朝日新聞が心配する日本のTSMC工場誘致

報道

コメントをいただいた中で紹介いただいた記事ではあるが、ちょっとおもしろかったので短いながらも記事にしようと思う。

(社説)半導体補助金 最善の選択か再考を

2021年11月12日 5時00分

世界的な半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)が、半導体工場を熊本県に建設する。投資額は約8千億円。この半分の4千億円程度を日本政府は補助する方針だ。

「朝日新聞」より

朝日新聞のこの記事、不安をあおる目的の提灯記事となっている。ちなみに、提灯記事とは本来、団体や個人などを持ち上げるために書かれた記事のことであるが、どこを持ち上げる意図があるのかは皆さんが考えてみてほしい。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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経済安全保障と台湾

一定の意義はあると認めつつ

さて、朝日新聞の記事は時々は読みごたえのある記事も見かけるが、本日引用したこいつは基本的に駄文だ。読む価値は無いが、見方を変えると面白い。

社会のデジタル化は今後加速し、半導体の役割はますます重要になる。足元では自動車産業を中心に、半導体不足による減産が深刻化している。国内に工場を誘致し、安定調達を図ることに一定の意義はあるだろう。

「朝日新聞」より

半導体の需要が高まるので、TSMC工場誘致には一定の意義があるという事を認めていながら、その次の段落でこんなことを指摘している。

しかし半導体の安定的な確保は本来、電機や自動車といったユーザー企業が自助努力で行うべきことだ。

「朝日新聞」より

面白い指摘である。

確かに、半導体の安定的な確保をユーザー企業が自助努力で行うべきだという主張は一見正しそうに見える。大抵の場合、部品の調達は企業の判断、努力によって行われるからだ。

しかし、この話は前提となる部分が間違っているのである。

半導体供給の問題は安全保障に関わる

そもそものアメリカと支那との経済的な対立は、経済安全保障に根差す問題である。即ち、支那がアメリカの利益を侵そうとしたためにアメリカが激怒したという構図なのである。

日本は既にこれを喰らって叩きつぶされた後だ。

政府は米中対立が先鋭化するなか、台湾に半導体生産が集中するリスクも強調し、工場誘致は経済安全保障の強化につながるとする。ただ、台湾有事への備えならば、備蓄でも一定期間は対応できよう。緊急事態が長期化すれば、供給網の途絶はさまざまな資源や物品に及び、半導体の問題にとどまるまい。

米欧も同様の補助金で半導体工場を誘致しているのは事実だ。ただ、中台に近接する日本は、アジア太平洋の平和のもとでしか立ちゆかないことを忘れてはならない。米中が共存できる国際関係の構築に向けて尽力することこそ、日本が率先して果たすべき役割だ。

「朝日新聞」より

朝日新聞の描く構図は、アメリカ VS 支那で、日本はそこに巻き込まれているという形のようだが、そもそもそこの事実誤認が問題なのだ。

支那が経済的に世界支配に乗りだした時、アメリカが抱え込んでいる巨大なパイに手を出した。これが事の発端なのではあるが、経済安全保障の分野では防衛と外交がセットになる。即ち、アメリカが支那と対立して日本が巻き込まれたという事実誤認は、日本の地政学的な立ち位置を理解していないから引き起こされる誤解である。

半導体をテコにはしているが、台湾は西側陣営にとって防衛の要になってしまった。

そして、台湾有事が勃発すると言うことの意味は、半導体の供給ストップという単純な話ではなく、日本のシーレーンが脅かされる事態になることを意味する。台湾有事の勃発している最中に台湾周辺の海域を民間船に通過させるというのは愚かしい事であるし、日本のエネルギーの9割以上がそこを通ってくるのであるから、石油、石炭、天然ガスの供給に深刻なダメージをもたらす事に。

更にそれ以前の問題として、台湾有事の勃発は、尖閣諸島が侵略されることを意味し、また、先島諸島が戦火に巻き込まれることを意味する。残念な事に沖縄はそういう地理的条件にあるのだから。

つまり、台湾有事の時は日本は確実に当事者になってしまう。

したがって、半導体を確保出来たら台湾有事に見向きもしないなどという事にはなり得ないし、台湾だけに半導体の工場があるという弱点を常に持ち続けるよりは、TSMCの工場をアメリカにも日本にも、という風に分散させることで、台湾が侵攻されるリスクも低減することに繋がると、そういう構図なのである。

デンソーも参画

更に、こんな記述がある。

ソニーは工場への出資を表明したが、自動車業界の負担は明らかではない。高収益企業が応分の負担をしないまま、税金で支援することに、国民は納得するだろうか。

「朝日新聞」より

しかし、出資したのはソニーだけではないことは別に報道されている。

ソニーとTSMCの半導体合弁計画にデンソー参加へ、トヨタ系の供給先確保

8/27(金) 9:58配信

ソニーグループと台湾積体電路製造(TSMC)による半導体合弁事業計画について、デンソーが参加する方向で最終調整に入った。トヨタ自動車グループという一大供給先を確保することにより、経済産業省主導で熊本県に先端工場をつくる日台企業連合の大枠が固まった。半導体不足に苦しむ自動車産業の協力を取り付けて、経済安全保障にもつながるサプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化の国家プロジェクトが実現に近づく。

「yahooニュース」より

TSMC・ソニー、熊本に半導体新工場 デンソーも参画

2021年10月8日 19:00 (2021年10月9日 5:13更新)

世界最大の半導体生産受託会社である台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループが、半導体の新工場を熊本県に共同建設する計画の大枠を固めた。総投資額は8000億円規模で、日本政府が最大で半分を補助する見通し。TSMCの先端微細技術を使い、自動車や産業用ロボットに欠かせない演算用半導体の生産を2024年までに始める。半導体は米中対立で供給網が混乱し、経済安全保障上の重要性が増している。工場新設により、日本は先端技術と安定した生産能力を確保する。

「日本経済新聞」より

デンソーがどのような形で参画するかは今のところ報じられていないが、ココに加わることはほぼ決定事項だろう。

そして政府からも出資されるというのは、どう考えても経済案線保障の観点から「当然」という事になる。

朝日新聞はこのニュースをまさか知らなかったワケでもあるまい。敢えてスルーしたのだろうね。

アジア太平洋の平和の意味は?

で、上でも引用したが、こんな下りが。

ただ、中台に近接する日本は、アジア太平洋の平和のもとでしか立ちゆかないことを忘れてはならない。

「朝日新聞」より

安全保障の観点から、台湾の防衛は日本のシーレーンを守る上でも重要である点は既に言及したが、日本だけでそれを実現するのは困難であるから、どうしてもアメリカの手を借りることになる。

したがって、日米同盟で台湾との関係を深めることは寧ろ必要なことであるという理解になる。では、朝日新聞の言う「アジア太平洋の平和」というのは何だろう?それを乱しているのは他ならぬ支那であるので、その支那の暴走を抑える意味でも、台湾との関係を深める必要がある。そうではないか?

どうにも、朝日が言う「アジア太平洋」とは「支那の利益確保」という文脈にしか聞こえない。

答え合わせ

さて、この記事を書こうと思った理由は、こんな記事を書いたメディアが出てきたからだ。

「TSMCに約3900億円の支援効果があるか疑問」日本と台湾の“半導体駆け引き”揺れ動くか=韓国報道

2021/11/14 16:35配信

グローバルファウンドリー(半導体委託生産)1位の台湾TSMCが日本に対する半導体投資を本格化する中、日本政府の莫大な「半導体支援金」をめぐって日本国内で懐疑的な声が提起されている。

~~略~~

共同通信も「TSMCに対する支援が正式に決まれば、補助金が数千億円規模になるとみられる」とし、「個別企業を手厚く支援する意義などを国民に丁寧に説明することが求められる」と報道した。

日本政府は半導体の安定的な供給に向けて基金を創設し、支援する方策を進めている模様だ。

日本経済新聞も「半導体が供給過剰になり国際価格が急に下落すれば、TSMCに対する支援が“悪い補助金”になる可能性がある」と最近指摘した。

「Wowkorea」より

そう、韓国系メディアである。挙って日本の報道を引用しながら、日本政府が補助金を出すやり方を批判してきたのである。うける!

韓経:台湾TSMCに190億円拠出する日本…「サムスン挟み撃ち作戦」始まった

2021.06.02 07:51

半導体産業復興を試みている日本政府が台湾TSMCとの全方向的な協業に出た。日本の半導体産業の弱点に挙げられる先端半導体生産能力を育てることが目的と分析される。サムスン電子は緊張状態だ。ライバルの積極的な投資の動きに加え、主力事業であるメモリー半導体と未来の収益源として育成しているファウンドリー(半導体受託生産)のいずれも最近は停滞した姿を見せているためだ。

「中央日報」より

ちょっと前には中央日報がこんな記事を書いていたが、狙われたのはサムスンではない。いや、レッドチームに加わったらサムスンヤバいよ、というメッセージはアメリカから出ていたから、強ち外れというわけではないかも知れない。

が、アメリカの狙いが支那の半導体産業である事は言うまでもない。シェアを食い荒らされる前に潰さねばならない。

国の重要施設から中国製品排除…日本、米国の「ファーウェイ圧迫」に参加

2021.11.15 06:42

日本が米国の「ファーウェイ圧迫」に本格的に参加する。日本政府が来年の通常国会に提出する経済安全保障推進法案(仮称)に国の重要施設からの中国製品使用を排除する内容を盛り込む予定だと読売新聞が14日に報道した。

~~略~~

経済安全保障推進法案には半導体などの供給が滞る事態を避けるため、日本国内に工場を作る企業への補助金交付などを通じて国内回帰を誘導する案も盛り込んだ。萩生田光一経済産業相はこれに先立ち熊本県に工場を作る台湾の半導体メーカーTSMCを支援するために「必要な予算の確保と複数年度にわたる支援の枠組みを速やかに構築したい」と明らかにした。

「中央日報」より

そして、「ファーウェイ圧迫」の記事と。

韓国のことは中央日報のこの記事には全く触れられていないが、我関せずと言う立ち位置になっている。この中央日報の記事でも讀賣新聞の報道を引用する形になっているしね。

つまり、WowKoreaの記事がどういう構図かというと、日本の各新聞社に「代弁して貰った」という格好なのだ。韓国のメディアがこの問題を直接批判するというのは筋が悪く、韓国政府としても正面切って言うわけにはいかない。

だからこそ、支那の個分の韓国が日本の出先機関に記事をお任せしたのである。でも、「WTO違反になる」とか、流石に韓国メディアが直接いったら「オマエガ言うな」状態だよね。

コメント

  1. 木霊様 皆様

    さて、朝日新聞や韓国メディアが反対すると言うことは、日本の国益にかなう証拠?(笑)

    しかしながら、採算等の懸念  は一面の事実で、少なくともしばらくは採算も合わず、追加投資が必要な可能性も高いでしょうね。

    理由
      半導体産業専門家の分析
        https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2110/22/news034.html
      微細加工研究所 湯之上隆さん(ちょい韓国おしの方ではありますが、日本半導体連合とケンカ別れした元技術寄りマネージャ)の記事です。

      要点は
         1.成功の鍵は技術者確保と養成、だが今日本には人材がいない(既に引退)
         2.TSMC九州は経済合理性からはありえない。
      
    そうは言っても米国は腹くくりましたし、https://www.bbc.com/japanese/59300401 歩調を合わせない選択はありえず。

    すなわちこらからが本勝負!
     TSMC九州は、それでも勝つ必要のある大勝負でもあるわけで、岸田文雄首相はデジタル人材育成にも多額出資を表明されていますが、この中に半導体人材も含まれるのなら明るい兆しと言えますが、、これからも恐らく、半島の文ちゃんのごとく投資決定する必要が出るでしょうね。

    (失敗すれば、韓国から技術者を引き抜くという、イヤな選択を迫られる可能性まである)
    (マレーシアにはインテル設計部隊等、米国半導体メーカー技術者が大勢もいるので、こちらから?)

     (トピックに関係ないおまけ 湯之上氏の2019年の興味深い記事)
      https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/1908/19/news014.html  

     要点
      ・フッ酸は、99.99999999%という高純度より「残り0.00000001%の隠し味」がより重要で、工場や工程にあわせて隠し味をカスタマイズする能力こそが日本の薬品メーカーの強みであり、サムソン等は低純度〜高純度まで入手先変更はほぼありえず、それでも変更する場合、再カスタマイズに良くて2〜3年はかかるだろう。。 

    • リンク先の記事はとても興味深いものでした。
      教えてくださりありがとうございます。

    • 木霊さま

      どうやらブログの趣旨と大分違ったレスしてしまったようでご迷惑をかけ申し訳ありません。しかしここまで書いたので、ひとつこのレスだけお許し下さい。

      アメリカ腹くくった。1兆2000億ドル(約140兆円)インフラ投資法 成立
       https://news.yahoo.co.jp/articles/2725028e132899109a6774cc9e67e62d4a4d1822

      しかし日本、岸田さんもっと腹くくった。上記米国は5年ですが、日本は来年度55.7兆円
        https://news.yahoo.co.jp/pickup/6410105

      大学科研費 10倍
        https://news.yahoo.co.jp/pickup/6410111

      一見、財務省におもんぱかってるポーズとってますが、国債発行しなきゃできない大型投資
      明るい兆しが見えてきました。

       私たち国民としては、この投資に応える(ちょい厳しい^^; 若者様頑張ってm(_ _)m )
      ことこそ、日本を愛することですね。

      日本の大型投資: 国債大発行が必要、でも増税は不要 
       根拠
        ・髙橋 洋一さん(経済学者 元 大蔵省理財局資金第一課資金企画室長)
         https://gendai.ismedia.jp/list/author/yoichitakahashi
        ・浜田宏一さん(経済学者 東京大学名誉教授、イェール大学名誉教授、Econometric Society終身フェロー、元内閣官房参与)
          https://bunshun.jp/articles/-/50066
        ・新宿会計士さん
          https://shinjukuacc.com/20211111-01/
          

       の主張等々

       要するに
         日本の負債が大赤字なんてのはおかしい。世界標準の計算方法を用いれば赤字は米・独・英より少なくGDPの20-30%
       むしろ国債発行が少なすぎて流動性が疎外されてる。 (もっとも財務省天下り先の一部の業種は今のままの方が潤うが、、、)