BBC受信料制度見直しの衝撃、NHKはどう存続すべきか

政策

産経新聞が取り上げていたニュースで、他のメディアも触れるのかと思ったらどうやらそうでもないようだ。

BBC受信料制度見直し 公共放送の在り方変わるか

2022/1/24 19:50

英国のジョンソン政権がBBC(英国放送協会)の受信料制度を見直す方針を表明している。視聴状況に応じ、課金する制度を導入する案が浮上している。受信料を収入の柱にする公共放送の在り方が変わる可能性が出てきた。

「産経新聞」より

公共放送のあり方を巡って、日本でも議論されるべき事案なんだけどね。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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試される公共放送のあり方

イギリスBBC改革

さて、イギリスのBBCはNHKがお手本とした公共放送制度の先駆けである。

英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)は1920年に設立された組織で、イギリス政府から受信機販売と放送の事実上の独占権を与えられたところからスタートしている。

イギリスではTVライセンス制度と呼ばれるテレビやビデオデッキを所有するために必要な許可証をBBCが発行するシステムを採用しており、その収納率は約98%と恐るべき数字になっている。そして、無許可受信者は法令により罰金が科される。

英国では受信料として、世帯当たり年159ポンド(約2万5千円)の支払いが義務付けられており、違反者には罰金刑を科されることもある。受信料を決める権利を持つ英政府とBBCの取り決めで、現行制度は2027年12月末まで存続が保証されており、ジョンソン政権は28年以降、視聴者からの徴収をやめ、課金制度に移行させる方針とみられる。

「産経新聞”BBC受信料制度見直し 公共放送の在り方変わるか”」より

ただし、BBCが得ているこの利権は2027年までという取り極になっていて、その後は改めてイギリス政府とBBCとの間で受信料に関する取り極がなされる事になるのだが、現在の首相、ボリス・ジョンソン氏はこれを改革しようとしている。

これはジョンソン政権がBBCに批判される事が多い為だと記事には分析されているが、その実情はネットを中心とした報道形態が浸透し始めた事で、テレビの視聴時間の減少に歯止めがかからない状況も加味されているのだろうと思われる。

日本のNHKに対する不満と似たような構造の不満をイギリス国民も感じているせいだと、その様に分析されている。民間がネットを通じて提供する番組の方が質が良いというワケだ。

イギリスのBBCとしても受信料を国民から頂いているために、公平な報道をする事ができると主張していて、設立当初の理念を維持し続けている。

ただ、ボリス・ジョンソン氏は2019年12月の総選挙を前に受信料制度の廃止を検討すると表明しており、この辺りもBBCとの仲が悪い理由なのだろうね。

受信料未払いの刑事罰廃止議論

ボリス・ジョンソン氏の話は、受信料制度のうち特に不払いによる刑事罰を廃止する辺りが中心だったようだ。まさに日本のNHKを巡る受信料の話と似たようなケースだね。裁判沙汰になる話も少なくなかったようだから。

BBC受信料の未払い、政府が刑事罰の廃止を検討

2019年12月17日

イギリスでBBCを視聴するには年間154ポンド50ペンス(約2万2000円)の受信料がかかる。払わなかった場合は裁判所への出廷が求められるほか、最大1000ポンド(約14万5000円)の罰金が科せられる。

BBCは、受信料未払いに対する刑事罰を廃止すれば、年間2億ポンドの損害が生じると警告している。

日曜紙サンデー・テレグラフは15日、12日の総選挙で与党・保守党が大勝した後、ボリス・ジョンソン首相がこの件について検討するよう指示したと伝えた。

「BBC」より

そう言う意味で、ボリス・ジョンソン氏の判断は正しかったと思う。

なかなか型破りな人物ではあるが、BBCが長年に渡って抱える膿を出すには良い切っ掛けになるのだろう。

愛してやまないBBCの、受信料制度は問題だらけ

2020年03月11日(水)19時00分

<イギリスで電気料金を支払わなくても民事問題で済むがBBC受信料の不払いは犯罪になる――貧しい人が豊かな人のために受信料を負担するアンフェアな仕組み>

「Newsweek」より

こちらの記事には、BBCが抱える問題について言及されているが、ほぼNHKにも該当する話である。要は、「観ない人までNHKの受信料を支払わせるとは何事か」という話なのである。

そして、受信しない人を捕まえて牢屋に入れることで切る今のシステムは間違っているというのが、ボリス・ジョンソン氏の主張なのである。日本のNHKの場合は民事訴訟だけではあるが、BBCの場合は刑事訴訟が起こされて罰金を支払わされる羽目になる。

形は違えど、日本もイギリスも似たような問題を抱えていると言えよう。

NHKの受信料を巡る話

さて、BBCの話をNHKがニュースで取り上げたか?と思って調べたが、どうやら今回はスルーした模様。ただ、全くだんまりという事ではなかったようだ。

#298 イギリス 公共テレビは生き残れるか

2021年01月29日 (金)

世界の公共放送のお手本ともいわれるイギリスBBC。 世界で週あたり4億6800万の人がそのサービスを利用し、王室とならびイギリスのソフトパワーの一翼を担うともいわれる組織ですが、現地では、いま、「創設以来の危機にある」との論が後を絶ちません。

その背景には、技術革新とともに台頭したNetflixなど、新しいビジネスモデルを持つグローバル企業の動画配信サービスにおされ、テレビの視聴時間の減少に歯止めがかからないことがあります。BBCのストリーミングサービスiPlayerも、2014年には40%を占めていたシェアが2019年には15%まで減少しています。

~~略~~

来年の今頃には、その問いに対しイギリスなりの答えが出され、公共メディアのデッサンが完成しているのではないかと思います。輪郭を書いたり消したりしながら進められるその作業から目を離さずにいたいと思います。

「NHKニュース」より

全く他人事で笑ってしまうが、この話は公共放送というシステムそのものの存続危機を内包している。

放送法はもう古い?

これは、放送法1条に謳われている理念にも関わる話。

(目的)

第一条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。

 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。

 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。

 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

「e-Gov 放送法」より

放送法一条一項には、「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること」と書かれている。しかし、テレビが全国遍く普及し、インターネットによる情報伝達もほぼ100%を達成した今となっては、意味の無い条文となっている。

同条二項には、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること」書かれているが、「不偏不党」ってどう考えても踏み外した基準だし(野党寄りかつ特定の国に利便を図る放送が行われている)、「真実及び自律を保障」が鼻で嗤う。

同条三項の「職責を明らかにする」がどのように放送に反映されているのか不明だが、「放送が健全な民主主義の発達に資する」との文言は、とてもそうは思えない。むしろNHKは社会主義的な思想に凝り固まっているようにすら思える。

(目的)

第十五条 協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(国内放送である基幹放送をいう。以下同じ。)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする。

「e-Gov 放送法」より

ちなみに、NHKに関する条文は15条にもあって、ここでも基幹放送を担って全国遍くテレビ受信が出来るようにしろと書かれ、更に「放送及びその受信の進歩発達に必要な業務」を行い、「国際放送もやれ」と書かれている。

しかし、前述した通りにテレビの普及は既に終了している。一方で、放送及びその受信の発達に必要な業務をNHKが負うべきなのか?という議論は今一度しなければならないだろう。

何故ならば、NHKが巨大資本で多数の番組を作成することで民業圧迫していることは明白であり、放送の発展に資する存在なのかがそろそろ怪しい。今やインターネットにも進出する勢いだが、そもそもコンテンツの充実はNHKの責務では無いのだから、某氏が主張したようにEテレの電波帯域は手放すべきなんじゃないかな。

何しろNHKは、巨額の受信料をバックに「NHK総合」「Eテレ」「NHK BS1」「NHK BS2」と4つも周波対を占有している。更に「NHKラジオ第1」「NHKラジオ第2」「NHK-FM」とラジオ周波数帯も独り占め状態だ。

これを巨額の受信料で維持していて、新しい社屋まで新築しようとしているのだから、「そのあり方について見直すべし」という意見が出てきてもおかしくは無かろう。

業務をスリム化して、受信料を下げろという議論は至極真っ当なのである。

BBCの話を切っ掛けに、日本国内でもこの話が整理されることを望みたいところだが、菅義偉氏が道半ばで総理の座を退いてしまったことが返す返すも悔やまれる。岸田氏は旗を振ってはくれないだろうし。

NHKの番組が嫌いと言うわけでは無いのだけれど、その規模やあり方には個人的に疑念を抱いている。分社化を軸に検討し直すべき時期に来ているよね。先ずは、放送法の改正が先決かも知れないが。

コメント

  1. >Eテレの電波帯域は手放すべきなんじゃないかな

    個人的にはEテレこそ残して欲しいです。
    民間では、面白いドラマやバラエティはともかく、
    最初から対象層が極めて少ない幼児向け番組とか、
    学習系は作らないんじゃないかと。
    朝にやっている幼児向け番組の、分母を幼児とした視聴率はすごいんじゃないでしょうか。
    (なお、民放でやっているヒーロー系はEテレより対象がはるかに多いと思っています。)

    Eテレに総合から「ニュースと天気予報」を移して、総合を手放してもいいような。

    • ああ、ゴメンなさい。ここは書き方が悪かった。
      僕の意図としてはEテレを止めろとNHKに言いたいわけではないのです。電波帯域を解放して、Eテレはネットで配信してねということですね。良質なコンテンツが増えることは歓迎すべき事ですし、好きなタイミングで見られる方式の方が、国民としては嬉しいですよね。
      NHK総合テレビは、ニュースと天気予報だけで十分という意見もありますが、一日中防災情報を流す媒体になるような災害発生時には、NHK総合テレビが存在する意味はあるわけで。ただ、NHK総合テレビでなければならない(その電波帯域でなければならない)という事はありませんから、何れにしても、電波帯域の占有を減らす方向で考えてほしいものです。

  2. 木霊さん、おはようございます。

    国営放送の在り方とそれを支える予算については、未だに矛盾だらけの制度が放置されていますね。

    NHKの闇の一つにOBが天下りしている子会社・関連会社への利益移転があると思いますが、何故か他のマスメディアは報道すらしていません。
    つまり、受信料のかなりの部分がNHKファミリー企業の原資となっていて、ここにメスを入れる気概ある政治家も皆無じゃないかな。

    ファミリー企業への利益移転を失くせば受信料は半分以下だって可能じゃないかと考えています。
    絶大な既得権をNHKが自ら浄化するなんてあり得ませんので、いつまで経っても利権の温床組織として生き残るつもりなんでしょう。

    そして、一番厄介で国益を損じているは、偏狭報道・誘導報道やフェイク情報垂れ流しが当たり前となっている事でしょう。
    少なくとも僕は無用の長物でしかなく、ハッキリ言うと存在すべきではないと思っています。

    • 公共放送と国営放送はちょっとその趣が違いまして。
      日本政府は寧ろ国営放送が出来るような体制をとるべきである様に思います。
      肥大化したNHKをスリム化するという話は、絶対に必要な議論であると思います。