ショベル自立運転の実証実験で日本の未来は変わるのか

科学技術

ちょっと面白いと思ったので紹介しておこう。

大林組など、ショベル自律運転を現場で実証 50%省人化

2021年9月13日 17:39

大林組は13日、NECや大裕(大阪府寝屋川市)と共同で開発した油圧ショベルの自律運転システムをトンネル工事現場に適用する実証実験を行ったと発表した。遠隔地に作業を監視する操縦者を1人配置するだけでよく、50%の省人化を実現した。今後、適用可能な現場から順次導入する。

「日本経済新聞」より

この手の省人化の実験は様々なシーンで行われている。工場内の無人搬送機などはそろそろ「当たり前の技術」として定着しつつあるが、AGV(Automatic Guided Vehicle)あたりは「やることがすくない」ので無人化も可能である。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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省人化のニーズ

油圧ショベルの自立運転

では、油圧ショベルは?というと、これがまたなかなか。

今回現場に導入したシステムは3社が2019年に開発し、メーカーにかかわらず後付けで操縦装置を設置することで導入可能だ。このほど初めて関東地方のトンネル工事現場で導入した。

実証実験では掘削作業からトラックへ土砂の積み込みの完了まで全工程を自律運転で行った。1人の操縦者が2台の油圧ショベルを同時に監視し、その間人の手による作業は発生しなかった。

「日本経済新聞”大林組など、ショベル自律運転を現場で実証 50%省人化”」より

記事にあるように、実証実験の範囲は掘削作業からトラックへの土砂の積み込みに限っている。

油圧ショベルの現場をご存じの方は多いと思うが、単純に「土砂」を「トラックに積み込む」だけであっても、掘削作業が発生したり、クローラーの移動を調整したりといった、目に見える部分から、外気温その他の影響によって油圧の変化による操作性の変化や、土砂の特性(粘性・岩石の混じり具合など)によっても影響を受ける作業である為、これが案外難しい。

しかし、この実験に際しては1人のオペレーターが2台のショベルを監視しながらの作業だったが、人の手を患わず自体は発生しなかったとのこと。

遠隔地に作業を監視する操縦者を1人配置するだけでよく、50%の省人化を実現した。今後、適用可能な現場から順次導入する。

「日本経済新聞”大林組など、ショベル自律運転を現場で実証 50%省人化”」より

既に何度も実験をやった上での実証実験だったとは思うので、こうした想定しうる問題はそれなりに潰したのだろうと思う。

後付けでもOK

そして、今回のシステムの面白いところは、操作装置の後付けが可能という点だ。

今回現場に導入したシステムは3社が2019年に開発し、メーカーにかかわらず後付けで操縦装置を設置することで導入可能だ。このほど初めて関東地方のトンネル工事現場で導入した。

「日本経済新聞”大林組など、ショベル自律運転を現場で実証 50%省人化”」より

ただ、老朽化したショベルに対応出来るか?というと、どうかなーとは思うんだよね。

土砂の積み込み作業を自動化するバックホウ自律運転システムを開発しました | ニュース | 大林組
株式会社大林組日本電気株式会社大裕株式会社  株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治、以下大林組)、日本電気株式会社(本社:東京都港区、社長:新野隆、以下NEC)...

動画を見ると結構興味深い。

コレを見ると、採用できる現場は限定的かも知れないけれど、それでも使えるシーンがそれなりにありそうではある。

実際の作業のため、掘削する土砂の上に設置されたセンサーで認識した土砂の形状を基に、自動で掘削しやすい位置に土砂をかき寄せたり、ショベルで掘削した土砂の体積を推定したりする機能を新たに追加した。1度で安定した量の土砂を掘削できるほか、トラックに積む土砂の量を自動で調整し、積載目標重量の98~100%まで土砂を積み込める。カメラでトラックの荷台の形状を認識する機能の検証も行い、あらゆるトラックに対応可能となった。

建設現場では深刻な人手不足に対応するため、省人化に向けた技術開発が急務となっている。今後1人あたりの監視台数を増やし、さらなる省人化を進めることも可能という。

「日本経済新聞”大林組など、ショベル自律運転を現場で実証 50%省人化”」より

面白い技術ではあるが、日本でこの技術を磨いて行くには、様々な制約があると思う。その辺りをクリアするのが大変なんじゃないかな。

支那では実用化

ちなみに、この分野で先行導入しているのは支那である。

「3K労働」の人材不足を解消 建機の完全無人化を目指す中国

2020年1月16日

自動運転の実用化や収益化には困難が伴う。同業界に関わる投資家たちの忍耐も試されているところだ。しかし、自動運転の実用化のシーンを人や車がひしめく都市部から人里離れた鉱山に移すならば、そこが自動運転を最速で活用できる場であることに気づくだろう。

36Krは同分野に特化する「拓疆者智能科技(Builder X、以下「拓疆者」)」を取材した。2018年8月創業の同社は主にウェットリースや業務アウトソーシングの形式で、鉱区、風力発電所、道路、事業用不動産などに対し遠隔で自動操作できる建設機械を提供し、安全性や効率を高めると同時に、人件費などの問題を解決している。

「36Kr Japan」より

2020年に既に実用化準備が出来ているよという報道があって、感心したものだ。ただ、支那の場合は色々法律の制約が緩いことと、現場が平坦で広い事が多いという好条件がある。

すでに海外市場への進出も進めている。隋CEOによると、すでに香港、日本、豪州などで提携先の打診を行っているという。これらの地域の鉱区は中国と同じく安全面のリスクを抱えると同時に、人的コストが工費の4割以上を占めているという問題がある。

「36Kr Japan」より

支那では少子化が進んでいることもあって、日本よりも3K現場に子供を投入するのに抵抗がある家庭が多いようだ。この問題は人民解放軍にも波及していて、色々な問題も耳にする。

が、ともあれ工事現場の省人化は喫緊の課題で、莫大な予算を投入して貰える環境にあることもアドバンテージと言えよう。

ディープランニングなどの技術を使って、移動不可能な部分の判別から、作業効率化まで色々と実現できるとかなんとか。

すでに海外市場への進出も進めている。隋CEOによると、すでに香港、日本、豪州などで提携先の打診を行っているという。これらの地域の鉱区は中国と同じく安全面のリスクを抱えると同時に、人的コストが工費の4割以上を占めているという問題がある。

「36Kr Japan」より

日本への輸出も視野に入れているということで、日本のメーカーもうかうかしていられない。

自立運手システムは高速通信技術を基盤に

で、重要な点はこの分野にも「タイムラグ」の問題点をクリアできるかで、大きく難易度に差が出てくる。

バックホウ自律運転システムは、作業エリアや建設機械の姿勢・位置を認識するためのさまざまなセンサを、作業エリアやバックホウなどを認識しやすい場所に多数配置し、それらを通信ネットワークで統合して制御する「ネットワークドコントロールシステム(※3)」によって管理しています。そのため、搭乗視点のみならず俯瞰的な視点も加えることができ、これらの豊富な情報を管理者が遠隔で確認しながら管理することが可能です。今後、次世代通信技術「5G」を活用することで、より高速・大容量・低遅延な通信が可能となり、一人の監視者によって複数種類の建設機械を同時に自律化させることで、さらなる生産性向上と省人化が可能です。

「大林組サイト」より

大林組にNECが手を貸している理由はその辺りにあって、多分、5G、将来的には6Gの通信技術を導入してくんだろうと思う。

そして、ここが日本の成長に大きく関わってくると思われるので、是非とも頑張って欲しい。どうあっても、災害の多い日本ではこの手の技術とは切っても切れない関係がある。こうした一見ローテクに見えて難しい技術に対応するためにも頑張って欲しい。

コメント

  1. こう、機械は世界をどう知覚するようになっていくのか。機械たちの世界観。系のセンサー技術の話は面白いですね。逆説的に人間の標準的な五感で構築された世界観が、如何に限られた範囲のものであるか。という事も。

    • おー、なにか哲学的な香りのするコメントを頂いてしまいました。
      人間の出来る作業を代替させるというのは意外に難しい技術で、本来であれば機械ができることを考えてやるほうが正しいと思うのです。
      人間用に設計された重機を無人で動かそうというのですから、なかなか大変ですよね。
      土木工事或いは建設工事というのは、多分いつまで経っても完全機械化は難しいと思いますよ。
      でも、部分的な機械化は大いに発展する分野でもあると思います。

  2. こんにちは。
    海底にケーソン埋めたりする現場では、垂直方向の切場の先を掘るのに、水圧に耐えるだけの気圧をかけてたりするので、そこでショベルを動かすオペさんの体がもたないそうです。
    なので、遠隔化は研究されてるし一部実用化もされてたはずですが、より柔軟に対応出来るようになる、という事でしょうかね。

    なお、古いユンボはどうするかというと、そこはASIMO君を座らせて、ASIMO君経由でレバー操作する、なんてのをちょっと前には産総研とかでやってましたね。THE・二人羽織って感じでしたが……産総研、出渕デザインのHRP-2とか、女性型のHRP-4Cとか、なつかしい……最新型は三年前発表のHRP-5P、なのかな?

  3. 木霊さんこんにちは!

    実は現職機械系エンジニアの私としては、既存の重機に後付け可能とか「技術的には」ワクワクする内容なのですが、

    >日本の成長に大きく関わってくる

    のところが、よくわからず、お教え頂ける時間がおありならお教え頂けたらと、、、
     土木産業や経済に明るい方なら「省人化のニーズ」セクションから自明の理なのでしょうが、予備知識がない身に辛い。お時間等がありましたら、何かわかりやすいサイトとか、お教え頂くか、解説等いただけましたら幸いです。

     以下、否定的な話をお許しください。

    もし私がこの製品の技術企画・設計以外にビジネスモデルを出せと命じられたら結構悲惨なことになります。

    ビジネスモデル分析
     1.市場・原価 :ニッチ(楽観数値で年100台?)製造原価は月100台製品の10〜100倍?
     2.要求技術水準:自動車自動運転+簡易交通管制 レベル 非常に高い
     3.製造者責任 :重機の事故はたやすく災害レベルになりうる。保険会社と組んだ商売が必要かも?

     結論:恐ろしく高コストな製品となり、よほど特殊な状況以外、省人コストを遥かに上回る   製品コストとなる。
        ワクワク技術だが、技術アピールとしてのデモ以外、実商売は辛い。どうしても商売するなら売込先は自衛隊とかJAXA?

    こんな否定的な結論は私の「ワクワク」直観から受け入れ難い!です。でも根拠が欲しいのです。