札幌地裁、北海道の泊原発運転差し止め命令を出す

原子力発電

アホな判決を出したものである。

北海道・泊原発の停止命令にSNSで絶望の声「また電気代上がる」「夏の節電どうする」

6/1(水) 19:49配信

5月31日、札幌地裁は北海道電力に泊原発の運転差し止めを命じた。道内の住民ら約1200人が、泊原発1~3号機は安全性に欠けるとして、廃炉や運転差し止めを求めていた。札幌地裁は、廃炉については請求を退けている。

「yahooニュース」より

裁判所というのは、エネルギー政策の当否についての判断をしてはならない。あくまで、政治的な内容に踏み込まない法的根拠に基づく判決を出すべきである。ところが、札幌地裁はこれを容易く踏み越えてしまった。

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裁判所は安易に原発差し止め判決を出すべきではない

全国の地裁で容易に出される差し止め判決

過去の判例を見ていくと、おかしな裁判が多い地裁においても異彩を放つ事が多いのが、原発の運転差し止め判決である。

  • 2003年名古屋高裁金沢支部、高速増殖炉「もんじゅ」、設置許可無効
  • 2006年金沢地裁、北陸電力志賀原発2号機、運転差し止め → 判決取り消しへ
  • 2014年福井地裁、関西電力大飯原発3、4号機、運転差し止め → 運転再開へ
  • 2015年福井地裁、関西電力高浜原発3、4号機、運転差し止め仮処分 → 運転再開へ
  • 2016年大津原発、関西電力高浜原発3、4号機、運転差し止め仮処分 → 運転再開へ
  • 2017年広島高裁、四国電力伊方原発3号機、運転差し止め仮処分 → 運転再開へ
  • 2020年広島高裁、四国電力伊方原発3号機、運転差し止め仮処分 → 運転再開へ
  • 2020年大阪地裁、関西電力大飯原発、設置許可取り消し → 執行停止のまま控訴し命令取り消しへ
  • 2021年水戸地裁、日本原電東海第2原発、運転差し止め

全国各地で原発の再稼働反対運動や運転停止を求める裁判が起こされているのだが、多くの判断は高裁で引っ繰り返されるケースが多い。個別具体的にその妥当性を判断するには時間を要するので、割愛するが、そもそも裁判所に原子力発電所の運転を差し止める権限はないのだ。

では何故差し止め命令が出せるのかと言えば、根拠となるのは憲法の規定によるところが大きい様だ。

泊原発の運転に差し止め命令、地裁「防潮堤がない」 審査にも影響か

2022年5月31日 15時16分

北海道電力が再稼働を目指す泊(とまり)原発(北海道泊村)の1~3号機について、道内外の約1200人が北電を相手に、運転差し止めや廃炉などを求めた訴訟の判決が31日、札幌地裁であった。谷口哲也裁判長は「基準で求められている津波防護施設(防潮堤)が存在しない。その余の争点について判断するまでもなく、原告らの人格権が侵害されるおそれがある」と述べ、運転差し止めを命じた。

「朝日新聞」より

「人格権の侵害」って……、憲法13条に規定の幸福追求権から導かれる基本的人権の1つとされているものだが、本来であれば人格権に基づく差し止め請求は、人格権の侵害という見地において不法性が大きくそれを放置することが社会正義に照らして許容されないレベルの場合にしか認められない。

つまり、この人格権侵害に基づく差し止め請求は相当ハードルが高いのである。

「不法性」について

ところが、原子炉の稼働というのは、法律に規定されているものではない。

従って、原子力規制委員会が出した安全基準を満たすか否か?というところが争われることになるのだが、今回の裁判では、「基準で求められている津波防護施設(防潮堤)が存在しない」というところを問題視している。

しかし、恐ろしい事に、この安全基準を満たすか否かの判断に関しては裁判所が行うのではなく、電力会社に立証責任があるというのである。

谷口裁判長は、原発が原子力規制委員会の策定した安全性基準を満たすかどうかは、知見や資料を持つ電力会社が立証する必要があると指摘。会社が立証を尽くさない場合は、原発が安全性を欠き、周辺住民に対する人格権を侵害する恐れがあると見なされると述べた。

「時事通信」より

実のところ、原子力規制委員会が定める安全基準というものは、科学的根拠に薄弱である。従って、この安全基準を満たすかどうかを電力会社に立証しろというのは非常に困難な要求となる。

北電の泊原発、敷地内の活断層を否定 原子力規制委

2021年7月2日 19:40

原子力規制委員会は2日、北海道電力が再稼働を目指す泊原発3号機(泊村)の審査会合で、1号機原子炉建屋付近にある「F-1断層」など複数の断層が「活断層ではない」とする北海道電の主張を了承した。2013年7月の審査申請以降の大きな論点が決着した。

「日本経済新聞」より

そこで、北海道電力は原子力規制委員会に対して、建屋付近にある複数の断層は「活断層ではない」という主張をし、これを了承されたことで運転再開への道筋を付けている。

今回の札幌地裁の判決は、ソレとは全く別の観点から「防潮堤がない」という原告側の主張を認めて、判断している。しかし、泊原発には防潮堤は存在するのだ。

防潮堤は何のため?

そもそも、泊原発においての防潮堤建設については、過去の事例から判断して最大水位を7m弱と判断していた。

当社は、2013年7月の新規制基準適合性に係る申請において、基準津波による泊発電所の敷地前面における最大水位上昇量を海抜6.95m、また、最大水位下降量を海抜-5.91mとして申請しました。その後、津波の発生をより一層厳しい条件で再評価※し、それぞれ12.63mと-7.82mと説明しています。

「泊原発のサイト」より

こうした判断に伴い、防潮堤は設けられていたのである。こんな感じの防潮堤が設けられていたのだが、防潮堤は低い可能性が出てきたために、これを高くする方向で工事が始まった。2022年3月から既設防潮堤の撤去工事を実施している。

で、工事を始めたは良いのだけれど、そもそも泊原発はこれまでに津波被害を受けた実績は無いので、自主的に防潮堤を更に高くするという工事を行っているに過ぎない。

その上で、泊原発の津波防護施設について、北海道電側は防潮堤が存在し、防潮堤の地盤に液状化などが生じる可能性は低いと主張するものの、相当な資料による裏付けをしていないと指摘。北海道電側が今後建設予定とする新たな防潮堤についても構造が決まっておらず、「津波防護機能を保持できる施設は存在せず、安全性の基準を満たしていない」と述べた。

「朝日新聞」より

そして、新たな防潮堤の構造が決まっていないというのも嘘だ。構造は決まっているし、「津波防護機能を保持できる施設は存在せず」という部分も認定的に誤りがある。

重要部分は、水密扉で保護しているし、また、冷却を要する燃料は全て海抜31m以上にある使用済燃料ピットに保管されており、同ピット水の冷却が継続できるよう、送水ポンプ車による冷却水の補給も可能とする等の多様な対応手段を確保している。

おかしな話ではあるが、泊原発付近に10mを超える津波が押しよせた実績は無かったし、新たな基準に対応する為の工事も始まっている。一時的に防潮堤が撤去されるも、水密扉などによる保護で津波への対策をおこなっている。更に、既に発電機などは高台に移してあるのだから、北海道電力としては一体、何と戦っているのか?という気分になるだろう。

社会正義に照らして……

そんな訳で、どうにも札幌地裁の判決の「不法」のところの理解ができないワケなのだが、これに基づき、「社会正義に照らして」の部分は更にヤバい。

何が社会正義なのかサッパリ分からない。

法廷では、判決を聞いて歓声が上がったというが、SNSでの反応は明るいものばかりではない。泊原発は2012年の定期検査以降、全基が停止中だが、その間に、北海道では全域停電(ブラックアウト)が起きているからだ。

「2018年、震度7の胆振東部地震により、北海道全域の295万戸が最長2日間にわたって停電する日本初のブラックアウトが起きました。理由は、原発が停止しているなか、やむなく1つの火力発電所に大きく依存していたところ、地震でその一部が停止したからです。  

今回の判決で、北海道電力は、火力発電に依存しながらの電力安定供給をさらに強いられる形になりました。今後、災害時はもちろん、電力需要が逼迫する夏場や冬場には、停電リスクがさらに高まったといえるでしょう」(社会部記者)

「yahooニュース」より

北海道では2018年に北海道全域でブラックアウトを起こして、数日間の停電が発生している。9月6日に発生したこの地震、衝撃な光景を全国民の目に焼き付けると共に、北海道電力の電力網の脆弱性を露呈した。

激しい揺れによって山肌の多くが崩れて民家が土砂に埋め尽くされてしまったのである。

こんな地震が冬季に起こった場合に、火力発電だけに依存する体質では不安が残る。そもそも、この地震の発生時に泊原発は停止中であったが、被害を受けてはいない。また、泊原発が再稼働していたとしても、この時のブラックアウトを避けることは出来なかった。だから、今年の冬に同じ事が起こったとしても泊原発を稼働すればOKという事にはならない。

泊原発差し止めで火力依存長期化 全域停電高リスクに
札幌地裁が31日、北海道電力泊原発1~3号機の運転差し止め判決を出したことで、北海道電は火力発電に依存しながらの電力安定供給のさらなる強化を迫られた。北海道で…

よって、産経新聞のように泊原発が再稼働できないからといって、ブラックアウトのリスクが高まるとは思わない。

だが、ロシア軍のウクライナ侵攻によって、世界的に燃料価格が高騰している。当然、冬季にその打撃を受けるのは北海道民であり、電力を作る為に化石燃料を燃やしている場合ではない!という状況にはなるだろう。

原発の再稼働は、世界的に起こっている化石燃料の高騰に拍車をかけているのであって、日本全国で原発を停止していることは、日本国内でのガソリンや灯油の価格高騰にも大きな影響を与えている。

そうすると、「原発を止める事は社会正義に照らして正当」だと言えるのだろうか?

3.11の残した傷痕は大きいが

もちろん、日本全国の人々が原発の再稼働に何らかの不安を抱いているという事実はあるのかも知れない。

それ程までに、3.11の東北大震災の残した爪痕は大きかったのだ。だが、アレは、本当に自然災害によるものだったのか?というと、残念ながら人災の色合いが濃い。

福島第1原発の教訓は、補助電源を海側に作らず高台に作れということであった。一方、原発建屋は津波の直撃を受けても壊れてはいない。

あの日、女川原子力発電所は避難所になった

2020年3月18日

東北電力女川原子力PRセンター(宮城県女川町)は、三陸リアス式海岸の美しい景観を見下ろす高台にある。2011年3月11日午後。館長の添川信夫(現・東北エネルギー懇談会広報部長)は、見学に訪れた学生17人を女川原子力発電所の見学に送り出した後、館内に残り、事務仕事をしていた。

~~略~~

東北電力女川原子力発電所は1、3号機が通常運転中、2号機が原子炉起動中に東日本大震災が発生。震源から最も近かったが、3基とも設計通り自動停止し、冷温停止へと導くことに成功した。プラントの安定化に向けた緊迫の対応が迫られる中、発電所では避難者受け入れという別の緊急事態にも直面していた。さらに、発電所の外では「水」を巡るグループ企業の奮闘があった。あの震災から9年。それぞれの使命を果たした闘いの様子を、複数の証言を元につづる。

「電気新聞」より

忘れ去られている女川原発だが、福島だ1原発よりも条件は過酷であったのでは?という疑いもある。

なぜ女川原発は無事だった 津波の高さは福島と同程度

2011年3月31日12時52分

東日本大震災の際、東北電力の女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)も、東京電力福島第一原発と同じクラスの津波に襲われたが、福島第一のような大きな被害はなく、危機的な状況に陥ることはなかった。その違いは何だったのか。

福島第一原発から北に約120キロ離れた太平洋岸にあり、三つの原子炉が並ぶ女川原発。福島第一原発を襲った津波は高さ14メートルを超えたが、女川町を襲った津波は17メートルクラスだったとする調査結果が出ている。津波で、女川原発の1~3号機のうち、2号機の原子炉建屋の地下3階が浸水したが、原子炉を冷やすために不可欠な電源が失われることはなかった。

女川原発の安全審査で想定した津波の高さは最大9.1メートル。想定を大きく上回ったのは、福島第一原発と同じだ。それにもかかわらず、被害が小さかった理由について、東北電力は「詳しい経緯は今後の調査を待たなければならないが、余裕を持った造りが大きかったと考えられる」と指摘した。

「朝日新聞」より

女川原発が何故無事だったのか?そこを含めた検証は本当にしっかり行われ、そのデータは原子力規制委員会に反映されて基準が作られたのだろうか。

そして、今回の判決で「防潮堤云々」という判断が出たが、果たして本当にその判決は科学的妥当性があるのだろうか。

こうした議論を置き去りにして、悪戯に原発を止める命令を出すことは許されないし、それはもはや裁判所の則を超えた越権行為である。

一番の問題は、政治的判断によって原発の再稼働が未だに出来ていない事ではあるのだが、「安全な原発から動かそう」という発想になず、期限切れをひたすら狙う判断しない政治を続ける政治家を、日本国民が許していることこそが問題なのだろう。

原発の再稼働を阻むと、世界一高い電力が不安定に供給されるというおかしな状況は更に悪化し、日本の産業も経済にも大きな打撃を受ける。そうなってからでは遅いのである。

コメント

  1. 北海道電力が今夏の電力需要を果たして賄えるのかどうか、一層不透明になりました。このような判決が出てしまっては、残る対処方法は道民の自発的な節電か、強制的な計画停電くらいしかありませんね。

    • 不透明ではありますが、政府は努力はしているようですよ。
      ただそれが表に成果として出てくるかはまた別だと思います。
      自発的な節電や計画停電で人命に関わるようなことにならない事を願います。

  2. こんにちは。

    感想としては、「バカな決定したもんさ」としか。
    繰り返しになりますが、原発は、商用発電してない状態であっても、核燃料はそのままですから、危険性にはなんら変わりはなく、むしろ冷却のためその他の費用だけかさむ無駄飯食いなんですよね。
    だったら、(廃炉して更地に戻さない限り)危険性が変わらないのだから、自分の食い扶持くらい稼いでくれた方が良いに決まっているのですが。
    「(反原発の)エラい人にはそれがわからんのです」

    • 原発稼働時のリスクと、停止時のリスクを考えれば、そりゃ稼働時の砲がリスクは高いのでしょうけれど、多くの人が勘違いしているのは、停止したらリスクがゼロになるかというと、そうではない点なんですよね。
      それも、停止時のリスクは結構高めでして、停止時に電力を延々消費し続ける事も余り知られていませんし、その消費量もバカになりません。そして、それが停止してしまうと、燃料は加熱し続けて、時間はかかりますがメルトダウンというような流れになります。それは原子炉内でも燃料プールでも同じで、燃料プールには使用済み核燃料もあって冷やさねばならない。
      原発は存続するだけで金食い虫なんですよねぇ。
      動かせば莫大な電気を産み出しますが、動かしていないのならさっさと廃炉手続きに入らないと。廃炉しても直ぐには安全にならないという問題も抱えていますが。