ロシア国防省による苦しい言い訳、「ウクライナ特殊作戦は第1段階が終了した」

ロシアニュース

はい。

Operation in Ukraine proceeds as planned, first stage goals complete

26 MAR, 02:50

MOSCOW, March 25. /TASS/. The Russia military operation in Ukraine is unfolding according to the plan, all main goals of the first stage of the operation are in general complete, Russian Defense Ministry said during a briefing Friday.

According to the Ministry, Ukrainian Armed Forces sustained serious losses: Ukrainian aviation and air defense is almost completely destroyed, while the Ukrainian Navy no longer exists; Ukraine forces have almost no organized reserves. Meanwhile, most of the Donbass territory has been liberated.

「TASS」より

TASS通信からの引用となるが、なかなか興味深い記事であったので紹介しておきたい。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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ロシア軍は予定通り作戦を進められているのか

第1段階の目標

ロシアの国営通信社であるTASSの英文での記事なので、ロシアから西側諸国に向けたアピールという向きが強い内容となっている。TASS通信はそういうツールだという認識で読むのが正しいのである。

具体的な軍事目標以下の内容であったようだ。

  • ウクライナの航空・防空能力をほぼ完全に破壊し、ウクライナ海軍を壊滅させた
  • ウクライナにはすでに予備役まで尽きている(予備兵力はもう存在しない)
  • ドンバスの領土はほぼ開放された

要は、ウクライナの戦力をすり潰し、ドンバスを解放したと。

なるほど、ロシア軍としては「特別軍事作戦」が、元々、ドンバス地域の開放を求めるという流れであったということにしたいらしい。少なくともロシア国内では最初からそういう説明であったし、西側諸国としても、万が一、ロシア軍が動くとしてもドンバス地域に侵略する程度だろうという予想であった事から、ソコとは符合する話ではある。

ロシア、作戦失敗で戦線縮小? ウクライナ東部のドンバス地域侵攻に重点移す

2022年3月26日 21時24分

ロシア軍参謀本部は25日、侵攻中のウクライナで東部ドンバス地域の支配を目指すと表明した。自軍の被害拡大を前に、ウクライナ全土の占拠が難しいと判断し、作戦目標を変更した可能性がある。

「東京新聞」より

この発表を受けてか、日本のメディアのいくつかは東京新聞が報じたように、「ドンバス地域侵攻に重点を移した」と、その様に報じている。途中で、「ウクライナの非ナチ化を進める」とか言っちゃった手前、若干無理のある路線変更である気はするのだが。

ロシア軍参謀本部の主張

ともあれ、「ロシアは路線変更をした」という報道は、間違いとまでは言えない。

“In general, the main goals of the first stage of the operation are complete,” Russian General Staff deputy head Colonel General Sergey Rudskoy said during a briefing.

He explained that the significant reduction of the Ukrainian military potential will make it possible to concentrate the main effort on the main goal: liberation of Donbass, while the operation itself will last until “total completion of goals, set by the commander-in-chief.”

「TASS”Operation in Ukraine proceeds as planned, first stage goals complete”」より

というより、ロシア軍参謀本部副長官のセルゲイ・ルドスコイ准将の主張そのままだな!

実際に、ロシア軍の動きもドンバス地域方面に移動していると理解出来る進路をとっているらしい。ただ、「戦略目標の変更」というような主張をするのは少々苦しいのも事実だ。実際には、元々の目標がそうだから軍の進軍を変えたのではなく、そうせざるを得なかったという状況だと理解出来るからだ。

そして、そうだとすると第1目標の達成は「嘘」ということになる。だって、「ほぼ解放」されたんだろう?ドンバス地域は。

26日時点の戦局だが、キーウ(キエフ)、ハルキウ(ハリコフ)、チェルニヒブ(チェルニーヒブ)、スムイ、マリウーポリ(マリウポリ)などの主要都市の包囲されている状況である。ドンバス地域を掌握するだけであれば、これらの主要都市の包囲戦は必要がない

主要都市包囲戦は、ドンバス地域掌握には不要であるし、そもそも、首都のキーウを包囲している時点で「ドンバス地域だけを解放」というのは説得力はない。現状ではそうした主要都市の包囲戦を継続しながらも兵士の数を減らしている状況らしいね。

形としては「戦略目標の変更」に見えるが、その実「戦略的撤退」に近い状況なのじゃないかな。ロシアは兵站維持に無理をしてウクライナ全土侵攻に手を付けてしまったために甚大な損害を出してしまったが、ドンバス地域だけであれば兵站維持は随分と楽になるだろう。

体裁としてはあくまで「ドンバスからの要請」

そもそも、この作戦を展開したロシア軍の言い分としては以下のようなものであった。

On February 24, Russian President Vladimir Putin announced a special military operation based on a request from the heads of the Donbass republics. The Russian leader stressed that Moscow had no plans to occupy Ukrainian territories and the goal was to demilitarize and denazify the country. Russia’s Defense Ministry stressed that the Russian Armed Forces were not delivering strikes against Ukrainian cities. The ministry emphasized that the Ukrainian military infrastructure was being destroyed by precision weapons and there was no threat to civilians.

「TASS”Russian army downs Ukrainian drone approaching Sevastopol – Defense Ministry”より」

ドンバス共和国の首脳からの要請に基づく特別軍事作戦の決行ということなのだが、ここでも「その目標は、ウクライナを非軍事化・非ナチ化」だと主張しており、ロシア軍はウクライナの領土を占領する計画がないということを主張している。

だが、ドネツィク人民共和国もルハンスク人民共和国もロシア以外の国からは国家承認されていない。(注:正確には南オセチアやアブハジア(何れもジョージアの一地域である)が承認しているが、これらの国も国家承認されていない)。

ドネツィク人民共和国とルハンスク人民共和国は相互承認した上で、ノヴォロシア人民共和国連邦の結成を宣言しているが、ドンバス共和国となっているという話は聞かない。いつの間にか成立している可能性はあるけれども。

つまり、そもそも正当性の疑わしい国(自称)から要請を受けて、軍隊を出しちゃったことになっている。

故に、ウクライナ侵攻をやらかした時点で、ロシアの主張というのは、どうあっても事実がそれを支えられない状況になっているが、そこはスルーするつもりらしいね。プーチン氏も「そもそもウクライナはロシアの一部である」と主張しているしね。

ロシア軍の損失

そもそも、今回のロシア側の主張による「特別軍事作戦」だが、ロシア軍の損失が多すぎるのが問題なのである。

侵攻1カ月、ロシア軍損失3~4万人(3月24日)

2022/3/24 19:11(最終更新 3/24 20:14)

ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから24日で1カ月となった。北大西洋条約機構(NATO)は、ロシア軍の死傷者や捕虜など人的損失は3万~4万人に達するとの推計を明らかにした。ロシア大統領特使が辞任し、ウクライナ侵攻への抗議行動とみられている。

「毎日新聞」より

人的被害で単純に前線の兵士の消耗も問題ではあるが、将官の損耗も問題だ。

ロシア軍将官7人死亡、1人解任 西側当局

2022年3月26日 14:27

西側諸国の当局者は25日、ウクライナでの戦闘でこれまでにロシア軍将官7人が死亡し、1人が司令官を解任されたと明らかにした。

新たに死者として加わったのは、ロシア南部軍管区第49諸兵科連合軍の司令官、ヤコフ・レザンツェフ中将。

「AFP」より

どんな作戦を展開したらこれだけの将官が損耗するかは知らないが、兵を動かすための司令塔が次々落ちていくというのは作戦継続に重大な影響をもたらす。

将官が次々と死亡し暴徒と化すロシア軍

2022年3月23日(水)16時56分

ウクライナ侵攻から1カ月弱で、ロシア軍はすでに前線で戦う将官を少なくとも5人失ったと、西側当局者が3月21日に発表した。通信障害と何十万人もの徴集兵を含むロシア軍の規律の欠如によって、前線に命令を伝えることが困難になっているためだ。

~~略~~

「彼らは最前線にいる部隊に命令を理解させるのに苦労している」と、この外交官は、最近の戦場での情報活動について、匿名を条件に語った。「指揮官は命令を実行させるために現地に赴かざるをえないため、通常では考えられないほど大きな危険にさらされている」。

「Newsweek」より

もともとロシア軍の指揮命令系統が杜撰であったために、指揮官が前線に出る必要があり、その結果、指揮官を失う。そして指揮系統が乱れるという悪循環であるようだ。

尤も、前線で活躍する兵士の損耗数はウクライナ側の主張を採用している数字なので、多少数は誇張されている可能性はあるが。

During the first month of the operation, a total of 1,351 Russian servicemen died, while 3,825 were injured.

「TASS”Operation in Ukraine proceeds as planned, first stage goals complete”」より

ただ、ロシア側の主張する1,351人の死亡、3,825人の負傷という数字とは余りにもウクライナ側の発表とはかけ離れており、ロシア側の主張が正しければ良いが、ウクライナ側の主張がある程度正しかった場合、ロシア軍は前戦で戦うロシア兵の死亡をどのように家族に説明する気だろうか?

何処を着地点として見出すのか

敗戦処理

ロシア軍は1ヶ月の時間を使ってウクライナ侵攻をして、ドンバス地域の切り取りが成功したとして、どれくらいの時間でこの問題を収束させて自国の舵取りをして行くつもりなのだろうか。

ロシア軍は19万人以上のロシア兵をウクライナ侵攻のために投入しており、ロシア側もこれを否定していない。

「敗戦処理」とは書いたが、ロシア軍は「勝った」と主張してドンバス地域を独立させ、ロシア連邦に組み入れるということと、ウクライナの非軍事化及び非ナチ化(ゼレンスキー氏を大統領の職から解任して戦犯として扱い、別の親ロシア派大統領を就任させる)を実現したとして、それでロシア国民を説得可能なのだろうか。

Kremlin calls possible exclusion of Russia from G20 “not fatal”

25 MAR, 20:18

MOSCOW, March 25. /TASS/. The format of the Group of Twenty (G20) is important, but under the current conditions, exclusion from it would be “not fatal” for the Russian Federation, Kremlin spokesman Dmitry Peskov told reporters on Friday.

Earlier, US President Joe Biden said that he advocated Russia’s exclusion from the G20, admitting that some other countries did not agree with such a move.

「TASS」より

アメリカ大統領のバイデン氏は、ロシアをG20から除外する案を口にしている。ロシア側はそれを「痛手ではない」と強弁したことがTASS通信で報じられている。

米大統領「ロシアG20排除を」 化学兵器使えば対抗措置

2022年3月25日 2:48 (2022年3月25日 5:49更新)

バイデン米大統領は24日、訪問先のブリュッセルで記者会見を開いた。ウクライナ侵攻を続けるロシアを20カ国・地域(G20)から排除すべきだと訴えた。ロシアがウクライナで化学兵器を使った場合に対抗措置を講じる方針も表明した。

「日本経済新聞」より

プーチン氏はNATOこそ世界の戦争の火種であり、ロシアはこれに対抗するために立ち上がったというロジックを展開している。だからこそ、ウクライナがNATOに加盟するのを防いだというのが、プーチン氏のロジックなのだ。

ただ、この主張は無理があって、NATOとしてウクライナを加盟させることに関しては兼ねてから及び腰であった。NATOとしてはウクライナ加盟を許可した場合、プーチン氏の虎の尾を踏む可能性があって、「とてもじゃないが許可出来ない」という姿勢だったのである。

つまり、プーチン氏がロシアのトップの座を降りるまでは、ウクライナがNATOへ加盟という事は難しいとNATO側は考えていたという意味だ。

G20からのドロップアウト

ただ……、この記事ではG20からロシアをはじき出すという話であって、これも象徴的な意味くらいしかないわけだが、ロシアの反応を見るにかなり嫌がっているようだな。

“It is obvious, that in conditions when all the rules of WTO, international law are being violated we need to build new types of relations in all areas. That is what we are going to do,” Peskov concluded.

「TASS”Kremlin calls possible exclusion of Russia from G20 “not fatal””」より

ロシア側は新しい枠組みを作るから大丈夫だという風に主張はするが、今のロシアにどの国が付いていくというのだろうか。

G20に加わっていると言っても、そこに経済的メリットがあるのかといえばそうではないと思う。精々、世界のトップ20以内にいるという権威主義的な箔付けだろう。ただ、それは平時の話であり、世界金融危機的な話になれば、各国との連携を採る場という位置づけになる。実際に何度かそういうシーンがあったのだ。

しかしソコに加われないとなると、ロシアは独自に経済を回していかねばならず、世界のグローバル化が進んだ現在においては、なかなか単独で何とか立ち回るというのは困難だろう。

このこと1つとっても、ロシアが主張する戦略的目標を達成したとしても、ロシアの未来が明るいとは言えないのである。

国際社会が突き付ける要求

ちなみに、アメリカを主体とするG7からの要求は以下のようになっている。

G7 Leaders’ Statement | The White House
We, the Leaders of the G7, met today in Brussels at the invitation of the German G7 Presidency, to further strengthen our cooperation in light of Russia’s

大雑把にいうと、プーチン氏は戦争犯罪を犯したので、ロシア政界から追放して責任をとらせろという話と、これに荷担するベラルーシの大統領、ルカシェンコ氏にも罪に問うということ、そして、ロシア経済を世界から切り離すということなどを主張している。

こうしたロシアに対する制裁措置は、ロシアとベラルーシのトップの首を挿げ替え、新たに出直さねば実行され続けるとあり、ロシアの立たされる立場の厳しさを物語っている。

ただし西側としても「人権」を掲げて一枚岩とはいえ、経済の面から見ると一枚岩とは言えない感じなので、ロシア側から付け入る隙はまだあるのだろう。トップの首が条件だということになると、しかしロシアは現在の国土を維持出来るのかが危うい状況とも言える。

とはいえ、ロシアを糾弾するための急先鋒に名乗りを上げたがらないアメリカは、矢面に立つのを嫌がって、今も随分と腰が引けている状況にあるようなのだ。プーチン氏の生き残る道はかなり険しい状況ではあるが、その道もまだ残っている気はしている。

ロシアが何処まで突っ張るのかは分からないが、既に引けなくなっているプーチン氏の立場とは異なり、ロシアとしては生き残る可能性の高い道が用意されていて、ロシアが何処で手打ちをするのか?ということが今後の注目ポイントとなるのではないだろうかと、その様に考えている。

アメリカが「ドンバス地域」でプーチン氏と手打ちをする、その可能性はバイデン氏がトップであれば否定できないが、「プーチン氏に妥協した」というメッセージを国際社会に出しかねない。クリミアの前例があるので今更という気もするのだが、ウクライナの非軍事化というのはそことはステージが違うんだよね。

コメント

  1. 木霊様、皆さま、今晩は

    アメリカ、EUあたりは、プーチンが国民に言い訳が出来る程度の落しどころをさぐっているのではないかな、と思っています。今の状況では仮にウクライナを制圧してもプーチンに勝利はないわけで・・・。惨めな敗北ではなくて実利はないものの【何らかの名分】で「名誉ある撤退」と強弁できる程度の逃げ道を探っているのでは???

    そんな気がします。

    • 多分、何らかの落とし所をロシアに提案している最中だと思います。
      でも、バイデン氏が「彼奴は権力の座に留まるべきではない」とか言っちゃったせいで、状況が悪化した可能性は高そうですよ。

      • こんばんわ。
        バイデン氏は余計な一言がいつも多いと思います。
        同氏は、ロシアを悪に仕立て上げて叩き、その勢いで自分の権力維持を図り、自分と息子の”ウクライナ疑惑”を封印する意図なのかもしれません。
        ただ、ロシアも強かですから、米国とバイデン氏が切り返されることもあると考えておくべきかと思います。

      • バイデン氏の思惑がどこにあるかはよくわかりません。
        息子はウクライナのガス会社から金をもらっていましたから、ウクライナ側に便宜を図りそうなものですが、そのためのロシア叩きとするにしてはロシアがやらかし過ぎた感じがします。
        ロシアがどの辺りを落としどころにしているかは分かりませんが、戦争を長引かせることが目的であるとすると交渉はかなり厄介ですね。

  2. 落としどころ。こんな言い訳が、輝かしき勝利として、ロシア国民には通用してしまう可能性。プーチンを野放しにする危険性が、この期に及んでなお存在するというのも、恐ロシアな話であります…

    • プーチン氏にとって、「強いロシア」はソ連時代に築き上げられた価値観です。
      「輝かしき勝利」を得るために、作戦の長期化を図っていくのだと思われます。
      しかし、長期化すればロシアもウクライナも疲弊します。
      どこかで妥協は必要なのでしょうが、肝心のロシア側が無理な条件を突きつける始末で、当面、停戦にまで漕ぎつけられるか不安な状態が続きそうです。
      仮に停戦をもぎ取ったとしても、それは次の戦いまでの準備期間になりかねません。難しい判断を求められますよね、ウクライナとしては。

  3. こんにちは。

    「日露の戦争、大勝利」でありますなぁ……
    戦略的には勝ったと言えなくもないけれど、得るものがあまりに(特に日清戦争に比べて)少なく、国民がまるで納得しなかったという……

    同じ事(世論がより先鋭化、強硬化する)が今度はロシアで繰り返されるとすれば、まさにあざなえる縄のごとし。
    拡大主義は悲劇しか生まない、という事を、人類はまだ充分に学んでいない感がありますね。

    あとバイデンは、何がしたいのかよく分からないです。
    強硬なのか、単なるボケなのか。
    息子がロシア資源にイッチョ噛みしてるのは間違いないわけですが……

    • だんだんとウクライナの戦況が、ロシアにとって悪い状況になっているのですが、ウクライナも随分と疲弊していますから、早いところとりあえずの停戦といったところに落ち着いて欲しいところではあります。ただ、ロシアとしてはソレが狙いであるかもしれません。
      チキンレースですよねぇ。

      バイデン氏、余計なことだけはやらないで欲しいですね。