしこもソレをやると、当然、各地で電力が足らなくなる。LNGは直接燃やしても使うので、ロシアからの供給が途絶えると相当ヤバい。
当然、振り替え輸入をやる訳なんだけど、中東などで増産が可能かというとちょっと怪しいといわれている。
天然ガスを確保しろ!
そんな訳で、価格は高騰している。

日本にも影響は出ていて、日本政府としてももちろん、全く手を打っていないわけではない。
各国、日本もだがLNGの増産を画策はしている。
米LNG増産、日本が後押し
2022年5月5日 2:00
訪米中の萩生田光一経済産業相は近くグランホルム米エネルギー長官と会談する。日本は液化天然ガス(LNG)の増産を働きかけ、出資や債務保証などの資金支援を検討する。ウクライナに侵攻を続けるロシアへの依存度を引き下げ、エネルギー安全保障の再構築を急ぐ。
「日本経済新聞」より
欧州への輸出を目的とする天然ガスの米国内生産拡大を6割が支持、米シンクタンク調査
2022年05月13日
米国シンクタンク、ピュー・リサーチ・センターは5月12日、ロシアのウクライナ侵攻に起因する天然ガス増産などに関する世論調査結果

これは、2021年度の天然ガスの純輸出量のシェアと、原油の世界シェアだ。何れも輸出量を示すものなので、生産量とは違うのだが、天然ガスで4割、原油で2割。これがロシアが世界に輸出するエネルギー資源の実態なのである。
こういった状況で、ロシア産の天然ガス、原油を買わないと宣言する国が増えてこれば、当然ながらエネルギー資源の価格は高騰する。単純な話である。
現状で自前資源のない日本にとって、こうしたエネルギー資源の高騰は死活問題となる。
省エネで対応
当然ながら、岸田政権だってその事は理解していると思う。思うのだが……、大丈夫か?コイツ。
電気使い過ぎ企業に「罰金」検討 岸田政権のエネルギー政策に疑問「クリーンエネルギー」傾倒と批判の声も 「政治責任を企業に押し付けている」識者
5/31(火) 17:00配信
岸田文雄政権のエネルギー政策に疑問が浮上している。電力需給の逼迫(ひっぱく)が見込まれる今冬に大規模停電の恐れが高まった場合、大企業などを対象に「電気使用制限」の発令を検討しているのだ。違反すれば罰金が科されるという。背景には、ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー不足があるが、安価で安定的な電力供給は政府の責任である。国民生活や企業の経済活動に甚大な影響が出かねない。
「yahooニュース」より
冗談かと思ったが、本気で発言しているようだ。
「原子力」活用、岸田首相言及 ロシア石炭禁輸で電力に懸念
2022年04月12日07時07分
ウクライナ危機でエネルギー価格が高騰していることを受け、岸田文雄首相が原子力発電の活用に言及し始めた。対ロシア制裁で石炭の段階的輸入禁止に踏み切ったことで、電力供給が綱渡りになるとの懸念が拡大したことが背景にある。原発に対する世論の根強い不信感を念頭に、安定的なエネルギー源として活用が可能か見極めたいとの思惑もありそうだ。
「時事通信」より
ちょっと前は、再稼働に舵を切る方針を固めていたんじゃなかったのかよ!「やっぱムリ」とへたれたのだろうか。前日、こんな記事を紹介した。
10年以上動かなかった裁判だが、札幌地裁がオドロキの判決を出してしまった。記事でも言及したが、科学的見地に基づく判断だとは思えないし、構図的にそれを今判断したという理由も不明だ。
だが、記事を書いたときには言及しなかったが、裏があるとすれば恐ろしい話である。こういった運転差し止め命令が出るような事態を、「誰が画策しているのか」という陰謀論的な話を考えたくはないが、日本の製造業の足を引っ張り、自民党政権の足下を揺るがすようなエネルギー戦略への干渉が出来たとして、一番喜ぶのは「誰」なんだろうと思ってしまう。
首相が「電力使用制限」などとアホな事を言い出した背景を考えると、ため息をつきたくなるな。
地方行政レベルでは動き出すところも
ただ、幸いなことに再稼働へ向けての動きは多少はある。
島根原発2号機 知事が再稼働同意 高まる原発活用の声 課題への対応は
2022年06月02日 (木)
島根原発2号機について、島根県の丸山知事が、きょう、再稼働への同意を表明。
「NHKニュース」より
ウクライナ危機によるエネルギーの供給不安や電気料金の高騰を受け、再稼働を急ぐなど原発のさらなる活用を求める声が高まっており、関係者は今回の地元同意をこれまでになく歓迎。
ただ今週も、裁判所が北海道の泊原発の再稼働を認めない判決。
原発のさらなる活用というのであれば、安全面の課題に対応し、エネルギー政策上の位置づけをはっきりさせることが大前提。
まず再稼働を巡る状況を見た上で、高まる原発活用の声、対応すべき課題は、
以上3点から原発の課題について水野倫之解説委員の解説。
NHKが日本語が怪しい感じのニュースを紹介しているが、この論説委員の説明は結論がオカシイ。オカシイのだが、世界の流れは分かると思う。
こうした原発活用の動きはエネルギーの脱ロシアを急ぐヨーロッパが先行。
「NHKニュース」より
EUのヨーロッパ委員会は原発を、地球温暖化対策に役立つエネルギーと位置づけました。脱原発のドイツなどは反発しましたが、ウクライナ危機が起き、原発活用の動きが加速。
すでに電力の70%を賄っているフランスは、次世代型原発6基を2050年までに建設する計画を明らかに。
ベルギーは2基の運転を10年延長させると。
そしてイギリスも最大8基建設し、2050年に25%賄うとするエネルギー計画を発表。
一応世界のトレンドは押さえているようなのだが、「再エネを相当上積みしなければならない」などとアホな事をを言っている。良く理解しているようで、何も分かっていないか確信犯か何れかだろう。
時代は、脱炭素は一旦脇に置いて、安定的なエネルギー供給の確保というステージにいて、それは今年の冬に向けて危機的な状況になることは明白なのである。
だったら、日本政府のやるべき事は、政治的決断で冬までに原発の半分の再稼働を目指すというところではないか。短期的には再稼働、中期的には石油火力発電を止めて石炭火力などにリプレース。長期的には、SMRや核融合発電など新たな発電方法の獲得だ。やらなければ国民の人命に関わる事になるだろう。
そんなの素人だって分かる話。他に選択肢があるというのであれば、示すべきなのだ。そして、こうしたエネルギー戦略についてのビジョンをもっていない政治家に票を入れてはならない。
コメント
木霊様、皆さま、今日は
久しぶりの書込みです・・。
以前「温暖化は原発事故よりも危険だ。原発事故の犠牲者は○万人程度だろうが、温暖化の犠牲者は○億人になる可能性がある。」と書いたような記憶があります。
電気自動車について「電気が不足するぞ、発電所の増設が不可避」と書きました。
CO2排出量と温暖化の因果関係には明確ではないところがありますが、化石燃料からは脱却すべし、化石燃料はいずれ枯渇する。原子力で【代替え】できるならば、そうすべきだ、というのが私の考えです。
ロシア、ウクライナ以来、化石燃料から【脱却せざるを得ない】状態になってきています。電気に置き換え可能なものは置き換え、発電は原子力・・・が現実的のように思えます。
問題なのは、核燃料もそのうち【枯渇】するんですよね・・・。何世代か先のエネルギーをどうするかを本気で考える必要がありますね。
平時であれば、「環境保護」とお気楽に唱えていれば良いのですが、今は平時とは言い難い。
少なからず、日本の周囲もかなり治安的に怪しくなってきています。
まさか、直近で台湾侵攻を支那が決行するとは思えませんが、ロシアだってまさかウクライナ進行するとは思っていませんでしたからねぇ。
何があるかわかりません。
エネルギー政策はそういった情勢下では、万が一のことを考えて手を売っておくべきです。
原子力は良くも悪くもエネルギー密度の高い発電手法ですから、当面は燃料を確保して動かしたいところ。
こんにちは。
欧州が原発容認に舵を切っていますから、「欧州出羽守」がまたぞろ旗を振ってくれる……のを期待したいところですが。
「欧州出羽守」と「反原発原理主義者」は高い確率で重複してますからねぇ……
こういったケースで出羽守がやってくるケースはないですねぇ。
都合の悪いことは見えないのが彼らの特徴ですし。
おはようございます
日本では岸田首相が節電のお願いだそうです。”原発”があるのに…本末転倒ですね。
自民・公明は、7月の参院選でやっぱり負けるかぁ、と思い始めました。
できる事があるのに、それをやらずに「お願い」だけする。
そーゆーのは、信用されませんよね、基本的に。
何故、あそこまで頑なに原発再稼働の反対をするのでしょうか。
潔く、期限を切って再稼働をすると宣言すれば良いのに。
リプレースする所までは行けないかも知れませんが、賛成する人は多数いると思うんですけどねぇ。