日本農業新聞は食料の安保の強化を謳う

報道

最近、晴川雨読さんのサイトを訪れて記事を拝見しているのだが、なかなか興味深い突っ込みをされている。昨日は日本農業新聞の記事を紹介されていた

僕自身も日本農業新聞の記事は希に見るのだが、いつも確認しているというわけでは無くて、大変興味深く読んだ。

食料安保の強化 自給率向上へ国民運動

2021年7月11日

穀物の国際価格が高騰し、飼料の多くを輸入に頼る畜産経営を圧迫している。長引けば、国民生活にも影響が広がりかねない。農水省は警戒監視を強化した。重要なのは平時からの備えである。国内生産の拡大について国民の理解を深め、食料自給率向上への取り組みを強めるべきだ。

「日本農業新聞」より

はー、なる程、突っ込みを入れられた理由がよく分かった。

> 自給率の話も含め、ちゃんと数値を知った上で社説書いているのかね?

端的にこう指摘されているが、最近の新聞記事は、結構これが疎かになっている気がする。で、結論も晴川雨読さんのサイトとあまり変わらないのだけれども、それに至る過程も含めて言及していきたいと思う。

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食糧自給率なる指標

食糧自給率って何

ところで、「食糧自給率」って何?という話を少し突っ込んでいきたい。

このネタ自体は、結構有名になってきていて、ネットでも見かけたし、マンガでも見かけたね。チョット何巻か忘れてしまったけれども。

で、「それが何なのか」という話なのだけれど、端的に言えば農林水産省が出している数字である。

食料自給率とは

食料自給率とは、我が国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標です。 その示し方については、単純に重量で計算することができる品目別自給率と、食料全体について共通の「ものさし」で単位を揃えることにより計算する総合食料自給率の2種類があります。このうち、総合食料自給率は、熱量で換算するカロリーベースと金額で換算する生産額ベースがあります。

「農林水産省のサイト」より

このサイトで色々な食糧自給率を説明しているが、多くのメディアで使われているのはカロリーベース総合食糧自給率というヤツである。

食料自給率 38%で大丈夫?

私たちが食べるコメや肉などがどの程度、国産でまかなわれているかを示す「食料自給率」。最新のデータがこのほど公表され、昨年度はカロリーベースで38%という結果でした。日本は食料自給率が低いイメージがあるけど、38%ってやっぱり低いの?どうして?経済部の岡谷宏基記者、教えてください。

「NHKニュース」より

NHKもまー、しれっとおかしな事を書いているけれど、全く間違っているというわけではないとは思う。ただ、都合の良い数字を使って議論を誘導したいという思惑が透けて見える記事ではある印象だ。

日本ではどうしてこう「食糧自給率を上げろ」という単純な議論になりがちなのだろうか。

品目別自給率

食糧自給率という言葉を聞いて連想するのは、例えばお米だったら、何%の米が外国産なのか?というようなイメージであろうと思われる。

これ、NHKの出している標なのだけれど、「いずれもカロリーベース」などと書かれている。カロリーベースの自給率って自給率を論ずる上で意味あるのかなぁ。

品目別自給率=国内生産量/国内消費仕向量 (国内消費仕向量=国内生産量+輸入量-輸出量-在庫の増加量(又は+在庫の減少量))

「農林水産省のサイト」より

これが農林水産省のサイトに示す計算式で、こちらの方が直感的に分かりやすい。カロリーベースというのは、燃料なり飼料なりが輸入に頼る部分が大きいとパーセンテージが減ってくるので、分かりにくくなるのである。

例)小麦の品目別自給率(令和元年度) =小麦の国内生産量(103.7万トン)/小麦の国内消費仕向量(632.3万トン)=16%

「農林水産省のサイト」より

小麦の数字がNHKと違うのはチョット不安を覚えるのだけれど、ここで言いたいのは「品目別自給率」という指標は「出回っている製品の内、輸入品が混じっているかどうかという指標」としては分かり易いものだと言うことだ。

感覚的にも分かり易いよね。

総合食糧自給率

で、ここからが少しややこしいのだけれど、じゃあ全体の食糧自給率はどうなのか?という話になる。

ところがこの指標は、現在、2通りの数字があるのだ。

1つが「カロリーベース総合食糧自給率」というヤツで、一般的に報道で使われている指標だ。この数字のアレな所は、カロリーの高い食品ほど影響力が大きい点にある。

カロリーベース総合食料自給率(令和元年度) =1人1日当たり国産供給熱量(918kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,426kcal) =38%

「農林水産省のサイト」より

NHKの解説でも使っていた数字である。この数字で注意しなければならないのは、カロリーの高い肉類や飼料の影響度が高いため、日本において食肉輸入割合の高い実情を考えると、数字が低く出やすいものである。

生産額ベース総合食料自給率(令和元年度) =食料の国内生産額(10.3兆円)/食料の国内消費仕向額(15.8兆円) =66%

「農林水産省のサイト」より

一方、「生産額ベース総合食品自給率」という数字もある。これも価格の高いものほど影響力が大きな数字である。こちらも肉類など単価の高い商品の輸入率が高くなると、数字が低くなる傾向にある。

NHKでは、この2つの指標が揃っているにもかかわらず、敢えて従来通りの「カロリーベース総合食糧自給率」を使っている点でタチが悪い。

食料国産化率

さて、総合食品自給率という数字も分析するにあたっては重要な指標ではあるのだけれども、輸入飼料の割合が高くなるとどうしても数字が低く出がちである。

このため、輸入飼料を計算に反映しない(即ち、飼料は全部国産であるという前提の)数字を出す事を令和2年に閣議決定し、指標として農林水産省のサイトに掲載されている。これがもう1つの指標である。食料国産率というのだけれど、これもカロリーベースと生産額ベースで数字が用意されている。

カロリーベース食料国産率(令和元年度) =1人1日当たり国産供給熱量(1,137kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,426kcal) =47%

生産額ベース食料国産率(令和元年度) =食料の国内生産額(10.9兆円)/食料の国内消費仕向額(15.8兆円) =69%

「農林水産省のサイト」より

カロリーベース食料国産率は47%であり、38%と比べるとインパクトは小さくなる。生産額ベース食料国産率は69%と7割弱の国産化率を実現している。

NHKの記事も間違いでは無いのだけれども、「飼料が輸入出来なくなったから」という話と「食品が輸入出来なくなったから」という話では印象が異なる。そして、極論を展開。もう、目も当てられない。

毎日「いも」の必要はあるのか?

以下がその下りなのだが……。

毎食「いも」ですか…。

そうならないためにも食料自給率を高めていくことが必要です。ただ、海外からの輸入自体が悪いことではありません。さまざまな国の食材がいつでも身近にあるということは、私たちの暮らしを豊かにしますよね。経済力がある国で食料の輸入が多くなるのは、当然のこととも言えます。アメリカを見ても自給率が130%と100%を超えていますが、食料品の輸入額も1300億ドルを超え、世界トップクラスです。

大切なのは、豊かさを享受しながらも国内の食を安定的に維持できるよう基盤を整えておくこと、そのバランスだといえそうです。

「NHKニュース」より

なかなか極端な意見ではあるよね。

「毎食いもですか」という言葉は「同じカロリーを摂取する」という前提で話をしているのであって、別のものと置き換えても問題はない。焼き芋推しが酷いが、別に焼き芋や粉ふき芋ばかり食べる必要は無いのである。

議論を単純化したことで分かり易くはなっているが、どう考えても別の意図が紛れ込んでいる。

そうそう、カロリーの高い野菜のトップはサツマイモなのだけれど。カロリーだけで言えば干し柿などの加工品の方がカロリーは高い。

食料国産化率という指標

そんな訳で、こういうNHKの様な恣意的な運用を避ける為もあって「食料国産化率」という指標が出てきたようだ。

この図が分かり易くって、実感としても食肉は42%程度が国産であるという方が、スーパーなどの棚に並んでいるものを見ても分かり易いと思う。

ただ、何れにしても自給率が落ちてきているのは事実である。それは何れの指標を使っても同じだ。

昭和40年度以降の食料自給率の推移

数字的にはカロリーベース総合食糧自給率も生産額ベース総合食品自給率も右肩下がりの数字である事が分かる。したがって、自給率を上げようという目標そのものに反対するつもりは無い。

しかし逆に言えば、上に示されたモデルのようにカロリーの高い食品に置き換えれば、100%自給率が可能であるという事も意味している。そうなってくると、食料品輸入が止まると国民が飢えるというのはウソなのだ。

しかし逆に言えば、上に示されたモデルのようにカロリーの高い食品に置き換えれば、100%自給率が可能であるという事も意味している。そうなってくると、食料品輸入が止まると国民が飢えるというのはウソなのだ。

そうなってくると、「食糧自給率」という指標で何を議論すべきかという話になる。

減らそう食品ロス、でもそれは可能なの?

食品ロスについて

さて、一方で近年注目されているのが食品ロスの話。

「食品ロス」をなくすため “牛乳は手前から取りましょう”

2021年07月12日 08時10分

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(6月24日放送)に食品ロス問題ジャーナリストの井出留美が出演。日本における「食品ロス」の問題について語った。

「@niftyニュース」より

ちょっと「ふざけるな」とは思ったのだけれども、最近、食品ロスを減らすために棚の手前から商品をとれという話が出てきている。

例えば我が家の場合、牛乳は週に4本ほど消費するが、纏めて買うのでできるだけ賞味期限は長い物をとりたいという事情がある。

食品ロスの半分が家庭から出ているという話は知っているが、牛乳の賞味期限の短いものを買うと寧ろロスは増えてしまうことになる。それぞれのライフスタイルに合わせて購入するようにすべきだと思う。

つまり、「食品棚の手前からとれば廃棄が減る」というのは、実態を反映した話だとは言い難い。

コンビニから出る食品ロス

一方でこんな取り組みも。

大手コンビニ AIで値引き 売れ残り防止で“食品ロス”削減へ

2021年6月20日 17時43分

まだ食べられる食品を廃棄する「食品ロス」が課題となる中、大手コンビニチェーンが弁当などの売れ残りを減らすため、AI=人工知能で商品の売れ行きを店舗ごとに予測して値引きにつなげる新しいシステムを開発し、近く実証実験を始めることになりました。

「NHKニュース」より

一方で、コンビニはこんな取り組みも始めた様だ。コンビニ問題は、機会損失を無くす為に、常に商品が棚に並んでいる状態を維持する事が求められていて、そのために食品ロスが年間で1店舗辺り2tも出るわけである。そちらの方が問題である。

まあ、それも含めて値下げをするシステムを導入したらどうかという議論ではあるんだけどね。特に良く取り上げられるのが恵方巻きやクリスマスケーキなど季節ものの商品だ。これは近年完全予約制に変えることで随分と廃棄を減らす事ができたというニュースがあった。

売り方を工夫することで、改善はできると考えてもイイだろう。

じゃあ、数字手見たらどうなんだろう?という話だ。

家庭から出る食品ロスが46%

img

先ずは食品ロスの総量は年間600万tもあること。

コレを見ると、事業系食品ロスのうち最も割合が多いのは食品製造業であるようだ。作る段階で何故ロスが出るのか?といえば、傷もの、形が流通にのせられないもの、などが廃棄されているという所が大きい模様。

キャベツなどは大量にできてしまって、流通量をコントロールするために収穫せずにトラクターで踏みつぶす絵などがテレビで流されるんだけれども、ああいった生産量の調整なども影響している数字だね。

で、割合として家庭から発生する食品ロスが多いよと言う話なんだけど、じゃあ、どんな理屈で食品廃棄物が出るのか?というと、こんな感じである。

実は、調理くずの割合が一番大きい。野菜を調理する際に、種を取ったり外側の葉をとったり根を切ったり、と、そんな事で出るものだ。

もちろん、食べ残しや手付かずの食品が4割もあるので、これを減らせば結構減らせるということになるのだけれど、4割減らした場合にどうなるかと言えば、110万t程度減る事になる。600万tのうち110万t減れば18%くらいはロスを減らせる計算になる。

尤も、食べ残しゼロとか手付かずの食べ物廃棄ゼロというのは現実的とは言えない。ある程度は意識することで減らす事ができるだろうが、完全に無くすことは難しいだろう。良くて5割減くらいじゃないかな。

コレが正しいとすると、実際に減らせる家庭から出る食品ロスの全体に見る割合というのは1割程度かもしれない。

とはいえ、単純に考えれば食品ロスを削減する結果、食品自給率があがる可能性がある。ただ、残念ながら食品自給率が重量ベースで出ていないので、食品ロスをどれだけ減らすと食品自給率がどの程度改善するかはよく分からないが。

飼料の輸入量は減らせるのか?

とまあ、こんな感じで食糧自給率と食品ロスの関係まで見直せば、もうちょっと食糧自給率の改善に繋がる可能性はある。

あるが……、そもそもの議論として「カロリーベース総合食糧自給率」を問題視するのであれば、飼料の国内生産というのが可能かどうかを考えていけば良いのではないだろうか。

(減少する耕地面積)

我が国の耕地面積は、長期的に減少傾向が続いており、18年は467万haとなった。かい廃面積は7年以降減少傾向にあるが、耕作放棄が非農業用途への転用を上回って推移しており、耕作放棄が耕地面積減少の大きな要因となっている

「農林水産省のサイト」より
図2-28 耕地面積と耕地利用率の推移

我が国の耕作面積は、年々減少しており、その代わりに増加傾向にあるのが耕作放棄地である。

図2-29 耕作放棄地面積の農家等の区分別割合の推移

このデータは平成17年のものが最新で38.6万ヘクタールの放棄耕作地があるとされているが、平成27年には42万3千ヘクタールにまで増加している。

こうした放棄耕作地を利用して飼料は作れないのだろうか?という風に考えてしまう。

濃厚飼料がネック

もちろん、国はそうした課題についても検討している。

粗飼料と濃厚飼料という概念があって、日本では濃厚飼料の自給率が極端に低い。徐々に増やしつつはあるが、農家の高齢化などの問題があって、なかなかコレを向上させることは困難である。特に濃厚飼料というカテゴリーに含まれるものは広大な作付面積を利用し、かつ機械化を推し進めて低コスト化を実現しなければならず、なかなか日本において生産する事が難しい。

これが日本のカロリーベース総合食糧自給率を押し下げる原因なのである。

逆に言えば、日本の食肉業界が頑張って、食肉の輸入量が減ったとしても、「カロリーベース総合食糧自給率」はそれに比例して減ってはくれないのである。

指標としてカロリーベース総合食糧自給率を使う事が悪いというわけでは無い

ちなみに、カロリーベース総合食糧自給率を使うと分かりにくくなるという指摘はしたが、コレを指標にして国際比較する事は問題無いと思う。

実際に、国際比較する場合に指標を揃えることは重要である。ただ、この表を見ても分かるように国土面積の狭い国ほど食糧自給率が低い傾向にあることが分かる。

特に日本は急峻な地形が多く、作付けに向いた土地が少ない事が問題となっている。つまり、ある程度はどうしたって輸入飼料に頼らざるを得ないのである。

そして、農家の高齢化が進めば濃厚飼料などの作付けは難しくなる。日本国内において飼料用米の生産量は芳しくない。濃厚飼料として使える飼料用米は農林水産省が必要だと推進しているにもかかわらず、である。

飼料用米 1700ha減-令和2年産の作付状況

2020年10月7日

令和2年産の全国の主食用米の作付け面積は、都道府県ごとに増減があるものの、前年の137万9000haから1.3万ha減少し136万6000haとなった。

飼料用米など戦略作物への転換を進めるため、農水省は米の用途変更の申請期限の6月末を2度延長し、9月18日までとした。その結果、7月から9月にかけて4000haが主食用以外に用途変更された。

令和2年産で主食用米の作付けを増やしたのは秋田と鳥取。前年と同じがが栃木、群馬、岐阜、京都、熊本となっており、それ以外の40道都府県が削減幅にばらつきはあるが減少させた。

一方、戦略作物では米粉用米、輸出用米(新市場開拓用米)、備蓄米の作付面積が増加する一方、加工用米、飼料用米が減少した。

「JAcom」より

その原因としてJAは、飼料用米の安さを原因に挙げている。

しかし……、この話はそもそも食用米が高価で買い取られて価格が政府によって調整されていることが問題なのであって、市場原理に任せてしまった方が米価は下げられる可能性は高い。更に、輸入米に対しては高い関税をかけて制限しているのだから、痛し痒しの所がある。

天候不順による影響

とまあ、そんな訳で、日本における食糧自給率の向上はなかなか困難であるという実情は踏まえておかねばならない。

その上で、冒頭のニュースに戻っていこう。

 日本では20年1、2月を中心に、米やパスタなどの欠品やタマネギはじめ加工業務用野菜の輸入の停滞が起こり、海外で輸出規制も発生、食料不安が高まった。食卓への影響は限定的だったが、食料安保に関する農水省の有識者会合では「世界的豊作などの好条件が重なっていた面もある」との指摘があった。運に救われたで済まされない。

 同省は、不測時に食料供給を確保する対策を緊急事態食料安全保障指針で規定。新型コロナの感染拡大を受け、食料供給リスクに「感染症の流行」を加えた。これで国内・海外にわたるリスクは延べ25項目になった。他は大規模自然災害・異常気象、家畜の伝染性疾病・病害虫、貿易摩擦、人口増加、輸入の競合など。日本の食料安保は多くの不安要因に囲まれている。

 7月1日には、警戒監視を強める「早期注意段階」を同指針に新設し、適用した。大豆やトウモロコシといった主要穀物の国際価格が高騰しているためだ。史上最高値を記録した12年の水準に近づいている。中国が飼料用に買い付けを増やしていることが要因として大きい。国内では配合飼料価格が上昇、畜産・酪農経営が影響を受けている。

「日本農業新聞」より

世界中で食料の輸入に関する不安定要因があるので、国内生産量を高めていこうという趣旨であるようだ。

確かに蝗害が各地で発生していて食料供給に不安が出ていることと、自然災害の発生で農地にダメージを負った国が少なくない事は事実である。

悪くはない、悪くはない議論だが、それが可能か?という観点が抜け落ちていることで、この議論は片手落ちなのである。

天候のことだけで言えば、日本だって多くの地域で降雨による被害が発生していて、農業生産に影響が出たのは事実である。世界規模のマーケットがあるのに、自国だけで農産品を製造するというマゾプレイをする必要が本当にあるのか?と、疑問を感じてしまう。

食糧自給率を上げることには異論はないが

作付可能面積の話は、晴川雨読さんも出していて非常に分かり易い指摘であった。ただ、別の側面からこの問題に光をあてると、限られた農地でより収益性の高い商品を生産したいと考えるのは農家として当然である。それを踏まえて、カロリーベース総合食糧自給率の向上は飼料作物の生産がネックとなる為に容易ではないというのが現実である。つまり、より飼料作物の国産化は厳しいというわけだ。

加えて、飼料用作物を作るために必要な農機具というのは日本ではメジャーではない点もネックになっている。農家の高齢化も相まって、作付けする作物の転換は補助金を出せば増えるというほど容易ではないのだ。

食料・農業・農村基本計画は、食と農に関する国民運動の展開を打ち出した。コロナ禍や穀物価格の高騰は運動を起こす好機だ。自給率の向上、食料安保の確立へいまこそ力を注ぐべきである。

「日本農業新聞」より

そういう意味でも、「自給率の向上」と「食糧安保の確立」というのは、実に空虚な議論に聞こえてしまうのである。

「自給率の向上」そのものは可能か不可能かで言えば可能なのだろうが、そもそも日本国内で作付けが現実的で無いものまで含めて「食糧自給率」という話をしても仕方が無い。極端な例で申し訳無いが、石炭を国産化しろという話と同じ事になると思う。

つまり「自給率は何%まで上げれば安心か」という話にも通じるわけで、100%国産化などというアホな話にはならない事は自明である以上、どこの辺りが妥当かと言う事になる。

そういう意味で、「食料国産率」という指標はもうちょっと分かり易い。こちらをベースに議論をした方が未だマシではないだろうか。

もちろん、飼料作物の輸入が滞れば食肉産業に打撃を受けて肉の流通が減ってしまう可能性はあるが、複数の国から購入するリスク分散をしておいて、国内生産に過剰に拘る必要は無いのではないか。

つまり、「自給率の向上」と「食糧安保の確立」はイコールでは無いのだ。そういう事も踏まえるとやっぱりちょっと浅い記事だったなーと言うのが正直な感想である。

追伸

最後に、晴川雨読さん、題材として同じ趣旨の記事を使わせて頂いたこと、お詫びいたします。本日はネタが思いつかず、アイデアを借用するような形になってしまいました。

論じているところは違うので、お目こぼし頂きたいところですが、問題があれば記事は削除させて頂きます。

追記

ちょっと興味深いツイートを拾ったのでご紹介を。

小泉進次郎氏がフードロスについて記事を書いていたが、そこに用いられたグラフが違うという指摘である。

小泉進次郎『食品ロスの削減は脱炭素社会に向けて重要な課題です。』
こんにちは。小泉進次郎です。 食品ロスの削減は、脱炭素社会に向けてとても重要な課題です。 データでは、日本は「家庭から出る年間の食品廃棄量」では世界4位という…

誰の作文かは知らないけれどさ、「世界4位」のフードロス大国みたいな煽りは恥ずかしい。「先進国に限る」という但し書きがあるわけでもないし、支那もインドも先進国か否かという点については自他共疑念を持たれているのはご存知の通りだ。そうすると、この恣意的なランキングは一体何なのかということになる。

こんなのが環境大臣だから、嫌になっちゃうねぇ。

コメント

  1. 話を膨らませて頂いて感謝です。
    使えるネタがあったらじゃんじゃん使ってください。

    自給率の話で「鶏のヒナはほぼ100%海外依存なので、それを考慮すると、実は鶏卵の自給率はすでに0%という深刻な事態なのである。」などとアホなを言っている東大教授がいるのですよね。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/480102096.html

    • ありがとうございます。
      そしてリンクいただいた記事も読ませていただきました。
      うーん、説得力がある。種苗法シリーズもデータに基づいて丁寧に書かれていますし、参考になります。

      そして……、東大の教授ってアホばっかなんですかねぇ。どうにも、目立つのがみんなアホということなのか、悪名高い人が多い気がしてならないです。

  2. 木霊さま、晴川雨読さま、こんにちは。
    横レス失礼いたします。

    一昨年、コロナ禍が始まるだいぶ前にたまたま小野寺五典氏とお話する機会がありました。
    防衛大臣を3度努められ、また「グーグルマップの尖閣諸島記載が間違っている」と訂正させるなど、安全保障に詳しい、骨のある政治家です。
    それで彼は今、自民党の農林水産ワーキンググループの委員長も務めているんだそうです。曰く「自衛隊などの軍備は判りやすいが、空気、水、山林、そして食べ物という日常の事柄も「安全保障」の極めて、いや一義的にと言っても良い位重要な問題なのです。自分は今、それらに真剣に取り組んでいます」とのことでした。
    目から鱗でした。

    • 小野寺氏がどんな活動をしているのかは、寡聞にしてしりまでんでした。
      防衛大臣の時はそれなりに存在感を発揮していたようでしたが、努力されているとは思いますよ。
      ただ、小野寺氏が「何をやっていたか」は余り伝わってきません。教えて頂いて、調べて見ると確かに農業の関連の活動もされているようですね。
      「主食用米のダブつきを解消するため、飼料用米の作付を推奨」というような活動をやられていて、本文の内容にも確かに関係する活動をやられている様ですね。

      しかし、それを知る機会が少ないというのは勿体ないというか残念な話。
      自民党の広報戦略として、カフェスタのような活動もやっていながらも、なかなか中身が見えてこないというのは、広報戦略の拙さなのかも知れません。