相変わらずドイツは過激だな。
独は「幻想から覚めた」 国防費世界3位、核共有堅持へ―メルケル氏元軍事顧問
2022年04月03日07時12分
ドイツのメルケル前首相の軍事顧問を務めたエリッヒ・ファート氏は2日までに、オンラインで時事通信のインタビューに応じた。ロシア軍のウクライナ侵攻で、ドイツが「過度な平和主義の幻想から覚めた」と指摘。国防費が計画通り増額されれば世界3位となり、米国の戦術核兵器を自国に配備する「核共有」政策も堅持し続けるとの認識を示した。
「時事通信」より
既に、メルケル政権が終焉を迎え、次の首相となったショルツ氏は大英断を下したことはこのブログでも言及している。
ドイツの決断
1000億ユーロ(13兆円)という数字ありき
各国の国防費というのは、時の政権やその時代の流れに合わせて必要な額というものが決定される。ドイツの国防費は、2021年度は714億2000万ユーロ、2020年度は456億ユーロ。GDP比で1.4%程であるとされている。

額だけで比較するとこんな感じなのだが、実は近年増えていた。尤も、GDP比では減っていたんだけどね。

ところが2022年は1000億ユーロに増額しようという話になっている。13兆円相当である。大幅増強と言って良いだろう。
ドイツ、連邦軍強化へ13兆円 ウクライナ情勢「世界は転換点に」
2022年2月28日 7時17分
ドイツのショルツ首相は27日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて急きょ開いた連邦議会で演説し、国防費を増額すると発表した。2022年の予算から緊急で1千億ユーロ(約13兆円)を連邦軍の装備強化などに充てる。さらに、国内総生産(GDP)比1・5%ほどにとどまる国防費を、今後は毎年2%以上に引き上げる。
「朝日新聞」より
数字から分かるように1000億ユーロというのは数字ありきの決定だと思う。
この辺りでもドイツの国防費の増強、具体的にはF-35A戦闘機の購入などを決定していて、停滞しているドイツ軍の兵器刷新は進む可能性はあるだろう。ドイツというと戦車のイメージがあるが、レオパルド2の近代化とかあるかも知れない。今、レオパルド2の最新版はA7Vかな。
ドイツはとにかく極端な政策を好む印象が強いので、印象的な政策を打ってくる可能性は高いだろう。
欧州は相次ぎ国防増強
ただ、この決定は何もドイツだけ特殊なのではない。
欧州、相次ぎ国防増強 ドイツ大転換、北欧なども続く
2022/3/14 18:31
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、欧州諸国が軍備増強に動いている。発端になったのはドイツ。左派主導のショルツ政権は国防費の大幅増額に加え、米国との核共有(ニュークリア・シェアリング)のため、最新鋭戦闘機F35を購入する方針を発表した。ロシアの脅威増大で国民の危機感が高まる中、戦後伝統の「平和主義」の転換に動いた。
「産経新聞」より
ヨーロッパの多くの国が国防費を増やす決定をしたのである。

特に危機感が強いのがウクライナの隣国ポーランドで、GDP比3%としている。これが多いか少ないかは分からないが、2019年はGDP比2.1%なので大幅増であるという事は間違いがない。

ドイツほどではないが、国防費のGDP比を抑える傾向にあったポーランド。「抑える傾向」といっても1.8%程度まで下げただけで、日本とは雲泥の差であるのも事実。が、事ここに至っては、形振り構っていられない状況なのだろう。ウクライナの隣国だけに。
ロシアの脅威
こういったヨーロッパ諸国の決定は、ロシアという共通の敵が顕在化したからで、ここで軍事費を増やさざるを得ないというのは皮肉なことではある。平和を享受している間に、ロシアは少なくない費用を軍事費に投入して力を付けてきた。

ただし、ロシアのGDPは決して大きくはないので、相対的に見て投入した軍事費が髙かかったというわけではないのだろう。
ロシアがこうした状況だったので、ヨーロッパ諸国も「俺たちもちょっと増やさないと拙いんじゃないの」という空気にはなっていたようだ。
なお、ロシアのこのグラフで興味深いのは、2014年辺りから軍事費を急激に上げていて、これがクリミア侵攻(2014年)とリンクしていると考えると、2017年から2021年までのトランプ政権時代に大きく下げていることは、対ロシア経済制裁が効いているのだろうなという感じがすることだ。
ロシアの成功体験がクリミア侵攻だっただけに、今回の戦争はプーチン氏の起死回生の策であったとも考えられるが、下手をうったのだろう。
問題は、ロシアの脅威はヨーロッパ諸国の共通認識であり、それを今回のロシアの行動によって思い起こさせてしまった事が、ドイツを始めとする国々の軍事費増強に繋がったのだと、その様に考えられる。
国論を引っ繰り返したドイツ
特にドイツ国内では過激な動きがあったようだ。
ショルツ氏の中道左派与党、社会民主党(SPD)では近年、軍拡や核兵器はタブー視されていた。第2与党で、反核運動をルーツとする緑の党も同様だ。だが、ショルツ氏の演説には連立与党のほか、野党の保守系議員も立ち上がって拍手を送った。
元SPD幹部は「ショルツ氏は5、6人の与党幹部だけに詳細を事前に伝えていた。紛争で世論が変わるのを見て、国防問題で一気に攻勢に出て、党内の反対を封じ込んだ」と話す。世論調査では、国防費増額への支持は7割にのぼる。
「時事通信”独は「幻想から覚めた」 国防費世界3位、核共有堅持へ―メルケル氏元軍事顧問”」より
ドイツ軍は弱体化して老朽化した兵器を維持するのもままならないという状況であったと聞くが、大幅に軍事費を増強して軍備の刷新を図るのではないか?という気はしている。
数字ありきで1000億ユーロとぶち上げた印象だが、それでやれるだけの軍備増強を行う積もりに違いない。ドイツはいつもやり過ぎる印象があるので、これが後の世界にどのような影響を与えるのかは分からないが……。
5月の旧ソ連「対独戦勝記念日」までに終結の観測…ロシア軍、それまで攻勢継続か
2022/03/29 08:06
ロシアとウクライナの対面での停戦協議が約3週間ぶりに再開する見通しとなった。プーチン露政権は東部の親露派武装集団の支配地域拡大を侵攻作戦の中心に据え、新たに制圧した地域では実効支配に向けた動きも強めている。協議では停戦にあたって露軍を撤収させる制圧・支配地域の扱いが焦点となりそうだ。
「讀賣新聞」より
ウクライナ情勢が今後どうなるかは分からないが、ロシアは勝敗の結果に関わらず西側各国から制裁を喰らう国になる事は確実である。そのためロシアは支那と近づき、或いは呑み込まれてしまう可能性もある。
支那がどのような選択をするかは知らないが、ロシアと支那とが手を組む可能性は少なくはない。
防衛費の増強を口にし始める日本
令和4年度国防費
そんなわけで、日本も当然「どうするか」を考えねばならないのだが。
防衛費、23年度大幅増に意欲 敵基地攻撃能力、保有を視野に
4/4(月) 18:31
岸信夫防衛相は4日、共同通信社の単独インタビューに応じた。2023年度の防衛費を巡り「防衛力の抜本的強化のため必要な予算を確保したい」と述べ、22年度予算からの大幅増に意欲を示した。
「yahooニュース」より
安倍元首相「中国との衝突避けるためにも防衛費増額を」
2022年4月3日 19時01分
日本の安全保障政策をめぐり、自民党の安倍元総理大臣は、中国の軍事力増強に懸念を示し衝突を避けるためにも防衛費を増額させるべきだという考えを強調しました。
自民党の安倍元総理大臣は山口市で講演し、中国が軍事力を増強していることに懸念を示したうえで「衝突の危険性がないようバランスを取っていくことが大切だ。ロシアとウクライナのように軍事バランスが大きく崩れると予期せぬ衝突が起こりやすい」と指摘しました。
「NHKニュース」より
安倍氏と岸氏という兄弟での「防衛費増額」の主張は今後大きな影響が予想される。尤も、こんなご時世で「去年と同じ規模で」というアホもいないと思うのだが、しかしそれを批判する党もいる。
公明 山口代表「防衛費だけ突出 妥当ではない」慎重な姿勢示す
2022年4月4日 18時41分
安全保障政策をめぐり自民党内で防衛費の増額の必要性を訴える声が出ていることについて、公明党の山口代表は歳入が限られる中、防衛費だけを突出させるのは妥当ではないとして慎重な姿勢を示しました。
「NHKニュース」より
公明党の主張は全く理解できないのだが、何を言っているのだろう?ヨーロッパ諸国だって、歳入が増えたから軍事費を増やしたというわけではないのだ。今そこにある危機に対応して財政の比率を変えたということに過ぎない。
日本に危機が迫っているか、いないのか?支那が軍事費を伸ばし続けている現状を考えれば、明らかに公明党の発想が狂っていることは国民にも伝わるだろう。野党は「数字だけ言われても」と言っているが、では、具体的な数字を自分達のところで積み上げて出せば良いのである。
ロシアは北方領土で軍事演習
なお、日本にとってもロシアは隣国である。
ロシア北方領土で“軍事演習”開始 根室から見える「照明弾らしき光」
2022/04/02 22:30
北方領土で新たな動きも 暗闇に浮かび上がる、光。上空の空一帯を明るくするほどの強い光です。 先月30日、北海道根室市から 北方領土の国後島方向を撮影したという映像です。
「テレ朝NEWS」より
ロシア海軍 戦車揚陸艦4隻が津軽海峡通過 防衛省
2022年3月17日 13時07分
防衛省は、ロシア海軍の戦車揚陸艦4隻が16日にかけて津軽海峡を通過したと発表しました。軍用の車両が積まれているのも確認され、防衛省はこれらの車両や艦艇に乗っている兵士がウクライナ侵攻に動員される可能性があるとしています。
「NHKニュース」より
そして、日本に対する敵意を隠そうともしていない。
支那の軍事費は毎年のように二桁の増加を続けているし、その実態は報じられる以上に注ぎ込まれているともされている。この状況で、「地球儀を俯瞰する外交」を掲げて各国との連携を深める努力を安倍氏がされていたのは事実だが、防衛費は殆ど増やす事ができなかった。その安倍氏が今「増やしてね」というのはちょっと違和感があるものの、足りないことは事実である。
脅威の独裁国家が隣国に3つもあるのだから、独自の防衛力を高めようという危機感は国民ともっと共有すべきで、「平和」がどんな努力の上に成り立つものであるかを今こそ考え直すべきであろう。
このブログでは「単純に防衛費を増やせ」というつもりはない。ただ、今まで余りに足りなさすぎて、武器弾薬の類が殆ど無い状況を続けているのが自衛隊の実態なのである。火薬繋がりでいえばこんな事故があった。
旭化成グループのニトログリセリン製造施設で爆発、1人不明…1キロ離れた住宅も被害
2022/03/01 23:03
1日午後1時50分頃、宮崎県延岡市水尻町の産業火薬製造販売会社「カヤク・ジャパン」(本社・東京) 東海 工場で爆発があり、煙が上がっていると近隣住民から119番があった。建物1棟が全壊し、近くにいたとみられる同社員の男性(24)(宮崎県門川町)が行方不明となっているほか、別会社の30歳代男性がひざに軽傷を負った。県警は捜索を行うとともに、当時の状況などを調べている。
「讀賣新聞」より
この記事は、日本国内では殆どニュースとして取り扱われなかった。ウクライナ危機が盛り上がっていた時期だけに仕方のない面はあると思うのだが、ダイナマイト換算で3万本分の破壊力で爆発を起こしてしまったという、結構大きなニュースであった。
そして、この会社、自衛隊に商品を納入している会社でもある。つまり、ただでさえ弾薬の足りない自衛隊に更にダメージを与える可能性のある事案だったのだ。
こういった面でのセキュリティも踏まえ、改善して行くべきなのではないかと。世界は大きく変革してしまった。適切な防衛力を持たないままで日本を存続させるというのはもはや出来ない相談である。
……そういえば、環境で「ドイツを見習え」と叫ぶ方々は、今回はだんまりなのだろうか。日本にも「過度な平和主義の幻想から目覚めろ」と働きかけるべき何じゃないかな。
追記
ウクライナの隣国ポーランドだが、危機感を募らせているという状況を記事の中でも軽く触れているけれども、この話は結構根が深い。
その一端が、このプチャの町の惨状の話であり、ポーランドには「カティンの森」事件(1940年頃)という苦い思い出がある。
この事件は第二次世界大戦中にソビエト連邦のスモレンスク近郊の森で約22,000人のポーランド軍将校、国境警備隊員、警官、一般官吏、聖職者がソ連の秘密警察(ソビエト内務人民委員部)の手によって虐殺されたとされる事件である。
1943年4月にドイツは、カチンの森で1940年4月頃殺害されたと推定される4443人のポーランド将校の射殺死体を発見したと発表し、ソ連はこれをドイツの捏造だと決めつけている。後にスターリンが署名した虐殺指令文書が出てきたため、ソ連はこの虐殺の存在を認めて謝罪するに至っている。
実際の被害者数はハッキリしないのだが、4443人分の遺体が出てきたのは事実らしいということは確認されている。ポーランドにとってロシアに占領されるということはそういう事だという認識なのだ。
コメント
>脅威の独裁国家が隣国に3つもあるのだから
これ、4つの間違いじゃないですか? 言及されてない最後の1つですが、5年交代制であるだけの超法規大統領≒独裁。彼らの軍備は対北とすれば明らかに大過剰で、空母など明らかに対日武力ですし(笑)
(笑) としましたが、台湾事変などで現実になると、恐ろしい事態で、いいかげん真剣に考えるべき事柄と考えます。
いやー、ご指摘の国家の話は、あれ、一応、民主主義(偽)ですから、流石に共産主義国家の並びにカウントするのはちょっとかわいそうかなと。
まあ、ご指摘のように成熟していない民主主義と、法治というより情治国家かつ、反日教育をバリバリにやっている国ですから、独裁に近い国ではあるんですが。
そして、近隣諸国の状況を見るに、ウクライナの話は全く他人事ではないんですよね。台湾有事に備える意味でも、時間はありませんから。
こんにちわ。
ドイツの覚醒には驚きましたが、メルケル氏の呪いが早々に解けて良かったです。
(シュタインマイアー独大統領は”自分が間違っていた”とこれまでの政策を懺悔しましたが、メルケル前首相は”ウクライナのNATO加盟を見送った判断は間違っていなかった”と従来の立場を繰り返しました。)
ドイツ連邦軍はメルケル政権時代に朽ち果てていましたので、今回ショルツ政権が表明した国防大規模投資は実質《ドイツ再軍備宣言》だろうとみています。
閑話休題
プーチン大統領はじめ主だった側近たち、国営通信社や御用新聞がウクライナの「非ナチス化」とか「非ウクライナ化」とか、内容的に”それこそナチズムではないか?”と訝るような過激なウクライナ政策を公言しはじめました。
ロシア軍によるウクライナ諸都市での民間人虐殺疑惑も相まって、周辺のポーランドやバルト諸国、チェコ、スロバキアなどが敏感に反応し、ロシア外交官・武官の追放、ウクライナへの重火器供与や自国の国防力強化に乗り出しました。
ロシア・ウクライナ戦争が周縁部に確実に”飛び火”しており、ロシアと米欧の場外乱闘も激しくなりそうな雲行きです。この戦争は長期化すると予想しています。
ウクライナ侵略から更にヨーロッパに飛び火してしまうと、流石に洒落にならない事態になりそうですね。
アメリカも年単位で長期化する可能性を示唆していましたから、世界的な混乱に拍車をかけるかもしれません。
インフレも加速していますし、戦争前の空気が漂ってきている気がしますよ。
日本は上手いことリスク回避しなければならないと思いますが、ここで台湾有事など勃発してしまうと岸田政権では支えきれない気がします。
こんにちは。
NATO各国、特に及び腰だったドイツが、防衛費2%を厳守あるいは自主的にそれ以上を目指す方向性に舵を切り始めましたから、「欧州出羽守」の方々は、きっと本邦も2%を目指すことに賛同頂けることと思う次第です。
実際、その時にどんな言い逃れを彼らがするか、wktkしております<根性悪
出羽守ですか。
華麗にスルーされるんでしょうなぁ。
メディアに誰かぶっ込んでくれると楽しそうなんですが、やらないかなー。