存在感が強烈であったトランプ氏に比べ、イマイチぱっとしないバイデン氏だが……。
米大統領、中国がタリバンと何らかの取り決めに動くと確信
2021年9月8日9:06 午前UPDATED
バイデン米大統領は7日、中国がアフガニスタンの実権を掌握したイスラム主義組織タリバンと取り決めを結ぼうとすることを確信していると述べた。
中国がタリバンに資金を提供することを懸念しているかとの記者団の質問に対し、「中国はタリバンと現実の問題を抱えている。そのため、タリバンと何らかの取り決めを結ぼうとすると私は確信している。パキスタンのように、ロシアのように、イランのように。彼らはいずれも今何をするか見いだそうとしている」と応じた。
「ロイター」より
何が言いたいのかさっぱり分からん!いやもう、ターリバーンと支那は取り極やっているよ。政権奪取後に改めてという事であれば、それは表だってはやらないだろうな。
間違えるアメリカとバイデン氏
前例踏襲型?ターリバーンは変わらない
えーと、ターリバーンの関連記事はこれまでも触れてきた。
良い噂は聞かないが、しかしメディアに乗ってくる情報は全て西側基準の内容でもある。その辺りはしっかりと割り引いて考えねばならない。
タリバン、新政権トップは故創設者側近アフンド師 主要閣僚発表
2021年9月8日12:51 午前
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンは7日、暫定政権の主要閣僚を発表した。政権トップにはタリバン創設者である故オマル師の側近アフンド師、副首相にはタリバンの政治部門トップ、バラダル師を任命した。
内相には、米国がテロ組織に指定している武装勢力「ハッカニ・ネットワーク」創設者の息子シラジュディン・ハッカニ師、国防相には故オマル師の息子ヤクーブ師が就く。
「ロイター」より
とはいえ、ターリバーンがアフガニスタンの政権を握って、その主要閣僚が発表されたのだが、凡そ対外的な外交交渉をしっかりやろうという姿勢は見受けられない。
以前にも取り上げたが、ターリバーンは「聖戦の実行」を掲げている組織である。何しろその前身はムジャーヒディーン(聖戦を遂行する者)である。そして、過去にターリバーンが「聖戦」を「輸出」していた事も明らかになっている。
最高指導者アクンザダ師はその後、アフガニスタンが外国支配から解放されたことを祝福する声明を発表。「アフガニスタンにおける統治と生活の全ては、シャリア(イスラム法)に基づいて行われる」とした上で、イスラム法に矛盾しない限り、全ての国際法と条約を順守する姿勢を示した。
「ロイター”タリバン、新政権トップは故創設者側近アフンド師 主要閣僚発表”」より
そして、政権運営には「シャリーア(イスラーム法)」を遵守し、国際法よりも優先するという。
シャリーアを「自分達の都合の良いように読み替える」というのは、イスラーム社会では割とありがちな光景だが、しかしシャリーアそのものは変えられないだろう。つまり、イスラーム社会の価値観は不変であると、そういう話になる。
もし、シャリーアを読み替えるとすれば、イスラーム法学者によって行われるのだろうが、そもそもシャリーアを厳格に解釈してそれに基づき行動してきた人々が、そのものを書き換えるというのは自己否定に他ならない。そう言う意味でも国際社会に合わせて有り様を変えるのは容易ではないハズだ。
閣僚メンバーは活動実績に問題のある人物も
さて、そんな感じで恐らくターリバーンは西側諸国の方針と相容れないだろうと思う。そして、閣僚の中には問題のある人物もいたようだ。
アフガニスタンで権力を掌握した武装勢力 タリバンが、暫定政権の閣僚らの名前を発表したことについて、アメリカ国務省の報道担当者は7日「われわれは、名簿がタリバン関係者だけで構成され、女性が含まれていないことに注目している」としたうえで「何人かの所属組織や活動実績に懸念を抱いている」と述べ、FBI=連邦捜査局から、殺人事件に関わったなどとして指名手配されているハッカーニ氏が含まれていることなどを念頭に懸念を示しました。
「NHKニュース”タリバンが暫定政権の閣僚を発表 アフガニスタン”」より
僕自身はこの事にさほど懸念を持っていない。そもそもターリバーンが政権を握ったことそのものが問題なので、閣僚が誰になろうとさほど変わりはしないと思うのだ。
アメリカの失敗
さて、アメリカはアフガニにスタンを「国として承認」はしないだろう。しかし、ターリバーンが正当なアフガニスタンの後継者であるとその様に認めないにせよ、交渉はしなければならず、アメリカの交渉相手がターリバーンである点は覆しようがない。
そして、撤退作戦の遂行に失敗してしまったことが、アメリカの今後の政治にも大きく関わる可能性が高い。
――アフガニスタンが、米軍の撤退とタリバンの首都制圧で混乱しています。
「この展開は驚きです。これほど早くタリバンがカブールを陥れるとは誰も思っていませんでした。キッシンジャー(元米国務長官)はベトナム戦争で、米軍撤退から南ベトナム政権崩壊までの時間稼ぎにあたる『適当な期間』を見積もりました。ベトナムの場合は結果的に約2年でしたが、アフガニスタンの場合『適当な期間』がゼロだったばかりか、米軍が出て行く前にタリバンが到着してしまった」
「朝日新聞”最優先でなくなった「テロとの戦い」 米国を変えた新たな脅威とは”」より
言ってみれば、撤退作戦は大失敗だったのだ。
その事がアメリカ社会に浸透すればするほど、バイデン氏の政治はやりにくくなる。
「なぜ、何のための戦争か」 アフガンで悩んだ米兵が見た敗北の景色
2021年9月7日 6時00分
「敗北の景色というのはこういうもの。避けられない結果だったんです」
アフガニスタンで20年に及んだ戦争は大混乱のなか、米軍撤退で半ば強引に幕が引かれた。元米兵のマシュー・ホーさん(48)は、少し冷めた目でその光景を見ていた。
~~略~~
「我々はテロとの戦いをしているつもりだった」とホーさんは振り返る。「でも実際には内戦に巻き込まれ、むしろ状況を悪化させていたのです」
「朝日新聞」より
カブールの医師の訴え「こんなことなら欧米はアフガニスタンに来なければ良かった」
5日 0時16分
X医師は約束通りの時間にZoom上の画面に現れた。背景はカブールにある病院のオフィス内。日本の支援で建てられた病院だ。話を聞いたのは国際空港での自爆テロが起きる前日だった。
「多くのスタッフがすでに国外に出てしまいました」
タリバンが首都を掌握してから出国してしまう医師や看護師が相次いでいるという。残っている医師たちも治安上の懸念やタリバンへの恐れから出勤してこない。この日は24人いる医師のうち5人だけが出てきていた。
「救急車を使って送迎もできるよ、と提案するんですが、“身の安全を保障してくれますか?”と聞かれます。それは私にはできないじゃないですか」
通常医療には当然影響が出る。そして新型コロナ対策にも。もともとアフガニスタンでは新型コロナに対する意識が低かったという。最近は認知度も上がってきているとは言え、確かに欧米撤収間際の空港の映像を見る限り、あの密状態の中でマスクをしている人はほとんどいなかった。それでもX医師の病院には、ワクチン接種に一日300人が訪れていた。ところが現在の混乱の中、「誰もワクチン接種を受けに来なくなった」という。またスタッフの不足は打ち手の不足も意味する。現在、アフガニスタンは第三波が収束しつつあるように見えるが、検査体制が整っていないため、全体像はつかみにくい。タリバン中心の政権がどんなコロナ対策をとるのか、見えてくるのはまだまだ先だろう。
「TBSニュース」より
そして、撤退実行によってアフガニスタンの人々は更なる困難に直面している状況にある。多くの知識人はアフガニスタンから逃げ出すだろうと思われるが、それは逃げ出す人々にとってもアフガニスタンにとっても幸せな事だとは言えない。
一方のアメリカ軍も多大な予算を費やして、撤退時にも失態を曝してしまった。諸外国も撤退作戦によってかなりの混乱っぷりであった。
アメリカの兵士達や退役軍人達、そして国際社会からも厳しい非難の目を向けられれば、バイデン氏の政治は一層やりにくくなるだろう。
習近平氏の野望
漁夫の利を得る可能性の高くなっている支那だが、しかしアフガニスタンの現状をどう見ているのだろうか?
タリバン勝利の裏に習近平のシナリオーー分岐点は2016年
2021年9月6日(月)20時03分
タリバン勝利の舞台裏には習近平が描いたシナリオがある。きっかけは2016年における米軍によるタリバンのマンスール師暗殺だ。トランプ前大統領に米軍撤退を決意させるまでの、習近平の周到な戦略を考察する。
「Newsweek」より
少なくともターリバーンが政権を握ったことで、支那国内の安定が図られたという形になったことは、習近平氏にとって「してやったり」という気になっただろうと思う。
2014年にあれだけ頻繁だった中国におけるテロは、2016年からは鳴りを潜め、2016年8月に陳全国を新疆ウイグル自治区書記に指名し(参照:4月15日のコラム<ウイグル問題制裁対象で西側の本気度が試されるキーパーソン:その人は次期チャイナ・セブン候補者>)、同年11月にはタリバンは自らの管轄下にある銅山における中国の権益を認めている(参照:8月20日のコラム<「金鉱の上に横たわる貧者」―アフガンの地下資源と中国>)。
~~略~~
その結果、アメリカとタリバンは2020年2月29日に「和平合意」に漕ぎ着けた。その後の詳細は省くが、米軍の撤退こそがタリバンの勝利であり、中露の勝利でもあった。
タリバンが政府軍に勝つ方法も、中国の解放戦争における毛沢東の戦略に学んだものだが、これに関してはチャンスがあれば別途論じる。
「Newsweek”タリバン勝利の裏に習近平のシナリオーー分岐点は2016年”」より
この記事では、支那が焚き付けて、アメリカとターリバーンが和平合意をしたという分析をしているが、習近平氏がそんな狡猾な人物だとは思えない。
しかしながら、支那にとっての利益に繋がったことは間違いなさそうである。
アフガニスタンと相性の悪い民主主義
一方で、アフガニスタンに民主主義を植え付けようという試みが失敗であったという分析はその通りだと思う。
これは何を意味しているかと言うと、「民主主義が浸透している国は一人当たりのGDPが高く、一定程度の中間層がおり、教育もいきわたっているという土壌がある。しかし一人当たりGDPが低い国々では経済的に豊かでないので教育も行きわたらず、自ら意思決定をして自由に選択するゆとりはなく、民主は育ちにくい。だから選挙はあっても専制主義的な統治をせざるを得ない」ということを表している。
ましてや強烈な宗教性を持っているアフガニスタンのような国に武力侵攻して「民主主義を植え付けよう」などということは、土台無理な話なのである。
「Newsweek”タリバン勝利の裏に習近平のシナリオーー分岐点は2016年”」より
結局、アフガニスタンが宗教を重視する背景には、イスラームの教えが優れているという事以上に、識字率が低く経済的に貧しい人が多いということに起因しているのだろう。
バイデン大統領は対中包囲網を形成するに当たって「民主主義と専制主義の戦いだ」と言っているが、もし本気でそう思っているとしたら、アメリカは必ず中国に負けるだろう。なぜなら世界の半分以上は専制主義的傾向を持つ国家によって占められているからだ。
「Newsweek”タリバン勝利の裏に習近平のシナリオーー分岐点は2016年”」より
そして、バイデン氏が「民主主義至上主義」のアメリカ人としてふるまう以上は、この問題を解決出来るはずも無い。
イスラーム教と民主主義は相性が悪いのも事実だしね。宗教色の強い国に「宗教を捨てろ」というのはどだい無理な話なのである。
この事に気が付かない限りは、アメリカは失敗し続けるだろう。
バイデン氏の失敗
さて、アメリカの失敗はアフガニスタン侵攻を決断し、早期撤退を実現できなかったことである。9.11の衝撃の大きさを考えれば、「テロとの戦い」を掲げて主犯格であるアフガニスタンを牛耳っていたターリバーンを攻撃することはやむを得ない判断であったかも知れない。
だが、主犯とされたアルカーイダのメンバーであるウサーマ・ビン・ラーディンを殺害した段階(2011年5月)で、撤退を考えるべきであった。そこはアメリカの失敗である。
一方で、バイデン氏の判断はまた別に批判されるべき部分がある。
アフガン、米軍撤退半年で崩壊も
2021/6/24 16:14(更新2021/6/24 16:25)
米紙ウォールストリート・ジャーナルは23日、アフガニスタン駐留米軍の撤退後、反政府武装勢力タリバンの攻勢を受けてアフガン政府が半年から1年以内に崩壊する恐れがあると米情報機関が分析していると報じた。早ければ7月にも撤退完了の見通しだが、その後の政府軍への支援策は明らかでなく、一層の治安悪化に懸念が強まっている。
「富山新聞」より
今年の6月には、アフガニスタンから米軍が撤退した場合に、早ければ半年で崩壊する可能性を示唆していた。ベトナム戦争の事例から2年は持つだろうという分析もあったが、アフガニスタンの情勢的には、残されたアフガニスタン政権は「いずれにせよ崩壊するだろう」と警告を出していた。
これが8月頃の報道では90日以内に崩壊というように変化していく。
アフガン首都「90日以内」に陥落か 米情報機関見立て
2021年8月12日 14時00分
米軍撤退が進むアフガニスタンをめぐり、ロイター通信などは11日、反政府勢力タリバーンが90日以内に首都カブールを陥落させる恐れがあるとの米情報機関の見立てを報じた。
「朝日新聞」より
しかしその判断も誤りではあった。8月12日時点で「90日以内に崩壊」って、8月15日にはカーブルが陥落しているので随分と間の抜けた分析である。
したがって「予定より早い」というのは、偽らざるアメリカ側の本音ではあろう。でも、何れは崩壊するという予測がでていたのも事実。撤退の決断を敢えて強行したのがバイデン氏ということならば、やっぱりコレ、判断は失敗だったんじゃないのかな。
以前の記事にも書いたが……って、あれ?アップし忘れているよorz
うんまあ、アレだ。バグラム空軍基地からの撤退を優先したのがそもそもの失敗の始まりだったと言うことだよ。
アフガニスタン撤退におけるアメリカの戦略的なミス
補給の重要拠点
えーと、以前書いてアップし忘れた記事の短縮版を書いていこう。
バイデン氏は「大成功だった」と言っていたようだけれど。
米アフガン撤退の内幕、警告と疑念に対応せず
2021 年 9 月 6 日 11:10 JST
アフガニスタンの治安情勢が悪化していた今年6月、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は米軍撤退計画の性急さに疑問を示し始めた。
米国防総省は駐留米軍のリスクを最小化するため、7月上旬までに兵士の大半を撤退させ、バグラム空軍基地を閉鎖する計画を立てていた。米当局者らによれば、政策調整を任務とするサリバン氏は、カブールの在アフガン米大使館員の多さや、新たに得られた機密情報がアフガン政府の弱体化を示唆していることを踏まえ、バグラム基地をこれほど早く閉鎖するのは賢明ではないのではないかと疑問を呈した。
「WSJ」より
まあ、日本政府の情報分析は更に残念なことだったのだけれどそこはさておこう。
記事の中に出てくるバグラム空軍基地は、カーブル近郊にある空軍基地で、撤退前までは駐留アメリカ軍の最大の拠点であったようだ。
アフガニスタンのバグラム空軍基地、最後の外国部隊が撤収
2021年7月3日
米政府は2日、アフガニスタンの首都カブール北郊にあるバグラム空軍基地から、米軍や北大西洋条約機構(NATO)加盟各国軍の駐留部隊の撤収が終わったと発表した。バグラム空軍基地は2001年10月に始まったアフガニスタン空爆以来、反政府勢力のタリバンやアルカイダに対する米軍などの最大の作戦拠点だった。
アフガニスタン国防省のファワド・アマン副報道官は2日、「今後はアフガニスタン軍が(基地を)守り、テロと戦うために使用する」とツイートした。
米軍と戦ってきたタリバンのザビフラ・ムジャヒド報道担当者は2日、米軍撤収は「アフガニスタン人が自分の将来を自分たちで決めるための一歩」になると歓迎した。
「BBC」より
2021年7月にこのバグラム空軍基地からアメリカ軍が撤退をした。
今年初めにはアメリカ軍がアフガニスタンから撤退をするという報道があったので、この時は「撤退が着々と進んでいるな」くらいの感想だったのだが、WSJのニュースを読むと(会員制なので読めないけど)どうにも違うらしい。
カーブル防衛の必要性
実は、アフガニスタンの首都カーブルを押さえるうえでは重要な拠点であったと。それをさっさと放棄してしまった辺り、米軍がダメなのかバイデン氏がダメなのか。
ジョー・バイデン米大統領はすでに、今年9月11日までに米軍撤収を完了させる方針を示している。今年9月11日で、米同時多発テロから20年となる。同時多発テロはアフガニスタンを拠点にするタリバンが支援するアルカイダによるものだった。米軍が主導する有志連合によるアフガニスタン攻撃は、同時多発テロを機に2001年10月7日に始まった。
アメリカは20年近く続く「最長の戦争」を終わらせ、アフガニスタンの治安維持をアフガニスタン政府と軍に任せる。
一方で、アフガニスタン各地では現在、外国部隊の撤収を前に、反政府勢力のタリバンが勢力拡大を続けている。このため、新たな内戦が起きる可能性も懸念されている。アフガニスタン政府がバグラム空軍基地を支配下に残せるかどうかは、タリバンに対するカブール防衛に不可欠だと、軍事アナリストたちは言う。
「BBC”アフガニスタンのバグラム空軍基地、最後の外国部隊が撤収”」より
記事にも書かれている通り、軍事アナリストはこのバグラム空軍基地を押さえておくことが、カーブルを防衛する上では非常に重要だという事は分かっていたハズなのである。カーブル防衛の為にアフガニスタン軍に基地を明け渡したという形になっているが、肝心なアフガニスタン軍はさっさとバグラム空軍基地から逃げ出している。

この空港、2本の滑走路があって空軍の戦闘機が発着する上では滑走路が1本しか無いカーブル空港よりもよっぽど使える。
カーブル防衛にあたっては、このバグラム空軍基地の放棄というのは凡そあり得ないのである。
米軍が撤収準備を進める中で私たちが基地を訪れた時にも、アフガン軍側は複雑な気持ちで受け止めていると耳にした。基地の中には大量の軍備が備わっているが、それはタリバンにとって宝物ののような獲物だし、腐敗した軍幹部などにとっても同様だ。
さらに、この基地を頼みに長年生活し生計を立ててきたアフガニスタン人が大勢いる。見捨てられたと感じているその人たちにとって、バグラムを待ち受ける新章は大きな不安に満ちている。
「BBC”アフガニスタンのバグラム空軍基地、最後の外国部隊が撤収”」より
当然、ターリバーンにとってもこの重要拠点を奪取することは、勝利条件の1つであったわけで、さっさと撤退してしまったアメリカ軍の後を追うように、あっさりとバグラム空軍基地を手に入れる事に成功している。
その時に本来基地防衛に従事すべきだった、アフガニスタン空軍は何をやっていたのかといえば、あっさり逃げたようだ。
あまり適切な記事が見当たらないが、多分アフガニスタン空軍には適切な司令官がいなかったのでは無いだろうか?イスラーム法の支配する社会において、金で民主主義に転ぶような人物に司令官を任せた辺りがそもそもの失敗だったのだろう。
アメリカ軍の予定としてはバグラム空軍基地返還後も、一定期間はアフガニスタン空軍が機能すると思っていたらしいが、実際はそうではなかった。それが、恐るべき速度でカーブル陥落した理由なんだろうね。
撤退の必要性はあったが
端的に言えば、トランプ氏もその必要性は認めていたし、方向性も出していた。バイデン氏の判断は撤退時期だったのだが、それこそが失敗だったとそう思う。現時点では、だが。
バグラム空軍基地からの撤退を優先したのは、結果的には失敗だったと思うがそれは結果論である。そもそもの失敗は、アフガニスタン正規軍が名ばかりの存在で、事実上機能しない状況であったことを見誤っていたことの方が問題だろう。
バイデン氏の目が曇っていたのは、この記事からも容易に想像できる。
バイデン大統領 アフガニスタンからの米軍完全撤退を正式表明
2021年4月15日 16時11分
アメリカのバイデン大統領は演説を行い「アメリカの最も長い戦争を終わらせる時だ」と述べ、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍を同時多発テロから20年となることし9月11日までに完全に撤退させることを正式に表明しました。
「NHKニュース」より
4月のニュースでも報じられた通り、バイデン氏の狙いは9.11に撤退完了を間に合わせるという「国内スケジュール上の都合」で撤退作戦を遂行させた。そのために撤退準備を含めて色々な面での情報の精査が不十分になった。
そうだとすると、バイデン氏の批判は免れまい。
今後も、この件は注視していきたい。
コメント
木霊さん、今晩は。
アメリカにとって引けない政策転換だったとはいえ、ベトナム以上にお粗末な結末を招いてしまったバイデン大統領の責任は重いでしょうし、今後の政局に大きな影響を及ぼすのは間違いないでしょうね。
>だが、主犯とされたアルカーイダのメンバーであるウサーマ・ビン・ラーディンを殺害した段階(2011年5月)で、撤退を考えるべきであった。そこはアメリカの失敗である。
これに尽きるんじゃないかと僕も思っています。
この時点でタリバンと交渉しアルカイダ他の国際テロ組織は絶対に排除する、またテロの温床となり得るいかなる環境も責任を持って厳しく管理する、女性の権利を含め民主派の権利を法的に保証する...、これで和平合意していればと今さらながら思います。
もちろん、民主化を望むアフガン国民にとってはタリバンがそんな甘い組織ではないので、アメリカ含む欧米諸国の支援で民主政権樹立を望むのは当然ですが、結果論になりますが10年早かったか遅かっただけであっさりとタリバン政権が復活しました。
アフガニスタンの歴史・地形性やイスラム教を柱にした部族主義に、欧米型の自由主義・民主主義の押し付けは無理だったとうか、いらぬお節介をやいただけに過ぎなかったのが虚しいです。
残った日本人とその協力者の一日も早い脱出を願うばかりです。
バイデン氏にとって「ベトナム以上の失敗」の汚名を着せられる流れになるのは、どうしようもないでしょう。
ただ、前回のアメリカ大統領選挙で、「反トランプ票」をかき集めて選挙戦を戦った民主党の戦略はあたったわけですが(未だに不正選挙の疑いが残ってはいますが)、しかしバイデン氏が大統領として信頼できるかというと、そんな事はありません。
バイデン下ろしの流れは今後加速するのではないでしょうか。
それほど、アフガニスタンの失敗は大きかったと思います。
政治は結果責任と言われますから、中間選挙もちょっと怪しいのでは?
アフガニスタンからの邦人救出や、残された協力者の国外脱出を実現して欲しいですね。