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フィンランドとスウェーデン、NATOに加盟へ

北欧ニュース
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ちょっと古いニュースではあるが、触れておこう。

フィンランドのNATO加盟、可能性「非常に高い」 閣僚

2022.04.16 Sat posted at 12:50 JST

フィンランドのトゥプライネン欧州問題・企業統治担当相は15日、英スカイニュースとのインタビューで、ロシアのウクライナ侵攻を受けフィンランドは北大西洋条約機構(NATO)に加盟する可能性が非常に高いとの認識を示した。

CNNより

フィンランドといえばシモ・ヘイヘである。え?違う?

NATO加盟国は増加

ロシアと国境を接する国・フィンランド

フィンランド共和国、北ヨーロッパに位置する共和制国家で、帝政ロシアの恐怖に怯える時代もあったようだ。

国家として独立したのは1917年なのだが、それまではスウェーデン王国に属していたようだ。独立の切っ掛けはロシア帝国の崩壊で、独立後にはフィンランドはソ連との戦いを長きに渡って続けている。

  • 1918年 フィンランド内戦:右派白衛軍と左派赤衛軍による内戦。白衛軍はドイツ帝国の支援を、赤衛軍はソ連の支援を受けていた。赤衛軍は社会主義国家の樹立を画策していたが、白衛軍の勝利で幕を閉じた。
  • 1939年~1940年 冬戦争:ソ連がフィンランドに侵攻した戦争。独ソ不可侵条約の秘密協議定書によって、ソ連はバルト三国とフィンランドへの圧力を強め、バルト三国には軍事基地設置などを呑ませたが、フィンランドはこれを蹴り、ソ連侵攻に至る。フィンランドは国土の一部を譲り渡す条件で講和条約を結び、停戦に至った。
  • 1941年~1944年 継続戦争:冬戦争で傷ついたフィンランドは、ドイツからの兵器供給を受けて、貿易上もドイツに依存する事になった。独ソ戦争が再開したことで、フィンランドからドイツ軍がソ連を攻撃するに至り、冬戦争の停戦条件は破られてフィンランドとソ連との間の戦争が再開する。ドイツが劣勢になった段階で、フィンランドはソ連との講和条約を結び、賠償金3億ドル相当の支払いや国土の割譲などを行う。
  • 1944年~1945年 ラップランド戦争:フィンランドはソ連と講和を結んだことで、ドイツとの戦争となる。フィンランド領内からのドイツ軍の追放を行った。

ヨーロッパでの第二次世界大戦の戦闘地域になったうちの1つがフィンランドで、冬戦争で活躍した英雄がシモ・ヘイヘである。スナイパーとして史上最多の確認戦果542名射殺の記録を残している白い死神との異名で恐れられた人物だ。戦争で負傷したため、継続戦争には参戦できなかったそうだが。

ともあれ、継続戦争の後はソ連と手打ちをして終戦を迎えたため、NATOには加わらず、一方で資本主義体制を維持したままでワルシャワ条約機構への加盟もしなかった。中立という道を選んだのである。

しかし、フィンランド国内ではソ連批判はタブーとなり、国連を中心とする世界秩序の構築を国是とする国となった。ただ、冷戦終結後は西側諸国に近づいてEUに加盟するに至る。そして、クリミア侵攻(2014年)などを契機にロシア脅威論が高まり、NATOへの加盟を検討するようになる。

今回のNATO加盟の決断は、まさにその流れというわけだ。

ロシアと手を結び、中立の国として生きようとしたウクライナの惨状を見れば、同じ選択肢を採ることの危険性は身に染みて感じたのだろう。

バルト海に臨む国・スウェーデン

スウェーデン王国、北ヨーロッパに位置する立憲君主制国家であり、スカンジナビア半島に長く横たわる国である。フィンランドと国境を接し、バルト海を挟む形でバルト三国やポーランドとも接している。

ヴァイキングを始祖に持つ国で、9世紀頃にはエリク6世によって統一国家が形成される。それ以前にも古代の王がいるので、スウェーデン王国の歴史は長いのだが、スウェーデン王国としては1523年より続く国家ということになっている。

第一次世界大戦以降、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの北欧3国は中立宣言を行い、以降、中立を宣言することでドイツの侵攻を避けてきた。第二次世界大戦後は国連に加盟して、フィンランドなどの北欧諸国と組んで中立的克つ、人道的な姿勢をとることで、存在感を示した。

が、中立を貫くことで冬戦争や継続戦争ではフィンランドを助けなかったため、フィンランドを失望させる。このことがあって、戦後はフィンランドに配慮してソ連を刺激しない政策を採るようになる。結果、NATOに加盟せず、武装中立政策を推進した。尤も、それは表向きの話で、ソ連とNATOが開戦すればスウェーデンも西側にとってソ連と戦うという密約をNATOと結んでいることが明らかとなっているが。

とはいえ、平和が永く続いたスウェーデンは、徴兵制を止め国防費がGDP比1.2%と低い状態にあった。これを一変させたのがロシア軍のウクライナ侵攻である。

スウェーデン、国防支出を対GDP比2%に増額へ-安全保障環境悪化

2022年3月10日 17:47 JST

スウェーデンのアンデション首相は10日、国防支出を国内総生産(GDP)の2%相当に引き上げる方針を示した。  

同首相はストックホルムでの記者会見で、現在の計画では国防支出は2014-25年に85%増えるが、ウクライナでの戦争や全般的に悪化している安全保障環境を踏まえ、政府は防衛力をさらに強化する必要があるとみていると説明。

「国防への財源割り当てをGDPの2%相当とすべきであり、現実的に可能な限り早急にその水準に達する必要がある」と指摘し、「わが国にとって大きく極めて重要な一歩だ」と述べた。

Bloombergより

バルト海に臨むスウェーデンにとって、バルト海がロシア海軍の重要な航路であることは、常に危機意識を持っていた。

だからこそ、情勢の変化にいち早く対応出来たとも言える。

NATOへの加盟条件

さて、NATOへの加盟と言えばウクライナだって実は申請していたのである。しかし、ウクライナはNATOに加盟することなく侵略を受けてしまった。

ウクライナ大統領がNATO加盟は「できない」と見解、市民は食料不足 ウクライナ侵攻20日目

2022年3月16日

ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日、軍当局者とビデオ会議を行った。その中で、「ウクライナはNATOのメンバーではない。我々はそのことを理解している」などと話し、同国がNATOには加盟できないことを受け入れるべきだと示唆するような場面があった。

ゼレンスキー氏は「(NATOへの)門戸は開かれていると何年も聞いてきたが、加盟できないとも聞いている。これが事実であり、認識しなければならない」とした。

BBCより

歴史にIFはないのだが、ウクライナがもしNATOに加盟していれば、ロシア軍の侵攻はなかっただろうと言われている。その理由は、集団自衛権の存在である。NATO加盟国が他国からの侵略を受けた場合、その他の加盟国は自動参戦し、集団自衛権を発揮する。これがNATOの結束なのである。

ウクライナのNATO早期加盟、阻止は妥当だった メルケル前独首相

2022年04月06日09時18分

ドイツのアンゲラ・メルケル前首相は4日、2008年の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でウクライナの早期加盟を阻止した自身の判断について、妥当だったと擁護した。

NATOは2008年、ルーマニアの首都ブカレストで開いた首脳会議で、ウクライナなどの早期加盟問題について協議したが、独仏両国を中心に反対論が優勢となり、合意できなかった。

時事通信より|リンク切れ

しかしそれ故に、ウクライナをNATOに加盟させればロシアを刺激することは理解しており、ドイツやフランスを中心にウクライナのNATO加盟を阻止する動きがあった。

ドイツのメルケル氏は、東側のエージェントだったのではないかと言われるほど親露派だったので、自国を弱体化させるのを良しとした。

昨年退任したメルケル氏は、かつて自由主義陣営のリーダーと称賛されていた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受け、対ロシア融和政策によってドイツと欧州を脆弱(ぜいじゃく)化させたとの批判も出ている。

特に、ドイツがエネルギーをロシアに大きく依存していることが問題となっている。天然ガスの輸入全体に占めるロシア産の割合は2014年には36%だったが、今年2月のウクライナ侵攻時には55%に上っていた。

時事通信より|リンク切れ

軍備に金をかけず、エネルギーをロシアに依存する政策を推進したのである。逆に言えば、一歩間違えればドイツもウクライナのような状況を招いていた可能性はある。

まあ、ドイツやフランスの判断はともかくとして、ウクライナがNATOへの加盟が出来なかった理由は、①民主化が進んでいなかったこと、②紛争を抱えていたこと、だとされている。危ないからNATOに加盟したいウクライナと、加盟させると危なくなると叫んだドイツとフランス。何れもロシアの存在が影響しているからこそ、という話になる。

そもそもNATOの設立目的が、「アメリカを引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む」というものだった。ヨーロッパ諸国にとってロシアの脅威とドイツの暴走は2度の大戦を経験した上での悩みの種だったとも言える。

北欧2カ国がNATO加盟準備 ロシア反発「軍事強化の連鎖」懸念も

2022/4/18 20:13(最終更新 4/18 20:42)

北欧のフィンランドとスウェーデンが、北大西洋条約機構(NATO)への加盟準備を進めている。ロシアによるウクライナ侵攻に危機感を募らせ、従来の中立路線を転換した格好だが、ロシアは反発をあらわにしており、更に欧州を不安定化させる危険をはらむ。

毎日新聞より

それ故に、フィンランドとスウェーデンはロシアに危機感を覚え、中立の姿勢を貫いても侵攻されるリスクは高いと判断してNATOへの加盟を迫ることになった。一応、加盟条件を満たしていると言われているからね。

ただ、逆に言えば、NATOに加盟する前にロシアがこの二カ国に侵攻を始めてしまうと、加盟条件を満たさなくなってしまう。

夏までは極めて危険な状態になっているとも言えるのだが、ここで恫喝に屈しても何処かのタイミングでロシアの魔の手が伸びるリスクを抱えたままである事は否定できない。

ロシアにとってNATOの存在は社会主義の否定である。つまり、自らの存在を否定する国家の増加を許すことになれば、国家体制を揺るがしかねないリスクとなる。また、地政学的にも大西洋への出口が塞がれるような格好になることを意味するので、好ましくないと思っているだろう。

これは、そもそも社会主義国家の存在がもはや時代遅れとなっていることを意味するのだが、それをロシアとしては認めるわけにはいかない。場合によってはロシアは更なる凶行も辞さないだろう。

ヨーロッパの地図が書き換わる。歴史的な瞬間に立ち会っているのだろう。

コメント

  1. アバター BOOK より:

    木霊さま 皆さま こんばんは

    シモ・ヘイヘと言えば後の連邦宇宙軍エース・パイロット又の名をアナベル・レイ-違う?エドワード・ニューゲート?もっと違う?記憶が。。。。。。。。と言うわけで少し主題からズレる。テロは許されない! という主張をお許しください。

    >ロシアにとってNATOの存在は社会主義の否定である。つまり、自らの存在を否定する…

    ソビエト連邦共産党は1991年にエリツィンが解散(禁止)、現ロシア連邦・共和国はタテマエ上は自由民主主義の国、ホンネはムガベ体制の旧ジンバブエに近い独裁国家だけど。

    ただ民主化したロシアの人々はそれまで圧制帝政と共産経済しか知らず「ルールある弱肉強食資本主義経済」の戦い方を全く知らず、我々から見れば自業自得だけど、経済翻弄されてハイパーインフレまで経験する等ボロボロ。

     それを立て直したのがプーチン。彼は経済ボロボロで軍事に手が回らないロシアの平和維持のため、かつて「ロシアのNATO加盟」をも米国に打診した。。。

    。。。がクリントンに足蹴にされた(裏付け資料が少し怪しい、、歴史にもしもは無いと言うけどクリントンのバカヤロー! 20年前にロシアがNATOに加盟していたら、今はどれだけ平和な世界だったのだろう?)

     と、プーチンがNATOや西側を恨む「理由」には今の親ロ派のように同情の余地はなくも無いが、

    「だからと言って、他国を侵略して良い理由にはなんねーんだよ!」「一線越えやがった!」「目的は手段を正当化しねーんだよ!」「ロシアのようなテロ国家は許せねー!」

    と言うわけで長いけど木霊さんの結論に戻り、今のロシアは「ナラズモノ」「ISと同じ」「テロ国家」な訳どす。

      次なる問題はフィンランドとスウェーデン。今回スウェーデンはハンガリーとトルコの承認が得られずNATO加盟できなかった訳で、ニュース等ではなるべく早くスウェーデンも、と解説されてるが、、、無理でしょ。

     トルコの主張を簡潔に言えば「中立国と言うなら政治テロリストの許容はある程度仕方ない」が「軍事同盟国になるならテロリストを何とかしろ」という当然の主張どす。

    フィンランドは何とかした。 他のNATO諸国はトルコに嫌われ役を押し付けてるが、もしトルコがNATO加盟国じゃなければ米国がスウェーデンに迫ってもおかしくない。

     だけどスウェーデンは「何とか出来ない」。何故か?

     世界一移民に甘い&外国人参政権あり&法治民主主義国で、政治テロリストのシンパ達が既に議席を擁しているから。あと数年もすれば中東・アフリカ系移民が多数派になる。(多くの欧州諸国も人口構成に関しては同じだけど)

     「テロリスト容認国」こんな国を軍事同盟に入れられるか! 個人的にはトルコ、グッジョブです。

    しかしもっと怖いのは、、スウェーデンの体たらくは明日の日本の姿、、、

    はい判りますよね? 安倍さんを暗殺したテロリストは、その主張をマスゴミ・野党・与党にまで受け入れられ法整備までされました。

    すなわち日本の政治を変えたければテロだ! てことで岸田首相の暗殺未遂事件まで起きました。

    はい、こんな 「テロリスト容認国」はNATOに加盟できるでしょうか? 出来るわけないですよね?我らが日本のことですよ!情けない!

     トルコやUAEは、スウェーデンどころじゃない移民や不法入国者がいる国ですが醜態は晒していない。日本はスパイ防止法もなく、法治厳しく、マスゴミ・野党はほぼ外国支配下。自民もかなりヤバイ。
     個人として出来ることは選挙で自民に入れるだけでなく自民党員になって首相選挙でしかるべき人に入れるぐらいしか今はないのかなあ?

    • アバター BOOK より:

      あ、忘れてた。冒頭キーワードは「白い悪魔」どすm(..)m

    • 木霊 木霊 より:

      「白い悪魔」と言えばアナベル・ガトー!あ、いやソレは置いといて。

      悪魔のようなウラジーミル・プーチンの手腕を考えると、ウクライナ侵攻は「下手をうった」という側面は確かにあるのですが、ロシア陣営の切り崩しを許せば、遅かれ早かれロシアの終焉はそこに見えていたわけですから、手を打たざるを得なかったという事情はあったのかも知れません。
      ロシアが西側に付いた可能性については、あったのかもしれませんが、今やロシアは支那の子分に成り下がってしまった。
      そうすると、アメリカ対支那という構図で世界地図を見なければならない時代になったと、ロシアが第三極になっている時代はもはや終わったという状況かも知れません。

      そして、スウェーデンの帰趨ですが、ご指摘のようにテロリストを切ることが出来なければNATO加盟は難しい。
      一方で、トルコはどうかというと、独自路線をひた走る姿はある意味潔さを感じますが……、スウェーデンのNATO入りを拒むまでの利益があるかどうか。何らかのバーターを引き出す積もりかも知れませんね。

      ご指摘の日本の為体は、本当に困ったもので、詳細は別の記事に譲りますが、早いとこ態勢を立て直さないとスウェーデンを笑えない状況に。
      https://annex2.site/20230417-1/
      選挙だけで物申すだけでは、何も変わらないかも知れません。せめて、政府にメールでもしておこうかな?

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