ここのところ、ちょっと書くネタに困っている事もあって韓国ネタに走ってしまうことをお許し願いたい。そんな訳で、本日のネタは、尹錫悦氏(ユンユン)の話である。
【時論】激しくなる米中対決、日本というカードを活用しよう
2022.05.11 10:03
尹錫悦政権の外交課題に関する世論調査で、「日本との関係改善」が最下位の6位に挙げられた。「韓米日安保協力」を3位と比較的重視しながら中国に対する強い警戒心も表わした。論理的に見れば中国を牽制して韓日米安保協力を図ろうとするなら日本との関係改善が必要だ。それでも世論は日本に対し、中国・北朝鮮の次に強い不信感を見せ関係改善を軽視している。言ってみれば安全保障上は日本が必要だが拒否感のため関係改善は避けて、韓米日協力は米国に委託しようという計算とみられる。
「中央日報」より
いきなり引用するのが中央日報の憤飯もののコラムなのだが、内容は「用日せよ」の一言に尽きる。何とも不遜な話だな。
尹錫悦政権を取り巻く幾多の問題
大局を見誤るコラム
さて、何故この中央日報のコラムを引用したかと言えば、起稿したのが元駐カナダ大使の申孟浩なる人物で、韓国の外交部も似たような世界観を持っている可能性があるからだ。
ところが、この視点がどうにもオカシイ。
しかし韓日が緊密に協力する場合、両国ともに中国の求心力に耐える戦略的自律性を確保する余地ができる。中国の圧力に共同対応でき、負担を共有して分散できるはずだ。米国が北東アジアに残るよう求心役をすることにより米国とさらに対等な関係を構築する基盤になるだろう。韓米日安保協力と韓日中機能協力を調和できる軸になるわけだ。これは米中戦略競争に巻き込まれるより接点を見いだしていく歩みだ。韓日経済は相互競争的だが補完的な側面も多い。米中の技術脱同調化状況で韓日が技術協力を通じて米中双方の圧力を耐えたり両市場をいずれも活用したりする余地ができるだろう。韓日で重複する産業に対して供給網をともに確保するためのパートナーになり得る。国際舞台でも両国がともに推進するアジェンダは相当な影響力を発揮するだろう。
「中央日報”【時論】激しくなる米中対決、日本というカードを活用しよう”」より
確かに韓国にとって、日本が利用できれば国際社会との外交にとっても足がかりとなる可能性はあるのだが、肝心な日韓関係はショートしてしまっている。それも韓国の100%責任で、だ。
韓日関係改善のカギは両国国民にある。その中でも先に手を差し出して大きな役割をできるのは被害者側だ。韓国の政治・経済・文化的成就は途轍もない。過去史問題でももう自尊感を持って堂々と対応すれば良いだろう。
「中央日報”【時論】激しくなる米中対決、日本というカードを活用しよう”」より
何か、被害者である韓国が、日本側に対して手を差し伸べてこそ、関係改善が出来るのだという主張をしているのだが、ここが既にオカシイ。ご存じの通り、「過去歴史問題」という韓国側の主張は、完全に言いがかりなのだから。
そして、日本側は「韓国にボールがある」とその様に明言しているのだから、韓国の国内問題として歴史問題を処理しなければ問題は先に進まない。
壊れかけの韓国経済
現在の韓国には幾つもの問題があって、いちいち説明するのも面倒な事なのだが、大雑把に言うと「経済問題」「安全保障問題」「政治的課題」であろうと思う。
真っ先に挙げた「経済問題」だが、これもかなり深刻な問題ではある。
韓国ウォン、対ドル13年ぶり安値 利上げ加速が焦点に
2022年5月10日 14:58
韓国の通貨ウォンが下落している。1ドル=1270ウォンを上回り、約13年ぶりのウォン安・ドル高圏で推移する。物価高を抑え込もうとする米連邦準備理事会(FRB)の急速な利上げ姿勢を背景にウォンが売られる展開が続く。
「日本経済新聞」より
韓国経済の低迷によって、ウォンは売られる展開が続き、ウォン安を更新している。韓国経済の対ドル相場は非常にピーキーであると言われており、1ドル=1250ウォンを上回ると赤信号が点り、1ドル=1300ウォン突破でもはや立ちゆかなくなる。一方で、1ドル=1200ウォンを割っても苦しくなると言うから、韓国市場は頻繁に市場介入を繰り返している。
その結果、過去何度もアメリカは韓国を「為替操作国」に設定しようとした。アメリカ政府の恩情で何とかそうはなってはいないが、やっている事は最悪である。
「韓米通貨スワップできれば良いが…問題は可能性」
2022.05.09 07:08
昨年終了した韓米通貨スワップの復活を求める声が出ている。米国の高強度の緊縮の余波で韓米金利逆転の可能性に対する懸念とウォン安が続いてだ。政界などを中心に21日の韓米首脳会談で常時通貨スワップ開設を議題に取り上げるべきという主張まで登場したが、実現の可能性などを考えて慎重にアプローチすべきという見方もある。
「中央日報」より
そうした事情があって、アメリカと「通貨スワップを結んでくれ」と懇願しているのだが、これは凡そあり得ない話。何故ならば、アメリカに利益が無いからだ。寧ろ、アメリカが貸した金で市場介入をして市場を荒らす所行をアメリカは許してはおらず、前科があるだけに通貨スワップを結ぶことは無いだろう。
なお、中央日報の記事はさらっと嘘が書かれているが、意図的なものだろう。
何処が違うかというと、「昨年終了した韓米通貨スワップ」という出だしからして嘘だ。
韓国銀行、米FRBとの為替スワップ契約期間を12月31日まで延長
2021年06月21日
韓国銀行(中央銀行)は6月17日、米国連邦準備制度理事会(FRB)との600億ドル規模の2国間為替スワップ契約満了日を、現行の2021年9月30日から同年12月31日に延長したと発表した。
「Jetro」より
実は、2021年12月31日までアメリカのFRBと韓国銀行が結んでいたのは「2国間為替スワップ契約」であり、「通貨スワップ」ではない。
僕は経済に明るくないので、何故通貨スワップに韓国が拘っているのかはこちらを参照願いたい。

嘘をついてまで結んで欲しいのが通貨スワップということのようだが。
どっちつかずの安全保障
経済的にも問題はあるが、安全保障の方はもっと問題が大きい。
具体的に言うと、前大統領のムン君が在韓米軍撤退の方針で動いていたことと、従北姿勢を貫くあまり米韓軍事演習を軽視して殆どやってこなかったため、特に米軍との連携は深刻なレベルで低下したと言われている。
一方で、支那に尻尾を振るが余り「3NO」と呼ばれる約束をしてしまった。
中国との関係に苦慮する韓国 〜対中3NO原則の現在〜
昨年4月に板門店で行われた南北首脳会談から1年が経過した。先月27日に板門店の韓国側で行われた1周年記念行事は南側だけの単独開催となった。事前に北朝鮮へ記念行事計画を通知するも応答を得ることさえできなかったとされる[1]。また、5月10日には文在寅大統領が就任して2年の節目も迎えた。最近の世論調査[2]によれば、韓国国民の52%が南北政策を「うまくやっている」と回答したが、非核化への展望が見えない状況が続き、「仲裁者」としての文在寅政権の牽引力が国内外を問わず弱まってきている現実がある。
~~略~~
こうした最近の中韓の動きを見据え、2017年10月末に出された、いわゆる「3NO原則(以下、3NO)」がその後守られているのか気になるところである。3NOとはTHAAD配備(2017年)以来の中国の安全保障上の懸念を払拭し、冷え込んでいた両国関係を改善するために、韓国政府が中国政府に対して表明した立場のことである[9]。その具体的な内容は、外交部が「韓中関係改善関連両国間合意結果」として発表した前日の2017年10月30日、康京和外交部長官は国会での与党議員の質問に答える形で、(1)韓国内にTHAADを追加配備しない、(2)米国のミサイル防衛網(MD)に加わらない、(3)日米との軍事同盟を構築しないという立場を明らかにしたのである。これに対して、日米両国政府は表面的には反応を見せなかったが、それまで築いてきた日米韓三カ国連携に対して、韓国政府が冷や水を浴びせた形になったに違いない。
「笹川平和財団」より
これがまた決定的に米韓同盟にひびを入れる事になってしまう。そして日韓関係に関して決定的にひびを入れたのがこの事件。
火器管制レーダー照射事件である。これについては既に説明の必要はあるまい。
ともあれ、日米韓の間での防衛協力というのは、かつてないほどヤバい状況にあることは間違い無いだろう。アメリカは在韓大使に対する幾多の無礼も積み重なっていて、その事も腹に据えかねていると思う。
そして政治課題
韓国の政治課題は経済問題が重大な政治課題ではあるのだけれど、新政権発足にあたってはこんな問題も。
【社説】試験台に上った168席の巨大野党・民主党=韓国
2022.05.10 12:58
168席の共に民主党は今日から野党だ。
民主化以降最も多い議席を持つ、言葉どおりに「巨大野党」だ。反面、国民の力は民主化以降最小与党(109席)だ。大統領権力と国会権力が異なることを「分占政府」というが、韓国政治がこのような格差を経験したことはない。1988年第13代国会が似たような場合だが、当時の与党は125席で野党には3つの政党が共存した。
このような構図は野党にも課題を投げかける。民主党が決意すれば事実上国政を立ち止らせる力を持っているためだ。腕力で「検察捜査権完全剥奪」法案を強行処理したように、腕力で法案や予算案、同意案の案件処理を防ぐことも可能だからだ。
「中央日報」より
実は既に「共に民主党」は遅滞戦術を仕掛けていて、ユンユンの政治組織発足は足踏み状態にある。
韓国次期大統領側 政府組織再編を政権発足後に先送り
2022.04.07 15:26
韓国の尹錫悦次期大統領側は7日、現在の政府組織体制に基づいて新内閣の人選を行い、組織再編は新政権の発足後に先送りすると発表した。尹氏が「廃止」を公言している女性政策を担当する女性家族部の長官候補も発表する方針だ。先送りの背景には、少数与党を余儀なくされる尹政権で初期の国政の空白を最小限にするとともに、6月1日投開票の統一地方選への影響を抑える狙いがあるとみられる。
「聯合ニュース」より
通常は発足1ヶ月前くらいには準備を終えて、政権の発足直後から政治を行うのが通例だが、残念な事に少数派与党のトップであるユンユンにとってはなかなか厳しい政局運営を迫られている。
すでに前兆を見せている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が昨日、15部署の次官級20人を内定したのが一例だ。尹大統領側では「政府の運営にいかなる空白も発生させないようにしたいという意志をこめて今回の内定内容を発表した」と明らかにした。本来なら次官級人選は組閣がある程度終わった後に行われる。たいてい政府発足後10日前後だ。今度は発足前に発表した。国務委員の人事聴聞手続きが法的期限を越しても終わっていないからだ。一部要人に問題があるとはいえ、民主党の非協力のせいだ。検察捜査権完全剥奪法案を強行処理しようと人事聴聞会の日程を相次ぎ先送りした。
「聯合ニュース」より
ムン君が残した負の遺産を何とか解消していかねばならないのだが、人事さえままならないのが現状である。政治的混乱は必至だろう。
舵取りに苦慮する尹錫悦氏
支那からのお誘い
そして、早速支那からの横槍が入っている。
習近平氏、韓国の尹錫悦大統領を「招待」 日米韓の連携強化を警戒か
2022年5月10日 22時38分
韓国の尹錫悦大統領の就任式に出席するために訪韓した中国の王岐山国家副主席は10日、尹氏との個別会談に臨んだ。韓国政府の発表によると王氏は、尹氏の訪中を「歓迎し、招待する」という習近平国家主席の意向を伝えた。首脳会談の提案によって、日米との関係を重視する尹政権の姿勢に一定の歯止めをかける狙いがあるとみられる。
「朝日新聞」より
習近平氏からのお誘いに対してユンユンがどう応えるのか?これが真っ先に突き付けられた試練である。そして、3NO原則があるお陰で、ユンユンは支那に態度をハッキリさせることも難しいのである。
無視するのも都合が悪いし、ホイホイとお誘いに乗って出かければ、いよいよ日米との関係は険悪になるだろうと思われる。
外貨準備高が減少
そしてユンユンがどの程度経済に明るいかは知らないが、ひたひたと経済的なリミットが近づいている実情がある。
3月末の外貨準備高は4,578億ドル、前月比で減少
2022年04月08日
韓国銀行(中央銀行)は4月5日、3月末時点での外貨準備高が4,578億1,000万ドルだったと発表した。前月末に比べ39億6,000万ドル減少した(添付資料表参照)。同行は、主な外貨準備高の減少の理由として、米国ドル高による米ドル以外の外貨のドル換算額の減少などを挙げた。
「JETRO」より
多くの人が知っているが、韓国の外貨準備高の枯渇は、再びIMFのお世話になる事を意味する。韓国銀行の発表では外貨準備高は4578億1000万ドルとなっているが、去年の11月からの累積で95億3,470万ドルが減少していることが確認されている。
そして、発表される外貨準備高の半分はジャンク債の可能性が高いと言うから、発表される数字を鵜呑みにできない。実際に2008年~2009年の通貨危機では「ある」と韓国が発表していた外貨準備高は存在せず、IMFに縋るしか無かった。今回も実際どれだけ残っているのかは疑問だ。
実際に、韓国紙が指摘するように「通貨スワップを!」という話になってしまうのだから、韓国政府としてもそう願っているのだろう、
ただ、願うのは勝手だが、それに応じるかどうかはまた別の安易な決定をしないように安易な決定をしないように注視していかねばならない。
追記
何やら演説をした模様。
韓国のユン大統領が就任演説、対北政策で「大胆な計画」
2022.05.10 Tue posted at 17:20 JST
韓国で10日、3月の大統領選で勝利した尹錫悦氏が大統領に就任した。演説で、北朝鮮の非核化と引き換えに経済を改善させる「大胆な計画」を示す用意があると述べた。
尹氏は保守系政党「国民の力」の公認候補として大統領選を小差で制し、革新系の文在寅前大統領に代わって5年ぶりの保守政権を発足させた。
演説では、韓国がパンデミックや気候変動、一連の経済、社会問題など「多くの危機」に直面していると指摘したうえで、「今回も乗り越えられることを確信している」と強調した。
「CNN」より
韓国が多くの危機に直面しているという事実は理解しているようだが、具体的にどうしたいのか?という内容には踏み込んでいない印象だ。
対北政策で「大胆な計画」というのは、一体何なんだろうね。
保守派の印象は強いユンユンだが、内容からどうやら左派寄りの政策を採りたいようだということが伺える。しかし、そうなってくるとムン君と何が違うのかよく分からないな。ただ、この日和見主義的な感じだが日韓の関係悪化(注:マスコミは関係改善と表現するが)の可能性を感じさせる。
コメント
こんにちは。
>「2国間為替スワップ契約」であり、「通貨スワップ」ではない。
ここ、間違えやすいし、正しく説明している情報源は意外に少ない(メディア自体、ミスリードを故意に誘発しているきらいがある)し、当方自身もごく最近までごっちゃにしてました。
為替スワップ:限度額までの、金利や担保無しの両替(いずれ両替し直して元に戻す)
通貨スワップ:金利あり、担保必要のドルの貸し出し(当然、利子も耳を揃えて返す必要あり)
ですね。
>対北政策で「大胆な計画」というのは、一体何なんだろうね。
また、新しいチャーハンスレが立つんですかね?
>内容からどうやら左派寄りの政策を採りたいようだということが伺える。
思うのですが、保守≒右派、ではなく、この国の場合、保守も革新も全て左側に存在するのではないでしょうか?
そして、左右関係なくまったく無自覚に軸足が反日という。
なかなか類を見ない、面白い政治形態であると思います。
#隣国としては、全然面白くない。
ご指摘の通り、保守も革新も左寄りなのが韓国の姿なのだと思います。
そして、左派も右派も反日です。
いやー、厄介ですね。
為替スワップと通貨スワップをごっちゃにしているのは、韓国のメディア戦略でもあります。
過去の成功体験から「通貨スワップでなければならない」ということなんでしょうな。