ちょっと前に報道されたこのニュース、日本政府の中でもかなり慌てているらしい。
中国とソロモン諸島の安全保障協定 日米など4か国 懸念共有
2022年4月20日 12時02分
中国が南太平洋のソロモン諸島と安全保障協定を結んだと発表したことをめぐり、日米両国とオーストラリア、ニュージーランドの政府高官が、ハワイで会談し、インド太平洋地域の自由で開かれた秩序にとって深刻なリスクになるという懸念を共有しました。
「NHKニュース」より
位置的にちょっとマズイというのは分かるんだけど、放置していたから仕方が無いね。
拠点構築
ソロモン諸島
ソロモン諸島の位置はこちら。

オーストラリアにしても、パプアニューギニアにしてもニュージーランドにしても、この位置を支那にとられてしまうのは都合が悪い。
中国外務省は19日の記者会見で、南太平洋のソロモン諸島と安全保障に関する協定を結んだと発表し、社会秩序の維持のほか、人道支援や自然災害への対応などで協力していくとしています。
「NHKニュース」より
支那は金を使ってのこの地域の制圧が実現できれば、割と低コストで実現可能なプランである。
政府 中国と安保協定のソロモン諸島に“懸念”伝える
2022年4月26日 16時37分
中国と南太平洋のソロモン諸島が安全保障協定を結んだことを受けて、政府は上杉外務政務官をソロモン諸島に派遣し、ソガバレ首相に対し太平洋地域の安全保障への影響を念頭に日本として懸念を持って注視していることを伝えました。
「NHKニュース」より
日本政府やアメリカ政府もソロモン諸島に打診をしている様だが、懸念を伝えたところで意味があるかどうかは怪しい。
中国とソロモン諸島との安全保障協定をめぐっては、アメリカの政府高官らも先週、現地を訪れて直接懸念を伝え、中国軍の恒久的な駐留などに向けた措置がとられた場合、しかるべき対応をとると警告したほか、オーストラリアなど周辺国からも懸念の声が相次いでいます。
「NHKニュース」より
指を咥えて見ているしかないという状況だね。
そうおうのたいおう
さて、アメリカが「然るべき対応」と言及したのが、一体どんな意味なのかは不明だが、これについては産経新聞も取り上げている。
米高官ソロモン諸島訪問 中国の軍事拠点化なら「相応の対応」
2022/4/23 09:00
米ホワイトハウスは22日、国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官ら米使節団がソロモン諸島を訪問し、ソガバレ首相と会談したと発表した。米側は公衆衛生などで支援する意向を示した上で、同諸島が中国と締結した安全保障協力協定について地域の安全保障上の懸念を伝え、中国の軍事拠点化に発展すれば相応の措置を講じると警告した。
~~略~~
ソガバレ氏は、協定は国内の治安維持に適用されるもので軍事基地建設や長期的駐留の可能性を否定したという。両者は、対話を促進し、互いの懸念事項に対処するため高官クラスの戦略対話を立ち上げることで合意した。米国が中国に対抗し同諸島に関与する姿勢を明確にしたことで、習政権の出方が注目される。
「産経新聞」より
アメリカから警告された「相応の対応」というのが何を意味するのかはよく分からないが、支援打ち切りとか、経済制裁とかそんな感じなのだろうか。
一応、ソロモン諸島側は「協定は国内の治安維持に適用されるもので軍事基地建設や長期的駐留の可能性を否定」としているが、支那はそんな都合の良い相手ではない。
オーストラリアの焦り
これに先立って、オーストラリアがソロモン諸島に「考え直せ」と迫っている。
豪州がソロモン諸島に再考促す、中国との安保協定-米国も働き掛け
2022年4月13日 20:30 JST
オーストラリア政府は中国と安全保障協定に合意したソロモン諸島に閣僚を派遣し、協定に調印しないよう正式に求めた。
「Bloomberg」より
結局、ソロモン諸島側はこのオーストラリアからの要請を受け入れることはなく、これはチャイナマネーに相当侵食されているのだろうと言うことが予想される。
ソロモン諸島、中国治安維持部隊は指揮下に 新協定で派遣可能
2022年5月2日3:46 午後
南太平洋のソロモン諸島のシシロ駐豪高等弁務官は2日、新たな安全保障協定の下で同国に中国の治安維持部隊が駐留しても、香港で使ったような手法を用いることはないとの認識を示した。
ABCラジオのインタビューで、11月に首都ホニアラで起きた反政府暴動を地元警察が抑えきれなかったため「能力を強化している」と述べた。
新協定により中国の治安維持部隊が派遣される可能性があるが、ソロモン諸島警察の指揮下で活動するとし、同国に駐留する豪警察と同様に扱われると説明した。
香港など他の地域で行われていることがソロモン諸島で起きないよう中国の治安維持部隊に対処すると話した。
「ロイター」より
なんと、ソロモン諸島は支那の治安維持部隊を受け入れ、国内の混乱を押さえようという目論見があるようなのだが……、これって、支那の治安維持部隊はソロモン諸島の法律を守るんすかねぇ?
そして、このブログでもふれているこの件の続きであるとすると、支那のマッチポンプという可能性も考慮する必要がある。
どう考えてもヤバい雰囲気しか。
過去にも似たような事が
ちなみに、ソロモン諸島に対して支那が粉をかける事案は今に始まったことでは無い。
島まるごと租借を画策 中国が目をつけたソロモン諸島の「軍事的価値」
2019.10.29
今回明らかになった租借契約は、ソロモン諸島中央州政府と「中国森田企業集団有限公司」が締結したものだ。ツラギ島全域とその周辺地域を同社が独占的に開発できるというもので、独占開発期間は75年間(更新可)という内容である。
1985年に政府系複合企業体として設立された「中国森田企業集団公司」は、現在も中国共産党政府との結びつきが強いとされる。とりわけグループ企業の一つの「中国京安公司」は、中国公安部(中国人民警察:民警、人民武装警察部隊:武警、中国海警局:海警を実施部隊とするほか、全国の公安警察機関を統括する)と密接な関係にあると考えられている。
「Globe+」より
今回の事態は、この2019年の記事を読むとより分かり易い。
他方の連合軍(アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド)側は、日本軍がツラギやガダルカナル島に軍事拠点を確保してしまうと、南太平洋での日本側の軍事的優勢が確保され、アメリカとオーストラリアの補給線が危殆に瀕すると考えた。そしてアメリカ海兵隊を主力とする上陸侵攻部隊でツラギとガダルカナル島から日本軍を駆逐して占領するウォッチタワー作戦を実施することにした。
「Globe+」より
かつては、日本軍がこの地を押さえようと死闘を繰り広げていたが、この地点を押さえることで、アメリカとオーストラリアの補給線が断たれる事態は、今も変わらないのである。
そして、こんな状況なのに日本は指を咥えて見ているしかない状況なのだ。外交力も軍事力も無い日本は、アメリカやオーストラリアなどに「何とかしてくれ」と外国頼みするしかないという情けない状況なのだが、ソロモン諸島が支那に押さえられると、自由で開かれたインド太平洋というのが絵に描いた餅になりかねない。
日本の外交ツールはここまで乏しいのかと、情けなくなるな。こういった限界を考えると、やはり、法制度の見直しも真剣に考えねばならないだろう。
コメント
先の大戦を直接に知る世代はもちろん、その薫陶を受けた世代も軒並みリタイアして2~3世代目が現役ですからね。
日本が情けないというのは納得しますが、米国や豪州も出し抜かれていることを考えれば、いまだ(悪い意味での)拡大戦略を緩めない支那やロシアを褒めるべきかもしれないですね。
当事者の国々としても、鉱物資源は乏しく海洋資源は如何にかしたくても金がない。
なら、多少筋が悪くても、自力でできない投資もしてくれるしさほど困りはしないだろうということでしょし。
これに慌てて日米豪が支援を増やしてくれるならさらにおいしい、と、そろばん弾いていそうですね。
アメリカ、オーストラリアも傍観していたというわけでは無いのでしょうが、優先順が高かったわけでも無いのでしょうね。
日本は優先順位が高くない上に距離もありますから、或いは仕方のない面もあったかと。
結局のところ、これって支那の戦略勝ちといえる話なのでしょう。
ただ、影響力は甚大ですから、厄介ではありますよね。