韓国電力の巨大赤字と電気料金引き上げ問題と、日本の電力政策に対する警鐘

政策

韓国電力が電気料金引き上げの要求をしている一方で、日本の電気料金は日々値上がりしている。これを材料にどちらの政策が望ましいのか、を考えてみたい。

電気料金引き上げ圧迫に…韓国次期政権「原発利用率米国水準に引き上げ検討」

2022.03.22 09:41

積もる韓国電力の赤字に電気料金引き上げの圧迫が大きくなっていることから、政権引き継ぎ委員会が原子力発電の割合拡大を検討する。新規原発確保には時間が長くかかるだけに既存の原発利用率を高める案を主要代案として議論する予定だ。

「中央日報」より

先日こんなニュースが流れているが、多くの日本人にはピンと来ない内容かもしれない。僕は、韓国の電力施策にも触れる機会があったので、「あー、あれが原因か」と思ったワケだが。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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関電の赤字は文在寅政権の責任

韓国電力は何故、電気料金を引き上げられないのか

まずは、韓国電力が巨大な赤字を抱えている理由について簡単に言及したい。

ザックリ説明すると、電気料金に発電コストを転化出来ないので、電気を作れば作るほど赤字になる体質を抱えているのが韓国電力なのである。

どれ程の赤字になっているかというと、2021年平均単価で「仕入れ単価:192.75ウォン」「販売単価:108.1ウォン」なので、収支は84.65ウォンの赤字となる。売れば売るほど赤字になり、2021年12月期の連結営業損益は5兆8601億ウォン(約5600億円)と過去最高の赤字を記録している。このため、2022年第1四半期だけで10兆4300ウォンの社債発行という状況である。

このペースで社債を発行すると、今年だけで40兆ウォン以上の社債を発行する羽目になるだろう。4兆円規模の社債発行か。胸が熱くなるな。

しかし、韓国電力とてずっと赤字を垂れ流し続けているワケでは無い。

韓国電力公社、赤字転落 18年通期

2019年2月22日 17:22

韓国電力公社が22日発表した2018年12月期連結決算は、営業損益が2080億ウォン(約200億円)の赤字となった。前の期は4兆9532億ウォンの黒字だった。定期点検などによる原子力発電所の稼働率低下とともに、文在寅政権の「脱原発」政策が赤字転落の要因になったもようだ。

「日本経済新聞」より

赤字に転落した原因はムン君の政策で、2019年よりずっと赤字を続けている状況だ。それも、上述したように巨額の赤字に膨らんでいる。

料金引き上げ幅固定策

これがどんな政策かというと……。

韓国電力が過去最大赤字 21年、燃料高と価格抑制策で

2022年2月28日 17:43

韓国電力の2021年12月期の連結営業損益は5兆8601億ウォン(約5600億円)と過去最大の赤字となった。前の期は4兆863億ウォンの黒字だった。資源価格の高騰によって燃料費が前年比31%増となったものの、政府の電力料金抑制策で販売価格を引き上げられずに赤字額が膨らんだ。

「日本経済新聞」より

韓国電力が電気料金を決定する場合には、韓国政府にお伺いを立てねばならず、基本的に値上げNGとしているのが現状である。

韓電は、燃料費高騰を理由に、電気料金を自由に値上げできるわけではない。政府は2020年12月、燃料費に応じて定期的に電気料金を調整する「燃料費連動制」を導入し、燃料費調整単価の四半期別の最大変動幅をkWh当たり±3ウォンに制限した。許容される年間の変動幅は±5ウォンまでだ。

~~略~~

問題は、政府が燃料費連動制の原則に従い、電気料金を3ウォン引き上げる案さえ受け入れていないことだ。

「yahooニュース」より

こういった政策は、市民に対して恩恵を与えると共に、韓国国内の企業に対して金銭的な優遇を与え、これが輸出価格などにも反映される事になる。つまり、政策そのものの狙いは悪くはないのである。

ただし、韓国電力の赤字は避けられない。だって、仕入れ値は上がっても、売値はほぼ上げられないのだから。

で、その結果どうなったかというと、巨額の赤字を抱える状況に陥る。このグラフは2021年までしかないが、2022年はマイナス40兆ウォン以上になる可能性があるね!

脱原発が足を引っ張る

ただし、ムン君はこれと共に韓国内の脱原発を進め、再生可能エネルギー発電の推進を行っていて、そこが問題である。日本でも似たような光景は見られたね、原因は違うけどさ。

脱炭素と脱原発…韓国、二兎追う温暖化対策に国内懸念も

2021/4/26 18:27

温室効果ガス排出量で世界7位の韓国は、日本などと同様に2050年の排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、石炭火力からの依存脱却を目指す。ただ、文在寅(ムン・ジェイン)政権は同時に「脱原発」も進めており、国内ではエネルギーの安定供給などへの懸念も出ている。

文大統領は昨年7月、石炭火力から太陽光や洋上風力発電といった再生可能エネルギーへのシフトなどを柱にした「グリーンニューディール」政策を打ち出し、産業構造の転換で「雇用も創出する」と主張した。

「産経新聞」より

ムン君のこの政策は様々な弊害を生む結果になったが、特に電気料金に対するダメージは非常に大きく、中東での混乱やウクライナ危機の影響を受けて原油は高止まりの状況になり天然ガスも値が下がらず石炭は入手が困難な状況であるため、発電コストは上がり続けている。

中央日報の取材によると、政権引き継ぎ委員会は現在70%台である原発利用率を90%以上に引き上げることを検討する予定だ。原発利用率とは原発で年間に最大生産できる発電量に対する実際に生産した電力の割合だ。

「中央日報」より

そんな訳で、冒頭の記事にあるように原発利用率を更に高めようという話が出てきたわけだ。

ヨーロッパでも過激に進んだこの脱原発、脱炭素の方針だが、ウクライナ危機を切っ掛けにあっさり覆されている。

韓国でも覆そうという話が出てきてもおかしくは無いし、ムン君も「流石にダメだ」と分かっているらしく、原発を利用する事を示唆している。逆にいえばそこまで韓国電力が危ないのである。ほぼ国営企業なので潰れはしないのだろうけれど。

日本国内でも原発が稼働出来ない

電力価格は上がる

さて、韓国での発電コストが上がっている原因が燃料の値上がりである以上は、日本でも似たような状況を迎えるのは必然である。何しろ、日本はエネルギーの大部分を外国からの輸入に頼っているのだから。

相次ぐ値上げ 電気料金は14か月連続上昇 節電術は

04月04日 18時27分

4月に入って食料品などの値上げが相次いでいますが、同じく家計に大きな影響があるのが電気料金の引き上げです。

道内で最も契約している世帯が多い北海道電力の4月分の電気料金は、使用量が平均的な家庭で試算すると、先月より56円高い8322円となり、去年の同じ月と比べると1175円増えています。

「NHKニュース」より

北海道のNHKはふざけた記事を書いていて、電気料金が上がったから節電しろという。

奥谷さんは、電気代を抑えるうえで、家庭での電力の使用量が特に多い「冷蔵庫」、「照明」それに「テレビ」の節電が重要だといいます。

「NHKニュース」より

いや、節電の対象にに「テレビ」を選んでいるので、悪くはないのかな?いや、「明るさを下げろ」などとアホな事を書いているので、やっぱりダメだな。「テレビ」は消そう。

おっと、話が逸れた。確かに家計にとって支出を減らすことは意味があるが、電気料金値上げの問題は、刑期に直結する。

そして、消費の冷え込みを招くような節約をやると、まわりまわって自分に跳ね返ってくるので、寧ろ消費喚起を行っていくべきだろう。電力だけに関して言えば、発電量を確保する手法に言及すべきだ。そう、原発再稼働である。

その点では、韓国の「原発を利用する」という発想の方がまだ健全である。

足を引っ張る再生可能エネルギー発電促進割賦金

それと、最近は余り記事にならなくなったが、再エネ割賦金というものが年々値上がりを続けている。

再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移

2017/05/29

社会経済を支える重要インフラであるエネルギー需要は、世界規模で急速に増加しており、現状、約8割を海外からの輸入に頼っている日本では、エネルギー自給率の向上が大きな課題の一つとなっています。

そこで注目されているのが、日本の豊かな自然を生かして電気を生み出す「再生可能エネルギー」です。再生可能エネルギーの普及拡大を目指し、日本では2012年7月より「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」を開始しています。

FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。この買取に要する費用負担は、電気を利用する国民全員から、2014年8月より再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)という形で収集されています。

「新電力ネット」より

導入時点では年間1000円以下だったのに、今では年間1万2千円以上の徴収となっている。再生可能エネルギー発電促進って、一体何処まで促進するんですか?という話。

ちなみにこの負担はまだまだ増える。

どの程度まで上がるかは試算されたものしかないのだが、2033年頃までは上がり続ける予定で、現在の1.5倍から2.5倍程度までの幅で価格が上がるのでは?と言われている。

電力を使わない人は殆ど居ないので、税金を取られているのも一緒だ。

電気料金引き上げ抑制政策の意義

韓国では電気料金を上げない代わりに、韓国電力が社債発行を発行することで赤字を補填している。尤も、韓国電力を潰すわけにはいかないために、この社債は韓国政府が買う構図になっていて、結果的には韓国国民が負担する結果となる。

韓国はご存じの通り三つ子の赤字を抱えているので、今後、電気料金の値上げと引き替えにとんでもない結果を迎える可能性は否定できない。具体的には政府のデフォルトなのだが、それでも当面はその心配はしなくて良いだろう。現時点でも韓国経済はかなりヤバい状況にはあるが。

ただ一方で、製造業にとっては電気料金の値上げをしなければ製造コストを抑えられる。結果、韓国製品の国際競争力を高める事ができるので、電気料金が上がらないような政策をとることそのものは間違っているとは言えないだろう。

そして、原発の利用率を上げようという話も出てくるだけ健全である。

翻って日本はどうかというと、政府からも原発再稼働の話は殆ど出てこないし、電気料金はどんどん上がり続けている。どちらがマシな方策か?といえるかは周辺環境にもよるので一概には言えないが、短期的な日本経済に対する影響に対しては電気料金の値下げをやって税金を投入した方がマシである。何より、電気料金の値上げが製造業に大きな影響を及ぼす。

尤も、日本製品の輸出を考えた場合には、円相場などの影響も大きいため、電気料金だけの話をするのではなくてトータルで見て有効な政策が必要ではあるんだけど。

岸田君、検討ばっかりしていないでさっさと日本経済に対する刺激策、具体的にはトリガー条項の発動でも、税金引き下げでも、電気料金値下げでも良いから、さっさと実施して欲しい。

追記

この記事に追記するのが正しいのかはちょっと悩ましいが、韓国のインフレがいよいよヤバくなっていたニュースがあったので追記しておきたい。

韓国、インフレ上振れリスクが増大=中銀副総裁

2022年4月5日10:50 午前

韓国銀行(中央銀行)のイ・ファンソク副総裁は5日、インフレについて、中銀が2月に見通しを示して以降、上振れリスクが高まっており、インフレ期待を抑制する必要があるとの見解を示した。

「ロイター」より

2月の見通しは3%だったんだけどねぇ。

4月には更に上振れして4%を超えるのではないかという予測が出ている。

ハングルは読めないが、消費者物価指数:4.1%上昇というのが韓国政府の公式見解だというから、驚くべきか。

この状況で電気料金を上げると社会的リスクが増大しそうである。これ、次期政権はとんでもなく厄介な舵取りが必要になりそうだ。韓国の鳩山由紀夫などと揶揄されている尹錫悦氏だが、果たしてどんな手を打つのか。或いは打たないのか。

追記2

あー、ヤバいぞ。

20兆ウォン赤字の展望となる韓国電力、会社債も売れない

入力2022.04.07 11:03

赤字累積と電気料金引き上げ無算で資金減らした韓国電力(22,000ウォン▲00%)が約4年ぶりに30年満期の長期会社債(韓電債)発行に乗り出したが、目標値を満たしていないことが確認された。韓電債は市場で優良債権として認識されるうえ、金利も一般社債より高い。30年の長期投資リスクを勘案しても韓電債が興行に失敗したのは、それだけ韓電が市場信頼を失ったためとみられる。

~~略~~

韓電は当初30年物の韓電債2000億ウォン分を発行する計画だった。しかし、700億ウォン未満が発生し、最終1300億ウォンの発行にとどまった。

「ChosenBiz」より

赤字垂れ流しの韓国電力が、資金調達のために会社債を発行したが、金利3.3%とこれまでで最高の金利設定にしたにも関わらず、2000億ウォン分発行した社債のうち1300億ウォンしか売れず、700億ウォン分が売れ残ってしまったようだ。

これまたダメージが大きいね。政府に買い取らせるとか、手を打つしかないけれど、次は更に資金調達が困難になる。ダメなパターンだぞ。

コメント

  1. 木霊さん みなさん こんばんは

    これは韓国を笑えない。さっさと原発再稼働してほしいものです。

    更に
      JERA、383万3000キロワット相当の火力発電9基を廃止へhttps://www.jera.co.jp/information/20220331_872
      なハナシもあるし(勿論これは更新だけど、短期的にはヤバイ)

    節電
     TVは消すじゃなくて捨てるでしょ(笑、20年以上所有していない者より)、冗談置いといて、待機電力すなわち消しても消費する家電のうち、びっくりするのがガス給湯器ですね。  
       https://www.phileweb.com/review/column/202008/24/1111.html
    ブレーカー落とすしかなく日常では手も足も出ない。何とかならんのかな?

    • おー、ガス給湯器ですか。其れは意外でしたが、説明されれば納得ではあります。
      電気の給湯器も、結局夜間沸かして貯めておくとはいえ、昼間もそれなりに電力を使うのでしょうねぇ。
      家で手軽に発電ができるようになればいいんですが、なかなか。そのうち、一家に一台発電用ガスタービン!とかいう時代が来る?(錯乱)

      やっぱり、安定的な電力供給のためには再稼働しておかないとだめですよね。

  2. 韓国はさておき、今年の夏、わが国の電力は足りるんでしょうか。
    そのうち、電力ひっ迫時には、昼間のオフィスや公共施設での消灯の常態化、
    都市部での電車の運行削減などが起こるかもしれませんね。
    路傍の自動販売機が最近減っているように感じるのは気のせいでしょうか。
    (利用者が減って、撤去されているだけかもしれませんが)

    • 韓国はさておき日本の電力ですよね。
      今年の夏ですか……、火力発電所の復旧状態によるのでしょうけれど、完全に復旧してもギリギリらしいんですよね。
      停電輪番とかいうおかしな話にならなければいいのですが。