敵基地攻撃能力の保有を検討する自民党

防衛政策

ちょっと宿題も頂いていたので、本日は敵基地攻撃能力、或いは策源地破壊能力の保有に関して少し取り上げてみたい。

【独自】「敵基地攻撃能力」の保有、首相が明記意欲…改定時期「できるだけ急ぎたい」

2021/10/16 07:42

岸田首相(自民党総裁)は15日、読売新聞のインタビューに応じ、敵のミサイル発射基地などを自衛目的で破壊する「敵基地攻撃能力」の保有について、改定する国家安全保障戦略への明記に意欲を示した。米国のバイデン大統領との首脳会談に向け、年内の訪米を模索する考えも表明した。

「讀賣新聞」より

敵基地攻撃能力の保有に関して、今まで国会で議論された事があったのか、無かったのか?も含め、今回のこの岸田氏の発言は、大変重い決断を含んでいると感じられる。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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敵基地攻撃能力の確保は法律に抵触する?

敵基地攻撃能力は違憲か

この手の話で、しんぶん赤旗を引用するのは気が引けるが、ミスリードを誘う意図はないよと言うことは先に述べておきたい。

「敵基地攻撃」は違憲

2020年9月10日(木)

辞任直前の安倍晋三首相が「敵基地攻撃能力」保有に道筋をつけようとしていることへの抗議行動が8日夜、首相官邸前で行われました。武器取引反対ネットワークが緊急に呼びかけ、市民や野党議員ら約50人が「敵基地攻撃能力は憲法違反」「武器より暮らしを」などのプラカードや横断幕を掲げ抗議の声をあげました。

「しんぶん赤旗」より

安倍氏が政権の座にいた時代に口にした敵基地攻撃能力だが、当然のように日本共産党にとっては反対しなければならない内容である。日本が防衛力を持っては困るからだ。

敵基地攻撃能力は、策源地破壊能力とも言われるが、策源地とは敵の出撃地の事なので、ほぼ同義ではあるが、その意図は少々異なる。本日は敵基地攻撃能力にスポットを当てていこうと思う。

で、赤旗にはこんな意見が紹介されている。

日本体育大学の清水雅彦教授(憲法学)は、相手がミサイルを撃つ前に「先制攻撃」をする敵基地攻撃は「国連憲章違反の行為になり、憲法と国連憲章と二重に違反する」と語りました。

「しんぶん赤旗」より

赤旗が訴えている内容の1つに、「違憲」であるという指摘がある。もう1つが「国連憲章違反」という指摘だ。

なるほど、面白いね。

野党から日本共産党、立憲民主党、社民党の国会議員が参加。共産党の井上哲士参院議員は、敵基地攻撃能力を持つとなれば、「専守防衛」といってきた自衛隊の装備を根本から変える兆単位の軍事費が必要になると指摘し、「憲法をじゅうりんし、日本を危機にさらすことはやめさせ、そのお金を命やコロナ対策、暮らしに回せと声をあげていこう」と呼びかけました。宮本徹衆院議員は、世界各国やアジア諸国に対し軍縮や平和の共同体づくりを呼びかけることこそ「憲法9条をもつ日本にしか果たせない役割だ」と訴えました。

「しんぶん赤旗」より

もう1つのキーワードが「専守防衛」である。

本日の記事はこの辺りを料理していこうと思う。

憲法9条の矛盾

左派が、「世界に誇る平和憲法」などと胸を張る、その論拠となるのが憲法9条である。しかし、この条文にはかなり穴があるとされているが、左派にとってその辺りの穴は気にしないらしい。

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

「e-Gov法令検索」より

これは日本人なら誰でも知っている憲法9条なのだが、普通に読むと「日本は戦力を持たない」という風に読める。念入りに、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」「国の交戦権は、これを認めない」とまで書かれている。

しかし、国連憲章第51条この様な記載ぶりになっている。

国連憲章 第51条〔自衛権〕

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

ここで書かれている事は、自衛権は「国家の固有の権利」であるということで、その自衛権とは個別的自衛権と集団的自衛権の両方を含むという意味の内容となっている。

つまり、国連は、他国に攻撃され侵略された場合に、国家が国民の生命財産を守る為に自衛の範囲で武力行使をすることは容認し、第三国が攻撃され侵略されている時に、集団で自衛する、つまり手を貸すことを容認しているのである。

そして、それは国家の固有の権利であると言う訳だ。

国民の生命や財産を守る為に規定されている憲法に、「その責務を果たさない」と9条に記載されていることはおかしいのである。

そしてこの条文を理解するためには、前文を賛頌する必要がある。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

「e-Gov法令検索」より

実は、日本国憲法は、周辺国が日本を攻めてこないから、だから日本は武力放棄をしたんだという流れになっているのである。

しかし現実はそうではなく、1950年に警察予備隊を設立した時点で、「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼」という点は崩れてしまっていた。問題を長きに渡って放置しすぎなのである。

解釈改憲

で、流石に「自衛権をも放棄している」では都合が悪くなって、「憲法9条は自衛権を放棄していない」というのが、現在の政府見解ということになっている。

そのロジックは割と苦しいので、ここでは割愛をしておくが、政府見解としては以下のような内容が知られている。

 わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。昨年私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろうという趣旨で申したのであります。この点防衛庁長官と答弁に食い違いはないものと思います。

「第24回国会 衆議院 内閣委員会 第15回」より

ごちゃごちゃ言っているけれど、政府としては敵基地攻撃能力は違憲ではないという見解を示しているのである。

簡単に言うと、「ミサイル攻撃に対する防御のために敵基地攻撃を行うことは、一定の条件を満たせば、自衛行為として可能である」と、そういう事だ。

超解釈だと思うのだけれど、国家は国民の生命財産を守る義務がある、だから、9条では自衛権までは放棄していない。敵基地攻撃能力も一定要件を備えれば、「自衛の範囲だ」というワケである。「風が吹けば桶屋が儲かる」理論だな!と、そう思うのは僕だけではあるまい。

国連憲章違反とはどう言うことか

さて、違憲かどうか?という判断に関しては、少なくとも政府は違憲であるという理解をしていないという事は理解して頂けたと思う。

そして、その理解が自民党だけかというと、そうでもないんだな。実際に民主党政権の時にもこの解釈を変更することはなかった。よって、与党も野党も「合憲」という理解で良いのでは無いか?え、ダメ?まあいいや。

で、国連憲章の話なのだけれど……。

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、

国連憲章第51条の冒頭部分、「武力攻撃が発生した場合には」の部分が、先制攻撃を禁じているという解釈を有無というのが一般的な理解出ある。

武力攻撃が発生する「前」は、自衛権発動の要件を満たさないという理解なのだが、この文言を巡っても議論はある様だ。つまり、固有の自衛権が認められており、かつ「武力攻撃が発生した場合」という限定条件にあっては、自衛に資さない状況もありうるという主張もある。

したがって、「先制攻撃」は「国連憲章違反」というロジックは、必ずしも正しいものとは言い難いのだが、日本政府としては「先制攻撃」は否定しているようだ。

つまり、一発は攻撃を受けることを甘んじるということなんだけれども……、一発で日本が事実上壊滅する事態を迎えるようなミサイル(核弾頭弾)も存在するわけで、攻撃を受けてから反撃するというのは不合理だと、僕は思うんだが。

さておき、政府見解としてはお胸「一定の条件」が「先制攻撃である」という話で良いとは思う。ただ、敵基地攻撃能力を保有する事は2発目以降を防ぐ意味でも機能するので、先制攻撃を禁じられているから敵基地攻撃能力を保有すべきでは無いという理解はオカシイと思う。

なお、厳密な意味で「武力攻撃が発生した場合」という意味は、「被害を受けたとき」ということではなく、「侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手したとき」としている。これが客観的に見ても、或いは国際的理解の上でも、許容されている事を考えると、被害を受けるまで手出しが出来ないというのは誤りである。ただし、現実的に侵略の意図があって攻撃の準備をしたと認定するのは、第三国をも納得させる状態でなくてはならないので、何らかの攻撃を受けた状況というのが分かり易いだろう。つまり、多少の被害は甘んじて受け容れざるを得ない状況ではあるのだ。

専守防衛の幻想

ちなみに、日本政府か専守防衛の方針を掲げ、したがって自衛隊は防衛能力しか有さないという事で、例えば空対地ミサイルやら弾道ミサイルなどの保有は頑なに拒んでいる。

ついでに言えば空母保有や原子力潜水艦保有などの話もここに関わってくる。攻撃力を持たない以上は、空母も原子力潜水艦も不要というワケだ。

しかし、「専守防衛」=「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し,その防衛力行使の態様も,自衛のための必要最低限度にとどめ,また保持する防衛力も自衛のための必要最低限度のものに限られる」というのは、もはや時代に合わない考え方である。

例えば、サイバー攻撃を受けた場合に防衛だけするというのは、凡そ現実的では無い。

ロシア、対米サイバー攻撃継続か 対話の効果見通せず

2021年7月7日 6:37 (2021年7月7日 15:36更新)

米国とロシア両政府がサイバー攻撃をめぐる協議を始めたことが6日、明らかになった。来週の会合ではランサムウエア(身代金要求型ウイルス)による攻撃を取り上げる。ロシアからのサイバー攻撃はいまも続いているとみられ、対話によって実効性のある抑止策につながるかは見通せない。

サキ米大統領報道官が6日の記者会見で、米ロの専門家がサイバー分野に関する対話を行っていると説明した。バイデン米大統領は6月中旬のロシアのプーチン大統領との首脳会談で、16種類の重要インフラを明示してサイバー攻撃の停止を要求。サイバー分野の専門家会合を立ち上げることで合意した。米国ではランサムウエア攻撃が相次ぎ、石油や食肉の供給に悪影響が出た経緯があり、対策が急務になっている。

「日本経済新聞」より

現実問題として、攻撃されたことを検知して防御するというのは難しい。サイバー分野においては攻撃こそ最大の防御なのである。

「中国、極超音速ミサイルを秘密発射…米国の予想よりも速い発展」

2021.10.18 08:07

中国が8月、秘密裏に核兵器搭載が可能な「極超音速ミサイル」を試験発射したと16日(現地時間)、英フィナンシャルタイムズ(FT)が情報筋5人を引用して報じた。

報道によると、中国軍は8月に極超音速滑空体(HGV)を搭載したミサイルを発射した。中国は一般的にHGVを軌道に打ち上げるために使用する長征ロケットを発射する場合、外部に発表してきたが、今回のミサイル発射は公開しなかった。

「中央日報」より

そして、既に迎撃が極めて困難なミサイルが開発されており、防衛一辺倒というのではもはや国民の生命や財産を守れない時代になっているのである。いや、結構以前から専守防衛というのは破綻した考え方ではあったんだけれども、自衛隊が防衛力を強化する建前として使われていた言葉なのだ。

だが、それは言ってみれば幻想の類であり、有効とは言い難かった。そして近年更にその傾向は強くなっている。

敵国条項の話

そして、もう1つ議論しておきたいのが「敵国条項」である。

多くの人は余り認識していない過去の遺物なのだが、しかし厳然として存在しているのは事実である。

そもそも敵国条項とは、国際連合憲章にも記載があるのである。敵国条項は、第2次世界大戦争中に連合国の敵国であった国(枢軸国)=日本、ドイツ、イタリア、フィンランド、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、タイなどの国々が連合国に対して刃向かっちゃダメだヨ、というような無理のある話。

1.安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。

2.本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。

 ー国際連合憲章第53条

この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。

— 国際連合憲章第107条

戦争が終結して70年以上経ってなお、この条項が国連憲章に残っている事自体が大きな問題なのではあるが、日本政府はこの敵国条項の削除を継続して求め続けている。

死文化された内容であると言われているが、しかし今なおこれを持ちだしてくる国も存在するので、影響が未だあると考えた方が良い。

そして、敵基地攻撃能力の話はここに関わる可能性が若干はある。例えば、自衛の範囲で敵国と戦った上で、必要に応じて敵国の基地を破壊するために敵国に上陸するなどと言う事態担った場合、相手が連合国側に属する国であると、「侵略した」という事実だけ取り上げられて国連加盟国に袋だたきに遭うというような流れになりかねない。

ただ、現実的に考えて、こういったルートに入らないような同盟関係を維持し、国際協調をしながらの行動であれば、こうした敵国条項に関わるケースは滅多に無いと思われる。そう言う意味でもアメリカとの同盟維持は、結構日本の命運を握った話であるとも言える。ただ、アメリカは直ぐに裏切りをするので、イギリスやインド、オーストラリアと言った連携が採れる相手との協調はとても大切である。

敵機基地攻撃能力保有は有効か?

「核の傘」「核シェアリング」の幻想

さて、上で議論した通り、敵基地攻撃能力の保有そのものは憲法や条約、国連憲章に反しない範囲での運用の土地がある事は明らかである。「これらに抵触する可能性のある運用もしうるのでダメ」というのは、議論として成立しない。

むしろ、憲法や国連憲章に違反しない範囲で運用するやり方を議論していくべき話で、議論もダメと締め出すのは国会議員失格だろうね。

ところで、敵機基地攻撃能力保有の話をすると、「核の傘」や「ニュークリア・シェアリング」の議論も関連して出てくる。

核の傘とは、例えばアメリカとの同盟関係を維持し、日本が核攻撃を受けた場合にアメリカが報復攻撃をしてくれますよ、というような考え方なのだが、アメリカ一国に依存することは凡そ現実的では無いし、アメリカが確実に報復してくれるとは限らない。

核禁条約参加と「核の傘」依存、法的制約なし 公明もオブザーバー参加要求

2020年10月25日 22時52分

 発効が決まった核兵器禁止条約について、日本政府は、米国の核兵器に守られる「核の傘」に依存する安全保障政策を理由に反対している。しかし、日米安保条約に核兵器に関する記述はなく、政治決断次第で、条約に参加しつつ日米同盟を維持することは可能との主張は根強い。発効決定を機に、条約に背を向ける日本の姿勢に批判が強まるのは確実だ。

「東京新聞」より

東京新聞は「核の傘」などといっても、条約に記載されたわけでもないので、本当に日本を守ってくれるのか?と疑念を呈している。この懸念は正しいと思う。アメリカはアメリカの利益の為に攻撃する国なので、日本からの要請があったからと言って、核兵器をぶち込むとは限らない。

利益にならないケース、例えば日本の敵国と握っている場合などを考えると、説得力はあるだろう。

この話はニュークリア・シェアリングにも共通する。核シェアリングは、例えばアメリカの核兵器のボタンを日本も持つ。アメリカの核兵器を日本国内に配備するという考え方なのだが、これも日本が核兵器のボタンを押しても、アメリカが「撃たない」と決めれば意味がない。結局、核の傘議論の延長線上にある話に過ぎないのだ。

そもそも、日本が敵国に攻撃された時に、「同盟国」が直ぐに駆けつけてくれるとは限らない。

敵基地攻撃能力では移動式車両の攻撃ができない

では、敵基地攻撃能力保有は必要ではないか?という話になるのだが、これも有効性に関しては懸念がある。なお、この議論では弾道ミサイルや巡航ミサイルの保有が前提になっている気がする。

「敵基地攻撃能力」では弾道ミサイルを阻止できない根拠と実戦例

2020/7/17(金) 3:14

6月15日に河野防衛大臣はブースター落下問題を理由として弾道ミサイル防衛システムのイージスアショア配備計画を停止すると表明、6月20日に安倍首相は代替計画として敵基地攻撃能力の保有も含めて議論すると表明しています。

イージスアショアは北朝鮮の核弾頭付き弾道ミサイルを防ぐ目的で計画されていた以上、代替計画はこの目的に貢献するものでなくてはなりません。それでは北朝鮮の弾道ミサイルを敵基地攻撃能力で防ぐことは本当に可能なのでしょうか?

「yahooニュース」より

軍事ライターのJSF氏の記事を引用させて貰ったが、現在の弾道ミサイルは車載式なものが多い。日本が公然と懸念している北朝鮮のアレも車載式ミサイルである。

img

このミサイル、実はデコイだという噂もある(重量物であるミサイルを載せているのに、タイヤに重量物を運んでいる様子が見られない)が、しかしこういった車載式の弾道ミサイルを撃たれれば、移動目標である車両を撃破することは困難だとされている。

しかし、それでも敵基地攻撃能力が全く無駄になるという意味ではないのだ。敵基地を攻撃する意思を持ち、その手段を持っていることこそが重要なのである。

懲罰的抑止力には打撃力が不足

ちなみに、「報復能力」として敵基地攻撃能力を保有する事も視野に入れる必要はあるが、これはこれで運用が難しい。

懲罰的攻撃は、寧ろ国連憲章に抵触する可能性があるのだ。

ミサイル発射に関わる基地を攻撃する、という事であれば未だマシだが、報復措置として民間人の住む街を攻撃刷るというのはNGになってしまうからだ。

コレが有効になる為には、ソレこそ核兵器でもなければどうしようもない。

相互確証破壊とは 核攻撃抑止へ「恐怖の均衡」

2020年8月26日 2:00

冷戦時代、米国と旧ソ連は相手から大規模な核攻撃を受けた場合、相手国を確実に破壊できる報復用の核戦力を、見つかりにくい潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の形で保有した。その結果、米ソは互いに報復を恐れ先制核攻撃に踏み切りにくくなった。こうした「恐怖の均衡」状態を当時の核戦略家は「Mutual Assured Destruction(相互確証破壊、頭文字をとってMAD)」と呼んだ。

「日本経済新聞」より

核抑止力の分野では、相互確証破壊という概念が「有効だ」とされている。これは、相手方と同等の核による打撃力を保有し、やられたらやり返されるので、先に手を出したら負けという状況を作り出すという概念である。

コレには相当数の核兵器を保有する必要があるとされていて、凡そ日本において実現する話とは言えない。

というわけで、通常弾頭の弾道ミサイルや巡航ミサイルを持ったところで、「抑止力」とするには役者が不足していることとなる。

敵基地攻撃能力だけに拘るのは間違い

単純に、やられたらやり返す力を保有する意味で、敵基地攻撃能力を保有するには意味がある。これは小規模な紛争を抑止することは期待できるからだ。

敵基地攻撃能力を保有する国と、保有しない国どちらを侵略するか?といえば、そりゃ後者の方がやりやすいことには間違い無い。しかし、嫌がらせレベルでは無くて、本腰を入れて侵略してくる場合には、さして意味をなさないだろう。

そこで出てきた話がこちら。

「原子力潜水艦は必要か」総裁選4候補の考え方

2021/09/27 11:30

「日本も原子力潜水艦の保有を検討するべきか。総理になったら検討するという方は挙手を」。番組キャスターの問いに、河野太郎規制改革相(58)と高市早苗前総務相(60)の2人は、迷うことなく手を上げた。

自民党総裁選投開票日を3日後に控えた9月26日、河野氏、高市氏、岸田文雄前政調会長(64)、野田聖子元総務相(61)の4候補が、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分~8時55分)にそろって生出演した。

番組では、中国の海洋進出に対抗するため、アメリカ・イギリス・オーストラリア、3カ国がインド太平洋地域での新たな安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設し、オーストラリアがアメリカ・イギリスの協力で原子力潜水艦を導入する方針であることが紹介された。

これを受け、河野、高市両氏が日本も原潜を持つことに前向きな姿勢を示した。一方、岸田、野田両氏は保有に慎重な姿勢を示した。

以下、番組での主なやりとり。

「東洋経済」より

これは自民党総裁選挙に関する議論の一幕なのだが、木の葉脚が出てきた背景に引用部分にも書かれているようにAUKUSの話が関わっている。

オーストラリアが原子力潜水艦を保有?!という話なのだけれども、じゃあ、日本は保有する利益があるのか?という話になったのである。

日本が保有する場合に、核弾頭を搭載したミサイルを運用するという使い方は非常にハードルが高い。日本の保有する潜水艦は近海を防衛するには非常に有用だが、原子力潜水艦は運用方法が全く違う兵器であるため、1から運用体制の構築が必要となる。

しかし、日本がシーレーン防衛を考えていく為には、原子力潜水艦の保有は視野に入れねばならない。足の速い原子力潜水艦を保有し、支那のA2ADを破壊することは、南シナ海の平和を維持するためにも必要なことである。

28年ぶりの大演習

あまりメディアで積極的には取り上げられていないニュースだが、こんな話がある。

陸上自衛隊10万人動員、28年ぶりの大演習…「いかに早く部隊送り補給するか」課題洗い出し

2021/10/16 15:21

陸上自衛隊の全部隊が参加する訓練が全国各地で行われている。約30年ぶりとなる最大規模の演習だが、食料をトラックに積み込んだり、人員を移動させたりするなど、基礎的で「地味」な内容が中心だ。日本の周辺で緊張が高まる中、本当に自分たちは有事に対応できるか――。訓練の背景には、陸自のそんな葛藤が見える。

「讀賣新聞」より

部隊展開と兵站の構築の訓練ということのようだが、やっている事は非常に地味である。しかし、地味だからこそやる価値がある。コレが自衛隊の足腰を鍛えることに繋がるのだから。

防衛費「GDP比2%以上も念頭」 自民が政権公約、力での対抗重視

2021年10月12日 22時00分

自民党は12日、衆院選の政権公約を発表した。安倍政権時代に比べ、軍備増強を図る中国や北朝鮮を念頭に、力による対抗策に重きをおいた安全保障政策を打ち出し、岸田文雄首相が唱える分配重視の経済政策を掲げた一方、財政規律への目配りには欠けた内容だ。選択的夫婦別姓制度をめぐっては「国民の声や時代の変化」を受け止めるとの表現にとどまった。

~~略~~

さらに、2022年度から防衛力を大幅に強化するとし、新たな国家安全保障戦略や防衛大綱を策定すると説明。これまで対国内総生産(GDP)の1%以内におおむね抑えられてきた防衛費について、「GDP比2%以上も念頭に増額を目指す」と踏み込んだ。

「朝日新聞」より

自民党の公約で、防衛力の強化が挙げられた。コレに脊髄反射的に反論してきた敵性勢力もいるのだが、なんとその一員に与党である公明党がいたと言うから恐れ入る。

1%枠という幻想に囚われず、必要な強化を目指していくというのは、時代に合わせた動きである。特に近隣諸国が防衛力を強化している現状で、いつまでも防衛費を抑え続けるのは現実的では無い。

そしてその「必要な事」というのは、上に紹介した大演習のような訓練や、隊員の手当などの充実を図る為に費やされるべきで、目立つ兵器を配備する事に拘ってはならない。

必要「最小限度」とはどの程度か

最小限度でも有効な打撃力を持つ。それが、日本が進むべき道だろうと思う。日本にはアメリカのような真似は出来ないし、すべきではない。空母打撃群の保有なども現実的では無いだろう。ただ一方で、最小限度に留めるために、積極的な攻撃力の保有というものも検討すべきである。

「最小限度」を目指す為には、専守防衛との相性が悪い。両立というのは矛盾した話になるからだ。例えば格闘技で、防戦一方で相手を押さえ込むには相手側に対して極めて高い能力を備える必要がある。日本の状況では、北朝鮮を相手にしても「専守防衛のみ」というのは無理がある。

したがって、侵略戦争は放棄する、その方針は良いが自衛に最低限必要な軍備を保持する事は、憲法にも謳うべきだ。その上で、その能力を獲得して行くことこそが必要なのだ。

ところで、最後まで「敵基地攻撃能力」とは何なのかについて言及してこなかった。だが、途中で言及したように、大抵は弾道ミサイルや巡航ミサイルの事だと理解される風潮がある。しかし、なにも地対地ミサイルに拘る必要はない。必要であれば戦闘機に空対地ミサイルを積んで攻撃するというのも、アリだし、艦対地ミサイルを保有する艦を保有しても良いだろう。場合によってはサイバー攻撃で敵基地を攪乱したり、電磁波を使うというのも選択肢とすべきだ。潜水艦から発射するタイプもありだと思う。

敵基地攻撃能力の獲得は、イージス・アショアの代替案として浮上してきたような雰囲気がある。しかし、現実問題としてそんな位置づけでは議論に絶えられまい。

また、敵基地攻撃能力はミサイルさえ手に入れればOKというシロモノではない。一番大切なのは、ミサイルを撃ち込むべき場所を特定する能力で、その次にその場所に正確に打撃力を加える能力が必要となる。弾道ミサイル・巡航ミサイルなどはその一例に過ぎない。それはサイバー攻撃を仕掛ける場合でも同様だ。一番重要なのは寧ろ諜報能力の充実なんだよね。

……でも、そういう議論は余り見かけないんだよねぇ。そして、そうした能力を保有する事は何れにしても日本の防衛政策にとって大きな転換を意味する。

そんなわけで今回の選挙は、日本の防衛方針の転換を問う、そんな選挙にして欲しいところなのだが、果たしてそうなるのかどうか。準備が出来ていたとは言い難いからね。

コメント

  1. 木霊様、皆さま、今晩は

    ややこしい話は置いといて・・・日本にちょっかいを出すと、タダではすまないよ、済ませないよ、という意思表示ににはなると思います。
    そのために「使うつもりがない」装備を持つのもアリでしょう。
    問題は、過激な【一部】自衛官がそれを使ってしまう事でしょうかね。そうならないように、どのように担保するか、が問題でしょうね。
    ・・・旧軍にも過激な【一部の兵士】がいたわけだし。

    • やられたらやり返す意志を示すことは、重要ですよね。
      そういう意味でも核兵器の保有の議論くらいはすべきかもしれません。

      一応、今の自衛隊はシビリアン・コントロールで統制される事になっていますが、どこまで歯止めは効くのでしょうね。

  2. 核シェアリングは、非保有国に侵攻した敵の撃退用で
    抑止力を分け与えるものではない
    (アメリカが、味方の国に核兵器を投下するという罪から逃れる方便)ので
    日本としてもお断りですね

    • 現実的な核シェアリングとしては、爆撃機が核弾頭を積んだミサイルをぶら下げて飛ぶスタイルらしいですが、決定権は完全にアメリカです。
      いざという時には役には立たないでしょう。

  3. 木霊様、皆様 こんばんは!
     ニュース&リクエスト回答ありがとうございます。

     敵基地攻撃能力は、攻撃力だけじゃなく、重要なのは 情報・諜報能力+国家間政治力であって、その中から最小限とか歯止めを探っていくべきと言うことですね。

     今度の選挙やその後の国会では、防衛政策の転換方法が競われ、敵基地攻撃能力の是非などではなく、保有が前提で、具体的方策論で真に日本を守れるのはどちらの方法だ! の権謀術数の優劣を与野党で激論するような形が理想なのかなあ? 

     無いものねだりしても仕方なく、自民内で揉んで、よい方策を考えてもらう。そのためにも自民圧勝してもらうのが個人的な希望ですね。

     -また余談すみません-

     ①立憲さんは浮世離れしすぎ!吉村大阪府知事に「外野は黙ってろ」と言われて反論できない。のは国会議員・野党を長く続けていると行政との接点がなくなり、、行政と接点を持ち続ける与党にいないと国会議員は成長できず、劣化するしかない、今のシステムの問題ですかねえ? 

     ②実は「敵基地攻撃能力」って、まあ何ともロコツな仮想敵を怒らせるネーミングで、せめて「抑止防衛力」ぐらいの表現にすれば良いのにとも思っていましたが、音楽大好きさんの言及されるように「ハッタリも抑止力」と考えればそれほど悪いネーミングでもないわけですね。

    • 内容がリクエストに応えられたものであったかどうかは自信はありません。
      が、この程度の事しか書けないので、もっと勉強したいと思います。

      余談について、各政党の政見放送を見かけましたが……。
      政治家というのは凄いものですな。口先八丁で、四角いものも丸いと言う。アレで騙される人もいるのでしょう。国民は冷静に、冷徹に彼らの掲げる政策をしっかり吟味すべきだ、改めてそう思いました。

      • 木霊さん こんばんは!

        再度ありがとうございます。抑止力の程度の難しさ、、、木霊さんを勝手に私と同じ技術畑の方と想定すれば、、、ちょっと技術屋だけで結論を出すのは乱暴、議論が必要なこと、と今はとりあえず理解しています。

        ただ一部、音楽大好きさんはじめのご意見「ハッタリも抑止力」と考えるなら、技術妄想も可能かなと(^^;

         また妄想しか書けずに申し訳ないのですが

        軍事転用すればすごいことになりそうな世界トップレベルの宇宙技術・航空技術の基礎は、ご存じのように日本は多く抱えており(JAXA、防衛大等)、現在は風洞レベルだったりしますが、これを実機実証レベルにするような国家予算の使い方は「ハッタリ抑止力」としては有効なのではと。

         例えば以下の「実スケール実験の障害はほぼ費用だけ」の研究にドンと金を出す。のはハッタリ抑止力にならないかな?

          ①https://www.jaxa.jp/projects/rockets/hyflex/index_j.html
             極超音速機・エンジン。もちろん極超音速ミサイルの基礎、現状風洞レベル、、、

          ②https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2019/doc/nishioka.pdf
         フェーズドアレイレーダーを大出力化するマイクロ波兵器、索敵 即 撃墜の恐ろしい兵器です。現状数メーター離れた模型ドローンを墜落させる程度の出力しかありませんが、、、

          ③https://www.jstage.jst.go.jp/article/tstj/3/0/3_0_7/_article/-char/ja
            レーザー宇宙船推進 3〜6万キロ上空の宇宙船の推力として、地上高強度レーザーを集光するフューズドアレイ・レーザー。フェーズドアレイですから照準は②と同じく一瞬。実験は必要出力の1/100で行われていますが、、、

           (もし②③は複合できればスゴイ、ロフテッド軌道ミサイルならカンタンに打ち落とせる?)

        ところで政治家の口先八丁ですが、、、、

         出来れば選挙の場面では使って欲しくないですが「アジテーション力」は良い政治家には備えて欲しい能力とは思います。

         ノーベル経済学賞ポール・クルーグマンも認める天才ケインズ理論実践者で、ニューディール政策を失敗と嘲笑い、自国どころかヨーロッパの敵国をも世界大恐慌の傷から回復させ、、、、しかし最後は暴走してしまった、ちょび髭のオッサン、、、が経済回復に手腕を振ることが出来た要因の1つは、彼が天才アジテーターでもあったことじゃないかな?と思っています。
         名総理 菅さんに不足していた才能かな、、、 

  4. こんにちは。

    >一番重要なのは寧ろ諜報能力の充実なんだよね。

    その意味では、一朝事あらば、敵兵士を寝返らせ、敵国民衆を反乱に導き、獅子身中の虫とするべく種をまいておくのも「敵基地攻撃能力(攻撃力を無力化すると言う意味で)」かもしれませんね。

    ……既にこっちに対してずっと仕掛けられてる気もしますが……

    • 超限戦というヤツですな。
      そして、支那はソレに長けておりますから、実戦を交えずに勝利するような工作を仕掛けてくるでしょう。
      我々は、それをしっかりと認識した上で対処する必要があると思いますよ。