ヌリ号の2回目打ち上げ予定は6月?

迷走韓国宇宙開発史

1回目がちょっと無残な結果に終わったけれども、2回目の予定はほぼスケジュール通りにやるらしい。

韓国初の国産ロケット 6月に2回目の打ち上げへ

2022.02.25 15:34

韓国科学技術情報通信部は25日、韓国初の国産ロケット「ヌリ」の2回目の打ち上げを6月15日に実施する予定だと発表した。

「聯合ニュース」より

待ってるぜ!!

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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2回目は成功できるのか

1回目の失敗

さて、「失敗」と評価した1回目だが、韓国としてはあれを「失敗した」とは捉えていなかったようだ。

こちらの記事で触れているが、ロケットからダミー衛星を軌道に投入する実験に失敗したのが1回目である。ロケットの打ち上げ自体は成功したのだというのが韓国側の捉え方らしいが、その後の調査で設計的に問題があることが発覚した。

現象としては、打ち上げ時に3段目の燃焼時間が足りずに、低軌道にダミー衛星の投入が出来なかったという格好なのだが、多分、ダミー衛星投入までには、「3段目の正常な燃焼によって予定高度に到達できること」を確認し、「フェアリングを割ってダミー衛星を正常な軌道に投射すること」まで出来る必要があるはずだ。

今回のトラブル発覚で、設計の見直しがかけられたそうだ。

◇ヘリウムタンクの固定強化

 科学技術情報通信部と事業主体の政府機関、韓国航空宇宙研究院は2回目の打ち上げを成功させるため、ヘリウムタンクの固定部分の強化策を講じ、外部の専門家でつくる評価団による検討を終えた。3段目の酸化剤タンクは飛行時に予想される荷重の1.5倍まで耐えられるよう、設計を変更したという。また、最初の打ち上げで脆弱(ぜいじゃく)性が見つかった酸化剤タンクの覆いも重量を増やすことを決めた。

「聯合ニュース”韓国初の国産ロケット 6月に2回目の打ち上げへ”」より

ん、大丈夫なの?

原因は酸化剤タンクの固定

前回も言及したのだが、ヌリ号の3段目に採用されたエンジンの方式は圧送式サイクルである。

img

「圧送式サイクル」は、こんな感じで燃料タンクと酸化剤のタンク、そして高圧ガス(通常はヘリウムが使われる)のタンクがノズルに接続されている格好になっているはずだ。

そして、今回のトラブルは、高圧ガス(ヘリウムガス)タンクの固定が外れて、配管が外れてしまったのだという話になっている。

調査の結果、酸化剤タンク内のヘリウムタンクが故障の主な原因となった。三段酸化剤タンクの中には、酸化剤とともにヘリウムタンク2個が入っている。エンジンが燃焼しながら酸化剤が減少するが、ヘリウムは酸化剤タンク内部圧力を維持する役割である。こうして酸化剤が常にエンジンに供給される。

ヘリウムタンクは、液体状態の酸化剤の中で浮遊しないように、酸化剤タンク内に固定装置で束ねられた。しかし、ヌリ号の飛行中にヘリウムタンクに加わる液体酸素の浮力が大きくなり、固定装置が解け、離れて出たヘリウムタンクが酸化剤タンクの中を歩き回り、内部に亀裂を出して結局酸化剤が漏洩したことが調査された。

「Daum」より

この原因となったのが、酸化剤タンク内に固定されたヘリウムタンクの固定に使われた部材がロケットの加速を考慮していなかったというお粗末な設計にあったと判断されている。

これについて、こちらの記事のコメントでかなり盛り上がりを見せた。

何かというと、酸化剤タンク内にヘリウムタンクがブラケットを用いて固定された点である。

タンク・イン・タンク!

探したら見つかった構造図だが、何か凄いところに固定してある模様。どうやらタンク内に固定されたブラケットが破損したために内部のタンクが動き回って、酸化剤のタンクを破損し、燃料が漏れたとのことだ。

チェ·ファンソク調査委員長は「2015年に米スペースXはヌリ号と同じく浮力によってヘリウムタンクが浮上し、酸化剤タンクと衝突して爆発事故が発生した」とし「海外宇宙先進国のように大事な経験をしたことで、今回の調査委の活動を通じて多くの技術を蓄積した」と説明した。

THE KOREA ECONOMIC DAILYより

ふむ、スペースX社と同じ失敗ねぇ。

2015年の失敗

せっかくなので調べてみた。

A failed strut caused the SpaceX rocket explosion

 Jul 20, 2015, 3:32pm EDT

The SpaceX explosion on June 28th was caused by a failed strut in the rocket’s upper stage liquid oxygen tank, SpaceX chief executive officer Elon Musk said today. The strut was one of several hundred inside the tank used to hold down the helium pressure vessels, which help to pressurize the rocket. According to Musk, the strut was designed to handle 10,000 pounds of force, but failed at just 2,000 pounds of force.

THE VERGEより

確かに、スペースX社のロケットが空中で爆発した事故は、「ロケットの上段の液体酸素タンクの支柱の故障」が原因であると言及されている。

「The strut was one of several hundred inside the tank used to hold down the helium pressure vessels, which help to pressurize the rocket. 」とあるので、確かに液体酸素タンクに、100本の支柱が設けられていて、これがヘリウム圧力容器を固定していると書かれている。

ただ……、スペースXのファルコン9はマーリン1Dというガス発生サイクル式のエンジンを使っているんだよね。ちょっとヌリ号の問題とは違うプロセスだったんじゃないかなぁ。

https://www.nasa.gov/sites/default/files/atoms/files/public_summary_nasa_irt_spacex_crs-7_final.pdf

NASAのレポートを読むとどうにも違う事故原因であったような指摘になっているし、詳しい構造は図面などがないからわからない。

さておき、韓国のヌリ号はこれで予定の一月遅れで6月16~23日あたりの打ち上げ予定になったんだとか。いいのか?本当に?重量増えているけど、色々計算しなおしたりしなくて大丈夫か?

コメント

  1. 木霊さん 図をみつけてくれて頂いてありがとうございます。

     いやあK-タンク・イン・タンク!スバラシ・スゴイ構造ですね。ロケット設計などしたことも、そもそも出来ませんが、もし部分設計命じられたら私なら二重シリンダ的な構造がやっと。。。いやホリエモンロケットぐらいに無難に設計すると思います。https://www.istellartech.com/technology/momo
     
     しかしさすがKエンジニア! 小型タンクを、しかも複数! 酸化剤タンクに入れるとは!
      タンク・イン・タンクをコトバだけで聞いた時には、(恐らく)分解不可能なFRP製タンクに別のタンクを内蔵して、じゃあ単体テストどうするんだろう? と思ってたのですが、小型のタンクを複数入れる—外側タンクの口を大きくすれば、出し入れできる?のですかね!!

     しかしこの構造だと、ハングルでよくわかりませんが「バルブもタンク内」「しかも複数」なのだろうか? 今度は単体テスト出来ても、組みあがりテストどうするのだろう? 3段目だけ単体打上テストはするのかなあ?

     そもそも耐圧や耐加重1.5倍って、タンク・イン・タンクの(私の考える)唯一のメリット:内側タンクの耐圧下げられ、軽量化可能 は、ほぼ破綻しているのでは?

    — ちょっとシロウト外野批判すぎますね。もすこし謙虚に学べるところは学ばねば、、、でも笑えてしまうところが。。。。スバラシイ!

    • そもそも酸化剤のタンクに別のタンクを投入するという設計思想が理解出来ません。
      どう考えてもパッキンやら何やらの漏れ対策が必要な部分にダメージが大きそうなのですが、そういったことは気にならないのでしょうか。

      まあ、スペースX社も形は違うとは言え、タンクインタンク的な構造を採用しているようですので、宇宙開発では案外メリットがあるのかも知れませんよ。

  2. こんにちは。
    あくまで素人考えですが。
    ヘリウムの沸点は-264度C、酸素は-183度Cという事で、圧倒的に酸素の方が高いですが、それでも常温常圧よりははるかにマシ、という事で、断熱材を減らす意味からもこのような構造なのかな?と思いました。
    ※それ以外に意味が見つからない。
    だとしても、低温で支持材の脆性がエラいことになりそうで、当方でしたら真っ先に避けたい構造かと。
    ※タンクは球形の複合材に限る。中に何か入れるなど言語道断。
    最新の宇宙開発の現場はまた違うのかも知れないですが、
    「似たような構造をパクったニダ!ケンチョナヨ!」
    の結果だとしたら……

    あと、「上を直したら下が抜けた」みたいなことにならない事を祈ります、一人のロケット好きとして。
    いやマジで。

    • 断熱材を減らす意味、ですか。
      結果的に、重量を減らすことにも繋がりますから、メリットがあるのかも知れませんね。
      低温脆性で支柱がポッキリという話もあるかもしれません。そして、タンクから酸化剤をぬいても、色々と酸化剤の残りが支柱にくっついていそうな気もします。
      どうなっているのでしょうかねぇ?