通信途絶した自衛隊無人偵察機の価格を間違えて報じるNHK

防衛政策

通信途絶!……うれしそうだな、NHKは。

陸自無人偵察機が通信途絶 種子島沖に落下か 本体価格2億円超

2021年11月24日 14時52分

23日、自衛隊が演習で使っていた小型の無人偵察機が、鹿児島県の種子島沖で通信が途絶え、防衛省は海に落下した可能性もあるとして機体を捜しています。

「NHKニュース」より

確かに国民の税金で買った装備品である。粗末に扱ってもらっては困るわけだが、しかし、兵器が損耗することは避けられないのである。そこを間違っていないか?

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自衛隊に確認したのか?NHKは

機体価格は2億円?!

ところでこのニュース、噛みついたのはタイトルに「2億円超え」と書かれていたからである。

陸上自衛隊はおととしから小型の無人偵察機を本格的に導入していて「スキャンイーグル」の機体本体の価格は、1機当たりおよそ2億5000万円だということです。

「NHKニュース”陸自無人偵察機が通信途絶 種子島沖に落下か 本体価格2億円超”」より

イマドキ、ミサイル1発撃っても2億円超えることはさほど珍しくない。

例えば、PAC-3迎撃ミサイルはお値段の高めだが、米陸軍調達価格で388万ドルだと言われている。SM-3であれば2400万USドル。一方、価格的にはお安目のイラン製近距離防空用装備のアイアンドームは1発5~9万ドル程度だとされている。

5万ドルといえば、日本円に換算すると570万円相当である。388万ドルは4億5000万円相当となる。色々なセンサーなどを満載しているので、ミサイルが高コストになるのは分かる。特に、紹介したのは全て迎撃用のミサイルなので、価格は高くなりがちな点は割り引いて考えて欲しい。

では、肝心のスキャンイーグルは?というと、過去の記事ではこんなニュースが紹介されている。

部隊用スキャンイーグル1式13.6億円で

防衛装備庁は先頃、「UAV(中域用)」1式につき13億6836万円で双日と契約した。これは防衛省の他の資料等によれば陸上自衛隊向けの「スキャンイーグル」無人偵察機であり、機数は明らかにされていないが、2018年度予算による部隊配備用と見られる。配備部隊は去る3月26日付けで北熊本駐屯地に新編された第8師団第8情報隊とされる。

「航空新聞社」より

一式13億6896万円の契約であると報じられているので、この数字を信用した場合、機体価格が2億円といわれてもさほど驚かない。

ただ……、ちょっと僕の認識と合わないんだよな。確か3億円くらいのユニット価格だったというのを何処かで見たことがあるんだが。

問題の本質は価格に非ず

さて、価格の話はひとまず脇に置いて、陸上自衛隊の小型無人偵察機はいったいどんな訓練をやっていたか?について少し。

訓練中の小型無人偵察機の通信途絶について

令和3年度自衛隊統合演習に参加している陸上自衛隊の小型無人偵察機が、訓練 における飛行中に通信途絶となり、現在機体を捜索中です。

https://www.mod.go.jp/js/Press/press2021/press_pdf/p20211124_01.pdf

陸上自衛隊が旧種子島空港南において訓練をしていて、部隊名は「陸上自衛隊 情報教導隊」訓練予定空域が「種子島~同島南東空域」とある。

教導隊というからには、陸上自衛隊の職種学校絡みの部隊であることが分かるので、どうやら情報収集に関する指導をスキャンイーグルを使ってやっていた事になる。

もともと、スキャンイーグルのメイン任務が情報収集であるため、この情報に関しては何の不思議もない。そして、情報収集が無人機で行えるのであれば人員の損耗は少なくて済むわけで、積極的に採用して欲しいと、個人的には思っている。

で、通信途絶とあるので、通信可能範囲外に出てしまったということだろうね。こうなるともう捜索することは極めて難しい。海上で行方不明になると、広大な海を捜索しなければならないからだ。陸上に不時着していれば或いは見つかる可能性もあるのだろうけれど。

防衛省によりますと、全国各地で行っている「自衛隊統合演習」の一環として、この機体を使って情報収集活動の訓練を行っていたところ、23日夜8時半ごろ、旧種子島空港から南東におよそ25キロの海上で、通信が途絶えたということです。

「NHKニュース”陸自無人偵察機が通信途絶 種子島沖に落下か 本体価格2億円超”」より

しかし、教導用に使っている機体である。損耗したところでそんなに目くじらを立てねばならないことだろうか?これで自衛隊員が生死に関わる怪我をしたとか、民間に被害が出たとかいう話なら別なのだが。

スキャンイーグルのコンセプト

で、価格の話に戻っていくが、そもそもこのスキャンイーグル、低コストかつ大掛かりなインフラを必要としない無人機という開発コンセプトで作られたものである。

その機体のお値段10万ドルという数字に記憶があるのだが……。

カタパルトから発進する無人機「スキャンイーグル」(米海軍提供)。スキャンイーグルは、全長1.4メートル、全幅3.11メートル、機体重量13.1キロと小型軽量で、ガス圧式のカタパルトで発射し、ケーブルで引っ掛けて回収する。1機10万ドルと無人機としては安価で、扱いやすく、米海軍と海兵隊が情報収集用に配備している。ガソリンエンジンを搭載し、24時間以上の滞空が可能で、遠距離の索敵行動にも対応できる。遠隔操作のほか、事前プログラミングによる自律飛行も可能(2006年06月16日)

「時事通信」より

10万ドルということは1200万円弱というお値段になる。けっして安くはないのだけれども、2億5000万円はちょっと盛りすぎ。

一式13億6836万円という報道が出ているけれども、これだって、構成的には機体4機、空圧式ウェッジカタバルト、スカイフック捕捉システム、データ入力指揮装置、遠隔ビデオ端末が込み込みで、というお値段だろう。

そうすると、2億5000万円という数字は一体どこから出てきたのやら。

陸上自衛隊スキャンイーグル無人偵察機が訓練中に行方不明、1機1千万円(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
11月23日、陸上自衛隊の無人機「スキャンイーグル2」が種子島沖で通信途絶し海上に墜落したと見られ捜索中です。

同様の趣旨のことは軍事ジャーナリストのJSF氏もいち早く記事にしていて、一足遅れた感じはするけれどもまあ良いか。

過去にも破損

記事を探していたら、導入当初にも大破させていた事件があったようだ。

陸上自衛隊スキャンイーグル無人機、2014年11月に不時着大破していた

2015/03/18 22:05

陸上自衛隊がスキャンイーグル無人機を、2014年11月に大破させ今まで公表しませんでした。朝日新聞が2015年3月16日付けで報じています。

「Fly Team」より

この時も朝日新聞中心に随分と騒いでいたようだけれども、価格に関する情報は無かったな。

公表せず…購入間もない陸自・無人偵察機が緊急着陸

2015/03/16 18:16

陸上自衛隊の無人偵察機が緊急着陸していたことが分かりました。

緊急着陸したのは、陸上自衛隊が購入したばかりの無人偵察機「スキャン・イーグル」です。防衛省によりますと、去年11月、大分県の日出生台演習場で、スキャン・イーグル1機が部隊の訓練を撮影中、エンジンの不調で緊急着陸し、機体の胴体部分や翼の一部が損傷しました。けが人はいませんでした。防衛省は、事故の発生を公表していませんでした。

「テレ朝ニュース」より

大破と破損では随分と印象が違うのだけれど、エンジンの不調と胴体部分や翼の一部損傷ということであれば、修理可能という判断だったのだろう。

どのレベルで大破となるかは主観によるところも大きいと思うのだが、使ってみて壊すレベルのことまでやらないとしっかりとした運用が出来ないのも確かなのだ。

この件も含めて、マスコミはちょっと騒ぎすぎである。2億5000万円という価格を付けて報じたNHKは悪意しか感じないな。

コメント

  1. 木霊さん こんばんは

     費用でごちゃごちゃ言われるなら、低コストのトルコ、バイラクタル TB2、コンバットプローブン、でも大量導入するのは?竹島、尖閣諸島でなら重宝しそう。
    トルコは一応親日国で、現在経済も厳しく日本になら喜んで売ってくれるでしょう。あ、そういえば海上で使えるのかな?

    • バイラクタルTB2はかなり好評らしいですね。
      500万ドル程度で、海上での運用が出来るかどうかはよく分かりませんが、お値段的には魅力的でしょう。
      ただ、5時間しか飛べないという点を考えると、偵察用に使うのはちょっと不向きですね。
      バイラクタルTB2は攻撃用の兵装を積んで飛んでナンボという武器だと思います。

      無人機に関してはこれからも国内開発を含めて力を入れていかねばならない分野だと思います。ワンアイデアで世界に売れる国産無人機が出来上がると良いんですけどね。
      そして、国産無人機を開発する上でも、多少お高くても外国製の無人機を使い潰していくしかないという感じになる気がしますよ。