AUKAS発足で怒り心頭のフランス

オセアニアニュース

ちょっと面白くなってきたな。

AUKUS原潜協力 怒り心頭の仏 バイデン政権「まるでトランプ」

2021/9/16 18:35

フランスのルドリアン外相は16日、オーストラリアが次期潜水艦をめぐって米英と技術協力で合意し、フランスとの開発計画を破棄したことについて、「背中から刺された。裏切られた」と怒りをあらわにした。バイデン政権に対しても「一方的で乱暴な決断。まるでトランプ前大統領のようだ」と非難した。

「産経新聞」より

この件、日本はむしろ怒りを示さねばならない話かもしれない。何しろ、最初にオーストラリアの潜水艦建造の話に手を挙げていたのは日本だからね。もちろん、そんな単純な話でないことは分かるが。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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アタック旧潜水艦の行方

AUKASって何?

先ずは、AUKAS(オーカス:Australia,UK and US)についてだが、オーストラリア、アメリカ、イギリスの参加国同盟といえば良いのだろうか。

茂木外相 豪外相と電話会談 豪米英「AUKUS」創設を歓迎

2021年9月17日 17時52分

茂木外務大臣は、オーストラリアのペイン外相と電話で会談し、オーストラリアが、アメリカ、イギリスと新たな安全保障の枠組みを創設したことを歓迎する意向を伝え、引き続き、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を深めていく方針を確認しました。

「NHKニュース」

日本の外務大臣、茂木氏は歓迎のコメントを出したようだが、この話は原子力潜水艦をオーストラリアに持たせて、支那海軍の動きを止めようという試みが軸になっているんだよね。

日本としてはクワッドの枠組みがあるんだから、AUKASをわざわざ作らなくても……、と思うのだが、まあ、必要なんだろうね。オーストラリアには原子炉も存在しないし、原子力発電に関わる技術も乏しい。燃料を購入するにもアメリカやイギリスを頼らねばならないだろう。

ただ……、そもそもオーストラリアが原子力潜水艦を持たない理由の1つに、極度の原子力アレルギーがあって、日本とは別の意味でハードルが高かったから、ということだったと思うんだけど、それは良いのかな。

アタック級は?!

そして、冒頭の話。フランスが激怒しているというのは、現在、オーストラリアはフランス企業と契約して新型の潜水艦の建造を目指している最中なのだ。

フランスはターンブル豪政権との間で、潜水艦開発をめぐって推計約310億ユーロ(約4兆円)の契約締結に合意したが、計画の遅れで経費が膨張し、豪州では見直しを求める声が出ていた。フランスは18年、欧州で最初にインド太平洋戦略を発表。日米豪などとの共同演習に参加してきた。

「産経新聞」より

とはいえ、この話はフランスが一方的に怒っているというわけではなくて、オーストラリアの方もかなり業を煮やしている感じであった。

記事にもある通り、アタック級の建造計画はほぼ頓挫状態である。

仏ナバル、豪潜水艦建造を中止 米英の原潜配備支援で

2021年9月16日 10:50

フランスの政府系造船会社ナバル・グループは16日、オーストラリア政府と契約していた次期潜水艦建造事業について「豪政府は次の段階へと進まないと決定した」として中止になると明らかにした。

豪州のモリソン首相は同日、米英の支援で原子力潜水艦を配備する方針を表明。ナバルは「大きな失望だ。我々は豪州に地域の中でも優れた性能を持つ潜水艦を提案してきた」とした。「5年間にわたり豪仏両国で我々のチームはベストを尽くし、すべての約束を果たしてきた」とも述べた。

「日本経済新聞」より

フランス・ナバル社の前身であるDCNS社はフランス政府が75%の株を保有する国営企業のような造船会社である。潜水艦の実績としても、スコルベヌ型通常動力潜水艦と、シュフラン級原子力潜水艦などの建造実績があって、実績は十分だと思われていた。

ところが、フランス海軍が採用するシュフラン級原子力潜水艦は計画が遅れに遅れて2016年就役の予定が、竣工式が2019年にずれ込んだので就役はその時点での予定で2020年。しかし、未だに就役していない。

もちろん、アタック級の方もこれと同様に作業遅延しており、建造開始予定が2020年だったはずなのに、結局遅れが生じて、現時点での建造開始予定は2023年であると報じられている。

Australia And Naval Group Ink Agreement On Attack-Class Submarine Program

~~略~~

Construction on the first ship-in-class (the future HMAS Attack) is set to start in 2023 and its delivery should take place in the early 2030ies. The next units will follow with a cadence of one submarine every two years.

「NAVAL NEWS」より

更に、オーストラリアの現地製造が契約条件だったのだけれど、フランスはこれが「できない」と言い出す始末。いや、オーストラリアも「部品もオーストラリアで製造しろ」とか無茶言っていたので、どっちもどっちか。

とにかくまあ、この計画も中止になっちゃったんですけどね。

事前通告済み

ただ、オーストラリアもいきなりこんな決定をしたわけではない。

モリソン豪首相、潜水艦納期守れとフランスに警告

2021年6月16日

コーンウォールでのG7の後、ロンドンでボリス・ジョンソン英首相と会談し、豪英自由貿易協定取決めを発表したスコット・モリソン豪首相は、フランスを訪れ、パリでエマニュエル・マクロン仏大統領と会談した。

6月16日付ABC放送(電子版)が伝えた。

フランスでは、モリソン豪首相は、オーストラリア海軍の次期潜水艦隊を建造中の仏企業に向けて、「今後2年間の設計作業計画を2021年9月の締め切りまでに提出しなければならない」と警告した。

また、マクロン仏大統領も、「政府としても契約を守らせる」と確約した。

「nichigopress」より

契約時にも様々な怪しい噂が流れていて、当時有利と言われていた日本の潜水艦を蹴った経緯もかなり不透明ではあった。その上で、契約後にも不備が指摘されるなど、あまり宜しくない状況が続いており、何度か契約破棄をほのめかすような話は何度か出ていたのである。

フランスのNaval Group社は、2021年2月に設計作業計画を豪政府に提出したが、豪国防省が、「経費がかかりすぎる」としてこの計画を却下、同社は新しい設計作業計画の提出締め切りを2021年9月まで延期された。

「nichigopress」より

そして、フランスのナバル社が今年の2月に提出した設計作業計画書を見て、オーストラリア政府は激怒。そりゃそうだろう。当初の契約額から倍以上の額に膨れ上がった計画を見せられらば誰だって怒る。

ただ、前述したように「オーストラリアで建造する」という契約そのものがネックになっていたのも事実で、オーストラリアの人件費が高いがために、海外で建造するよりも3割増しになるとかなんとか。更に部品調達などのコストも考えるとさらに高くなると予想される。

コンペの段階で、日本側の提案では日本で建造するという話を出していた。オーストラリアで製造は無理だろうと予想していただけに、フランスが全面的にこれを受け入れての受注にはかなり驚かされたんだよねぇ。

ともあれ、フランスは現地生産も、コストも、納期も守る事ができない状況となっていた。

アタック級のシステムはアメリカ製の予定だった

それと、そもそもアタック級潜水艦が搭載する予定だった兵器や攻撃用のシステムは、アメリカがやるという話になっていた。だから、原子力潜水艦の建造という話になれば、アメリカ製の潜水艦という話が出てくるのは不思議ではない。

また、今回のことでアタック旧潜水艦の扱いが最終的にどうなるかは知らないが、少なくともナバル社は降りる方向だと思うし、当面は揉めるだろうと思われる。

新たな原子力潜水艦は8隻建造される予定で、トマホークを搭載するらしいことは既にわかっている。

そのうえで両外相は、来週、日本とオーストラリアにアメリカとインドを加えた4か国の首脳会合が開かれることも踏まえ、さまざまな枠組みによる連携を促進し、引き続き、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を深めていく方針を確認しました。

「NHKニュース」より

日本がAUKASに参加するか否かも含めて、ここにどのように関わっていくかは興味深い。オーストラリアの潜水艦がどうなるかも気になるが、そもそもこの話はオーストラリアの造船業など雇用にも大きな関係があった話だけに、フランスとの関係やオーストラリア国内の問題も含めてかなり問題山積みであることは間違いない。

今後どうしていくのかは注意深く見守っていきたい。

追記

そうそう、フランスの落ち度やオーストラリアの無理な注文といった、契約上の問題だけを取り上げたが、重要な点は戦略の変化が求められているということだろう。

中国にも打撃を与える…オーストラリアが「原子力潜水艦」の建造を決めた事情

2021/9/18

インド太平洋の中堅国オーストラリア(豪州)が米英両国の支援を受けて、原子力潜水艦(原潜)を8隻建造し、保有することになった。実現すれば、核兵器を保有する米、英、中国、ロシア、フランス、インドに次ぐ7番目の原潜保有国となり、核兵器を保有しない国としては世界初だ。

「現代ビジネス」より

結局、支那に対抗するという事を考えた場合、原子力潜水艦による長距離高校能力は必須というふうに判断したわけだ。

もともとは、インドネシアを敵国と想定して周辺海域を守るくらいのイメージだったようだが、オーストラリア大陸周辺を守るということを考えると、原子力潜水艦くらいの速力を出せないと話にならない。

まずは費用面だ。豪州会計検査院によると、500億豪ドル(約4兆億円)と見込まれた受注額は、2019年に800億豪ドル(約6兆4000億円)に急上昇し、昨年7月には897億豪ドル(約7兆2000億円)に更新された。

維持費を含めると2080年までに1450億豪ドル(約11兆6000億円)の負担が必要になると見積もられた。この金額は、国防費の3倍以上にもなる。

「現代ビジネス」より

価格の面ではこのように散々に書かれているが、どちらかというと納期の問題のほうがウェイトは大きいと思う。何しろ、コリンズ級潜水艦の寿命が尽きる前に新型潜水艦の納入は不可能という話になっていたのだから。

米国は南シナ海の環礁を埋め立てて軍事基地化を進める中国に対して、米海軍の艦艇を差し向ける「航行の自由作戦」を展開している。中国軍から自国艦艇を守り、中国海軍のSSBNを追尾する必要性から、常に南シナ海の海中に攻撃原潜を潜ませている。

豪州が自国の原潜を運用するようになれば、役割を分け合うことになり米国の負担は軽減される。この点も原潜技術の供与の背景にあるのだろう。

「現代ビジネス」より

そして、アメリカとしてもこの判断は大きいと思う。アメリカの防衛負担を減らす意味でも、原子力潜水艦の技術を供与する意味はあるし、フランスにアメリカの潜水艦技術の一部が漏洩するのを防ぎたいという思惑もあるだろう。

支那に対する牽制という意味で、思惑が一致したということだろうね。それがAUKASなのだろう。

もう1つこんな観測がある。

British defense boss commiserates a bit with France over Australia submarine breakup

 Friday, Sep 17

LONDON – British Defense Secretary Ben Wallace admitted if he were French he would be extremely disappointed over the Australian decision to ax a $65 billion deal with Naval Group to build diesel electric-submarines, but he said the move was done for strategic, not industrial, reasons.

~~略~~

“First of all, it’s based on the Five Eyes agreement. They are one of our closest, oldest, allies,” Wallace said, referring to the Australians.

「ディフェンスニュース」より

フランスはファイブアイズに参加していないため、AUKASの枠組みに入ることが出来ず、結果的に契約破棄に至ったというのだ。

本当かどうかはわからないが、説得力の有りそうな話ではあるな。

追記2

フランスは、思った以上に怒っているな。

フランスが猛反発 アメリカ・オーストラリアとの間に何が?

2021年9月20日 20時33分

フランスがアメリカ、オーストラリアに対する強い憤りを示しています。

背景にあるのがフランスがオーストラリアと共同で進めていた潜水艦の開発計画が破棄されることになったことです。

フランスはアメリカとオーストラリアに駐在する大使の召還を決めるなど強く反発しています。

「NHKニュース」より

大使召還までいってしまったか。

フランスも面子を潰された形になっただけに、怒りを示さずにはいられないということなんだろうね。国民の手前。

契約の総額は、追加の費用も含めて560億ユーロ、日本円で7兆円余りにのぼると見込まれ、フランスでは「世紀の契約」とも言われてきました。

それだけに、開発計画が破棄されることは、フランス政府にとって大きなショックで、みずから前政権の国防相時代に契約を取り付けたルドリアン外相は16日「背中を刺されたようなものだ」とオーストラリア政府を厳しく批判したうえで、バイデン政権に対しても「一方的で予測できない決定はトランプ前大統領がやっていたことに似ている」と不快感をあらわにしていました。

「NHKニュース」より

冷静に分析すれば、フランスにも非はあると思うんだけど、フランスさんもお高くとまっているので、格下扱いにしているオーストラリアに無礼を働いたという認識はないんだろうね。

そして、バイデン氏のやり方がトランプ氏以上に苛烈である模様。トランプ氏はあれで根回しはしていたようで、そのパイプをやっていたのはどうやら安倍氏だったようだが、ともかく根回し不足で他国がぶち切れるという事は無かった様に思う。

バイデン氏はその辺りが鈍いのかなぁ。

なお、オーストラリアも「筋は通した」という事のようだね。

豪首相、フランスにうそはついていないと反論 原潜開発契約の破棄めぐり

2021年9月20日

オーストラリアのスコット・モリソン首相は19日、アメリカとイギリスと結んだ安全保障の新たな枠組み「AUKUS(オーカス)」のために、フランスとの原子力潜水艦建造契約を破棄した決定を擁護した。

モリソン首相は、この枠組みについてうそをついていたというフランスの批判に反発。フランスは契約破棄の準備に気づいていたはずだと述べた。

「BBCニュース」より

オーストラリアの肩を持つつもりは無いが、今回のこの話はフランスが割を食っても仕方が無いんじゃないかな。

コメント

  1. 木霊さん こんばんは
    この話題は興味深くウオッチしてます。フランスさん激おこですが、木霊さんの文にある通り豪州の戦略環境の変化を見通せなかったことと、やっぱりアングロサクソンしか最後は信用できないという意識があったのでしょうね。ファイブアイズの中でもNZとCAはあてにならないという意見もあるようですが。
    あと、フランスは今までの癖で、第三世界諸国にするようなビジネス手法をしたんだろうなと思ってます。とにかく契約して逃さないようにして、後から追加変更を小出しにしていくのは豪州には悪手だったということですね。第三世界の場合はこれに袖の下が混じって有効だったんでしょうが。
    豪州は費用的には1000億豪ドル以上かかるようですが、Chinaの脅威に対して、南太平洋全域に網を張るにはそれしかないと腹を括ったようです。CPTPPでも強硬派になりつつあって、頼もしい限りです。
    さて我が国も攻撃型原潜が本格的に必要になりそうですが、まずはファイブアイズに入って実績を積むところからでしょうか。かの国も勘違いしてますが、ねぇ。

    • 実際に興味深いですよね。
      オーストラリアとフランスとの間でどのようなやり取りがなされたのかは知りませんが、両者結構勝手なことを主張している気がします。
      大国同士ですからエゴがぶつかり合ってもおかしくは無いのですけれどね。

      さて、我が国での攻撃型潜水艦の保有ですが、開発自体は可能だと思います。
      必要な技術はほぼ持っていることでしょうし。
      あ、C4Iはある程度アメリカに依存せざるを得ないのかな?
      ただ、本当に持つ意味があるのか?という事と、持つのであれば核兵器保有を前提に議論が必要です。そこを含めて話をする必要があると思うんですが、なかなか厳しいのが現実でしょうね。いっそのこと、AUKUSに入ってオーストラリアと一緒に建造するってんでも良いのかもしれませんけどね。

  2. 木霊さんこんにちは!

     この流れでフランスは韓国に売り込みかけてる?ような話もあるみたいですね。https://money1.jp/archives/62507

     フランス アタック級ってのは木霊さん情報https://annex2.site/kss-3-14/ 韓国バッチIIIのROCに合致するものなのでしょうか?

      、、、日本が買わされるような妙な流れがおこらないか、も心配だけど、、外圧仕方なくの言い訳で日本が原潜持つのも良いかもしれない。

    • いやー、面白いですね。
      しかし、韓国海軍の潜水艦は既にイギリスががっつり食い込んでいますから、ここで意趣返しとばかりにバトルになる可能性も捨てきれない。

      原子力潜水艦ですか。
      S4炉の話を真剣に進めておくのであれば、作れるとは思うんですけどね。さて、維持費を含めてそれを本当に保有するのが良いのかどうか。とにかくコストがかかりますからねぇ。

  3. 仏がキレる要素がどこにあるのか読めば読むほどわからんと言いますか、そりゃ破棄されて当たり前だよねHAHAHAって感想しか無いと言いますか。
    このザマでキレ散らかすとかどっかの韓国じゃあるまいし、落ちるとこまで落ちたんですかね?まぁおフランスだしなぁ…
    世界一シンプルな国旗の国?フランスっしょ。なんてブラックジョークがあるのは伊達ではないのだなぁと(三色旗じゃなく白旗だろ?あそこの国旗。というオチ)HAHAHA

    • フランスさん、常に上から目線ですから、オーストラリアに勝手をされるのが許せない、ってな感じかもしれません。
      案外、いい根性していますからね、フランスも。

      フランスの三色旗のブラックジョークは初めて聞きましたがなかなかの皮肉ですね。自由・平等・博愛で、青・白・赤でしたっけ。白旗というのは、「平等だけがある」というというのではなくて、「降参」ってことなんですかね。

      • 個人的にはこれ「フランス政権の国内向けPR」なんじゃないかと思っています。

         だって当初の2〜3倍、オーストラリアの全国防費を上回る商売、、なんて常識的には成立するわけなく、フランス政権としても影ではナバル社に相当文句言ってるんじゃないでしょうか?

         しかしながら政府がこれを黙認・静観しちゃえば表向き「国策規模ビッグディールをみすみす米国に攫われた」と国内で叩かれるのは明確。

         米・英・仏・EUまで巻き込んだ、壮大な自作自演劇を現在開演中、てとこじゃないでしょうか?