アフガニスタンの首都陥落か、ターリバーンの勢力拡大

中東ニュース

アフガニスタンが大きく変わろうとしている。

タリバン、アフガニスタン首都も掌握 ガニ大統領は出国

2021年8月15日

アフガニスタンで進攻を続ける反政府組織タリバンが15日夜、首都カブールに入った。それに先立ち、アシュラフ・ガニ大統領は隣国へ出国した。タリバンはカブールを攻撃して制圧するつもりはなく、平和的な権力移譲を目指すとしている。タリバンは同日夜には、首都の外で待機していた戦闘員に、市内に入るよう指示。大統領府を掌握した。

アフガニスタン国家和解高等評議会のアブドラ・アブドラ議長は15日夜、ガニ大統領が出国したと確認した。フェイスブックに投稿した動画でアブドラ氏は、ガニ氏を「前大統領」と呼び、「国をこのような状態で置き去りにした」ガニ氏について「神が責任を問うし、国も審判を下す」と述べた。

「BBC」より

大統領は首都を捨てて国外に出国。残された国民達はターリバーンを支持していると聞くから、この流れはもはや止められないだろう。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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外国勢力によって荒らされた?アフガニスタン

ターリバーンとは何なのか?

そもそも、ターリバーンとは何なのだろう。

タリバン幹部に日本から独占インタビュー 「われわれはアフガニスタン国民から支持を得ている」

8/15(日) 21:16

8月15日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが、アフガニスタンの全土が「支配下に入った」と声明を発表した。そしてタリバンの共同創設者のアブドゥル・ガニ・バラダル師が大統領宮殿に入ったと報じられ、タリバン側によれば、数日以内にアシュラフ・ガニ大統領を辞任させた上で政権移行が行われるという。

~~略~~

タリバン側は米軍などを侵略者と見ており、20年にわたって彼らを追い出すために戦ってきた。そして米軍が国を去る以上、それ自体がタリバンの勝利であり、8月いっぱいで米軍がいなくなれば、アフガニスタンの紛争は国内問題となる。米軍が戻ってくることがない以上、あとはタリバンの思うままになるだろう。

「yahooニュース」より

ターリバーンというテロ組織は、イスラム教のシャーリア法の解釈を厳格に実施する原理主義的な組織であり、必ずしも攻撃的な性格とは言えないのだけれども残虐な性格を持っているとも伝えられている。

個人的に特に問題視しているのは文化浄化と呼ばれる行為だ。

バーミヤン石仏爆破から20年 写真で見る、破壊の前後

2021/4/14

1996年7月、フランスの写真家パスカル・メートル氏は、アフガニスタンのバーミヤン渓谷の岩山に彫られた巨大な仏像を3度目指したが、すべて失敗に終わった。氏は「レクスプレス(L’Express)」誌の取材でアフガニスタンの首都カブールに滞在していた。カブールからバーミヤンまでの距離は100マイル(約160キロ)にも満たない。それでも出発の朝になると、運転手は毎回キャンセルした。報酬を弾むと言っても無駄だった。

「ナショジオ・スペシャル」より

彼らが一体何を考えて仏像の破壊を行ったのかは理解できない。

こんな事をして一体何になるというのか。

イスラム教を信奉する彼らにとって、仏像は何の意味もない偶像であって破壊することに躊躇いはないのかも知れないが、これは「他の文化を認めない」という狭量さの現れでもある。つまり、他国との協調をとっていく必要はないと考えているのだろう。

部族対立構造

アフガニスタンという国は、古代から栄えている地域ではあるがそのトップは結構入れ替わっている。

古くは、ペルシャ帝国に支配され、次にはアレクサンドロス3世に征服されと、古代から様々な勢力によって征服される地であり、イギリスの保護国となった時期(1878年~1919年)を経て、アフガニスタン王国が誕生(1926年~1973年)する。

国王となったアマーヌッラー・ハーンは、ドゥッラーニー系部族の流れを汲む勢力で、アフガニスタン首長国(1835年~1926年)より続くバラクーザイ朝を受け継ぐ人物であった。

ところが、旧バーラクザイ王族のムハンマド・ダーウードがクーデターを起こしてアフガニスタン共和国(1973年~1978年)が建国される。しかしこの国もクーデターによって倒され、社会主義政権が樹立してアフガニスタン民主共和国(1978年~1987年)となり、アフガニスタン共和国(1987年~1992年)と名を変えて存続する。

ヌール・ムハンマド・タラキーが初代革命評議会議長兼大統領兼首相に就任したこの社会主義政権は、アフガニスタン紛争(1978年~1989年)に苦しめられる。ムジャーヒディーンを名乗るイスラム教を旗印としたゲリラ組織が暗躍することで、内戦状態に陥るのである。

で、ここにソ連がしゃしゃり出て来るワケだ。1979年12月24日にソ連がアフガニスタンに軍事侵攻を開始する。社会主義政権の支援という形なんだったけれども、1987年に大統領に就任したパシュトゥーン系のギルザイ部族連合アフマドザイ部族出身のムハンマド・ナジーブッラーは、まさにソ連の後押しによって大統領となっており、共産主義の影響が色濃い国となる。もっともこの人物、ターリバーンによって逮捕され、「アフガニスタンを混迷に陥れ、神の意思に従わぬ背信者」などと言われて非業の最期を遂げる。

そして、ターリバーン政権がアフガニスタンの実権を握るのである。アフガニスタン・イスラム国の成立(1992年~2002年)である。先に説明した仏像破壊はこの時に行われた。

とまあ、ザックリとアフガニスタンの近代を振り返ってみたわけだが、その内情は主義主張の異なる部族が主導権争いをしているという構図になっている。結局のところ、アフガニスタンの内情は部族間紛争なのである。

9.11、テロとの戦い勃発の狼煙

ターリバーン政権が安定的な内政を行ってくれれば、アフガニスタンも少しは落ち着いたかも知れないのだが、しかしそうはならなかった。

皆さんの御記憶にもあると思うが、アメリカ同時多発テロ事件(2001年9月11日)が発生する。

これまで説明したアフガニスタンの歴史の中でアメリカは登場していないのだが、ソ連が出しゃばってきた話をした。実はアメリカはこの時にソ連に対立する組織に資金や武器を供給するサイクロン作戦を行っていたのである。このサイクロン作戦は1979年から1989年にかけて行われており、その後のアメリカからの資金供給は途絶える。

見方によってはアフガニスタン国内にて代理戦争をやっていたという風にも見える。彼らにとって外国勢力ことが闘う相手だというわけで、資金供給が途絶えたことでアフガニスタン国内の混乱を招いたという風にも理解できる。我が物顔で活動していたムジャーヒディーンは資金不足に陥って何をやったか?といえば、ジハードを海外に輸出することである。

どうしてソ連軍がアフガニスタンから撤退した後にも、世界でジハードを継続する必要があったのかは分からないが、ジハードの標的になったのが「世界の敵であるアメリカ」ということだったらしい。1988年に結成されたアルカーイダは、アメリカ大使館爆破事件(1998年)、アメリカ同時多発テロ事件(2001年)を引き起こす。

アメリカにしてみたら、アフガニスタンの争いを止める為に資金供給したら、恨みを買ってしまったという皮肉な話である。

そして、アフガニスタン紛争(2001年)が勃発する。

アフガニスタン紛争と新共和国成立

アフガニスタン紛争は、アメリカ軍がアフガニスタンに侵攻して、アルカーイダの拠点を潰して回るというものであった。

そしてアフガニスタンの運営は、アフガニスタン・イスラム共和国(2004年~)によって行われる事になる。アメリカの傀儡政権として誕生した新共和国の成立は、アフガニスタンの国民にとって幸せだったのか?というと、どうもそうではないらしい。

確かに、首都カブールの民主化は進んで、頑迷なイスラム教の教えから脱却して、自由を感じる人も多かったようだ。だが、首都から少し外れると、やはりイスラム教の教えが支配的であって、アフガニスタン共和国の国政に違和感を感じ、恩恵を感じない人も多かったようだ。

それが、地方におけるターリバーンの歓迎に繋がっているのである。

また、これからアフガニスタンに入っている米軍関係者などは侵略者とみなされ、自爆テロなどで攻撃にさらされると見られている。米軍に裏切られたと見るアフガン部隊の関係者らもこれからますます反米になっていくはずだ。そもそも、20年も戦って勝てなかったタリバンと戦うために米軍が再びアフガニスタンに戻るのは今のところ考えにくい。

「yahooニュース」より

国土が荒れるのはアメリカのせいだ、というわけである。

アフガニスタンでのターリバーンの急進

さて、そんな背景があるので、オセロゲームのようにアフガニスタンにおける勢力図は塗り替えられてしまっている。

なぜタリバンはこれほど急進撃しているのか アフガニスタン

2021年8月15日

アフガニスタンで反政府勢力タリバンが急進撃を続けている。その速度は大勢の意表を突くほどのもので、今や各地の州都がドミノのように次々とタリバンの支配下に入っている。

勢いは明らかにタリバン側にあり、アフガニスタン政府は権力維持に苦しんでいる。

今週になって流出された米情報機関の分析は、タリバンが数週間の内に首都カブール攻撃を開始し、政府が3カ月以内に倒れるかもしれないという内容だった。

~~略~~

アフガニスタン政府のアブドル・サッタル・ミルザクワル内相代行は同日午後、地元トロ・テレビが放送した動画で、暫定政府への「平和的権権力移譲」が行われると述べた。カブールが攻撃を受けることはないとも話した。

「BBC」より

武力制圧ではなく、ターリバーン支持に回る。それは、ターリバーンがイスラム教の教え守る組織であり、かつ、インフラ整備などの体制を整えつつあるからだ。

タリバンと手を組む中国――戦火のアフガニスタンを目指す3つの目的

7/30(金) 9:29

米国が撤退を進めるアフガニスタンに、入れ違いのように中国がアプローチを強めることには、「一帯一路」構想を進めるだけでなく、ウイグル問題への対応、さらに「米国を超える大国」のイメージ化という3つの目的があげられる。

「yahooニュース」より

色々な勢力がひしめくアフガニスタンではあるが、アメリカというビックスポンサーを失っても軍事的な抵抗が可能であった理由がある。

僅か1月程度で勢力図を書き換えることが出来たのは、アメリカ軍が撤退することを決めたことも大きいが、支那というビックスポンサーを得たことも大いに関係がある。

もともと国内ではそれなりに支持を得ていたターリバーンは、ビックスポンサーがついたことでインフラ整備を約束したことだろう。支那は一帯一路構想の実現のために、アフガニスタンの開発には比較的積極的なのである。

いつの時代も金の力は偉大だねぇ。

アフガニスタンの今後

今後、アフガニスタンがどうなるのかは分からない。アフガニスタン・イスラム首長国を名乗った後、誰がトップに立って、どのような政治をしていくのか。

タリバンが首都を掌握、「アフガニスタン・イスラム首長国」を宣言へ

Aug. 16, 2021, 09:50 AM

タリバンはカブールの大統領官邸で「アフガニスタン・イスラム首長国」も樹立を宣言すると、タリバンの関係者が8月15日に発表した。

「BUSINESS INSIDER」より

イスラム教を前面に押し出した統治ということになって、一方のアメリカを始めとする西側諸国は影響力行使を抑えることだろう。

そもそも、アメリカにとって9.11テロの報復が出来れば良かったのだが、アルカーイダは壊滅。ターリバーンがアメリカに刃向かうようなことをしない限りは放置でも問題ないだろう。

ただ、アフガニスタン・イスラム首長国の承認を、各国がするか?というと、これもまた難しい状況ではある。今回は無血開城だったことが後に影響する可能性もあるが、前回は数カ国程度しか承認しなかった。

今回はというと、支那がバックアップに付いてはいるが承認するかというと直ちには難しいだろう。とはいえ、なんやかんやと理屈を付けて承認をし、支那と関係の深い国もそれに追従する可能性が高い。そうなった時に国際的な潮流を作る事が出来るのかがポイントだが、どうなることやら。

アメリカの影響力の低下

そもそもアフガニスタンからアメリカ軍が撤退を決定したことが、今回のこの様な事態を迎える切っ掛けになってしまった。

アフガニスタンの崩壊、責めを負うべきはバイデン氏

2021.08.15 Sun posted at 18:30 JST

宗教戦士の一群が、奪い取った米国の軍用車両に乗り、米軍から訓練を受けた軍隊を打ち負かす。敗れた側は、自分たちの戦力を戦わずして差し出す。

どこかで聞いた話ではないか?

これは2011年の終わりに、米軍が撤退した後のイラクで起きたことだ。それから3年、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の戦闘員の大軍は首都バグダッドのゲートからわずか数キロの地点に迫り、国内の主要都市の多くを奪取した。

当時のオバマ政権によるイラクからの撤退を取りまとめたのは、副大統領だったジョー・バイデン氏その人だ。

「CNN」より

トランプ氏もアフガニスタンに対しては大きな影響力を行使しなかったが、バイデン氏は完全に腰が引けた状態となっている。

記事にもあるように、イラクからアメリカ軍の撤退を取りまとめたのもバイデン氏であった。

良くも悪くも、アメリカの影響力の低下の結果が、現在のアフガニスタンの姿なのである。とはいえ、ターリバーンが平和的に国内を治めることができるのであれば、それに越したことはないかもしれない。ただそんな事が可能なのかは、疑問だ。既に1度失敗しているからね。

武力に寄らない平和というのは聞こえは良いのだが、現実的には難しいことが多い。武力で押さえつけることが平和なのか?という疑問もあるが、アフガニスタンにとって「何が平和だったのか」という点については、後世に分かるだろう。

コメント

  1. 曰く、ありとあらゆる覇権国家が拡大しようと手を伸ばし、しかし、それら全てがそこで滅びた地…とも。国がころころ変わろうとそこに根付く人々の逞しさかな。
    今度は中国の番。って事になるんでしょうか、ね…

    • アフガニスタンの歴史を見ると、古くはペルシャ王国に編入され、イスカンデルに侵略され、グレコ・バクトリア王国に支配されと、様々な国家からの侵略を受けてきた地です。
      そして、近代ではソ連の侵攻、アメリカの侵攻があって、次は支那ですから忙しいことこの上ないですね。

  2. タリバーンは、今後どういうふうに経済を回していくつもりなんでしょうね。
    経済の計算なしに国をとりあえず掌握しても、待っているのは貧困地獄だと思いますが。

    • 当面は支那からの支援を得て、交通の要衝としての利益を得る積りなのかと。
      ただ、国家経営するためには、それなりの軍事力は必要ですし、外交交渉も必須。
      ターリバーンにはなかなか荷が重いかもしれません。

  3. 木霊様、皆さま、今晩は

    アメリカの判断ミスでしょうね。
    アフガニスタンは極貧になってしまう可能性がありますね。
    まともな国はタリバンの相手はしないだろうから、という事は、相手にするのは「まともではない」国、勢力でしょう。テロ(聖戦)の輸出を抑え込めればいいんですが。

    国政に民意を反映するシステムはなさそうなので、どうなることやら。

    • アメリカは、手を広げすぎたということもあるのでしょう。
      常にアメリカと手を組むことが幸せ、という事にはならないのでしょうが、現時点で支那に全てを預けるのはリスクが大きすぎると思いますよ。
      イスラム圏は中々に厄介な勢力ですね。

  4. 木霊さん、こんにちは。

    部族主義・宗教原理主義が複雑に絡んだ誠に厄介な国であり地域と、改めて認識させられましたね。(周辺国を含め古来変わっていないって事かな)

    直近で支那との会談でどんな政治取引があったのか? 今後の両国の動きを注視していきたいと思っています。
    アメリカもこの事態を想定していなかったはずではなく、2020年のドーハでのアメリカ・タリバン間の妥協案の中味も、今後タリバン政権にどんな影響を及ぼすのかにも関心がありますね。

    タリバンの迅速な国土制圧の裏には、アメリカの本当の思惑に加え支那の覇権野心&イスラム勢力台頭の恐れがあり、世界規模でのジレンマで混沌としてきた感じています。

    撤収表明時点でアフガン政府軍に供与した武器弾薬・車両・最新装備&空軍戦力が、鹵獲されるのはアメリカの想定内だったと想像すると、今後タリバンがそれを基礎に正規政府軍として本当に機能するかも注視しないとね。
    状況次第ではその兵器戦力がウィグル問題を抱える支那に、速攻で向けられる可能性もありますから。

    一番はタリバンを支援してきたパキスタンの動きが気になります。

    P.S.
    イランはタリバンとは最悪の仲のようですが、したたかに漁夫の利を得る活動をするかも、アルカイダも復活を目指し先鋭化するかもで油断できません。

    今は無辜の住民に犠牲者が出ない事を祈るしかありません。

    • 厄介な話になりそうですよ。
      この話、まだロシアが絡んでくる可能性がありますから、同床異夢のターリバーンと支那だけの問題のみならず、世界的な潮流となるような話になってくるのでしょう。
      パキスタンの動きも、ご指摘通り「ヤバい」ですよね。