ヌリ号、本当に10月に打ち上げ可能か?

迷走韓国宇宙開発史

コメントをいただいた中にちょっと興味深いニュースを紹介して頂いたので、これは記事にせざるを得ない!

というわけで、久しぶりのヌリ号の話だ。皆さんご存じ韓国国産ロケット第1号である。

独自の宇宙開発へまた一歩、「ヌリ号」が認証テストで発射台に設置

Posted June. 02, 2021 08:15, Updated June. 02, 2021 08:15

10月に打ち上げ予定の韓国型ロケット「ヌリ号」が、初めて完全体の姿で発射台に立った。実際、打ち上げられる飛行モデル(FM)ではなく認証モデル(QM)だが、両モデルが同じ形状と設計構造で製作されることから、事実上ヌリ号が初めて発射台に立てられたことになる。

「東亜日報」より

こいつは少し前の東亜日報の記事で、僕はスルーしていた内容である。

記事には「発射台にロケットを設置」という程度の事しか書かれていないニュースだったので、「順調そうだな」というシンプルな感想で終わった。しかし、読み返してみると結構味わい深い。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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取らぬ狸の皮算用

発射台も自前の技術で開発

先ずはヌリ号の勇姿をご覧あれ。

うーん、何というか本当に立っているだけなんだよね。参考までに、日本の種子島の写真を紹介しておこう。違いが分かるだろうか?

お分かり頂けただろうか?

日本の種子島宇宙センターにある発射台の回りにはもうちょっと色々な設備がある印象だ。

一方、韓国の発射台はそれらが写真に写っていないのである。単に写していないのか、そもそも存在しないのか。

韓国のロケットは未だ規模が小さいので、必要無いということなのかも知れないけれど、どう言うことなのかな。

1日、ヌリ号認証モデルが立った第2発射台は、初期概念から設計、製作まで国内技術で独自開発したということに意義がある。2013年に羅老号の発射台に使った第1発射台は、ロシアで設計図面を受けて製作された。

「東亜日報」より

そもそもロシアの技術で作った第1発射台があるのなら、そちらを使えば良いのに。どうして国内技術で独自開発しちゃったのか。えーと、折角なので写真をWikipediaからお借りしておこう。

ああ、なる程。羅老号は2段式140tで全長33m直径2.9mと比較的コンパクトだ。ヌリ号は3段式200tで全長47.2m直径3.5mと一回りサイズが大きい。

使いたいけど使えなかったというのが正直なところのようだね。だから自分で作るほか無かったと。良くある失敗フラグだが。

宇宙強国チケット腐る?

それでも、「順調なんだな」と理解していたのだが、どうもそうでもないらしい。

「宇宙強国チケット」享受するヌリ号、開発をめぐって倉庫で腐るか?[科学を読む]

最終修正 2021.07.04 11:27 記事入力 2021.07.04 10

初の韓国型ロケット贅沢号の開発事業が停滞しています。一度「最小パフォーマンス」を、確保した初期モデルが、10月に初めて宇宙に飛び立つ予定ですが、本格的に宇宙開発に使うことが程度の高性能に改良する作業が遅れているからです。

このままでは小型衛星のいくつかを低軌道に上げる役割しかないです。開発おいても倉庫に腐りながら2030年に予定される韓国初の月着陸船の輸送、高性能・高軌道衛星の打ち上げなど、独自の需要もきちんと消化することはできません。贅沢号に何が起こっているのでしょうか?

「韓国メディア」より

この記事を読んでも何を言っているのかさっぱり理解できないが、どうやら「ヤバい」らしい。

記事を読み進めていくと、どうやらヌリ号の軌道投入能力が1.5tしかないことが不満らしい。「低軌道に1.5tまでの重量の人工衛星を打ち上げる能力を有する」とあるが、高軌道には届かないっぽい。

1.5tというと、小型の自動車1台分だね。小さな人工衛星なら何とか行けるのか。

参考までに世界と比較すると比較的能力の低い日本のH2Aロケットの低軌道への投入能力は10t。時々打ち上げられるH2Bが19t、開発中のH3ロケットもH2Aとほぼ同等の軌道投入能力を有している。なお、H2Aの静止衛星軌道への軌道投入能力は4t程度。太陽同期軌道への軌道投入能力は3.6t程度だ。

しかしながら、日本のロケット開発は長い時間と労力を費やして獲得したものなので、今から開発しようとしている国と比較しても詮無きこと。

開発事業の危機

ところが、韓国政府も国民も取り敢えずロケットが飛べば満足なようだ。

科学技術情報通信部は、最近完成した贅沢号事業関連予算の予備妥当性調査で1兆5000億ウォンの性能改善事業の分け前を全額削減しました。ただし「繰り返し発射」、すなわち来年以降2026年までに現在の性能が同じ発射体を4つ以上製作して発射すると、約6000億ウォンの予算を可決した。

「韓国メディア」より

性能改善事業の予算は全額カットで、再び同じ能力のロケットを4回分うち上げるだけの予算は付いているそうな。

うーん、確かにそれではダメかも。

しかし韓国にとってロナ号は、言わばファーストステップである。せめて低軌道に5tくらいの軌道投入能力がないとなかなか使い道が無い。

だから、現行型で実績を挙げつつ、改良事業で出力を上げていかなければならないハズなんだが……。

発射スケジュールは10月20日頃を予定

ともあれ、1回目が成功しなければ話にならない。

このように紆余曲折の末、先月1日についに1段、第2段、3端部の両方が組み込まれた完成体認証モデルが披露され、発射体の起立試験を終えました。今、実際の飛行モデルが10月20日ごろ発射されることだけ残りました。ただし、この時はモデル搭載体のみ載って、来年5月に第二発射時にのみ、実際の衛星である次世代中型衛星2号を軌道に上げる実質任務を遂行します。

「韓国メディア」より

えーと、スケジュール通りであれば、以下の通りか。

  • 2021年10月20日 1号機打ち上げ予定
  • 2022年5月 2号機打ち上げ予定(人工衛星を軌道に投入する)

おお、良いじゃ無いか。

ロケットエンジンが、ウクライナから調達した30t級液体燃料エンジンを拡大して75t級にしたガス発生器サイクル式のエンジンで、ちょいと古いオープンサイクル方式で構造が簡素なため、出力に乏しいところが欠点と言えば欠点だろう。

ただ、いきなり高度なエンジンを試すよりは、簡素な方式で実績を積むべきだ。そういう意味でも能力に不満があるからと言って批判するのはどうかと思う。次の段階の二段階燃焼サイクルのエンジンに仕上げるには、地道な改良作業が必要だからね。

5年で更に高性能なエンジンへ

そんな訳で、スケジュール的には今後5年くらいで新しいロケットエンジンの開発を成功させる予定のようだ。

したがって、本格的な宇宙開発のためにはもっと容量が大きく性能が良いエンジンとロケットの開発が必要です。KARIと科学技術情報通信部は、それに応じて、1兆5000億ウォンをかけて、今後5年間で現在の開発完了段階である多段燃焼方式のエンジンの適用を介して最高到達高度を700km以上に高め貨物積載量も2.8t以上に増やすという計画を立てました。

「韓国メディア」より

チョット韓国らしくない感じだが計画自体は堅実に見えるね。

ところがこの計画は韓国議会は否定的で、開発予算が削られてしまったのだとか。

残念なのは贅沢号改良事業の挫折に「外圧」が作用したとのことです。

代表的に反対票を投じた審査員たちは「不確実性」を最も懸念しました。つまり、10月と来年5月に打ち上げが失敗するかもしれないためには、すでに改良事業を検討することはできないだろないかという指摘が出てきたということです。イベントの失敗に関係なく、着実に、R&Dを継続する必要が後であっても成果が出てくるの研究現場を全く知らない非専門的な意見です。みんな非専門家がないのに、なぜこのような話が出てきたでしょうか?

「韓国メディア」より

記事では「技術も分からない専門家でない奴らが予算削りやがった」と恨み骨髄だが、確かに10月のテストが成功してから考えようというのも分からないではない。

ただ、技術開発というのはそういうモノでは無いんだけどね。

失敗しても失敗しても、そこに進歩があると信じて研究開発を続けなければモノにならないのである。ちょこっとだけ投資して(それでも一般人からすれば随分と巨額だが)、僅か一握りの研究が成功するというものである。

それなのにさっさと予算を削るのは確かにオカシイのかもしれない。

KPSのせいで予算が削られた?

ちなみに、記事には韓国型衛星航法システム「KPS」に4兆ウォンの予算を付けたからそれが影響したという分析である。

韓国型衛星航法システム「KPS」、2035年前までに構築推進

2018.02.16 15:32

韓国型衛星航法システム「KPS」を2035年前までに構築する方向で検討が進んでいる。

16日、韓国科学技術情報通信部によると、第4次産業革命時代の成長動力基盤である位置・時刻情報の安定的確保に向けてKPSの構築を推進することを決め、年内に専門家を中心に予備推進団を構成する方針を固めた。

「中央日報」より

この計画は過去にブログで取り上げている気もするけれど、韓国も自前のGPSを持つ計画があるらしい。

そりゃまあ、自前のGPSが在れば嬉しいのだろうけれど、欲しい理由がコレなんだよね……。

一方、日本はみちびき(準天頂衛星システム:QZSS)の2023年の本格的なサービス開始を目指して、現在システムを構築中だ。欧州連合(EU)や中国は2020年の運用開始を目標に構築作業を進めている。

「中央日報”韓国型衛星航法システム「KPS」、2035年前までに構築推進”」より

日本のことは触れないで頂けませんかねぇ。

結局、一時が万事コレなんだよね。

ロケット打ち上げにまず集中しようや。その先の計画を騒ぐのは恥ずかしいよ。

コメント

  1. 木霊様のおっしゃるとおり、発射台周りはシンプルですが、これは本体の規模と、エンジンが液酸-ケロシン系である事から、燃料注入系が簡素化されているのでは?と思えました。
    そもそもが「横倒しで運んで現場で立てる」式の発射台なんじゃないですかね?これ。
    ヌリの1段目は推力75tの新開発液酸-ケロシンエンジンを4発クラスター化、2段はこれを1機のみ使用……あれ?
    ケロシンは、大気が厚い地表近くでは効率がいいと聞きますが、上層に行ってもケロシン使うの?って、今、思いました。まあ、液体水素冷却する手間暇は無くなりますが……
    ※まさかの「高高度でケロシンが凍ったニダ!」は、やらかさないよな……流石にそんな初歩は。
    あと、このエンジン、Wiki見る程度では固有名詞が出てこないんですよね。
    呼びにくいこと、おびただしい。

    • そう言えば指摘を受けるまでエンジンの固有名称を呼んだ、読んだことが無い事に気がつきませんでした。
      多分、開発するにしても名前があるはず何ですが、どうなっているのでしょうかねぇ。
      メディアにも一切露出無しというのは不可解です。

      • 韓国のロケットエンジンはKREシリーズとしてネーミングされているようですね、何の略かは書いてなかったですがKARIかKoreanrIにRocket Engineの略でしょうかね。
        一応予定では2030年に打ち上げられる中軌道静止軌道ロケット(KSLV-III、GEO-SLV)用のKRE-090(90t)まで計画しているようです。

        KRE-075へのwikiのリンクは下記のURLです(同ページの「大韓民国の宇宙開発」の関連リンクに他のロケットエンジンへのリンクもあります)
        https://ko.wikipedia.org/wiki/KARI_75톤급_로켓엔진

      • ほー、なる程、そちらは確認していませんでした。
        ありがとうございます。