訪日してIPEFの立ち上げを宣言するバイデン氏

外交

アメリカ主導の経済枠組み、IPEFが本日立ち上げられる。

米バイデン政権 IPEF立ち上げに向け協議開始発表 13か国参加へ

2022年5月23日 23時58分

アメリカのバイデン政権は、中国への対抗を念頭にした新たな経済連携IPEF=インド太平洋経済枠組みの立ち上げに向けた協議を開始すると正式に発表しました。日本やインド、東南アジアの国々など世界のGDPの40%に当たる合わせて13か国が参加するとしています。

「NHKニュース」より

日本に来た序でにIPEFの立ち上げを宣言するというのは、なかなか興味深い事である。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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日本で立ち上げられた意味

IPEFとは何か

実のところ、IPEFの招待というのはハッキリしていない。

インド太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic Framework)と銘打たれているものの、実は関税の問題についても言及していないかなり緩い枠組み(Framework)になっている。

声明では、IPEFについて「各国の強じんさや経済成長を発展させるものだ」と位置づけ、「インド太平洋地域の協力や繁栄、平和に貢献する」などと目的を強調しています。

「NHKニュース”米バイデン政権 IPEF立ち上げに向け協議開始発表 13か国参加へ”」より

分かったような分からないような目的が掲げられていて、4本柱が示された。

これで一体何の連携を図るのか?というと、ハッキリしていない。

そして、4つの柱に焦点を当てるとして、 ▽デジタルを含む貿易、 ▽サプライチェーン=供給網、 ▽クリーンエネルギー・脱炭素、インフラ、 ▽税制・汚職対策を挙げ、 それぞれについて高い基準を設けていくなどとしています。

IPEFは、この地域で影響力を強める中国への対抗を念頭にバイデン政権が構想し、復帰に否定的なTPP=環太平洋パートナーシップ協定に代わる経済連携と位置づけています。

一方、IPEFは関税の引き下げなどを対象にしないため、メリットが少ないとみる国もあり、参加する国がどこまで広がりを見せるかが焦点になっていました。

「NHKニュース”米バイデン政権 IPEF立ち上げに向け協議開始発表 13か国参加へ”」より

ハッキリしていることは、TPPの代わりにアメリカが提唱した枠組みであることと、支那抜きの枠組みという事実なのだ。これは、これまで殆ど実績のないバイデン氏にとって大きな意味がある発表で、中間選挙を睨んだものであることは間違い無いだろう。

支那包囲網

さて、そういう余り正体のよく分からないIPEFなのだが、支那は結構大きな反応を示した。

日本も正式参加のIPEF、関税引き下げは対象外で実利は薄い?TPPやRCEPと何が違う?

2022年5月24日 06時00分

バイデン米大統領が23日に立ち上げを発表した「インド太平洋経済枠組み(IPEF=アイペフ)」に、日本も参加を正式表明した。貿易や環境分野で新たな経済ルール作りなどを目指すが、市場の開放につながる関税の引き下げや撤廃は議論の対象外。現時点では、日本を含めた参加国の直接的な経済効果は見えづらい。

「東京新聞」より

引用したのは東京新聞である。

こちらの記事でもかなり批判的に取り扱ったが、逆にいえば支那の見解に沿った発表をするという「分かり易い新聞」でもある。

で、この引用記事で何を言いたかったのか?というと、ここだ。

ただ、米国は自国の市場開放に慎重なため、IPEFでは関税の引き下げを通じた自由貿易の推進には取り組まない。米国市場への輸出拡大につながらず、会合では「具体的で相互利益のある結果をもたらすべきだ」(インドネシアのルトフィ貿易相)と、「実利」を期待する声も出た。

「東京新聞”日本も正式参加のIPEF、関税引き下げは対象外で実利は薄い?TPPやRCEPと何が違う?”」より

実は、アメリカの市場開放にはあまりプラスにならない。そういう意味では、東京新聞が指摘するようなTPPやRCEPとは「違う」のである。

まあ、だから「意味が無い」ということを東京新聞、延いては支那が言いたいのだろうね。

王毅・中国外相、IPEFの目的に疑問を表明

2022年05月24日

中国の王毅国務委員兼外交部長(外相)は5月22日(中国時間)、広東省広州市でパキスタンのビラワル・ブット外相と会談を行い、経済・貿易、反テロリズム、ウクライナ情勢の解決などの面で協力を確認した。

会談後の記者会見で王外相は、米国主導の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」(2022年5月18日記事参照)について、「地域の協力を強化する呼びかけであれば歓迎するが、分裂と対立を作り出す企みであれば反対だ」とした。

王外相はIFEFの目的には「大きな疑問符が付く。隠された意図を見抜く必要がある」とし、賛成か反対かは(1)自由貿易を推進すべきであり、形を変えた保護主義を行うべきではない、(2)世界経済の回復の助けとなるべきであり、産業チェーンの安定を損なうべきではない、(3)開放・協力を促進すべきであり、地政学的な対立を作り出すべきではない、という基準で判断すべきだとした。その上で王外相は、米国は「環太平洋パートナーシップ(TPP)から離脱し、自由貿易と対立した」、「米中貿易摩擦を引き起こした」などと指摘し、「米国がIPEFをアジア太平洋地域での経済的覇権を維持するための政治的な道具として特定の国を排除するならば、正しい道を外れることになる」とした。

「JETRO」より

にもかかわらず、支那の王毅氏は随分とこのIPEFに関して詳しく突っ込みを入れていて、「隠された意図がある」と騒いでいる。

中国がクアッド、IPEFに反発 「アジア版NATO」懸念

5/24(火) 12:07配信

中国はバイデン大統領の訪日やクアッドの首脳会合をどう見ているのでしょうか。北京から報告です。

中国共産党系の新聞、24日朝の一面です。写真で大きくバイデン大統領の訪日を報じています。写真はIPEFの発足式です。そしてタイトルには「アメリカが主導する政治的計画だ」と書いてあり、警戒感をあらわにしています。

「yahooニュース」より

北京でも共産党系の新聞の一面トップで取り扱ったらしい。

この枠組みが世界のGDPの40%にあたるというような話も確かに関係あると思うが、一番は多分、支那がここに入っていないという事だろう。

これの方が分かり易いだろうか。

実効性は薄く、インドは「経済的な実利が欲しい」などと要求しているようだが、実のところこのIPEFの狙いは反支那枠組みそのものである。TPPがそうした狙いで発足したはずなのだが、アメリカにとってはTPPのように関税を撤廃してしまうと色々都合が悪い。

そこでもっと緩い、反支那を目的とするスクラムを立ち上げたかったわけだ。

インドの思惑は?

さて、ここでIPEFの枠組みを作るのに非常に重要な位置を占めるインドが何を考えているのか?を少し紹介していきたい。

クアッド、地域の発展推進…インド・モディ首相寄稿

2022/05/23 05:00

24日に開かれる日米とオーストラリア、インドの枠組み「クアッド」の首脳会談に出席するため来日するインドのナレンドラ・モディ首相が本紙に寄稿した。全文は次の通り。

特別・戦略的・グローバル。日本とインドとの関係を示すこの三つの言葉は一語一語に比類なき重要性を持つが、両国の絆が秘める可能性には遠く及ばない。

文化的なつながりは数世紀にも遡る。地域的、世界的な展望の合致だけでなく、民主主義、自由、ルールに基づく国際秩序の価値を共有する強い信念は、信頼と本物のパートナーとしてのインドと日本の関係の根幹をなすものだ。

~~略~~

安全保障の他にも、地域内外の価値観を共有する国々、日米豪印の「Quad(クアッド)」などの枠組みと共に、我々は開発、インフラ、連結性、持続可能性、健康、ワクチン、能力構築や災害時の人道対応など、この地域での取り組みを推進する。平和で豊かなインド太平洋地域は、世界全体のより良い未来のためにも非常に重要だ。

「讀賣新聞」より

結構長い文章だが、要は「日本とインドの協力によってお互いが発展できるのだ」という趣旨の話と共に、Quadで「地域内外の価値観」と「安全保障」を共有したい、ということを言っている。割とふわっとした内容だが、経済発展と安全保障の両方で「インドに協力してね」という内容だ。

文中、「安全な海洋でつながり、貿易と投資によって統合され、国際法に明文化された主権と領土の一体性への尊重によって特徴付けられる」とある様に、露骨に支那に牽制をしているのも興味深い。

なお、インドはそもそも何処の国とも同盟を組まない方針なので、「アメリカとの共同歩調はゴメンだ」という立場である。

「武器で平和は来ない」 中国外相が批判 BRICSオンライン会合

2022年5月20日 6時17分

ロシアや中国、インドなど新興5カ国(BRICS)外相のオンライン会合が19日開かれ、議長国・中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相は「武器を送ってもウクライナに平和は訪れない。制裁で欧州の安保の苦境は解決しない」と述べ、ウクライナへの武器支援や対ロ制裁に動く米欧を批判した。

「朝日新聞」より

実はこれに先立って、支那が主導してBRICSのオンライン会議が開かれていて、面白発言をしていたのだが、この記事を取り上げた理由は、この支那の発言にインドは特に注文を付けていないところが面白いと感じたからである。

前後して表明されるインドへの支援

さて、そういった中でこんなニュースが。

日本のメーカー24社 インドに総額1200億円超投資へ

2022年5月24日 5時09分

国際的なサプライチェーンでインドの存在感が高まる中、自動車部品や空調など日本のメーカー24社が、インドで総額1200億円余りに上る投資を行う計画をまとめたことがわかりました。

「NHKニュース」より

国際的なサプライチェーンから支那を外してインドに切り替えていこうというような流れだってことだね。

参加するのは日米韓印と、オーストラリア、ニュージーランド、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、フィリピン、ブルネイ。13カ国は声明に「高水準で包摂的、自由で公正な」貿易モデルを目指すと明記し、「将来の交渉に向けた討議に乗り出す」と表明した。

「時事通信」より

余りハッキリした事は決まっていなくても、参加している国で連携しようという緩い枠組みがIPEFなのである。ただ、ここにインドが入ってくれなければ意味がないし、色々な国との緩衝材として日本が入ってくれなければ困る訳だ。

これが、態々日本に来てIPEF立ち上げの宣言をする意味で、Quadの会合に被せてきたことも無関係ではない。

環境問題と原子力発電

小型モジュール原子炉の開発も

さて、あまり取り上げられてはいないが、岸田氏がバイデン氏と話をした中に、SMRに関する事項が含まれていた。

日米首脳会談で小型原子炉の開発協力で合意、細野氏「世界の原発市場に日米同盟が返ってくる」

2022年05月24日 13:00

23日に行われた日米首脳会談は、バイデン大統領の「日本の国連安保理常任理事国入りを支持する」といった発言や、中国が台湾に侵攻した場合にアメリカが台湾防衛に軍事的に関与するかを記者から問われたバイデン大統領が「イエス」と応えるなど、見どころ満載だった。

そんな中、一見すると地味ではあるものの、日本の成長戦略を考えるうえで非常に重要な合意がなされた。

「SAKISIRU」より

引用記事で言及しているのは、ファクト・シート:日米競争力・強靱性パートナーシップの話である。

日米両国は、二国間及び日米豪印を通じて、5G サプライヤー多様化及び Open RAN に関す る協力を強化した。

「外務省のサイト」より

日米両国は、高度なサイバー脅威が存在するデジタル化が進む世界において、サイバーセキ ュリティを強化するために共同で取り組むことが急務であると一致した。

「外務省のサイト」より

日米両国は、悪意ある者による重要技術の誤用や研究活動を通じた新興技術の不適切な移転に対処するため、マイクロエレクトロニクスやサイバー監視システム等の重要技術のより効果的かつ機動的な輸出管理に関する日米協力を強化するための連携について議論した。

「外務省のサイト」より

日米両国は、インド太平洋地域及び世界の国々がクリーンで安価かつ安全なエネルギー源 への移行を加速できるよう支援を行うため、2021 年4月に日米クリーンエネルギー・パートナ ーシップ(JUCEP)を立ち上げた。日米両国は、インドネシア政府と協力し、再生可能エネルギ ーへの投資に対する関心を高めるため、金融、技術、ビジネスのマッチングのためのツールを 活用し、小型モジュール炉を含むクリーンエネルギーに関するキャパシティ・ビルディング活動 を実施した。

~~略~~

日米両国は、原子炉の運転期間の長期化及び燃料供給の安定性確保に関する協力を含め るべく、既設炉の十分な活用に関する協力の機会を追求する。

日米両国は、小型モジュール炉や高速炉などの革新的な原子力技術について、キャパシテ ィ・ビルディング及び資金調達手段と共に世界に展開することを支援することや、強靱なサプ ライチェーンの構築のために協力することを含め、協力していくことにコミットした。

「外務省のサイト」より

色々な連携の事が書かれていて、概ねIPEFの狙いに沿った内容となっているのだが、目を惹いたのがOpen RANに関する協力と、輸出管理強化、そして、小型モジュール炉開発の促進に関する内容だ。

環境問題に取り組むバイデン氏にとっても、SMRは既に「クリーンエネルギー」のカテゴリーなのである。これはもはや欧米スタンダードなのである。序でにいえばこのペーパーには、太陽光発電やそれに類する単語は出てこない。敢えて言えば「再生可能エネルギー」という単語は出ているので、その中に含まれるといえば含まれるのだろうが、そこに発展性があるとは考えていないようだ。

太陽光発電や風力発電も無駄ではないのだろうが問題も多い。実際にアメリカでも結構な問題になっているので、カーボンニュートラルの主役は原発に移りつつあるのだろう。

アジア地域の中核をなす

そして日本側としてはこんな発言をしている。

IPEFの立ち上げを目指す会合に参加した岸田総理大臣は「バイデン大統領が、日本で、IPEFの立ち上げを宣言したことは、この地域へのアメリカの強いコミットメントを明確に示すものだ。日本はIPEFに参加し、アメリカと緊密に連携し、ASEAN諸国をはじめとする地域のパートナーと手を携えて、新たな枠組みづくりに協力していく」と述べました。

「NHKニュース”米バイデン政権 IPEF立ち上げに向け協議開始発表 13か国参加へ”」より

アジアの中心となるという意思表示だ。

岸田氏が言及するように日本でIPEFの立ち上げ宣言をした意味は、「この地域へのアメリカの強いコミットメントを明確に示すもの」である。それはこれまでのように支那中心の経済を回すのではなく、日本中心の経済圏にてアメリカとの連携を図ろうという話でもある。

逆にいえば、アメリカが「与える側」ではなく、日本が働きかけることでのIPEFの推進という事にもなる。

アメリカが日本を上手いこと利用しようという思惑が見え隠れするのは事実ではあるが、日本が頑張ることで日本の国際的地位の向上を目指すチャンスにもなり得る。

「アメリカのポチになれと言うのか」と憤る人もいるだろうが、敵に回すとひたすら厄介な国がアメリカである。上手いこと踊りつつ、実利を得るような外交的手腕を発揮するのは国益に叶うのではないだろうか。

主体的に動こうとしない岸田政権下でこの様なチャンスが巡ってきたことはなかなか皮肉なことだが、TPPの時には日本が立ち回ってTPPの取り纏めを行ったのである。同じ事を期待されているという意味ではなかなか意味深い機会になったと言える。

ただ、TPPとは事なり、今回は防衛面でも強いコミットメントが要求されているので、自衛隊を軍隊に昇格させる、或いはその準備をする必要はあるだろう。岸田氏の言う「抜本的な強化」とはそういう意味なのではないだろうか。果たして岸田氏にその決断が下せるのか?は見物だね。

追記

うーん、共同声明が出たけど……。

日米豪印首脳会合共同声明

令和4年5月24日

本日、我々、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相、インドのナレンドラ・モディ首相、日本の岸田文雄首相、米国のジョー・バイデン大統領は、東京に集まり、包括的で強靭な、自由で開かれたインド太平洋への揺るがないコミットメントを新たにする。

1年と少し前、首脳は初めて顔を合わせた。深刻な世界規模での困難の時代に、4か国が地域に具体的な利益をもたらすことにコミットした善を推進する力であることを示すため、本日、東京において、我々は4回目、そして対面では2回目となる会合を開催する。最初の協力の年において、我々は前向きで実践的なアジェンダへの4か国の献身を表明した。2年目には、我々はこの約束を果たし、21世紀においてこの地域をより強靭なものにすることにコミットしている。

「外務省のサイト」より

弱い、メッセージ性が弱い。

FIOP(自由で開かれたインド太平洋)まで出したのなら、支那の軍事的な脅威経済的な脅威について何故言及しないのか。

領土の問題を出すのであれば、何故、北方領土の話を出してロシアの脅威について言及しないのか。後者はちょっとテクニカルなので盛り込むのは困難にしても、前者、つまり支那の軍事的な脅威、経済的な脅威について言及しないのだろう。

Quadの課題に加えてIPEFの課題を考えれば、出てくるのは自明だろう。インドが嫌がったのかも知れないし、オーストラリアの腰が引けたのかも知れないけれど、出だしがこれというのは不安が残るな。

コメント

  1. Quadにしましても、IPEFにしましても、そのスカスカ感は、米国の凋落ぶりの顕れと思います。WSJが、IPEFから台湾を外す理由がわからないと噛みついていました。
    https://jp.wsj.com/articles/bidens-real-taiwan-mistake-11653365385

    • 台湾に関しては、憶測ではありますがインドへの配慮という側面が強いのでしょう。
      アメリカにしても、態々極東日本に来てまでIPEFの立ち上げとQuadを首脳会談をしなければならなかった理由がインドの存在だと思います。

      規模感を演出したかったアメリカの本音の裏にはご指摘の様な凋落の影響があってグリップが効かない状況があるからなんだと思います。
      そして、それは軍事的プレゼンスを縮小せざるを得なかったからなんだと思います。