感染拡大初期において、強力な対策を講じることで武漢ウイルスを押さえ込む事ができることは知られている。事実、ニュージーランドはその方法でこれまで対処してきた。
NZ首相、「コロナゼロ」戦略断念 デルタ株封じ込めできず
2021年10月4日 17:06
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相は4日、これまで推進してきた「コロナゼロ」戦略について、主要都市オークランド(Auckland)での新型コロナウイルス感染封じ込めに失敗したと認め、新たな取り組みが必要だと述べた。
「AFP」より
しかし、今回はその方針を断念せざるを得なかったようだ。
戦略ミスだったのか?
収束には至らず
そもそも、「感染」の定義が問題なんだよね。何度もこのブログでは指摘したのだけれども。
武漢ウイルスの「感染」という定義は、これまでの感染症の常識が通用しにくいものだ。一般的に、感染症はヒトの体内に病原性の微生物が侵入し、定着し、増殖することで成立する。ただし、症状が現れる場合(顕性感染)と症状がハッキリ現れない場合(不顕性感染)があり、多くの感染症は不顕性感染の場合は二次感染を引き起こし難いのだが、武漢ウイルスの場合、どうやら不顕性感染が感染爆発に寄与する率が高そうなのである。
これが対策を講じることを難しくしている。

これ、ニュージーランドの陽性判定者数を示すグラフなのだが、日本の現状を考えると「ほぼ感染者がいない」レベルである。

死者に関してはこのレベルだ。今のところたった一人という
そう言う意味ではニュージーランドの感染症対策は有効だったのだ。ただ、今回のケースは感染収束に至らずに再び増加の傾向を見せ始めている。
ニュージーランドのロックダウン作戦
ニュージーランドで行っているロックダウン作戦は、かなり厳格なものとなっている。警戒レベル4ともなると、恐ろしい程行動が制限される。少なくとも日本の「緊急事態宣言」とはレベルが違う。
警戒レベル4での暮らし | Living at Level 4
警戒レベル4で義務付けられること:
・ 自宅待機-どうしても外出しなければならない時以外は、不要不急の外出を避けましょう
・ バブルを守る-バブル内ではお互いの健康管理に注意し、バブルを守りましょう
・ 対人距離2メートル-どうしても外出しなければならない時は、バブル外の人からできるだけ離れましょう
・ 軽い運動や散歩のための外出は自宅近辺に限定します
・ 買い物には最寄りのスーパーを利用します
・ ステイホーム (テレワーク、自宅学習)-出勤が許可されている場合でも、厳しい制約があります。
・ マスク着用-公共交通機関、駅/停留所/空港、航空機、タクシー、ライドシェア、医療機関、警戒レベル4で営業する接客業・サービス業などの利用時は、必ずマスクを着用します。適切な対人距離が取れない場所でも、マスクやフェイスガードの着用をお勧めします。
・ 定期的に手を洗って乾かす-基本的な衛生対策 (手洗い、咳やくしゃみをする時はひじで口や鼻を覆う、飛沫が付着しやすい表面の定期的な拭き掃除) を実施することが重要です。
・ 外出記録-NZ COVIDトレーサーアプリ又は新型コロナ追跡記録を使用するか、メモ書きを残します。万一の場合、この記録が迅速な接触者追跡に役立ちます。
「ニュージーランドのサイト」より
買い物で家から出るにも制約があるし、仕事なんて以ての外というような状況になる。
そもそも「警戒レベル4」で営業可能なのは、「スーパー」「薬局」「銀行」「フードバンク」「セルフサービスのランドリー」「医療機関」だけである。勤務状況も極めて強く制限される。
まあ、レベル4の状態が長く続けられはしないのだが、「短時間で強力な制限」のお手本のようなやり方だね。
ニュージーランド、全土ロックダウン 感染者1人確認で
2021年8月18日
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は17日、男性1人が新型コロナウイルスの陽性と判定されたとして、全土で緊急ロックダウンを実施すると発表した。同国で市中感染者が見つかったのは半年ぶり。
感染者は58歳で、オークランド市で確認された。12日から症状がみられるとされ、当局はデルタ変異株に感染したとみている。
「BBC」より
ただ、今回のロックダウン開始は、デルタ株感染者1人が発見された段階で実施が決定され、全国的なロックダウンはその後8月31日まで継続された。
オークランドのロックダウンは9月末まで続けられ、今は一部緩和の方向に舵が切られたようだ。
インド株(デルタ株)に敗北
武漢ウイルスのインド株(デルタ株)の感染力は極めて高く、これまで殆ど感染者ゼロに押さえ込んできたニュージーランドも「もうダメだ」と音を上げた。
アングル:デルタ株が覆すコロナの概念、規制社会に逆戻りも
JULY 28, 202111:34 AMUPDATED 2 MONTHS AGO
新型コロナウイルスの中でインド由来のデルタ株は最も感染スピードが速く、適応力が高い一番手ごわい敵であり、各国が規制解除や経済再開に動いている最中で新型コロナ感染症を巡る概念を覆しつつある――。これがウイルスや伝染病の研究者の見解だ。
ロイターが取材した新型コロナウイルスの有力専門家10人によると、ワクチンは依然として重症化や入院を防ぐ上で非常に高い効果を持ち、リスクが最も大きいのはワクチン未接種者である点に変わりはない。だがデルタ株は、従来株や他の変異株に比べてワクチンを完全に接種した人への感染力が強いことを示す材料が増えてきており、そこからさらに感染が拡大するのではないかとの懸念が生じているという。
何人かの専門家は、その結果としてワクチンが普及している国でさえ、特定条件下でのマスク着用、物理的距離の確保といった措置を再び導入する必要があるかもしれないと警告した。
「ロイター」より
インド株の猛威はイギリスを覆い尽くし、インドを覆い尽くし、アメリカでも爆発的な感染を記録した。

幸いにもアメリカの状況も落ち着きつつあるが、ワクチン接種で抑え込みに成功したと喜んだのは一時的なものとなってしまった。とはいえ、アメリカでは感染症対策の殆どを止めている。今やマスク派も少数となっていて、その状況で感染が落ち着きを見せている事を考えれば、一体何が感染予防に効果があるのかよく分からなくなってしまうね。
「ゼロに戻らない可能性」
結局のところ、ロックダウンに支払うコストが高すぎるのである。
NZの新型コロナ感染、ゼロに戻らない可能性も=保健局長
2021年9月22日12:54 午後
ニュージーランド(NZ)のブルームフィールド保健局長は22日、新型コロナウイルスの市中感染をゼロに戻すことはできない可能性があるとの見方を示した。
ニュージーランドは昨年、コロナの封じ込めに成功し、今年も2月の小規模な感染を除けば、8月にデルタ株が広がって全土のロックダウン(都市封鎖)が発表されるまで感染をほぼゼロに抑えていた。
~~略~~
ブルームフィールド氏はラジオ・ニュージーランドで「ゼロには戻らないかもしれないが、重要なのは感染を見つけ、接触者追跡を基本的に継続し、検査・隔離を行うことで市中感染の拡大を阻止することだ」と述べた。
「ロイター」より
9月の中頃にはもはや断念する方向に動き、ニュージーランド政府も今月に入って「ゼロコロナ戦略」を放棄する方向で舵を切った。
アーダーン首相は記者会見で「今回の感染拡大とデルタ流行でゼロに戻すのが非常に難しくなった」と説明。「いつかは戦略転換が必要になると見込んでいたが、デルタ感染拡大で転換の時期が早まった。ワクチンが転換を支えることになる」と述べた。
保健当局がこの日発表した新規感染者は29人で、大半がオークランドで報告された。オークランドでは約50日前からロックダウン(都市封鎖)が敷かれている。
「ロイター」より
ニュージーランドは、今後は積極的なワクチン接種作戦に移行する予定らしい。

ここのところ接種が鈍化する傾向にあるが、1回目の接種は65.5%、2回目の接種は39.7%となっているので、これを加速させることで、強力なロックダウン作戦の繰り返しを止める方針に切り替えたということになる。
日本の政治家の中にも「ゼロコロナ」という意味不明の単語を使いたがる方がいたと思うが、結局のところ武漢ウイルスの撲滅というのはよっぽどのことがない限りは不可能なのである。
封じ込めに成功している国「支那」
支那はよくもまあ撲滅作戦を継続していると関心するが、その数字を信用出来ない以上は実効性も期待できない。

スゲーな。
もはや何を信用して良いのか意味が分からないが、感染者だって多数外国から入ってくるはずなのに、支那国内に入ると唐突になくなってしまう。
いくら支那と親和性の高いニュージーランド政府とはいえ、これを真似した対策というのはやはり無理があるだろう。
ニュージーランドのトップは女性総裁として頑張っているとは思うけれども、この段階で路線変更出来る「決断」は大切である。経済的なダメージがどの程度出たかは知らないけれども、通常の生活に戻るための戦略を模索するしかない段階に来ているのだろう。
日本として、このニュージーランドの決定が参考になるか?というと、厳格なロックダウンが実現不能である事と、既に「ゼロ」で押さえ込める段階ではない状況なので、殆ど参考にはなるまい。ロックダウンは万能ではない、という今後の政策の参考にはなるかも知れないが。
コメント
木霊様こんばんは! 後半、妄想が入ることをお許し下さいm(..)m
「検疫」は、戦に例えれば「籠城戦」で永遠に続けることは出来ず、勝利条件は
⓵援軍(ワクチン)到着 ②包囲陣の兵站限界による撤退
ですが、世界的パンデミックでは②は望み薄、で⓵ワクチンが頼みの綱ですが、2021.10/5現在でニュージーランドは2次42%と、籠城勝利条件を満たしていません。隣国韓国も同様ですね。
例え話から離れると「検疫」の弱点は「免疫を獲得できない」ことであり、これを補うため「検疫に成功している国ほど、ワクチンは不可欠」で、かつウイルスどもの変異攻撃を躱すには短期間大量接種が有効です。
支那は不活化ワクチン(すなわち不活化前のは単なるコロナウイルスの大量生産体制)について群を抜く世界トップであり、自国に優先させた途上国への供給で人体実験を済ませた後、世界に類を見ない爆速でワクチン接種をしました。
邪推ですが、安全確認前のデルタ株由来不活化ワクチンも多数使用したであろうと個人的には考えています。
—後半妄想に入ります–
と、まあ、数年〜数十年単位の短期では、残念ながら支那の勝ち、と軍配があがりそうなのが現在のコロナ状況かと。しかし生物学的、地質学的レンジで見ればたかが短期的勝利です。
防疫・ワクチン はともウイルス等単純生物との戦いにおいて、人類文明が発明した対抗手段ですが、短期的対抗手段に過ぎません。 短寿命だが、増殖・世代交代速度が速い単純生物の「変異株攻撃」に対して、我々多細胞生物は圧倒的不利な状況にあります。
それにもかかわらず数万〜数億年に渡り 多細胞生物が完敗しなかった「生き残り最終戦術」は「遺伝的多様性の保護」と考えます。
遺伝的多様性の保護とは、具体的行動に移し替えると、弱者救済、差別撤廃、etcの社会的寛容性です。
具体例をあげると
マラリア蔓延地域においては、鎌状赤血球症、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症と言った「遺伝病患者」の率が高まりますが、これは両遺伝病がマラリア耐性を持つためと考えられています。 両者は通常社会生活においては「病弱体質」という社会的弱者ですが、人間社会は彼ら彼女ら社会的弱者を救うことこそ善なる行為としてきました。
範囲を広げると
昆虫の例ですが、ある 過早熟、過晩熟 生殖を行う少数集団を含む昆虫種が、適正生殖期に特有の疫病にかかり絶滅が予測されましたが、結局前記 早・晩+同性生殖を行う種として生き残りました。
教訓
人種差別撤廃・弱者救済・多様な価値観許容 は、例えば宗教に基づく高尚なモラル、的に語られ、、私を含む大抵のヒトは言われて心情としては無条件に肯定しながら、考えるとなんともなあ、、、のことですが
肯定する理由は なんのことはない。多細胞生物の生残り戦略として遺伝子的に刻まれた事柄だからです。
そして、上記のモラルは人間こそが備えたものである。という傲慢に気づきます。「人道的モラル」の殆どは、現存多細胞生物なら、生き残り戦略として遺伝的に刻まれ先天的に持っているものだからです。
BOOKさん、初めまして、そしておはようございます。
非常に興味深く読ませて頂きました。
ウィルスという脅威や細菌による生物そのものの生存の原点からの視点で、その生き残りと進化の過程をたかが数百年~数億年とは桁が違う、数万年単位以上と捉えれば少し理解できそうです。
>しかし生物学的、地質学的レンジで見ればたかが短期的勝利です。
細菌については中世ヨーロッパを壊滅させたペスト・江戸末期のコレラや野口英世を地有名にした黄熱病・梅毒等、科学の発展と研究者の努力により克服されてきましたが、未知のウィルスに対しては「多細胞生物」である人類は無力なのかも知れません。
つまり、我々多様な「多細胞生物」であるがゆえに、逆説的にその遺伝子の中にこれからも出て来るであろう、未知のウィルスへの初期的な抗力はないと考える方が自然な気がします。
>昆虫の例ですが、ある 過早熟、過晩熟 生殖を行う少数集団を含む昆虫種が、適正生殖期に特有の疫病にかかり絶滅が予測されましたが、結局前記 早・晩+同性生殖を行う種として生き残りました。
進化論の中で生物の細胞まで考慮する例として判り易かったです。
>そして、上記のモラルは人間こそが備えたものである。という傲慢に気づきます。
ウィルスに限らず真実を忘れた時に大きな厄災に見舞われる、人間という生き物の業のようなもんでしょうか。
>「人道的モラル」の殆どは、現存多細胞生物なら、生き残り戦略として遺伝的に刻まれ先天的に持っているものだからです。
進化の過程で遺伝子に刻まれたという説は理に適っていますね。
僕が好きな生物学者&ジャーナリストの福岡伸一氏の数冊ある著書を再読しようかな。
ニュージーランドが籠城線ですか。
なる程確かにその様に見るのは正しいのかも知れません。
しかしそうすると、ご指摘の様に補給の目処なしに籠城したのは失敗でしたよね。
抗体の形成は、感染者が増えるかワクチンを打つかの2択でありまして、治療薬が未だ確保出来ない状況にあっては、ニュージーランドにとって勝利なき戦いと言わざるを得ません。
支那のワクチンが有効であったかどうかは、僕は懐疑的です。
海外に輸出された支那ワクチンの効果はほとんど見られませんでした。支那国内だけ封じ込め成功というのは、ちょっと理にあわない気がするのです。
ただの風邪という形で処理したからこそ、あの結果なのかな?と思いますが、ウラをとることは難しいですね。
情報がしっかり出てくれば、社会的メリットになるのですが、出せない理油、出したくない理由などがあるんでしょうね。
木霊さん こんばんは
投稿ミス申し訳ありませんでしたm(__)m 修正ありがとうございます。
>支那のワクチンが有効であったかどうかは、僕は懐疑的です。
>ただの風邪という形で処理したからこそ、あの結果なのかな?と思いますが
その通りですね。
「支那(不活化)ワクチンは発症防止効果は低いが何とか重症化予防効果はある」などと言われていますから、医療崩壊や死亡者増加さえなければ隠しきれる。 と言うのも事実かも知れません。
しかし後出しジャンケン的ですが、私の2つの仮説、
①支那はとりあえず初期武漢は乗り切った ②防疫≒籠城戦
が正しいと仮定すると、
支那もニュージーランドと同じく自然免疫が極端に低く、防疫突破が起こった場合、支那都市部の人口・人口密度からするとニュージーランドどころではなく隠しきれない大規模感染が起こって不思議じゃない。のですが、少なくとも隠しきれるレベルに収まっている。ことを述べました(言い訳 笑)
にしても、支那が情報秘匿しなければ、こんな仮説をこねくりまわす必要なく効果的なコロナ対策が出来るはずで、許せない暴挙ですね。
余談(いつもすみません)
巷に「ワクチンは感染は防ぐものでなく、重症化を防ぐものだ」とよく語られていますが、科学的・定量的根拠が全く不十分なハナシで、これに基づいたコロナ対策の立案・施行は危険なのでは?とも思います。
ワクチンの働きは「コロナ狙い撃ちの免疫記憶」を作るもので、免疫記憶による抗体の出来ることは「体内のコロナウイルスを減らす」ことだけです。
ワクチン接種すると「コロナウイルス退治能力が高まる」ため、感染しにくい、感染しても早くウイルスを退治できる、、、、、、重症化を防げるのはこの最後の結果であって、
ワクチン接種は体内のウイルスを減らせるので、自分が放出するウイルスも減らせて防疫にも確実に貢献します。ワクチン反対派はよく冒頭の話をゼロイチ解釈して話をされますが、こういう事実を見てほしい。