ちょっと面白いことになっているな。
ガソリン税軽減「否定せず」 価格抑制の追加策で萩生田経産相
2022年01月30日15時16分
萩生田光一経済産業相は30日、フジテレビの番組に出演し、ガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除について「否定しない」と述べた。政府は補助金を支給してガソリンなどの価格急騰を抑制する対策を27日に発動したが、原油高が続く場合に追加対策の選択肢の一つとする考えを示した。
「時事通信」より
1月30日に経済産業相の萩生田氏が「トリガー条項の復活はあり得る」という旨の発言をテレビ番組で行っている。
ガソリン価格の実質値下げは可能なのか
岸田氏は即座に否定
トリガー条項の話をする前に、この発言をサックリと打ち消したのが岸田氏である。
ガソリン税一時的軽減、「今現在は検討せず」=岸田首相
2022年1月31日15時41分
岸田文雄首相は31日の衆院予算委員会で、萩生田光一経産相が否定しなかったガソリン税を一時的に下げるトリガー条項の凍結解除について「今現在は検討せず」と述べた。城井崇委員(立民)への答弁。
「朝日新聞」より
いやー、またトンチンカンなことを。
トリガー条項の話は、国民民主党の政策として昨年の11月頃にちょっと騒ぎになったが、結局、トリガー条項復活には至らなかった。
この時も岸田氏はトンチンカンなことを言っていた。
岸田首相は「買い控えや流通の混乱、国・地方の財政への影響から、凍結解除は適当でないと」と改めて政府見解を繰り返した。
「朝日新聞”ガソリン税一時的軽減、「今現在は検討せず」=岸田首相”」より
この政府見解とやらは、岸田氏が繰り返し主張している内容である。
「岸田総理の所信表明演説はカタカナだらけでした。デジタル田園都市スーパーハイウェイ、スタートアップ・エコシステムなど抽象的な言葉がたくさん出てくる一方で、馴染のあるカタカナが出てこなかった」 そのように述べた玉木代表は「それはガソリン。まだ高止まりが続いている。ガソリン価格の高騰対策としていわゆるトリガー条項の凍結解除を提案したのは2カ月前の10月12日の代表質問だった。おぼえていますか? そのときも、きのうも総理は買い控えが起こるからできないと答弁をされた。レギュラー満タンと言えなくて、2000円だけ入れて欲しい。中には1000円分だけ入れて欲しいというお客さんが増えているのはご存知でしょうか?」と岸田総理に問いかけると、さらに本国会の初日に日本維新の会とともに提出したガソリン値下げ法案を提出したことに触れ「やはりトリガー条項の凍結解除が必要と考える。霞が関の論理の代弁ではなく、総理の政治家としての見解をうかがいます」と続けた。
これに対して岸田総理は「現在、凍結中のトリガー条項については、発動された場合にガソリンの買い控えやその反動による流通の混乱。国や地方の財政への多大な影響。こうした問題があることから、凍結解除は適当ではないと申し上げている。政府としては国民の皆さんが年末から春先までを見通せるように、農業や漁業に対する業種別の対策を強化している。加えてガソリン、灯油の急激な値上がりに対する備えとして年内から施行可能な激変緩和措置を講じている」と答えると「私は」と語気を強め「国民の皆さんにスピーディーかつ混乱が無く、効果が行き渡らせることができると考えている」と続けた。
「yahooニュース”国民民主・玉木代表 トリガー条項の凍結解除を巡り「霞が関の論理の代弁ではなく、岸田総理の政治家としての見解を」”」より
去年の12月9日にも同じロジックを展開していたが、説得力は全く無い。
ガソリンの買い控えは発生するか
岸田氏の主張はかなり論理破綻している。
そもそも「ガソリンの買い控え」というのが発生し得るか?という点について少し考えてみれば分かると思うのだが、ガソリンは多くの人が生活をする上で必要なものとして利用している。この話はガソリンだけでなく軽油や灯油にも関わってくるのだが、灯油が安くなるから灯油を買うのを止めようとかいう話ができるかと言えば、それは想像できない。
「安くなってから買おう」という意思は働く可能性は高いだろうが、実際に如何ほど待てるのか?といえばせいぜい数日程度だろう。大きな影響が出ないだろうと思われる。
逆に、買いだめをするぜ!という人が出るかというとそちらも可能性は低い。何故なら、ガソリンの保存は容量によっては法律に抵触するし、適切な容器を多数持っている人も滅多に居ない。
岸田氏が一番嫌がっているのは、「国や地方の財政への多大な影響」というヤツだろう。ガソリン税収は国と地方への貴重な財源であるのは事実なのだ。

税制に手を突っ込むと嫌がるのが財務省である。
意味不明な補助金投入
ちなみに、岸田政権が何もしないというワケでは無く、補助金を投入するという。
岸田首相、ガソリン高対策「価格は順次抑制」 トリガー条項、凍結解除を否定
2022年01月26日17時53分
岸田文雄首相は26日の衆院予算委員会で、ガソリン価格の高騰抑制を目的とした補助金制度に関し、「27日から元売り事業者に支給する。小売価格の上昇も順次抑制されていく」との見通しを示した。経済産業省が全国の事業所を毎週調査し、価格に反映されているか確認すると説明した。
「時事通信」より
ただ、この補助金制度、ちょっと意味が分からない。
ガソリン安くなる? 高騰抑制へ補助金―ニュースQ&A
2022年01月29日15時36分
原油価格の高騰や円安進行で、ガソリンの値上がりが続いている。政府は米国に協調して国が備蓄する石油の放出も計画しているが、企業や家計の負担は増すばかりだ。このため、新たに石油元売り会社などに1リットル当たり最大5円の補助金を支給する異例の制度を発動。価格上昇の抑制を狙うが、仕組みが複雑な上に効果も不透明で、給油所や消費者は戸惑っている。
「時事通信」より
最大5円補助……。

制度の仕組みは難解だが、補助金が入ったからといってガソリンスタンドで価格を下げる義務が発生するかというと、そんなことはない。
つまり、補助金を貰ったからといって、小売価格を下げる謂われはない。税金を下げれば即時に価格は下がるが、ガソリン小売業側は即時に価格を下げずに様子見をする事もできる。
給油所側は「5円安くなる」、「補助金が出ているのに高いのは給油所がもうけているからだ」などと、誤解されることを心配している。実際に発動前には、値下げされると勘違いして買い控える動きも見られたそうだ。
「時事通信”ガソリン安くなる? 高騰抑制へ補助金―ニュースQ&A”」より
あれ?買い控えが発生している?
あらゆる選択肢を排除しない
とはいえ、岸田氏としてもこの方法で絶対に効果が出るという確信はなかったようで。
同時に政府が27日に発動した補助金支給によるガソリン価格抑制策を取り上げ「今後の状況をみるなかで、何が効果的かは引き続き検討していく。経産大臣の発言もこうした趣旨での発言。状況をみながら、あらゆる選択肢を排除しない」ともつけ加えた。
「朝日新聞”ガソリン税一時的軽減、「今現在は検討せず」=岸田首相”」より
閣内でも意見を一致させることが難しく、萩生田氏との意見調整が済んでいないからこうした発言になったのだろうが、発言の内容としては萩生田氏の方が圧倒的に正しいのである。
「今は考えていない」等というアホな発言をするあたり、政治的センスがないとしか。この問題が長期化すると、日本経済が疲弊してしまう。疲弊してから回復させるためのタイムラグを考えると、トリガー条項発動してしまった方が税収が高くなる損益分岐点がある。冷静に計算して躊躇無く政策を講じるべきだろう。
まあ、華麗な掌返しが得意な岸田氏だから、この件でも掌返しを期待しているよ。
追記
おいおい。
ガソリン価格上昇もトリガー条項考えず 効果的対策検討 経産相
2022年2月1日 15時39分
萩生田経済産業大臣はガソリン価格が今後も上昇した場合、ガソリン税の上乗せ分の課税を停止するいわゆる「トリガー条項」について、「現時点では考えていない」と述べたうえで、価格高騰が続いた場合、効果的な対策を検討していく考えを示しました。
「NHKニュース」より
確かに、凍結解除を否定しないだけで、現時点で考慮していることにはならないだろうけどさ。「あらゆる方法を検討している」とは言えないのだろうか。
余程強い圧力があったのか、修正せざるを得ない何かがあったのか。ガッカリである。
コメント
やるなら議論する暇もなく即時実行しないと、「安くなるらしい」という噂が出回れば買い控えに拍車がかかる事にはなるのでしょうけど…コレ、そもそも表で話すこと自体アウトなのでは。もしかして。
記事中にも書きましたが、買い控えといっても給油するタイミングを調整する程度です。
過去にもガソリンが安くなるタイミングでガソリンスタンドに車が並ぶような事案がありましたが、一定期間トリガー効果があれば購入が集中するような混乱は起こりにくいと思います。
ご指摘の「即時実行」という部分ですが、本来、トリガー条項発動は特定条件を満たしたらシステマティックに行われるものです。そのトリガー条項の復活をすさせることが議論されているわけです。復活させることで、特定条件でガソリン価格が一定期間下がるよと言うアナウンスこそに意味があり、アナウンス効果で経済の萎縮を防ぐことが期待できます。議論して復活させる、それだけの話です。