世の中はオリンピックで盛り上がっていて、僕自身も人並みには興味があるのだが、ブログの話題はロシアの話である。
ロシア首相が択捉島訪問 日本の中止要請に応じず
7/26(月) 11:42配信
ロシアのミシュスチン首相は26日、北方領土の択捉島を訪問した。大統領に次ぐ地位にある首相の北方領土入りは、2019年8月のメドベージェフ前首相以来2年ぶり。プーチン政権は日本の中止要請に応じず、北方四島での日ロ共同経済活動に関する提案のための視察を口実に訪問を強行した。
「yahooニュース」より
ロシアが返す気もない北方領土について、日本との交渉でちらつかせていた時代もあったけれども、今度も国内向けの政治パフォーマンスと共に、日本へのメッセージという意味合いが強いのだろうね。
ロシアの狙い
ロシアの首相は影が薄い
そもそも、ロシアの首相って誰よ。メドベージェフ氏じゃなかったっけ?と、まあ、そんなレベルの認識しかなかったのだけれど、ロシアでの首相の立場は目立たない。まあ、ロシアの政治は殆どプーさん……、じゃなかった、プーチン氏で完結しているから影が薄くてもしょうがないよね。
一応、ロシアの首相は、大統領から指名された後、ロシア下院で過半数の賛成を得てから就任する決まりになっているが、決まりがあるだけで事実上機能していない。プーチン氏は衰えたとは言え絶大な権力を未だに持っているから。
で、現在の首相はミハイル・ミシュスティンなる人物なのだが、官僚出身の議員のようだ。何でも、政治的実績は皆無だったが、ロシアの納税システムの近代化及びデジタイルかを成し遂げた実績が評価されたんだとか。
なお、前首相はメドベージェフ氏(2012年5月8日~2020年1月16日)だね。
プーチン大統領は23日の安全保障会議で、ミシュスチン氏にクリール諸島(北方領土と千島列島)視察を指示。北方四島での日本との共同経済活動に関して「ミシュスチン氏がユニークで前例のない提案をした」として、視察後に提案をまとめるよう命じた。
「yahooニュース」より
で、メドベージェフ氏が択捉島に2年前に訪れてから2年ぶりに上陸したとのこと。
もちろん、プーチン氏の指示があったからという事もあるだろうし、日本に対して政治的メッセージを送る意味もあったろうと思う。
国内アピールと対日アピール
で、何が言いたい課というと、「日本に開発費を出せ」という事である。
9月の下院選に向け、四島開発を進める姿勢を国内にアピールするとともに、対ロ関係に関心が薄いとされる菅義偉首相の反応を探る狙いもありそうだ。
~~略~~
プーチン大統領は23日の安全保障会議で、ミシュスチン氏にクリール諸島(北方領土と千島列島)視察を指示。北方四島での日本との共同経済活動に関して「ミシュスチン氏がユニークで前例のない提案をした」として、視察後に提案をまとめるよう命じた。
「北海道新聞」より
安倍氏の外交のうち、ロシアとの関係だけは大きく失敗であったように思う。
プーチン氏との膝詰め外交が一旦は功を奏したようにも見えたけれども、結局、北方領土の返還は実現しなかった。それどころか、昨今のプーチン氏は日本に金を出させて極東開発をやろうとしている。
極東開発と言えば、サハリン2事件だ。2003年、プラント開発で千代田化工建設と東洋エンジニアリングがロシア企業と共同で受注した石油・天然ガスプラントだったが、2006年9月18日に環境破壊を理由に工事承認が取り消され、サハリン・エナジー社が工事を継続して施設の開発を終わらせた。
この影響で、当初はロシア政府の利益は6%程度だったが、ロシア国営企業のガスプロムが5割の株を取得するに至る。
要は難しい開発は日本にやらせておいて、力業でロシア政府の利益になるような構造に変えてしまったというのがサハリン2事件の真相である。
これと同じ事をもう1度、というのがロシア政府の狙いだろう。ロシアは安定的に原油や天然ガスでの収入があるとは言え、経済状況は随分と痛んでいる。
悪影響は不可避?
いや、影響なんて何もないでしょう。
ロシア首相、択捉島へ 2年ぶり、悪影響は不可避
2021年07月26日05時58分
ロシア政府は25日、ミシュスチン首相が26~29日に北方領土の択捉島を含む極東とシベリアを訪問すると発表した。択捉島は26日に訪れる可能性がある。ロシア首相による北方領土視察は2019年8月のメドベージェフ前首相以来2年ぶりで、昨年7月に領土割譲禁止を盛り込んだ改正憲法が発効してから初めて。
「時事通信」より
時事通信には「悪影響は不可避」と書かれているが、大した影響はないだろう。
結局のところ、ロシア政府に極東開発をやるほどの金は無いし、モスクワから遠いこの地を巧いこと治めようとするのもムリがある。
北方四島をロシアが維持することは、ロシア海軍的には意味のあることだが、残念ながら経済的メリットは殆ど無い。利益だけ頂きたいのであって、北方領土の開発などやりたくはないのだ。
経済回復を目論むロシア
資源外交がポイント
ロシアが極東開発をやりたい理由は、そこに資源があるからであって、北方四島を経済開発することに大きなメリットがあるわけではない。
ロシアの主力商品は、原油と天然ガスで、それ以外の輸出品は概ね貧相だ。
経済制裁に「資源の呪い」、上向かぬロシア経済
2021年5月14日
アンダース・アスルンド(大西洋評議会シニアフェロー)が、4月22日付のProject Syndicateに、「ロシアの下を向く経済」との論説を寄せ、ロシア経済がいかに良くないかを解説している。
ロシア経済は、2014年以来、実質成長ゼロである。プーチンは、経済停滞の責任を、「外部の力」、すなわち世界的な石油価格などに負わせているが、不健全な経済政策と西側の制裁は彼自身以外の誰の過ちでもない。
「wedge Ibfinity」より
そして、経済制裁を喰らっている関係で、やっぱり経済状況は思わしくない。
石油価格は脱炭素化の中、今後は低くなっていくことが確実である。石油依存経済からの脱却はロシアでも言われているが、うまくいっていない。国際政治の用語で「資源の呪い」という言葉があるが、資源国は資源頼りになり、製造業を発展させられないことを言うが、ロシアはその典型である。
「wedge Ibfinity」より
製造業の発展はなかなか実現せず、相変わらず地下資源頼みなのである。
ロシア経済、コロナ前水準に回復しつつある=プーチン大統領
2021年6月7日11:25 午前
ロシアのプーチン大統領は4日、国内経済と労働市場は既に新型コロナウイルス危機前の水準に戻りつつあるとし、昨年は失業率が悪化して実質所得は減少したものの、ロシアは「大惨事」を回避したと強調した。
サンクトペテルブルクの国際経済フォーラムで述べた。
「ロイター」より
「経済回復しつつある!」と胸をはるプーチン氏だが、海外に売るものがほとんど無いのだから仕方がない。
ロシアで自動車産業?
EVシフトが進む自動車業界に、ロシアもうって出ようという動きが活発になってきている。
ロシア自動車大手、2023年のEV生産目指し研究開発拠点開設へ
2021年03月24日
ロシア自動車大手が次世代自動車の研究開発拠点を新設する。BMWや現代自動車の自動車組み立てを受託するアフトトルのワレリー・ゴルブノフ会長は、電気自動車(EV)の生産や水素燃料電池車(FCV)のエンジニアリングセンターを設立すると記者会見で発表した(「RBC」3月12日)。
センターはカリーニングラード州に所在する同社工場に隣接して建設する。稼働開始時期についての言及はなかったが、ゴルブノフ会長は2023年までにEVのパイロット生産を開始する計画を表明した。若年層などをターゲットにした低価格帯EVの開発・生産を想定している。同社が受託生産を行うブランドである現代自動車やその傘下の起亜自動車と共同で開発を進めるとみられる。FCVは2028年までに生産する計画だ(「タス通信」3月12日)。
「JETRO」より
ただ、ロシア製の自動車など、世界で売れているなどと言う話は聞いたことがない。エンジンを作らないから良いんだ、というわけにもいかない。
何しろ、兵器開発は得意だが、市販で使われるような自動車は、鳴かず飛ばずである。ロシアの自動車のどこが悪いなどという話は聞かないけれど、特にセールスポイントがないところが問題なんだろうね。
特にEVはロシアと相性が宜しくない。低温で充電池がどうなるかは皆さんご存じだと思うが、それをどうにかする技術をロシアが持っているとも思えないのだ。
外交シーンでのプレイヤー
さて、そんな経済的には悪くはないけれど展望のないロシア。しかし、外交シーンではまだまだ存在感を示すことが多い。
特に、軍事面ではかなり存在感を示す事で有名である。最近も、F-16Vに対抗して出してきた戦闘機が注目を集めている。

Su-75という名称になるのではないか?と噂されているが、シングルエンジンの廉価版戦闘機で、ステルス性能有りとなると、マーケットとしては完全にF-16Vとバッティングする。
ロシア、新型ステルス機公開 米F35のライバル狙う
2021/7/20 22:46
ロシアの首都モスクワ郊外で20日、国際航空展示会「MAKS-2021」が開幕し、露国営ハイテク企業「ロステック」が開発した新型ステルス戦闘機が初公開された。新型機は「チェックメイト」と命名され、展示会に訪れたプーチン大統領も視察した。インタファクス通信が伝えた。
「産経新聞」より
中東やアジア諸国でも欲しがる国は出てくると思うから、政治的な影響力という意味では、この戦闘機の存在も一石を投じる可能性はある。
日本としてはロシアとの距離感をどう測るかは難しいところだが、そもそも北方四島の返還はほぼ絶望的である。エサとしてチラチラされるくらいで動じても仕方が無いだろう。
そういう意味でも、今回のロシア首相が択捉島訪問した話も、キッチリ申し入れはしておくとして、基本的には放置で良いと思う。
大切なのは、どちらかというとロシアが距離を詰めてきたときに、どう対応するのかをしっかり決めておくことじゃないかな。
追記
抗議はしたらしいね。
駐日ロシア大使呼び抗議 日本政府
2021年07月26日15時45分
外務省の森健良事務次官は26日午後、ロシアのミシュスチン首相の北方領土訪問に抗議するため、ガルージン駐日大使を同省に呼んだ。
「時事通信」より
これでいいんじゃないかな?取り敢えずは。
コメント
>>低温で充電池がどうなるかは皆さんご存じだと思うが
はい、知ってます。
冬、電池切れでON,OFFできなくなったTVリモコンの乾電池を取り出し放置!
夏、放置した乾電池を入れたリモコンでTVをONにできた。そのまま使った。
冬、寒くなって、また、取り出し放置!
昔、ミニ四駆全盛時代田宮の充電器は乾電池も充電してくれた。
ちょっと前から、三洋もナショナルも乾電池を充電してくれません!
便利だったのに最近、会社ってケチですねぇ~
充電器で乾電池を充電というウソみたいな話もありましたが、理屈を考えると一次電池は化学反応に可逆性がありませんから充電はできない様な……。
でも、チョット時間を置いたり温めたりすると、電圧がチョットだけ回復するような事もありますから、強ち「使える様になった」ということはアリかもしれません。
とはいえ、メーカーは「危険だから止めてくれ」といっているので、ご注意あれ。