「ファスト映画」で逮捕者

報道

そもそもファスト映画の存在を僕は知らなかったのだけれど、あれば便利と感じるのかも知れない。でも、それが「良いかどうか」はまた別である。

「ファスト映画」で全国初の逮捕者 著作権違反容疑 宮城県警

2021年6月23日 13時30分

1本の映画を無断で10分程度にまとめてストーリーを明かす『ファスト映画』と呼ばれる違法な動画を、投稿サイトに公開したとして、宮城県警察本部は札幌市などに住む男女3人を、著作権法違反の疑いで逮捕しました。『ファスト映画』をめぐって逮捕されるのは全国で初めてだということです。

「NHKニュース」より

これは著作権法のカバーする範囲内の事案で、「何が悪かったのか」ということを、メディアがしっかりと説明する必要があると思うんだ。

でも、メディアも結構「ダイジェスト」とか言って放映しているから、同罪なのかも??いや、アレは流石に許可を得てやっているか。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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著作権法違反

「何」が悪いのか

Youtubeで短く映画を纏めて公開し、広告収入を得るという手法で稼いでいる。

映画やアニメの会社などでつくる団体が調査した結果、この1年だけで少なくとも55のアカウントから2100本余りの動画が投稿され、本編が見られなくなることによる被害の総額は956億円と推計されています。

宮城県警察本部が団体側から情報提供を受けて捜査を進めた結果、札幌市に住む高瀬拳也容疑者(26)ら男女3人を逮捕しました。

「NHKニュース”「ファスト映画」で全国初の逮捕者 著作権違反容疑 宮城県警”」より

この話は、Youtuberが「動画を投稿」して「稼ぐ」という作業をする上で、何を素材にするのか?という点をどの程度意識できるのか?というところによる。

「素材」は、ゲーム実況動画とか、ガチャ動画とか、或いはアニメだとかいう世界から、とうとう映画にまで手を出してしまう人が出始めたと言うことで、どこまでがOKでどこまでがNGかという線引きの曖昧さがこの話を分かりにくくしているのだと思う。

だが、基本的には「無断使用はNG」だ。

何故か?

映画の話しに限定すると、Youtube等画像サイトへの投稿行為が著作権法的には映画の制作者の公衆送信権(著作権法23条)の侵害を構成する。

他人の著作物を無料で公開してしまった上にそれで稼いでいるのだから、良いわけがないのだが、これを理解出来ない人が多いのが実情である。

漫画村訴訟

この手の話でちょっと前に騒ぎになったのが漫画村である。

「漫画村」運営者、控訴せず 懲役3年などの実刑が確定

2021年6月17日 18時14分

海賊版サイト「漫画村」の運営者とされ、著作権法違反(公衆送信権の侵害など)と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の罪に問われた住所不定、無職星野路実被告(29)に対する懲役3年、罰金1千万円、追徴金約6257万円の一審判決が17日に確定した。控訴期限の16日までに、検察側、被告側双方が控訴しなかった。

「朝日新聞」より

実刑確定するまでに時間のかかった漫画村事件だが、これはこの運営者である星野氏が「漫画村」というウェブサイトを運営し、ここに利用者が無断で漫画の内容をスキャンしてアップすることで、無料で漫画が読める状態を作り上げたという事件である。

他人のコンテンツで稼ぐという意味では、今回のファスト映画の件と同じなのではあるが、決定的に違うのが素材は映画であるとはいえ、自分でコンテンツを作り上げてアップしたファスト映画と、他人にコンテンツをアップして貰う漫画村と、そういう違いはある。

あるのだが……、「公衆送信権」の侵害という点では同じだ。

稼いだ額に比べて刑量が軽いのが気にはなるが、現時点での法律の限界から考えるとやむを得ない部分はあるだろう。今回の刑量は著作権法119条の罰則規定によって決定されたもので、「10年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とあるので、結構重い判決と言えるだろう。

ここで罪は確定したが、損害賠償請求は又別途発生する可能性がある。掲載された漫画全ての実施料相当額の請求があった場合には一生かかっても払いきれない額となるだろうが、これは個別の訴訟になるはずなので、漫画家がその気にならない限りは心配する必要は無いかもしれない。いや、出版社ならば訴訟に踏み切るかな?

この辺りはそのうち分かるだろう。

宣伝になるからOK?

ところが、ネットでは「宣伝になるから良いじゃ無いか!」などという意見も見られる。

なかなかスゴい理屈だな。例えば、自動車を販売している店から自動車を盗み出して街中で乗り回し「宣伝」したら、それが無罪になるかというと、盗み出した時点で犯罪を構成してしまう。

そこが理解できない方は、そもそもYoutubeに手を出さない方が良い。令和3年度からダウンロードすると違法になってしまうので、「違法だと思われるコンテンツ」にアクセスすることは犯罪を構成してしまう。

もはや宣伝してやっているから寧ろ金を貰わなければ、というのは屁理屈どころか害悪である事が理解できよう。

なお、YouTubeを使って宣伝するやり方はあって、実際にアーティスト自身がYouTubeにビデオクリップを公開することは結構あったりする。

もちろん他人のビデオクリップを公開したら犯罪なので、あくまで自分が作った素材かどうかがポイントになる。

ゲーム実況は合法か?

違法です。

ゲーム実況では合法か違法か判断が分かれるケースはあるのだが、基本的には違法だ。

そのゲーム実況、告訴されるかも

2020年12月4日 16時02分

ご存じですか?「ゲーム実況」。 ゲームをしながらその様子を撮影し、YouTubeなどに配信する行為のことです。対戦型の格闘ゲームやスポーツゲームでは、投稿する人がテクニックを披露し、見る人はその技を楽しむ。こうした楽しみ方は世界に広がり、愛好者は8億人を超えるとまで言われています。 メジャーなユーチューバーから一般の人まで、競うように投稿し、ゲーム実況は新たなエンターテインメントとして認知度を高めていますが、実はいま、著作権をめぐるトラブルが問題になっています。あなたのその投稿が、もしかしたら刑事告訴されるかもしれません。

「NHKニュース」より

既にニュースになっている件もあって、任天堂辺りはかなりキビシイといわれている。

実は、著作権法は訴えられなければ問題とならないという「親告罪」の法制度をとっているので、バレなければ平気だという側面はある。

だが、バレていなくても犯罪であることは間違い無い。

犯罪は犯すべきでは無いのだ。

しかし、グレーではあるがOKだとされるゲーム実況もある。これは、公開されても損害が発生しないと権利者側が判断するケースで、特にストーリー性の無い部分の公開であれば、問題とはなりにくい。

逆に「ネタバレ注意」とか書かれた動画は、概ね違法であると考えて良かろう。

ちなみに、任天堂は動画実況のガイドラインを出していて、ここは合法となる。

img

これはメディア戦略であって、権利者側から「許諾があった」(お許しが出た)という事なのである。NHKニュースの最初に紹介された、デスカムトゥルー」の件のように警告が出されたら直ぐに対応すべきだろう。これも警告が来ただけ良心的ではあるが。

損害額の算定

なお、この手の事件で損害額が莫大になる事に文句を言う人もいるのだが、そういう考え方だと言うことを理解しておく必要がある。

本編が見られなくなることによる被害の総額は956億円と推計されています。

「NHKニュース”「ファスト映画」で全国初の逮捕者 著作権違反容疑 宮城県警”」より

この考え方は知的財産の世界では一般的である。

「相互補完関係が成立する」というヤツで、動画を1回再生した場合に、本編映画が1回見られなくなるという計算方法である。ちなみに損害額の算定は著作権法114条に規定がある。

現実的にはそんな事にはならないのだが、少なくともこの数字がベースとなって訴訟が争われる。権利者側はこの計算について何か証明する必要は無く、被告側(つまり犯罪者側)が阻害要因を立証していく必要がある(著作権法114条の2)。

例えば、「映画が公開されていないから損害が発生しない」とか、「レンタルされていないから損害が発生しない」とか、そういう特段の事情は加味される。でも、そうでなければ立証は難しいだろうね。

そして、「120分の映画を10分に短縮したから、損害は1/12になる」というのはちょっと主張として成り立ちにくい。何故なら、映画のコアとなるシーンを切り出して動画にしているのである。ネタバレが嫌がられるのは、どこの世界でも一緒だね。

一般人であっても、著作権法に抵触する可能性がある。そんな時代になってきたと言えるだろう。

コメント

  1. 二次創作。というものの扱いの難しいところですね。一次権者が一から十までガイドラインを規定してくれるのが理想ではあるのですが、それはそれで一次権者の負担が大きくなる(有り体に言って逐一相手するのも面倒くさい)という…

    • 任天堂のアレは、任天堂のメディア戦略で、任天堂の法務部が相当しっかりしているから、という理由がありますね。
      小さな会社ではとても手が回らないという状況となると思います。
      そういうのを解消するのが、評判は相当悪いのですがJASRACなのです。
      目立って活動するのでJASRACは叩かれやすいですが、きちんと利用できる方であればアーティストにとっては権利関係を調整してくれる団体ですから、ありがたいのです。
      とはいえ、利権団体になってしまって、良い噂を聞かないのも事実です。映画でも似たような団体はありますが、なかなか。